月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

不倫疑惑にもいろいろあるのだ

2020-02-02 19:42:12 | writer希望を胸に執筆日記

        
11月12日(日)

朝9時。Nがリーガロイヤルホテル大阪に昨日から宿泊しているというので、
「お昼ごはんを一緒に食べましょう」と。車で会いにいく。


着いたらすでに11時前。12時半には、ホテルを出発して空港にいかねばならない。大急ぎで「オールダイニングリモネ」でブランチ。

合ったときには、なつかしい!となるが、15分もともにしていると、すっかり我が家の子の顔になる。
話を聞きながら、ちらりちらりと時計をきにしているN。まあ、ゆっくり。といっても無理か。

Nは、リーガロイヤル特製の海の幸のピラフを。(曰く、宴会ではコーナーができるほどのホテル自慢の味らしい)





私は、エビフライをメーンにした。相方はビーフストロノガフ。



12時半。いよいよ出発らしい。

クルー10人の中にいるNをみた。幼稚園でお芋掘りの時に園児たちに囲まれていた姿。小学生の時の参観日での落ち着かない様子とだぶって。親というのは、いくつになっても昔の記憶のかなたと二重三重にして、いまをみてしまうものなのだ。

そんなことを、ぼんやり思いながら。乗務にむかうNを見送った。


食事のあと、リーガロイヤルホテルの「グルメブティック メリッサ」で沢山のおいしそうなパンを買って帰る。特にミルクフランスとカレーパンがおいしかった。






宝塚でいつものように買い物をしていると、普段とかわらない、夫婦、ふたりっきり。
Nとの一抹のひとときが幻だったよう。



1月13日(月)祝日 晴

午前中は仕事。
午後1時、ご近所でコピーライターの先輩、Fさんが車で迎えにきてくれた。今週の日曜日に開かれる餅つき大会の買い出しだ。

近所のJAでもち米。業務スーパーでおつまみ類やジュース類、あんこ(半生)、きな粉。調味料など。
格安ホームセンターのジャパンで焼酎や日本酒(鬼ころし)、酎ハイ(黒霧島、レモン缶チューハイ)など酒類を買う。
ロイヤルホームセンターでは餅布、軍手、紙コップや紙皿など日用品も。私もついでに、携帯の保温ポットを自分用に購入。

これで、外出時にペットボトル飲料を買わずにすむ。好みの銘柄の珈琲や紅茶、煎茶、中国茶などをつれて外にでられる。ペットボトル飲料は好きではないので半分以上、すてることになるのだ。


買い出しついでに、Fさんとともに牧場直営の精肉店でコロッケ、すき焼き用を買う。前の店で、北海道ほっけ、舌平目を買う。帰宅途中、カフェで一服。Fさんの話。


「私の友達の話しなんだけどね。長いことかくしていたけれど、ゲイであったことをカミングアウトされたのよ。25年もよりそった夫にそんなこと、いわれてもね。まだ、愛する人と一緒に住みたいなんてことはいわれていないらしいけれど。その友達、離婚したいんだけど。認知症のお舅さんのお世話を長年してきたからそれが一番心配でというのねどうしたものかしねぇよ」


「カミングアウトをすることすら、甘えているのかしらね」。

自分ならどうするだろうか。夫の態度が いかに、という点が重要に思う。それでも家族になったなら、易々と解消できないのではないかしら、と私は考える。

親も子も選べないように、すぐに他人になれるものだろうか。知ってみぬふりはやはり無理なのだろうか。なんだか、ひと事というきにもなれない問題だ。



江國香織の「きらきらひかる」は、よく似たテーマを扱った小説。
<笑子はアル中、睦月はホモで恋人あり。セックスレスの奇妙な夫婦関係から浮かび上る誠実、友情、そして恋愛とは。>

家庭不和は幸せではない。家内平穏あっての自立した人生がある。

このところ、新型コロナウイルス肺炎もあって、ざわついた2020年の睦月だ。



夜ごはんは、Fと牧場直営の精肉店で買った神戸ビーフで簡単すき焼き、ピーナッツ豆腐、菊菜とレタスのサラダなど。






芦屋ウーフ(Uf-fu, Ashiya)の紅茶と湯たんぽと 

2020-02-02 18:56:26 | writer希望を胸に執筆日記

1月10日(金曜日)


朝から夕方まで、家で原稿を書いている。
このところ、2日続けて湯たんぽをしているので、昼間もつかってみたくなった。

鉄瓶でわかした熱湯をそそぐ。薄手のブランケットで、ぐるぐるにして着膨れさせてから、足元へ。
最初80度のお湯が2時間で50度くらいになる。
これまで、机の下には温熱式のスリッパ(電機)だったが、お湯なら子猫1ぴきが自分の足の下へいるみたい。自然なぬくもり。
交感神経から副交感神経にきりかわって、たちまちリラックスしてしまえる。


心地よい湯たんぽのせいか、正月ぼけでエンジンがかからない。
夜、7時くらいになると、そわそわ。おいしい食事をつくり、お酒を選ぶことばかりに気合いが入るこの頃である。


夕ごはんは、コロッケ。緑の葉のサラダとトマト。大根と壬生菜のみそ汁。香物。



1月11日(金曜日)

朝10時より地域の自治会に参加。私、担当の活動報告のあとで、来週、日曜日の餅つき大会の詳細を皆で決めた。


昼すぎ、西宮神社(えべっさん)に参拝。残り福で人が少ないという予想に反して、ものすごい人波だ。
商売繁盛と自分の家の景気を願い境内は、人の欲と希望、願望、夢などで埋め尽くされ、身動きがとれない。


正月4日に、出雲大社さんに初詣をして、今日はえべっさんに参拝。
なんと、福々しい気持ちに満たされた2020年である。こう人が多いと背の低い子供は全く前がみえない。

私の前にいた小学2年生くらいの子供が、「座りこんでもいい、ねーー。座りたい」とお母さんに訴えかけていたのをみて、背が低い私(うん、気持ちわかるよ、そうだね)は激しく同調していた。

