月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

食卓に花があるだけで

2021-05-24 22:14:00 | コロナ禍日記 2021









 

4月7日(水曜日)

 

 土曜日に下のスーパーマーケットで購入した奈良の吉野桜。2分咲きを買って帰ったのが、7分になった。部屋が非常に明るい。枝の先にぷっくらふくらんだ黄緑のつぼみ。少ししわがはいった白い5枚の花弁、レモンイエローの花粉をつけた12本ほどの花弁も、とてもかわいい。毎日、花見酒、花見の食卓を高じて上機嫌である。

 いまも、篠山で借ってきたいちごをパクリとやりながら、その上に宝塚牧場のヨーグルトをたらーりとかけ、食卓でひとり花見を楽しんでいる。

 

 お昼ごはんは、長崎の皿うどん。具にはちくわ、新キャベツ、ピーマン、人参、マイタケ。中華スープをつくり、後は吉野葛を水に解いてまわす、簡単なものでも十分に満足。

 

 午後1時から6時まで原稿を書く。ダイニングテーブルで校正し、訂正し、区切りのところまで書く。休憩には、この間から読み進めている吉田修一氏の「パークライフ」を読んだ。𠮷田修一氏の文章は「翼の王国」のエッセイからファンになり、小説としてはまだ2作目。

 

 肩の力をぬいて、できるだけ軽く書こうとされている。読んでいてリラックスする楽しい小説。特に事件らしきものが起こるわけでもないが、主人公の佇まいに好感がもてる。リアルな主人公、リアルな視点、リアルな日常が描かれている。構成も文章も、観察眼も上級である。土台がしっかりとしているとこれだけおもしろく読めるのだと、ある意味、特別な本でした。

 

 夕ご飯は、百日鶏の照り焼きステーキ、からし菜とレタスのサラダ、もずく。おつけもの。お味噌汁。5分づきごはん。

 

 8時から映画をみる。「ペトラは静かに対峙する」。






詩的な映像。静かにドキュメンタリーのように人生の中の時間の流れをみせる映画。ペトラをとりまく不遇な出来事を、淡々と描く。芸術と金を最も価値がある、とする冷酷な父。ゆがんだ孤独。しかし、この映画は欠陥の多い高圧的な男(父)を描こうとしたのだろうか。むしろ、自分の意のままに、行動しているだけで、その理由づけを、偏屈に語っているだけではないだろうか。とも思えてくる。射殺されたシーンで、ちっともスカッとしなかったから。同情心すら沸いてきたから。ラストの一幕で、ペトラと娘とのシーン、義理の母(父の妻)とのシーンがなおさら、ほほえましく温かく映った。好きなタイプの作品だ。11時から風呂に入り、1時に就寝。

 こんな平凡な日が理想だ。