月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

玄関の蜘蛛は払うべきか、見守るべき?

2012-11-23 10:31:03 | 今日もいい一日



10月中旬頃、ふと新聞をとろうとみると、
わが家の玄関の郵便受けに
きれいな蜘蛛が棲みついていた。



きれい。

黄緑と黄色とオレンジの幾何学模様のそれは、
蜘蛛といっても毒々しさが微塵も感じられず、
葉っぱの化身のような風貌。

規則正しく折れ曲がった長い手足には、
オレンジの細いリングをいっぱい
オシャレにつけて、華奢だし、
なんだかすぐ払ってしまうのには躊躇するところがあったのである。

シャープだなぁ、この蜘蛛。

毎日新聞を取るとき、
郵便請けからチラシや手紙類を受け取るとき、
ウォーキングからの帰りなどに、
蜘蛛をそれとなく観察していた。

蜘蛛はいつも平和そうで、
同じスタイル。

一度誤って郵便請けから新聞を勢いよくとりすぎて、
下にポトン、と落っことして
しまった時はわぁ、と騒いで
慌てたが、
翌日にはちゃんと元のところにはい上がってキッチリ収まっていらっしゃった。

私があまりにじっと見ていると、
身の危険を感じたのか、蜘蛛の糸をものすごい勢いで揺らし始め、
挑戦者のよう、
どんどんエスカレートしてくると
自分自身の体をビンビンと小刻みに震えさせ、それらがしだいに
激しくなり、
やがて蜘蛛ったら
気がおかしくなったと思うほど、
暴走状態に陥っていたこともあった。

怖くなり、部屋に引き込む。

そして、
不良だわ、この蜘蛛、とわたしは思う。


小さな枯れ葉を糸の中にとらまえて
遊んでいた日も、

細くて折れそうな汚い蛾の足を後生大事に、
ひしっと、握りしめていたこともあった。

でも私は今日、勇気をもって
なんと、
蜘蛛を払うことにしたのである。

このところ、仕事が忙しくなるにつれ、
わが家は乱雑になる一方で、
仕事を共にしている相方のちょっとした不満さえも、
心のなかにホコリのように積み重なってきはじめたのである。

なんだか視界が狭い、この頃。

それで今朝、この明るい太陽を見たら、
そろそろ分かれ時という気がしたのは
まぎれもなく自然に湧き上がってきた感情なのだったのだ。

箒の先に蜘蛛さんをのせて、払おうと試みるけれど、
何度も嫌々と、激しくジェスチャー!
いったんは、思い直して部屋に戻ったのだが、
意を決し、

最初は蜘蛛の糸を箒のさきに巻き付けて、ぜんぶ払ったあとで、



やさしく声かけしながら、

勇敢に対峙し、

ゆったりと蜘蛛さんの体を箒の上にのせて、
マンションの自転車置き場の前にある草原にそっと離した。

バイバイ!

後を振り返らずに部屋に戻った。
スキッとしたのである。達成感だ。


それから、
昼と夕方と、今日は2度も郵便請けの壁を見つめたのだが、
蜘蛛さん、不在。壁はまっしろ。

しばらく同居してたんだもの、
本当は少しだけ寂しい気持ちになってしまったのは認めないわけにはいかない。

それから蜘蛛さんのことはすっかり忘れて仕事をして、
だいぶあたりは暗くなって
ウォーキングをしていたら同じ黄緑と黄色とオレンジの幾何学模様の蜘蛛が、違う公園にいたのを
私の目がしっかり捉えた。

なんだ、どこにでもいる蜘蛛だったのか。

よかった特別な私の蜘蛛じゃなかったのね。   

安心して夜を迎えた。

次の朝、台所で朝食をつくっていたら、小さな蜘蛛がまな板の先を、つ~と横切っていったのである。

ああ、

玄関の蜘蛛は払うべきか、見守るべき?




2012 正倉院展の回想

2012-11-21 20:43:35 | どこかへ行きたい(日本)


窓から見える景色は、六甲山脈の尾根の向こう側まで一面に紅葉の森だ。
紅葉は一日で燃え上がる、というのをここに暮らしていると毎年、体感する。
ゆっくりゆっくりと木々が染まるのではなくある日、目覚めたら山々が「朱」に燃え上がっている。
自然の一日の変身はすごい!いよいよ本格的な紅葉がはじまった。


さて、10月の中旬から仕事がたてこみ始めて、
今は4つの案件を同時に進めている。
キャパの小さい私にしてはかなりハード!