神様の前にようやく進み出たら、軽く緊張し、たどたどしいご挨拶とありがとうございますを申したら、退散してしまうのが通常である。

ある本によると、住所や番地をお知らせし、誰であるかをお伝えしたあとで、感謝の言葉を述べるようにするとよいとあった。
また「神様は、あなたの心のちょっとした隙間にはいってこられる」。ぼんやりと隙間をつくることが大事なのだ。自分の願いごとをいわなければ!と一心不乱なではいけないそうだ。


あぁ、風が吹いてきた。うん、いい天気だな! と穏やかな気持ちの中に、神仏はご加護をくださるそうである。
西宮神社、大国主神社、荒魂神社にも。おかめ茶屋で一服。名物は甘酒とゆで卵。あまざけは、麹でつくられるから幸事(こうじ)、卵は、一年がまるく、という意味とか。

参拝のあと、阪神百貨店で食料品を買う。3千円以上ならなら、駐車券がでるので、ほうれん草や白菜やきのこ類など。ちょっと高めの鮭、お揚げや、日本酒、なんやかんやと買う。


芦屋のウーフ「Uf-fu, Ashiya」に立ち寄り、ダージリン2種。アッサム1種を購入。






自分は雰囲気だけじゃなく、性質もリスっぽい。と、我ながら思う。

一体、年末からいくら紅茶を買い占めればいいのか。昨年末からウィーンのホテルザッハでも紅茶を買い、芦屋のムジカさんでデラックスデンブラとヌワラエリア、和紅茶の3種の紅茶を求めたばかり。

チョコレート、紅茶、ワイン(嗜好品)。ショールや心地いいホームウエアなどなど(ぬくそうなもの)。いくらあっても、さらにいいもの、もっと置いておきたい。と欲が吹き出して、またまた買ってしまう。一生懸命、自分の巣穴にほしいものを集めるリスの様相と変わらない。

夕ご飯は、湯葉とうふ、豚肉と椎茸入りゴーヤチャンプル、本鯛のかまぼこ、まぐろの造り、金柑煮、トマトとレタスのサラダ、赤ワイン。

食後のおやつは、出雲の花びら餅。




ディンブラ(紅茶)にいれるミルクには

2020-01-24 22:44:30 | writer希望を胸に執筆日記

1月7日(火曜日)雨

起きて、紅茶を入れるのが習慣だ。
今日は「べにたちわせ」(ムジカ、和紅茶)にした。シュンシュンとお湯がわくのを待つ間、冷蔵庫とガス台のコーナーを背に、武田百合子さんの本を読む。正月時期には毎年のごとく、読みたくなる。


うちの家は、どの部屋もオレンジの電球ばかりだが台所はそうではない。白い灯りの下、さらさらと文字が体にはいってきた。
「べにたちあわせ」(ムジカ)は、秋の香りだ。爽やかな渋みが和菓子によくあう。


冷蔵庫のうーんという音、換気扇のゴーという音をBGM に読んでいると、吉本ばななさんの「キッチン」の冒頭のところを思い出した。

「私がこの世で一番好きな場所は台所だと思う。(中略)。どこへいても何だか寝苦しいので、部屋からどんどん楽な方へと流れていったら、冷蔵庫のわきがいちばんよく眠れることに、ある夜明け気づいた」(キッチン)。


ここも、なかなかおちつく台所だ。私は背が低いので踏み台を置いており、こうやってこの位置に座ってみれば、本も読める。目の高さに六甲山系もみえるのだ。


お昼。昨日のビーフカレーを温めて。ふと香草をいれてみたくなったので、ミルクティー用の紅茶にいれるレモングラスを少し、ネギをたくさん入れる(ネギはオーブンで茶色になるくらいに焼く)。


午後は銀行へ行き、ウィーンのカード払いの金額を振り込んできた。(私にしてはどえらい金額)


帰宅して寒かったのでムジカティーの紅茶、「デラックスディンブラ」をいれる。ミルクにする牛乳は今日は木次牛乳(奥出雲)。









あ、やはりこれだ! ここ数ヶ月、北海道の「町村牛乳」や「蒜山ジャージ牛乳」。気に入った銘柄がなく「よつ葉牛乳」など、ぐるぐるとあれこれ試してみたが。ムジカの「デラックスディンブラ」には、木次牛乳が最も合うと落ち着いた。


夜ごはんは七草粥(五分粥で)、塩さば、おみそ汁。ブロッコリーとりんごのサラダ。栗きんとん。




1月8日(水)

クリスマス時期から今日まで、夕ご飯にあわせたお酒を選ぶのをたのしみにしてきたが、どうやら胃腸がお疲れ。朝から食欲がない。


朝の紅茶のあと、無理をしてお粥と目玉焼き、お味噌汁などを胃にいれて、仕事の原稿をつくる。午後、是枝監督の「真実」をみるために車を出すが、黄色い金柑の木が見えたところで、「今日が燃えないゴミの収集日」と思いだし、家に戻ってきた。年末年始の酎ハイの缶が、台所にうず高く積まれているのだった(相方の晩酌)。


年末年始から「今晩はなにを飲もう」が楽しみで台所にたち、食卓を整えてきたがいよいよ今日で終止符。食後に宇治茶をいれてみた。あぁー。なんて清々しいことよ。千枚漬けにもお味噌汁にもよくあう。体にみにしみ入る緑茶よ。ゆうごはんは、北海道のホッケを焼いて、粕汁をつくる。


夜は12時にはベッドへ入る。Nがあかちゃんの時に使っていた湯たんぽを布団の中にいれて、今これを書いている。軽く本を読み就寝。




2020年 お正月の備忘録

2020-01-18 23:15:36 | writer希望を胸に執筆日記

2020年 1月1日(水) 晴れ

元旦の朝はよい天気。
神棚に御神酒と、餅、塩、水を備える。父の写真前にも御神酒を置く。

湯をわかして、里芋と大根、人参をゆがき、餅を湯にする(ゆでる)。昨晩の出汁に、白味噌の雑煮をつくった。御神酒には、昨年広島の安芸へ取材にいった折に買っていた「獺祭」に。

今日は忙しい。
雑煮のあと、叩きごぼうと紅白なます、を30分でちゃちゃっとこしらえた。大晦日は午後からお節づくりをするはずが、おいしい蕎麦屋で引っかかってしまったため(2時間待ちの)。今日までに間に合わなかったのだ。

