2022年9月30日公開 85分 G
ある日、ブラック企業勤めのシイノトモヨ(永野芽郁)を襲った衝撃的な事件。それは、親友のイカガワマリコ(奈緒)がマンションから転落死したという報せだった――。彼女の死を受け入れられないまま茫然自失するシイノだったが、大切なダチの遺骨が毒親(尾美としのり)の手に渡ったと知り、居ても立っても居られず行動を開始。包丁を片手に単身“敵地”へと乗り込み、マリコの遺骨を奪取する。幼い頃から父親や恋人に暴力を振るわれ、人生を奪われ続けた親友に自分ができることはないのか…。シイノがたどり着いた答えは、学生時代にマリコが行きたがっていた海へと彼女の遺骨を連れていくことだった。道中で出会った男・マキオ(窪田正孝)も巻き込み、最初で最後の“二人旅”がいま、始まる。(公式HPより)
平庫ワカの同名コミックを「ふがいない僕は空を見た」のタナダユキ監督で映画化しています。共演者に窪田君がいたけれど、出番少ないだろうなと劇場鑑賞を見送ったけれど、意外に沢山出てたのでちょっと後悔😅
定食屋で昼食をとっていた時、TVから流れるニュースで親友の死を知ったシイノは、マリコのスマホにメッセージを入れますが既読はつきません。翌日、マリコの部屋を訪ねると、大家から遺品は両親が引き取り、遺体は直葬になったと聞きます。
マリコが幼い頃から実父にひどい虐待(父親に殴られ、性的虐待も受けていた)を受けていたことを思い出したシイノは、 親友の遺骨がそんな父親のもとにあると知って居ても立ってもいられず包丁を手にマリコの実家へ突撃し、遺骨を奪い取ってベランダから飛び降り逃走します。父親の再婚相手のキョウコ(吉田羊)は優しそうな女性で、シイノはもっと早く彼女と再婚していればマリコは死ななくても済んだかもと思ってしまいます。川に転がり落ちそのまま川を渡って裸足のまま自分の部屋に帰ったシイノ。それにしてもエキセントリックな性格だこと😓 マリコの遺灰と、昔マリコからもらった沢山の手紙を持って外に出たシイノは、マリコが行きたがっていた「まりがおか岬」のことを思い出して深夜バスに乗り込みます。
深夜バスと電車、バスを乗り継いで「まりがおか岬」に辿り着いたシイノでしたが、ひったくりに遭ってスマホや財布やマリコからの手紙が入った鞄を盗られます。思わず道路に遺灰を置いたままひったくりを追いかけたシイノが捕まえられずに戻って来ると、通りかかった釣り帰りの男が遺灰の番をしてくれていました。彼はシイノが一文無しだと知ると金を渡して去って行きます。連絡先を尋ねたシイノに「名乗るほどの者ではありません」と言うのですが、思わず「七人の秘書かよ!」と突っ込んでしまいました😁 おまけに去って行く彼のアイスボックスには“ナリタ商店 マキオ”と書いてあるし。ここ、笑うとこよね😅
もらった金で酒を飲んだシイノはマリコの幻覚に思いを爆発させます。港に置かれていた舟で一夜を過ごした彼女を見つけたマキオから「ご自分を大事にして下さい」と言われ、シイノはかつて自分がマリコにそう言ったことを思い出します。恋人に殴られていたマリコを助けて追い払ったのに、呼び出されて会いに行って腕を骨折して帰ってきたマリコに激怒したシイノに、彼女は「私はシイちゃんが本気で怒って心配してくれるのがうれしいだけ」と言いました。
マキオと別れ、岬に立ったシイノは、マリコが自分に黙って自殺したことに腹を立てて衝動的に海に飛び込もうとします。心配して後を追ってきたマキオに止められ揉み合っていると、ヘルメットを被った男に襲われ逃げている女性の叫び声に気付きます。彼女にマリコを重ねたシイノは思わず遺骨の入った箱で男を殴ります。割れた骨壷から海に飛び散った遺灰を掴もうとしたシイノは崖から転落。意識を取り戻した彼女のもとにマキオがやってきて話しかけます。「ここ意外と死ねないんですよね」
彼も大事な人を失って自殺を試みたことがありました。マキオは死んだ人間が思い出の中に生き続けるなら、シイノが死んだらマリコも永遠に消えてしまうと語ります。
ヘルメット男はひったくり犯と同一人物で、マリコの手紙を取り戻すことができたシイノは自宅へ帰り日常に戻ります。駅に見送りにきたマキオから貰った弁当を、まだ電車が動き出す前からバクバク食べだすシイノ。動物的な生の活力ってとこかしら。
辞表を出すシイノに「辞められると思うなよ、迷惑かけたと思ったら死ぬ気で働け」と返すクソ上司。ほんとブラックな会社だこと。乾いた笑いのエピソードです。
ある日、部屋に帰ったシイノは、ドアノブにマリコの実家に脱ぎ捨ててきた靴が入った紙袋が掛けられているのに気付きます。「って、家ばれてるじゃん」という呟きが笑える!袋の中にはマリコがシイノに宛てた最後の手紙も入っていました。その手紙を読み微笑むシイノ。何が書かれていたのかは明かされないけれど、きっといつものように他愛のない、マリコらしい内容だったのでしょう。😊
マリコは実父から身体的・精神的・性的に虐待されながら育ったため、自己肯定感が低く、親元を離れてからも、父に似た男性と付き合い虐待され続けてきました。リストカットするなどいつ死んでもおかしくない不安定な精神状態の彼女を繋ぎとめていたのがシイノという存在ですが、シイノもまた自分がいなければマリコは生きていけないと思っています。だからこそ独りで死んでしまったマリコに怒ったのでしょう。
シイノは中学生の頃にはもう喫煙していて、かなり周囲からは浮いていたと思われます。彼女の家庭環境は一切触れられていませんが、暴力こそなくても所謂普通の環境ではなさそう。お互いが必要で共依存的関係に陥っていたと思われますが、マリコの死を乗り越えシイノも変わっていくのかな。否、変わらない気もするな😌