杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ネクロポリス 上下巻

2009年01月31日 | 
恩田 陸:著  朝日新聞社:発行

(上巻)
懐かしい故人と再会できる場所「アナザー・ヒル」。文化人類学の研究のために初めて訪れた東大院生のジュンを迎えたのは、鳥居に吊るされた死体だった。これは何かの警告か。世間を騒がせている「血塗れジャック」事件の真相解明とともに、ジュンは犯人捜しに巻き込まれていく―。

(下巻)
聖地にいる173人全員に殺人容疑が降りかかる。嘘を許さぬ古来の儀式「ガッチ」を経ても犯人は見つからない。途方にくれるジュンの前に、「血塗れジャック」の被害者たちが現れて証言を始めた。真実を知るために、ジュンたちは聖地の地下へ向かうが…。

友人のお薦め通り、面白い小説でした。

英国と日本の文化が融合した架空の世界「V.ファー」。
「アナザーヒル」と呼ばれる陸の孤島では、死者と交流する「ヒガン」と呼ばれる行事が毎年行われているのですが「V.ファー」で連続殺人事件が発生した年、聖地である「アナザーヒル」でも同様の事件が起きるのです。

上巻では、多数の登場人物の相関図が頭に馴染むまで多少の時間を要しますが、同時に不思議な、でも何故か懐かしいような聖地での風習の数々に胸ときめかせてページをめくることになります。

対する下巻の後半、「アナザー・ヒル」の変質の原因究明で盛り上がるだけ盛り上げておいて「それだけ?」という肩透かしなラストはいただけないのですが。

まあ、その前までは確かにおどろおどろしさと懐かしさが混在したような独特のファンタジーの世界にどっぷりとはまっていられましたので、全体としては及第点かな。

アナザー・ヒルにおいては、『死はイベントであり、日常と地続きであり、死者と一緒に楽しんでしまうしかない。』というジュンの達観と、

『人間と言うのはなんと不可思議な存在だろう。極めて物理的な存在でありながら、やはり自然の一部であり、容れ物である身体に比べて、精神活動は超自然に近い。現実的であろうとする精神は常に矛盾の間で引き裂かれつつも、その微妙なバランスの取れた小さな一点を縫うようにして未来へ向かおうとする。』

という感慨は、下手な哲学者より明快に人というものを語っていて



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グイン123巻 風雲への序章

2009年01月31日 | 
栗本薫:著 早川書房:発行

アキレウス帝は、グインから、シルヴィアの行状とそれに伴う苦悩を告げられ、ケイロニア皇帝として、そしてグインの父として、ある決断をする。それは新年の儀典における、自らの引退宣言と、ケイロニアの最高統治者としてグインを任命することだった。一方、傷の癒えたイシュトヴァーンは、またもや中原支配の野望に燃え、カメロンの諫言をよそに、まずはパロを傘下に置くべく、リンダとの結婚を画策していたのだった。

ケイロニアの宮廷では、シルヴィアはすっかり姿を消してしまいました。作者の中でも彼女はもう過去の人なのかな。

久しぶりに登場したイシュト、初めは「おっ!こいつ、少しは成長した(大人になった)のかな」と思ったのも束の間、彼の狂気は以前より性質が悪くなったんじゃないのぉぉ?

まだまだ終わりそうもないというのが読み取れる巻、ですかね

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