まぁ、夫婦ふたりで食べるのだし、と自分に甘く…、正月午前中かけてまぁそこそこ揃ったというわけだ。お煮しめ、栗きんとん、黒豆、車海老のうま煮、叩きごぼう、椎茸のうま煮、田づくり、昆布巻き、車海老のうま煮、金柑の甘露煮、蒲鉾(こちらは盛り付け忘れ)。

参考本はおなじみの別冊暮らしの手帖編集「お正月の手帖」と、ベターホームの「お母さんの味」。










相方はマイペース、テレビをみて、くつろいでいる。
ふと、実家の母はどうしているのだろう、と気になる。そう思えばいてもたってもいられず、(お屠蘇とお節料理で簡単にお昼を食べたあとで)、すぐ2食分ほどタッパーにつめて、実家の母宛にお節料理の宅配に行くことに決めた。(片道2時間半の道のり)

どうしても今年のうちの味を食べてほしかったのだ。山陰の山は青々として清々しい。

「あけましておめでとうございます」。

互いに顔をみて、言葉を交わし、お餅とお正月料理をいただいた。
母は昨晩からお腹をこわしたといって今日はあまり食が進まないらしい。それでも声がきけて笑顔が見られてホッとした。



2020年 1月2日(木) 晴れ

主人は、家でテレビをみて過ごしている。私は一日、ごはん仕事。午後から原稿を少し書く。
27日から年末年始モードにはいって今日でなんと1週間。 
年賀状、掃除、お節づくり、お餅を焼いて、初詣…とハレの日は、愉しく愉しく続く。が、平常運転が恋しくなってきた。人にまみれて、読んだり書いたりはお風呂の中くらい。
自分の中から言葉がわきだしてこない。

夕方。明日からの山口行きにあわせて、お年賀のお持たせを買いに阪急百貨店へ。
自宅用にザッハトルテ(本場と比べてみよう)と相方のモンブランなどスイーツを買う。






夜は、お節料理を主にローストビーフやお造りを加え、サラダも2種加えて、少し、華やかに。

2時間くらい喋りながらワイン(イタリアのランブルスコ)を家飲み。微炭酸で、フルーティ! おいしい。1時間ほどで1本あける。



2020年 1月3日(金) 晴れ

7時に起床。スーツケースに入れる荷物を確認。

8時に山口にむけて出発。中国自動車道から山陽自走車道にはいる。途中、西条サービスエリアで休憩。岡山のきびだんごから、鞆の浦の、珍味海産物、広島の紅葉饅頭、神戸や篠山の品までたくさんあって、珍しく、15分のトイレ休憩が30分近くそこにいた。

1時。下松インターをおりて主人の実家。相方は3人兄妹だが、3家族が集合する。
シャンパンで乾杯し、ケーキをいただいた。

お母様とお会いするのは約3年ぶり。ほとんどの日をディーサービスやショートステーにいかれているとのことで体調を心配したが、頬がふっくらされて、お元気そう。そう伝えると、
「よけい食べるし、家族で一番しゃべりよるよ。することがないと、なんか口にいれとるから、やせる暇がないの」
などと、ジョークも連発される。

Nが小さかった頃、幼稚園や小学低学年だったいとこが、高校のおねえちゃんとイケメン風の社会人になっている。たくさん、おしゃべりしてくれるいい子たち。

「年末にね、徳山から新幹線で福岡へ行って、ほんで飛行機で韓国へ行ったの。国内旅行より近いの。飛行機に乗ってるのは30分よ」 (相方の妹)
「それならLCC?」(私)
「うん」(いとこの兄)
「何が飛んでいるの? いいわねーー。何を食べたの?韓国で」(私)
「プルコギ、焼き肉がおいしい」
「LCCってなに?」(いとこの妹)
「あ、僕もわからんくてスルーしてた」(いとこの兄)
「え、格安航空だよ。ピーチとかジェットスターとか」
「なんのことか、わからん」(いとこの兄)
「笑!」(私)

きょうだいでこちらをみている。過剰な自信と幼さが見え隠れして、かわいい。

いとこの妹のリクエストで、海外搭乗中のNにメール。ホテルへ着いたばかりだそうで、LINE電話をした。

家族10人。1人5分くらい話して、次にまわす。部屋の空気が一気に盛り上がった。
83歳の相方のお母様もうれしそう「うん、うん。元気だよ。100歳まで生きるかもしれん」と大声で携帯にむかってNに。電話を切ったあとで、ちょっと照れくさそうに「ちょっと無理だろうけどね」とつぶやき、笑っておられた。

相方のお兄さんは、威張らないし、家族みんなに均等に気を遣われていて、いつお会いしても変わらない。客人と家族をつなぐいいクッションの役割をされていて、すばらしい人だ。

家の長男も3年前にお嫁さんをもらい、6カ月になったばかりの赤ちゃんを連れて帰省されていた。赤ちゃんはみんなのヒーローだ。部屋の中心にガーゼの布団をしいてそこで寝かされている。全方位からの興味と笑顔のビームだ! それぞれのやり方で幸せな顔であやすから、場が和む。かわいい王子は両手を水平にしてみせ、ぶんぶんとお腹で飛ぶ姿を長いことみせてくれていた。

7時頃。長男家族と妹家族が帰る。私たちもしばらくして、出発。
今回はリーガロイヤルホテル広島へ。









広島市内はちん電(路面電車)が走っていて、一気に高揚した。私の思うところ、ちん電が走る街はよい街、ということになっている。広島に、松山、鹿児島、長崎、熊本、札幌、大阪(帝塚山周辺)…。それぞれによい街だった。そういえば、オーストリアのウィーンもリンクに沿ってちん電が走っていた。

 



ホテルはまだまだお正月の空気。






ロビーの雰囲気もゆったりとして華やか、厳かでもある。部屋に荷物を落ち着けてから、私の希望でちん電に乗車し、八丁堀まで行く。

お好み焼きの「ふみちゃん 流川店」。10時過ぎに入店(15分外で待つ)。








カウンター席に通された。まずはビール!サイドメニューの「牛すじ煮込み」と「キムチ」をつまみながら、目の前で、広島焼きが豪快に焼き上げられていくさまをニコニコして眺める。職人さんが、ずらりと並び、コテを返すさまの艶やかなこと。肉と脂のやける香ばしい香り!