しかも、その合間を縫ってものすごく魅力的な遊びのお誘いが入ってくるので、それらの一部を1週間のなかに無理やり押し込め、
スケジュールを組み直したりして、またまた自分で首をしめる。

先週はスケジュールがパンパンなのに、歴史好きのご近所ママに誘われて「正倉院展」へ行ってきたし、
土曜日には、お世話になった先生が主宰する「コーチングワークショップ」にも出掛け、日曜日は、撮影のロケハンで一日中外出だった。

まず正倉院展の話を忘れないうちに少し書いておこう。

11時半に奈良に到着して、まず向かったのは
蕎麦「百夜月」だった。
(奈良市中月町38、0742-24-5158 11:30~14:30 17:30~19:30(火は昼のみ))。

東向北にあるしっとりした店構え。石臼引き自家製粉の手打ちそばを看板にする。
大阪・大正の「そば切り凡愚」に影響を受けたという店主が打つそばは正統派で、
北海道産の蕎麦の実を使い十割か二八かを選べ、野菜素揚げ天そば(写真)やおろしも美味しい。


この日は、私が鴨そば。
友達は野菜素揚げ天そば。



奈良市内で蕎麦といえば、やっぱり今西家書院の離れ(室町時代の書院造り)で食べられる「玄」がオススメだが、「百夜月」は駅前なので利用しやすい。

若いご夫婦の接客も感じがいいし、
趣味のいい器で供してくれるのが私には好感がもてる。



奈良国博に行く前に、同伴の友人に「奈良女」の記念館(明治41年建設)を紹介。

水曜日だというのに、学生はどこにいるのやら。ひっそりした大学だ。

「ここは時間が止まっているままだね。
私はこういうの好きなんだけど卒業してから、
大阪や神戸の大学出身者と就活で闘うのが怖いなあ」
と一昨年前になっちゃんが話していたのを思い出した。

さて、正倉院展は、40分ほどの待ち時間で入場できた。

人、人、人の列のなかで、人の頭越しに背伸びをして、
ガラスケースのなかに収まった天平時代の宝物の数々をみせていただいた。



写真が撮れないのでポストカードで。

一番のお目当ては、「螺鈿紫檀琵琶(らでんしあんのびわ)」かな。
聖武天皇が愛用した弦楽器で、紫檀で描く曲線のなめらかな輪郭。
背面に貝とウミガメの甲羅で作った花や鳥、雲など
自然の造形がユーモラスな模様にはめこまれていて、キラキラと輝いていた。

眺めるだけでこれほど綺麗なのに、これを天皇や貴族が奏でるのだから、さぞかし優美なことなのだろうな。

また、今回特に印象に残ったのは、天平人の遊戯具である。
木画紫檀双六局(もくがしたんのすごろくきょく)。
いわゆる「すごろくのゲーム盤」。なんて風流なゲーム盤であること。
側面に鳥や草、上面には細く折れそうな三日月が描かれていて、
ゲーム盤のたたずまいのなかに、どこか宇宙的なものを感じた。

乳白色や瑠璃色、朱色などのガラスのコマや象牙のさいころもたくさん展示されて、
ひとつひとつが美しくて。

動物の皮をめぐらした小さな銅色の箱。

巻物を読むための書見台。

お香を焚くボールのような銅薫炉(どうのくんろ)は、銅版をくりぬいた透かし彫りの細工が精緻であって、
コロコロ転がしても火や灰がこぼれないようになっているそうである。

瑠璃杯の色も、これがシルクロードの碧なんだろうか。
1時間待ってみたけれど、少し暗い碧だ。
展示ケース下にライトを仕込んでもよかったのではないかしら。

ともかく、1250年前の貴族の暮らしぶりを、
調度品や楽器、器などの用の美を素に、
あれこれ連想して、思いを巡らせる、
そのこと自体が愉しい。やっぱりここが奈良だから。
安易というか、自然とそれができる。


このあと、興福寺の特別公開「仮金堂」を見て、
3年ぶりに公開された厨子入り吉祥天倚(きっしょうてんい)像(重要文化財)と大黒天立像にもお目に掛かって、
それからお決まりの「奈良ホテル」ラウンジでティータイム。






