杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

上海の伯爵夫人

2007年09月14日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2006年10月28日公開 136分
製作:イギリス=アメリカ=ドイツ=中国

1936年、上海の外国人租界で未亡人のソフィア(ナターシャ・リチャードソン)は生活のためにクラブのホステスとして働いていた。一家はロシアの亡命貴族で、義母や義妹はソフィアの仕事を蔑み、愛娘のカティアを遠ざけようとする。ある夜、クラブを訪れた盲目の元アメリカ人外交官ジャクソン(レイフ・ファインズ)はソフィアの声に色気と悲劇性を併せ持つ理想の女性像を感じ彼女をスカウトする。そんなジャクソンに謎の日本人マツダ(真田広之)が近づくのだが・・

真田さんが出演することで話題になった作品だが、劇場で観る事が出来なかったので、レンタルしてみました。

ジャクソンは、かつては「国連最後の希望」と賞賛される手腕の外交官でしたが、不条理な暴力により最愛の家族と視力を失い孤独に生きています。彼が描く理想のクラブ「白い伯爵夫人」には、貧しく惨めな日々でも気品を失わない伯爵夫人ソフィアはまさに理想の女性。二人は心の奥底で惹かれあいながらも、互いの私生活に踏み込まない慎みを保っていました。彼の夢と情熱を共に分かつ相手として日本人のマツダが現れるのですが、この辺の男同士の夢の共有・友情の描き方も実にスマートです。マツダはあくまでも謎の男のままでしたが、ミステリアスで危険な雰囲気を真田さんはよく表現していたと思います。

日本軍の侵攻がこの理想の場所をも奪い去る時、ジャクソンとソフィアの間にあった壁が取り払われるのは運命の悪戯でしょうか。再び世界に闇が忍び寄ろうとする中で、愛の成就と先のかすかな希望を感じさせてくれるラストは嬉しいものです。

それにしても、ソフィアの稼ぎに頼った生活で、自らは働こうともしないのに、彼女を蔑み、娘まで奪おうとする家族たちには呆れると同時に、貴族の誇りとは何だろう?と考えさせられるのです。ソフィアの娘が真っ直ぐな目を持ち、母を誇りに思ってさえいる様子が微笑ましく、一家と対照的なことが救いです。

ソフィアの隣人のユダヤ人一家の主が、彼女の味方ですが、彼がジャクソンに語った言葉も重いものです。国で迫害から逃れてきた彼らに対して、上海でもまた差別意識を持つものがいるのですが、そんな奴らを「気にしない。ここでは、少なくとも生きていける。」と言える強さに打たれました。

主演の二人、レイフとナターシャの気品ある演技がこの作品の決め手かも。

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