ふみちゃんスペシャルに、うどん玉とちゃんぽん玉をオーダー!




もっちゃり、どろどろの広島焼きではなく、さっぱりとしておいしい。

具には、きゃべつのほかに、もやし、いか、豚肉、たこなどなど。隠し味には魚粉。
ソースはやや甘辛い。こくがあるのに、後味はさっぱりしてとても新鮮だった。ここのところ「みっちゃん」一辺倒だったが、新規開拓できてよかった。

ピリ辛キムチと、広島焼き。牛すじ煮込み。ビールをぐいぐいと飲み、お腹もちょうどよい、いい夜だった。

帰り際、外で待っていると、「お姉さん、どこか行く?」と3人連れの若めのサラリーマンが私にむかって声をかける。ふふふん! こちらが上機嫌で笑っていたからだろう。ま、いいかお正月だし! 心がほかほかしたまま、夜の広島を15分以上闊歩して帰った。







年末年始の備忘録

2020-01-08 18:36:00 | writer希望を胸に執筆日記


昨日、深夜1時半にゴミ捨てにいって、ふと空を仰いだら白い月が美しく、とてつもなく静かな夜がそこにあった。そこでふと思ったのは、
「ことしは直感に従っていきる」と。

ピンとくるものに耳を澄まし、感じ、心を傾けて。
もう少しだけ、自分を信じてみてもいいんじゃないかなと、そう感じました。
直感とは、理論や解釈ではなく、自分の〝本能〟 をちゃんと捉えることです。

周囲の自然や、モノに宿っている神様、道標(道案内)にも気づいて生きる、
そんな余裕をもちたいと、その晩は思いました。

最近は、さっきひらめた思いすら電話をとったり、なにかを調べている最中に、忘れてしまうことがよくあります。
それで、「ウィーン探訪記」の続きを書く前に、
「#2020年 年末年始の健忘録」を書いてみました。
年末はひたすら何かをつくっては食べ、家族で家飲み、の日々。年始は山陰に初詣!



12月26日(木) 晴れ

25日で仕事納め。今年最後の原稿は宣伝会議さんだった。2020年からスタートする新連載だそうで、テープ起こし100分は骨身にこたえ、挫折しそうになったが無事納品できてホッとした。

11月からわが家へ訪れていた母も、23日には家へと送り届けた。
トータル1カ月以上一緒に暮らす。これが来年以降の日常となるか、非日常かは、わからない。


夕ごはんは、子羊肉のソティーとコーンクリームスープ、アボガドとりんごのサラダ(ゆずドレッシングをつくる)

ご飯のあとで、年賀のcopyを考える。ほんの20分。一筆みたいに、スルスルッできあがった。

それでもビジュアル探しが大変で、何千枚もあるウィーンの写真を何往復もみて。候補1から2、3、、、決定までのファイルが5つできた。

これでは〝マトリョーシカ人形(ロシアの人形)〟ではないか。入れ子状態。全く決まらない。これぞ、というのがないのだと軽い落胆。1時まで写真探しをする。
1時半。お風呂に入り2時に就寝。




12月27日(金) 晴れ

午後から、デザイナーさんと年賀状のやりとり。
昨日、仕事の息抜きにレイアウトを組んで欲しいとお願いしてみたら、年末は忙しくて無理とのこと。それから1時間後、「置くだけみたいに簡単なものなら…」と電話をくれたのだ。


昨日選んだ写真を送ると、2時間後に仕上げて、送ってくれた。
しかし、何かおかしい。釈然としない。それで、copyをブラッシュアップしてみる。

すると「せっかくのcopy。観光写真なんて勿体ない。もっと普通の人の暮らしが垣間見える、例えば市場で野菜などを愉しそうに選んでいる写真とか、カフェで人がくつろぐ風景とかcopyにあう写真を選び直してみて。1時間だけ待つから」という。

彼女も忙しい最中だろうに、申し訳ない気持ちと、なるほど!が交錯し、共に作り上げる喜びがあふれて、イチから写真を選び直して超特急の10分で9枚を選ぶ。「もう一息、惜しい」と話し合う。

結局、最初に出していた写真に逆戻りし、フィニッシュだ。
写真をとる時は、何をみせるかストーリーを考えてから撮影しましょう!が今後の自分の教訓になった。

夕ごはんは、子羊肉のソテー。グリーンサラダ。ブロッコリーとニンニク炒め。カブと揚げの味噌汁。果物。




12月28日(土)晴れ

午前は、年賀状の宛名印刷。
「すごい片付け」の本を傍らにリビングの掃除。

片付けられないモノ(場所)の裏側に、才能が隠されている。


片付けができない人は、そこに愛着をもちすぎるあまり、片(カタ)をつけたくないという隠れた気持ちがあるから。

本気で自分を変えたいなら、
「時間の使い方を変える」「住む場所を変える」「向き合う人を変える」
という箇所を読み、深いなぁと感嘆し、ダイニングテーブルの足を、キュッキュッと
磨いた。


夕方買物に行き、年賀状を投函。

掃除で疲労したので夜ごはんは、薩摩豚のしゃぶしゃぶとさつま焼酎(白露酒造 白露黒麹)で。向田邦子が編集者にふるまったという「常夜鍋」(レシピは☆)で。


鹿児島の黒豚と焼酎、同郷の味だ。昨年、一人しゃぶしゃぶをした「かごんま」の夜を回想し、愉しくてたまらない。ずっと上機嫌でにやけて食べた。来年もこうして笑っていよう。

12時過ぎ、友達のSからメール。元気そうで、嬉しい。日本酒の写真を送ってくれた。ラベルcopyはSが苦労して書いたそうである。

☆「常夜鍋」
豚肉(新聞が読めるくらい薄くきった豚しゃぶ肉) ほうれん草1把 しょうが少々 にんにく 日本酒 レモン

作り方
・土鍋に、日本酒と水の3割ほどいれて、にんにく1かけ、倍量のしょうがを入れて、火にかける。
・しょう油にレモン汁を絞りいれた、たれを準備する。(濃ければ、鍋のだしをたす)
・沸騰したら弱火にして、豚肉をいれ、ささっと、たれをつけ食べ、 豚肉を食べきったら、ほうれん草を入れ、ささっと、たれをつけ食べる。繰り返す。