荒池のまわりに繁る紅葉の海はライトアップされていて、夕方から夜に移り変わっていくさまをここでゆっくりと味わった。

(まだ、この時は奈良公園の木々は色づいていなかったので)

今回の奈良行きで感じたのは、
奈良女の「講堂」(明治41年建設)にはじまって、
宮廷建築家の片山東熊設計が明治27年に竣工した「奈良国立博物館」、
明治42年に建設された桃山御殿風檜造りの「奈良ホテル」と、
同じ明治期のクラシックな洋風建築を訪ねて、建物の木々が放つ、
歴史ある空気感のなかにいる気持ちのままで、
古いきれいなものを沢山見られたのが有意義だった。

古いものたちは、静かで気高い。どんな歳月もずっーとくぐりぬけてきたものだけがもつ優しさと、そして強さが備わっている。
その美しさ、そのユーモラスたるや、今の時代のどんな天才だって真似できないなあ。

時々はこんな崇高な美意識にふれて、沈滞するあれこれの思いを浄化していきたい。


帰りは、奈良駅近くのベトナム居酒屋「コムゴン」で、ビールとベトナム屋台料理で〆!!
バーバーバーは、最高だ!



ここも使いやすい、よく利用する店。コスパがいい。今回はオーダーしなかったが生春巻がおいしくて、もう4回くらい通っている。



ああ~また行きたいなあ「奈良」。
「なら」という音は、古代の朝鮮半島の言葉でも国とか故郷を意味するそうである。

冷たい雨と、恵那峡の紅葉と

2012-11-13 20:15:36 | どこかへ行きたい(日本)


まだ11月の初旬だというのに、やたらと寒いなあと思う。
6月に手術をした後遺症なのかわからないが、
ことしの冬にはものすごく冷え症が進んだ気がする。

婦人科系の疾患をもった人のために、
ここはあえて告白しておくが、
私の場合にはイメージとして、
かつて子宮のあった場所が打ちみで死んで、薄黒い紫色になっているような妄想だ。

残像がしっかり脳裏にある。

そして微妙な痛みが時々じわりじわり
追いかけてくる。
鉄の塊がおなかのなかに残っているみたい。
なんだろうなあ、このへんな感触。


卵巣のあたりも、違和感があって痛くはないけれどキリキリする。

寒いとなおさら、背中が肩が、下半身が、胸のあたりが、ぞくぞくする。
とにかく寒い。
体の芯が冷えるという表現よりも、
「体の骨がすごく寒い」というわけなのだ。

(まあ、文筆業なのでだいぶ誇張した表現かもしれないけど)

それで午前中は体が冷えているので何かを始める気になれずに、
結局、薄手のジャンバーと手袋をして、
ウォーキングに出てしまうか
一日2回以上お風呂に入ることになってしまう。

今日のようにウォーキングをして、その後でお風呂にした場合には、調理用の塩(岩塩など)に、
アロマオイルを3~5滴混ぜてバスソルトを入れることも。

昨年は必ずといっていいほど朝と夕のお風呂には
窓をあけて、その時刻の特別な空気を浴室に入れたものだが。
今年の場合には、体が温まった頃に少しの時間だけ窓をあけている。

そういえば、バスタブで1時間以上本を読むこともあまりしなくなっている。

そのバスソルト。

朝、気分をあげたい時にはゼラニウムやグレープフルーツをソルトに垂らし、
夕方でリラックスしたい時にはラベンダーやローズ系を。
仕事をしている時には、スィートオレンジやローズマリーで、
頭をしゃっきりと回転させる。

今こうやって仕事をしている時は、
ベルガモットとローズマリーをコットンにふくませて置いているのだけど。
これはもう快楽というかお遊びですね。お香も好きだし。

私は、また誰にも内緒にしているのだけれど(もう内緒じゃないね)
実は、原稿の校正・推敲作業をお風呂のなかでやってしまうこともよくある。
いったん書き上げた原稿は、すでに自分の手を一度離れると、第三者の目線でみることが必要なので、
環境を変え、気分を変えた場所で、確認する。というのは、案外と効果があるような気がするのだ。

もあ~とした熱帯バスのなかで体温が上がってくると、妙案が浮かぶ!?
さあどうでしょうか。


さて前置きが長くなったが、週末は出張で、名古屋へ行ってきた。

新幹線で名古屋まで行き、そこからJR中央線で恵那へ。
またまたタクシーを乗り継ぎ約20分。恵那峡のなかに建つ小さなホテルで人物インタビューをしてきた。

一人で行けたらそれなりに旅の気分になっただろうが、今回は65才の同行者と
数人の方々とともに行ったので、電車のなかではしじゅう仕事の打ち合わせとなり、
ちっとも車窓から秋の風景を眺めることができなくて残念!

