月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

読書の秋に、(江國香織さん編)

2022-09-24 14:30:00 | 随筆(エッセイ)








 
 

コロナ禍の2020年、「7日間ブックカバーチャレンジ」がSNSで流行しました。これは「読書文化の普及に貢献するためのチャレンジで、参加方法は好きな本を1日1冊、7日間投稿する」というもの。

①本についての説明はナシで表紙画像だけアップ。

②(その都度)1人のFB友達を招待し、このチャレンジへの参加をお願いする。

ルールはこれだけでした。

 

 世界中の街から人が消え、空港やレストランや観光地などは廃墟と化し、代わりにインターネットやスマートフォンには、交差点で大渋滞というほどに、人やモノや出来事やら、儲けはなしやらで息苦しい……、そんな新たな時代が始まった頃でした。

 

 

 ライター仲間の友人からまわってきた、フェイスブックでの「7日間ブックカバーチャレンジ」。わたしは、読書の愉しみがわかってきた頃から遡って、フランソワーズ・サガンの「愛と同じくらい孤独」を投稿し、その後は、森瑶子「情事」、リチャードブローティガンの「西瓜糖の日々」、リチャード・ブローティガンの「愛のゆくえ」「西瓜糖の日々」、ミラン・クンデラの「存在の耐えられない軽さ」などを、ぽんぽんと上げました。

 

 確か4回目の投稿は、江國香織さんの「抱擁、あるいはライスには塩を」を供しています。ベストエッセイを選ぶなら、いいものが沢山ありすぎて大いに迷うところですが「物語のなかとそと」。 

 若い頃に読んで、これは!!とノックアウトされたのは、「落下する夕方」。ここには完璧な絶望が描かれています。彼女が描く絶望は、決して鬱々した暗さはありません。絶望を、むしろ明るく愉しむかのように書いているのが江國流であります。あと、「いくつもの週末」という本も好きです。車のサンルーフをあげて、夫婦で桜を視るシーンの情景描写も大好きで、春になると、必ず読みたくなります。さて、本題の話しに入りましょう。

 

 ある日。流れてきた音楽に耳を傾けながら、あれをよく聞いたのは、自分がいくつで誰と過ごしていたな……、そう季節は春で六甲山をドライブしていたときに聴いた……などと音楽が引き金になって、当時の記憶が次々と紐解かれていくことがありますが、本の場合も同じ。冒頭の一行をみただけで、当時のあれこれが、フラッシュバックする、そんなことはありませんか?

 

 「抱擁、あるいはライスには塩を」は、そういう意味で感慨深い一冊です。

 私は30代後半で(子宮全摘出手術をした)西梅田の病院の個室で10日間の入院中、iPhoneの音楽を掛けっぱなしにして、一日の大半をこの本を読みながら過ごしていました。体は細い管に繫がっていながら、心は江國香織の書く本の中に居て、(紙の中の)沢山の美しい造形や家族の人生をみていられたのです。

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47. 江國香織さんの魅力は香りの空気を纏うように言葉を真摯に織る|みつながかずみ|writer @k_anderu #note #読書感想文
 
 
 


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