12月29日(日)晴れ

母と夫の年賀状の宛名印刷をしながら、掃除をする。
6時に主人と母の年賀状を投函。
昨日買い忘れた食材を買うために、イカリスーパーへ行くとおいしそうなアンコウがある。身がツヤツヤで新鮮、大ぶり。

夜はアンコウ鍋。年末年始の慌ただしさに、鍋は救世主。
シメはうどんにしてみた。ワインを開封したかったが、アンコウにあわせ日本酒(香住鶴)を飲む。




12月30日(月)

一日中、掃除の日。
うちには、積ん読(つんどく)本がリビングのソファ前に鎮座している。
読みかけの本、読みたい本、面白かったので再読しようと思う本の類いだ。一人掛けソファのサイドテーブルにも、「積ん読」が高々とある。

いよいよ片付けないわけにはいかない。
それで、キッチンのカウンター下にある書類入れ(家族関係の資料など)を整理して、本のスペースを無理やり確保した。


この書庫は、主人が設計して、こしらえてくれたカンター下のスペースだ。
右サイドには雑誌関係。中央は文庫2段とハードカバー1段。左サイドにある書類とミュージックビデオ、家族のビデオなど。

左サイドを全て片付けて。文庫2段とハードカバー1段にたっぷり収納した。

このほか、廊下のクローゼット。洋室に本棚が2本。仕事部屋に古雑誌が少しある。

本を半分にして、よい本棚を1本購入したい。



夕ごはんは、今晩のお手軽にカレーライスとサラダ、酢のもの。食後のチーズで。スパークリングワインを1本あける。




12月31日(火)晴れ

午前は掃除。午後はお節作り。の予定だったが、「流しの下に棚をこしらえたいから日用品を買いにいく」と主人。本当は快く送り出したいところを、昨日・今日とよく動いてくれているので付き合う気になった。

用事を終えてすぐ、お塩と砂糖が十分でないことに気付き、近くのスーパーを旋回すると、以前取材したそば屋さん「中川」の前に4・5名の行列がみえた。


年越しそばは購入しているし、海老もある。
しかれど車の中から店をみあげると、なにやらざわっとした。おいしそうな和風出汁の香りが喉のおくにこみあげてきた。結果、近くのパーキングエリアに車を止めて、のぞいてみることに。

4・5人待ちと思いきや、18席ほど待っておられる。こうなると急に冷えてきたと思え、風が暖簾を揺らす。
優雅に本などを読み、待っている方々が誰も上等な人に思えてくる。
「お蕎麦やから回転もはやいよ」と相方を励まし、待つこと、2時間。脱落しよう!と何度か思うも、せっかくパーキングに車を止めて、何もお腹に入れずに帰るのは寂しい…とばかりに粘って待った。この性格、食いしん坊を呪う。それに寒かった。
 

ただおいしかった! すごくおいしかった!
鴨南蛮と天ぷら付き。

大半の方々が冷酒やビール、蕎麦(盛りそば)、一品料理と年末の年越しそばを愉しんでいらした。がここは我慢。(これからお節づくりが待っている)

天ぷらは胡麻油で、これ以上ないほどカラッと上がり、野菜もおいしい。
江戸仕立ての出汁はやや甘めで濃く、香りがよかった。最高だった。

パーキングを出る時には、2時間20分を経過。外は真っ暗だ。


2時からお節作りが6時半にずれこんで、11時半近くまでずっとガスレンジのそばに張り付いて、テレビをチラ見しながら、料理をつくる。ひたすら煮炊き…、黒豆が2回泡をく。

12時、近所の氏神様に除夜の鐘をつきに。お風呂へ入って2時半に就寝。
















新年のごあいさつ

2020-01-02 17:18:30 | writer希望を胸に執筆日記






あけましておめでとうございます。


昨年は、鹿児島一人旅にはじまり、新芽の季節には青森・奥入瀬渓流に。

冬はウィーンのカフェ文化を訪ね、
ワクワクする「そと」の時間を冒険してきました。

家族とのじかん、執筆との対峙や朝夜の入浴読書、瞑想など。

「うち」の暮らしも、できるだけ上機嫌で。

日々ありがとう、の気持ちを胸に、

外のじかん、家のじかんも
愉しんで駆け抜けていきたいと想っています。

今年もよろしくお願いします。







美しい野生のキツネをみたという話。

2019-10-02 22:17:04 | writer希望を胸に執筆日記




2019年10月2日(水曜日)



 ふと、2017年の覚え書きのようなメモ帖をみつけた。
文庫本サイズで、美しい紙の手触りに惹かれて買ったのを思い出し、ぺらぺらとめくってみる。冒頭のページは2017年の「良いこと」、右側には「よくないこと」というタイトルが書かれている。気付いたのは、「良いこと」はそれなりにうれしそうだが、短くて内容が薄い。
 対して、「よくないこと」は、ひそう感漂う文章なうえ、こと細かく、よくなさ加減が綴られており、文章を目で追ううちに、当時の腹立たしさや切なさがこみあげてきた。反省の意もこめてよく熟考している。


 例えば、1月16日には、「お風呂に浸かって、全身に蕁麻疹が出ていると発見した。翌日になっても全くひかない。皮膚科でステロイドを処方してもらうが、ステロイドはよくないということを取材で知っているため、使う気になれない。全身がかゆい。そこで「石垣の塩」で塩浴してみることにする。塩水をシュッシュッとスプレーし、体の内から殺菌作用をするため「塩水」も飲む。塩の湯にも浸かる…」
 と徹底的に試していて、1月20日には「完治」とある。


 ほか、交通違反で罰金をとられたり、Nに作家もののティーポットの持ち手を割られたり。新年会の席で日本酒をくいくい飲み、大先輩のデザイナーさんの家でぶっ倒れて1時間ばかり気を失ったことも綴られていた。最近こそ、平々凡々で、そんな大失敗はないのでは…と頭をかしげながら読んでいたが。とんでもなかった。