でも、ホテルから眺めた恵那峡の紅葉は、冷たい雨のなかでとても静かで
湖のような木曽川の景観美を引き立たせていた。


この景色は、実は人間の手によってつくられた自然美であるという。

果てしなく大きな湖と思ったのは実は木曽川の流れをせきとめ、日本初の水力発電用に開発した大井ダム。
ダム湖が造りだした人工の景勝地なのである。

両岸から続く断崖絶壁の紅葉は、それでもキレイ。

毎年美しい緑や紅葉のオーラーで人々を癒している。
遊覧船に乗って湖のなかから紅葉の山々を眺めるなんて、
風流を好む日本人らしい発想だなあと思った。



この情報は、タクシーの運転手さんから教えてもらった聞きかじり。
(取材が終わって一人で次の場所へ移動することになったので)。

帰りには地元の名物である栗きんとんの人気店・恵那川上屋さんまでタクシーの運転手さんにお願いして
少しだけ遠回りしてもらって立ち寄った。



名物の栗きんとんと、栗入りロールケーキを購入!





名古屋の帰りは一人の新幹線。けれど今度は満席で…。通路側。
帰りは新大阪駅から梅田の「ルクア」へ行き、
「ナチュラルハウス」で、
4枚重ねの靴下(5本指のシルク靴下、綿、シルクと交互に重ねてはく冷え取り靴下)と
生厚タイプのレギンスを、寒さ対策グッズとして購入。

これでしばらくの寒さしのぎになればいいのだけど…ね。


後日談だが、この日の栗きんとんはうまかった。

栗は洋菓子よりも和菓子のほうが、やはり合うと思うし、
栗きんとんなどの和菓子って、上品に風味をいかしてつくったら
栗をそのまま食べるよりも栗らしさを象徴できるお菓子なのではないかしら。

京都の若菜屋さんもおいしいが、
恵那の栗きんとんのほうが、より日本的な栗の味。

この日は、ちょっとだけ栗っぽい風味の中国茶・黄山雀舌をあわせて
いただいた。

それからは、ひたすらショウガ紅茶を4杯くらい飲んでいるのだけれど。

あの日のosakaは異国のような美しい街だった

2012-11-07 00:48:53 | 大阪ごはん


その日は、薄曇りの少し寒い日で小雨が降っていたので、傘を持たねばならなかった。

電車のなかは、生ぬるく中途半端にエアコンが効いていて、乗り合わせた人々やその街の匂い、雨の湿気が入り交じった、特別な冬の匂いが漂っていた。

私は、本町駅の7番出口で降りて、地下鉄の階段を駆け上がり待ち合わせのホテルまで急ぎ足で向かった。

と、ここまで読んだら、あら、どんな衝撃的なお話が続いていくのかしら、と思うのかもしれないが、その期待には反して、ごく普通のありふれた、ある休日のことをこれから書こうと思っているので
肩の力を抜いてホットココアでも飲みながら、少しくだけたくらいの調子で読んでもらっていっこうに構わないから、(余計なお世話よね)と言っておこう(笑)。

セントジレス大阪。

御堂筋の通り沿いから見えているのは、パリのカフェテラスのような籐の椅子とテーブルが並ぶフレンチビストロの「ル ドール」だ。

私はそこからぐるっとホテルを半周して船場センタービルの方角であるメインの玄関口から入り、案内に従って1階のエレベーターの前に置かれた
長いすの前で友人を待っていた。
3分ほどすると、彼女はやってきた。