 そう昨日は、iPhoneのバージョンアップをする際に、ソフトが壊れて恐怖の「リンゴループ」(モノトーンの画面にグレーのアップルマークが出たまま進まない状態)からどうしても抜け出せず。地元の図書館で資料を調達にいき、戻ってきてもまだ「リンゴループ」状態。
アップルサポートセンターの方に9時半までお世話になってサポートしていただくも、全く恢復の余地なし。結果的に初期化をすることになってしまった。

 夫が遅いので食事もつくらず、食べもせず。結局。夜11時半。無事、初期化に成功してiPhoneは復活した。
が、ほんのさっきまでcloud上の写真が2017年で止まったままで1日半も戻らなくて、不安な状態で過ごしていた。…全て、恢復したときの喜びといったらない。安心の力をまざまざと知る。などと、ここまで書いて。やはり不安な状況については胸の中にしまって人には喋らないかわりに切々と綴る癖があるようだ。




 しかし、そのメモを見渡してみて、思ったことには手書きの手帖は面白いなーということ。字が汚いなぁーとか、寝ながら書いたんだろうなぁーとかパラパラとめくるだけで、色々面白いことに気づいた。
それで、気をよくし、この日は三省堂の国語辞書を本棚から取り出してきて、ことあるごとに、わからない漢字はスマートフォンではなく、辞書をくった。そして小さなことをメモしてみる。


 と、前置きばかりが長くなったが、きょうは面白いものをみてしまった。
郵便局に行く途中、野生のキツネが道路の脇の草陰からちょこんとこちらをみていた。








 最初は、犬かと思ったが顔が尖っているし、目がキラッと金色に光っていたのですぐにキツネ!とわかる。
へー!初めてかもしれない。動物園以外で野生のキツネに出会ったことは。じーっとみる私とばっちり目があったが、相手は逃げもせず目をそらさないので、遠慮がちにごそごそと鞄からスマートフォンをとりだしてすばやく撮影。動くと逃げると思ったが全く逃げる様子はなし。あまり見合っても仕方ないので、2歩、3本と歩き出したら、草陰の深みにすすっとーと隠れて。ふたたび
こちらをみていた。(誰だ、おまえと観察する感じで)





 金色の目と、尖った顔。美しい毛並みが印象的。ディズニー映画『ズートピア』のキツネの詐欺師ニックを思い出した。それから、ごんぎつねの絵本も。

(キツネって、やっぱ!カッコイイ)



 無事に郵便局での用事を終わらせて、ドキドキしながらそこを歩いていると、そのキツネ。
家のそばの車道(車の少ない道路)をうれしそうに、ぴょんぴょんと飛び跳ねていた。わーっ!跳んでる!私が止まると、キツネのほうでもピクンと止まり、そのままこちらにやってきて、目前で止まり、じっとこちらをみている。えっ?

  (あ!もしかして、食料を要求してはる…?)







 再びパチリと撮影。歩き出すと、草むらに入ってしまった。不思議なざわざわとした、むこうから物語が近づいてきた。高揚感、、。
 耳が三角型にピンとたち上がり、鼻から首まわり、しっぽの先だけが、ふっさふさの真っ白の毛。光る金色の目をした美しいキツネだった。





横浜でプリンアラモードはいかが

2019-09-21 00:31:29 | writer希望を胸に執筆日記

8月23日(金)晴

翌日もよく晴れた。
Nは、早朝6時にはホテルを出たので、
私は一人で、バスローブのまま部屋の中をうろうろして、正面の家具の中にしまい込まれたテレビをつけたり、新聞をみたり。
それから「翼の王国」(ANA機内誌)を持って、
白の大理石調のバスタブで読む。
そうやって1時間近く、一人の休日を楽しんだ。


取材の予定は、5時。丸の内線の本郷3丁目でディレクターと待ちあわせ。

それまで、ホテルニューグランドの西洋建築(建築家は渡辺仁氏)をウォッチングした。






アールデコの階段や壁の色。ぽってりとした白磁の陶器のような白、クリーム地、鶯色の緑や。それにこの照明。明治期の装飾は、これみよがしでなく、控えめな品があっていい。
昨日のロビーで催されたナイトラウンジも素晴らしかったが、私たちの席の真正面に据えられた照明の中央は、ナント弁財天の彫刻が施されていたそうだ。






さて。今回の宿泊の一つの楽しみだった、プリンアラモードを求めて、1階の「ザ・カフェ」へ。

プリンアラモードを食べてみるために、
宿泊する客というのも、そう多くはないだろう。

これが、ホテルニューグランドの名物プリンアラモード。






アメリカ人将校夫人たちを喜ばせたいと、当時のパティシエが考案したメニューだそうで、NHK「グレーテルのかまど」という番組で紹介されていた。


ボード型のガラスの器の上には、ゆかしきプリン、バニラアイス、キウイが3切れ、オレンジ、乾燥プルーン、生クリーム、りんご、ミントを添えた生クリーム。

あぁ、しっかり甘く。素材本位の味。年配者から子どもまでに愛される味というもの。プリン、アイスクリームもさることながら、特にプルーンの煮加減がよくて感心した。

お昼前とあって、周囲ではホテル発祥の伝統料理、ドリアやナポリタンを食べている。

通路をはさんで隣やその前後には、おじさん、おばさんが楽しそうにこの夏の思い出や近日の出来事などをおしゃべりしている。
あとは家族連れ、パンケーキを食べているカップル2組。外は、麦わら帽子をかぶっている中年夫婦が、きれいな沈黙を張り付けて元町の方角にむかって歩いていった。


ポメラをパタンと閉じるや
元町へ、ふと行ってみたくなり、スーツケースをホテルに預けて、とことこ出ていく。






昔とさほど変わらないようだが、店舗がどうも面白くない。数件の店をひやかして、昨日歩いた元町中華街まで戻ってきた。

アッという間の90分。そろそろ仕事である。
ディレクターと連絡を取り合い、東京駅へ。待ちあわせ場所を変更し、丸の内の南側、東京ステーションホテルのロビーにしてもらった。
2階の「虎屋茶寮」で打ち合わせ。仕事モードへ切り替えだ。





本郷3丁目の某医院にて、女性医師に話を聞く。この先生にお会いするのは今回で2度め。「これから、パーティーがあるのでタクシーの中で続きは話すわね」といわれ、写真撮影を終えて、タクシーに私とディレクター氏とともに乗り込む。