ブルーグレーのワンピースに軽いコートを颯爽とはおり
「すいません、お持たせしてしまいました?」と。

ここにも以前書いたことがあるコピーライターの元同僚である。
ふたりで向かったのは、セントレジス大阪12階のイタリア料理「ラ ベデュータ」。

広告・印刷業界は通常、11・12月が一年中でも指折りに数えるほどの忙しさなので、ここは、「秋休み&クリスマス休暇」を兼ねるくらいの勢い(の、つもり)で、
女ふたりちょっぴりセレブなランチを予約してしまったのだ。

セントジレス大阪といえば、
昨年船場のレストランで夜のごはんを食べた後、クリスマスツリーを見るためにわざわざ立ち寄ったほど、
好きなホテルだ。というのは、以前に家族でバリを旅したとき、私はセントレジス・バリリゾートにてスパ(ルメードゥ) スパ」を体験し、
興奮と歓喜に充ち満ちた素敵な思い出などもあったりして、

勝手に幸福な妄想がむくむくと膨らむ特別なホテルなのである。

イタリア料理「ラ ベデュータ」。


イタリアの田舎地方にある別荘を彷彿させるというコンセプトの空間は
外からの光をたっぷりと取り入れ、開放感のあるダイニング。
天井から吊された照明や狩猟モチーフのあれこれなど調度品が重たくていい。

ちょっとした小さなところにも、ヨーロッパのエスプリが仕込まれ、でも豪奢すぎるところが全くない
温かな造りのレストランだ。

さあ、今日は「トラディッツィオーネ」(3,800円)をオーダー。

まずは再会をシャンパンで乾杯!
臨場感あふれるオープンキッチンをチラリとみながら、いろいろ話した。

一皿めは、「サーモンのマリネ 赤パプリカのセミフレッドを添えて」。


ジュノベーゼソースをチョンとつけて頂いた軽やかな食べ心地のマリネ。
冷製だから、新鮮さが際立っていた。

次は、温か~い北イタリアの、家庭的な味わいに仕立てられたスープ、
「野菜たっぷりのミネストローネスープ ラ べデュータスタイル」で、
この季節にぴったりの、やさしい味わい。

パスタはそれぞれチョイスし、
私は「ムール貝のグラニャーノ産リングイネ」を、



友人は、「イタリア産黒オリーブのトマトスパゲティ、魚介を添えて」。

そしてコーヒー&紅茶とともに
好きなデザートをいくらでもオーダーバイキングで召し上がれる、フィナーレという構成である。



アールグレー紅茶のソースがかかった
「柿といちじくのデザート」は最高においしかったな。
「三種ジェラートとフルーツの盛り合わせ」もよかった。

お料理としてハッと意表をつくほどの斬新さは正直なかったが
あくまで基本に忠実に、家庭的なあたたかい味つけが施されている
居心地のいい安らかなレストランだと思った。

接客は自然で、笑顔と親切心が感じられて、それらが行き過ぎないところにも好感がもてた。

周りの雰囲気も手伝ったのか、旅先のどこかで友人と再会して
ゆっくりごはんを食べているような錯覚になったのが面白かった。

ホテルを出ると4時少し前。
歩きたい!という衝動にかられて、
本町から北浜までOSAKAの街を散歩
する。

友人は事務所も自宅マンションもここOSAKAの中枢にあって、
都心生活を謳歌して暮らしている。
だから抜け道やセンスの良いショップの情報にも詳しいのである。


この日は、北浜プラザ1階の「リネンバード」と「エヴァムエヴァ」をひやかして、
温かそうなカシミアのスヌードやホームウエアなどに心惹かれながら、

インテリアショップ "Visions(ヴィジョンズ)"へ!
〒540-0039 大阪府大阪市中央区 東高麗橋6-2-1 F 06-6944-4777
http://www.v-i-s-i-o-n-s.com/


ここは、フランス(南仏)を中心に買付けた食器やアンティーク・ブロカント、アート、バッグ、小物雑貨が実に美しくコーディネートされていて、
見ているだけで吸い寄せられるような素敵なモノたちに、癒された。