赤坂の「永楽倶楽部」にて、後半取材。
女性医師以外にも3人のインタビューを終える。

「永楽倶楽部では、これを絶対に飲まなくてわね。三島由紀夫も愛したというドライマティーニなのよ」と先生が何度もおっしゃるので、ありがたくごちそうになる。パーティーの料理もぜひに、と勧められたが、遠慮して退散。
夜8時半の新幹線で帰阪した。

明日は地域のサマーフェスティバル。この夏は、役員にあたっているので朝から夜まで出ずっぱりの予定。





ホテルニューグランドで、辛口シャンパン(夏日記)

2019-09-19 00:25:40 | writer希望を胸に執筆日記


8月21日(水)晴

昨日取材のテープおこしを済ませる。

リビングのソファーから動かないNは、友人に贈る結婚式のDVDの最終形を完成させている模様。
7月に、大学時代の友人と思い出の場所で撮影会を実施したそうで、そこへ台詞を吹き込み、「下材料は作り込んできた」という。あとはテロップと音楽、効果音を重ねて、過去4年分の写真から選んで、間をつなげば出来上がり。自分で何度もチェックするが、こちらにもそのたびに見せてくれて感想を求められた。


6時になったので、車を出して夕食の買い出しへ行く。豪勢にシャンパンを買い、
さらには、いちじく、りんご、プルーンなど翌朝用の果物も買う。


夕食は、子羊のローストをメーンに、私がオニオンスープをつくり、Nにサラダを無理やりお願いした。3人で食卓を囲む、この夏、最後の夜。

夕食後は、ウィーンのザッハトルテと、ウィンナーコーヒーで。




8月22日(木曜日)

機上から、夏の空を眺めていた。
明るい陽に照らされた、すっきりとさわやかな白い雲。水彩の絵の具ですっと横にひいたような、あざやかな色。そう海のように鮮やかだから、これほどおだやかで、美しいのだ。

幾重にも、横にひろがる入道雲。
進んでも、進んでも、広い、広い空。
この夏空を、機上からみるという贅沢をしてみたくて、明日からの東京取材を繰り上げて、Nが乗る飛行機に便乗させてもらったのだ。


出入り口の横。真向かいには、短いスカートの裾を気にしながら、(35歳くらいの)客室乗務員がうつむきながら機内連絡用の受話器を耳にあて、何度も上から下に目を走らせ、顧客リストをチェックしている。

私の両隣は男性。ややすれば、ミニスカートからするっと長くのびた黒ストッキングの足が女性でも気になる距離だが。さすがは紳士な男性方、さっきからずっと週刊誌に目を落としたまま。私もならって、「翼の王国」(ANAの機内誌)を読んで過ごす。



羽田空港に到着、約1ヶ月ぶり。

千疋屋で、休憩。名物の「マンゴープリン」をカウンターに座って食べる。

横浜へ移動。ホテルニューグランドで急遽、一泊することにした。NHKの「グレーテルのかまど」で伝統のプリンアラモードを再現していて食べてみたかったのだ。明日、食べよう!


ホテル部屋まで荷物を運んでくれた若いスタッフに。
「中華街で点心がおいしい店はどこですか」と聞く。
それが「横浜中華街の老舗「萬珍樓 點心舗」。

横浜中華街のメーン通りから一本はいった広東道沿い。台湾のレストラランに近い東洋風の飾り付け。そこにサラリーマンのグループが1組と、家族連れが2組。それほど混み合ってはいかなった。

小籠包や揚げ春巻き、餃子、エビのカシューナッツ炒めなどをオーダーし、チンタオビールで乾杯した。










30分ごとにピアノの生演奏がある。


この日、一番といえば、「冷麺」だった。麺の上に、薄くレタスが敷かれ、ハム、キュウリ、細切り卵、冬瓜、香菜がのっている。
酢の効いた濃いゴマダレが、太めの麺によくあい、旅の疲れの胃袋にも入るやさしい味なのだった。








小雨が降りそうなほど湿気が多い夏の宵。
山下公園から港のみえる景色を散策。潮の匂いを吸い込みながら歩く、気持ちのいいこと。おまけにほろ酔いだ。
赤煉瓦倉庫のすぐ近くまで歩いて、Uターン。
Nと恋人ごっこをして遊んだ。

横浜の港は、神戸の海と近いけれどやはり違う。
旅先でみるアジアの海と似ている。





さて、ホテルニューグランド。ここは、山下公園の真向かいに建つ1927年創業のクラシックホテルだ。













ビールがほどよくまわり、気持ちがほぐれているし、ホテルの部屋には戻らず、昔の迎賓館時代を彷彿させる本館2階ロビーにまわり、夏恒例のイベント「Twilight Lounge -THE LOBBY」へ直行する。






私は辛口のシャンパン。Nはきれいな色のノンアルコールカクテル。


古い洋館の中で、冴えた音楽。薄暗い照明。洋酒とグラスの煌めきとくれば、ブルースのような大人の夜が待っている。

奥では、DJが音楽をセレクト。やわらかい音でジャズの懐かしのナンバーなどが洋館の室内からロビーから、サラウンドな響き方で溶け込んでいった。例えば、ルピータパロメーラのヴェレダトロピカル…等々。聞き惚れる。しっとりと飲む人を見るのもたのし。

同世代の友人だったらもっと楽しかったに違いない。



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京都の取材を終え、香りのパンチが絶妙な「ブランカ」(夏日記つづき)

2019-09-14 00:30:29 | writer希望を胸に執筆日記


8月20日(火)晴 (後追い日記)

午前中、昨日の原稿をチェック。
午後から、京都駅のグランビアホテルで親子をテーマにした取材と撮影。

京都・西京極のほど近く。「父方のおじいちゃんが建ててくれはった」という築80年の家。

小さな改修を何度か経て、玄関先を車のガレージに。 片方が土間で貫かれた風と人の通り道〝ハシリ〟は母がお嫁に来た頃は井戸や竈、古い戸棚が添えられていたが、今は土間をあげて現代風のキッチンにされているという。