そして、な、なんと衝動買いしてしまったのがこのバッグ。




ブルーグレーのような、薄いラベンダーカラーのような微妙なニュアンスが
きれいだなあ、と思って手にとってみたら離れがたくなってしまったのだ。

本当に私自身の欲しいモノを買ったのは久々。夏以来かも。

神様ごめんなさい、受験生の親として全く自覚がない、不甲斐ない私なのであります。

この日のOSAKAはいつもと違う。

灰色の空と濡れた道路に、冬仕立ての
イルミネーション。

きっと12月まであとわずかという、華やかさやドキドキ感が街に溢れていたように思う。

仕事で歩く時とは別の顔をもった、
異国のようなしっとりとした表情で
迎えてくれていた。



11月、朝の空

2012-11-03 19:05:09 | 春夏秋冬の風


ここ数日、夕方5時になると辺りはもうすっかり暗くなってしまうので、
1日がほんとうに早く終わってしまう気がする。
今朝は、なっちゃんを5時50分に起こして(本人に頼まれたから)、
勉強の邪魔にならないようにご近所の界隈をウォーキングした!
生まれたばかりの朝の空気だ。この冷たさ、気持ちいい!

すると、人間の脳の記憶というのは不思議なもので、
薄い茜色に染まった朝の空を見て、
遠いアメリカの「デトロイト」で見上げた茜色の空を思い出した。

7年前(もうそんなに経つのだ)、
初めての海外出張取材で訪れたアメリカ。

初日。
アメリカの綿花業に携わる商社の人々が開催してくれた歓迎パーティの翌朝に、
5時半に目が醒めてしまって、ホテルの部屋のお風呂に入り、
それから早朝散歩した時に見上げた雲の色や湿気を含んだ冬前の空気の冷たさは忘れない。
そう、水でうすくのばしたような、茜色のきれいな空だった。

あの時も、これから起こりうる不安な想いに押しつぶされそうになりながら、
澄んだアメリカの空気を肺の中いっぱいに吸い込んだのを覚えている。

そうだ、あの時も秋。11月になったばかりだった。

夜が明けたばかりのデトロイト空港に飛行機が降りていくなか、
初めてみるデトロイトの地と飛行場をずっと窓からみていて、
この国の木々の葉はなぜあんなに赤茶色や錆び色をしているのかと…。
よく考えてみたら、
それが初めて見るアメリカの紅葉だったのだ。

ほんとうにビックリするほど日本のそれとは違い、
とても紅葉を美しいとは思えなかった。
おそらく昼夜の寒暖差が日本ほどにくっきりしていないのだろうな。

京都の社寺で見る、緋色や朱や山吹色の美しい葉っぱの色は
10日間旅している間、一度として見なかったな。

カリフォルニアのシエラネバダ山脈から続く広い大地、
山々に木々はなく、丸はだか当然で、日本とは全く違っていた。
けれど、地球規模というか、
スケールが違う大きさ、というのをまざまざと感じた。ハイウェイはガタガタ道で車窓から眺めた広い農地は地平線の向こうまで波打っていて、道路の近くには豚や山羊や羊たちが普通に放牧されていた。

ひとつ思い出すと、記憶の断片が数珠つなぎのように後から後から
湧き上がってくる。
あの時、一緒に旅をした20人もの商社の人々からもらった言葉の数々や、
ものすごく厚みのある、固い、赤身のステーキ肉。甘い濃厚なバタークリームのケーキに、極彩色に飾られた山盛りのデザート。
あれはアメリカで食べたから美味しかったのだろうな、とか。

朝の散歩はいい。きっとたっぷり眠って頭が冴えているから、
記憶も鮮明であるのだろう。


先週、髪を少し切ってパーマをかけた。

自分がこのところ、小さく思えて、オーラが乏しいような気がしたから。

ちょっとだけ、空気を含んだカールでふんわりさせて、

自分をとりまく雰囲気を華やかにしたいなあと思ったのだ。

私がパーマをかけたりカットをしたりする美容室は
北浜の有形重要文化財にもなっている芝川ビル2階の「アトリエ・スタンズ」。
デザイナーはただ一人(四ツ橋の人気店を解体した)、この人とは15年来の付き合いで
かつてはパリコレクションなどで、ヘアメイクも担当したことがあると聞いて新聞記事で
インタビューをさせてもらったこともある。
プロ意識の強い職人肌の人だ。

今週から新しい仕事がまた少し入ってきた。
担当してくれるデザイナーさんは新しい顔ぶれの人も。
それぞれに持ち味があって刺激される。この前から、資料を集めて向き合っていた新規の仕事は、ラフと構成案が決まり、
クライアントの感触もよかった。

仕事も家のことも、充実した11月になればいいな!うん、絶対にそう信じよう。