「苔のむす中庭、裏には樫の木がありました。表の格子戸越しには秋になるとそれは大きな真っ黄色のイチョウの木が素敵に見渡せた。おばあちゃんと父母、私と弟の5人で仲睦まじく暮らしていた頃が懐かしいです」と娘の久代さん。

50代の娘と75才の母の、話は続く。耳から、その言葉運びから。京らしいふんわりとした温かみがせり上がってきた。とてもよい時間だった。

私はその昔、(30代後半から40代半ば)
外国籍×日本人の夫婦の暮らしぶりを紹介する巻頭特集を取材・執筆してきたのだが。こういった「人」と「暮らし」、「そこに流れる特別な時間の流れ」みたいなものを感じとって書くことが、とても好きなんだなと気づいた。

当時、代理店の人は「取材記事というよりはまるでエッセイを読んでいる感じがしています。よいんでしょうか」とぽつりといったことがあった。私は、それは違う。これは完全に取材記事である、と興奮気味に反論した。
はて、今読めば、断じてそうだといいきれるんだろうか。

それでも、最旬のニュースをキャッチして、新聞記事風に、噛み砕いて自分なりの視点で伝える記事より、もしかしたら、そこにただ存在するものや人の息遣いを淡々と書くほうがもしかしたら、うまくいくのかもしれない。
〝説明するのではなく、みえない時間や空間。そこにフォーカスしつつ、匂いや移ろいを絵のように書いてみたい〟


さて取材終了。京都駅、伊勢丹の大階段のところで撮影中、Nがひょっこりと現れた。ディレクター氏とNが挨拶をかわし、そのまま四条烏丸駅まで。

京都の抹茶が食べたい、という希望を受け入れて、「茶寮翠泉高辻本店」。






Nは「翠泉パフェ」、わたしは「抹茶クリームわらび餅」を食べる。
品のある濃い抹茶の風味。天然のわらびのぬっとした味わい、しっとり感。


夜は、前から一度いってみたかった京都の「ブランカ」へ。
寺町通りから、京都市役所9番出口から徒歩3分。
犬矢来や格子戸を構えた感じのいい古民家だ。
店内はL字型カウンターと4人がけのテーブルがひとつ。

「よいしょ」とカウンターのハイチェアに腰掛けると、今日のおすすめ食材、ゴーヤや泉州なす、オクラ、とうもろこし、手作り胡麻豆腐などが見わたせて食欲をそそる。店主の器用闊達な手さばきも、気持ちいい。これは期待できるとすぐに分かる。

夏らしくすだちサワーと迷ったが「黒糖焼酎」を注文した。


●はもの塩レモン焼き
夏のはもを塩焼してレモンを絞ったはものあぶり焼き。




●いちじくと牛たたきとパクチーとヤム
さっぱりとした牛たたきに香草のパンチがきいて、混ぜるごとに酸っぱさ、甘み、さわやか、ナッツ感などが味わえる「アジアン風サラダ」。




●肝焼き
朝挽きの新鮮な鶏肝をおそらく炭火で焼いた、最高の肝。シナモンの香りが鼻孔をくすぐる。





●できたてゴマ豆腐、
むっちりとしたなめらか。白ゴマのやさしい味わい。





●しらすと香菜の卵焼き
ほのかな磯の風味。しらすの甘みと塩みがほどよい。




●シメの播麺
胡麻ダレ、ごま油にハーブが良い仕事をしていて、お腹いっぱいでもスルスルっと入る豪快な麺。




またひとつ、京都に贔屓の店が生まれた。








「ザッハトルテ」にウィーンの珈琲で(夏日記つづき)

2019-09-13 23:55:56 | writer希望を胸に執筆日記

8月19日(月)晴  <後追い夏日記>

月曜なのに、Nがのんきな顔をして、家にいるのが不思議な感覚である。

少しでも仕事を進めたくて、午前中のはやい時間から起き出して、たまっていた仕事をしている。

昼過ぎて起きてきたNは、これまた家にいた時と同じように朝シャワーの後、携帯ばかりをさわって過ごす。
なにひとつ大学時代と変わらぬNのいる空気に、3日で慣れてしまった。

私が原稿を書いている間中、9月に結婚する大学の友人に贈る、余興のDVDを熱心につくっていた。
客室乗務員の女子には似合わない職人並みの凝りようで、一度仕上げたものを何度も考察して、「自分ばっか中央にいる。これじゃあだめ」と、幾度かやり替えてはクオリティアップを図っていた。


夕方、散歩がてら近隣のスーパーに買い物。「ヤクルトとミルミル(同じメーカーの乳製品)をダブルで摂取すると、すごくよいお通じがあるのよ。快調は大事」とNが何度もいうので、ヤクルト、ミルミルを1週間✖️2人分購入した。

夜ごはんは、
モロヘイヤとパクチー、空心菜などの夏野菜をにんにくと塩で炒めしたもの、
鮎の塩焼き、栗かぼちゃの煮付け、お味噌汁など。

レモン入りのさわやかなビール(Nのお土産のウィーン産)。
ホップは軽め、甘さはやや控えめ。日本のチューハイのような薬っぽい甘味はなくて、おいしい。
とても気に入った。




デザートには、ウィーンからのおみやげ。「ホテルザッハ」のザッハトルテに、ウィーンのコーヒーを。











このトルテ、フォークをつき刺すも、なかなか通らないほど固い溶かしチョコレートの糖衣でコーティングされており、中から洋酒のようなアンズのジャムが溢れ出してくる。

日本の乳化剤や生クリーム、バタークリームにみられる乳(ちち)っぽい味は微塵もない。
ビター感が際立つ大人のチョコレート菓子であった。

メランジェを真似て、自家製ウィーンコーヒーをいれて。
大山の木次牛乳を混ぜると、まったりと納豆の上澄みを焙煎に混ぜたような香しいとろみに。ベトナムコーヒーと少し似ている。







夏日記のつづき 海水浴編(第3週目〜8月17・18日)

2019-09-11 23:50:54 | writer希望を胸に執筆日記




8月17日(土)晴

今日から、Nが帰省してくるので、朝からリビングや子供部屋に掃除機をかけて、めったにしない水拭きなどを。そして大急ぎでごはんをつくる。

昨晩「イカリスーパー」から買った「金目鯛の白味噌漬け」をメーン食材にして、京風の白味噌漬け金目鯛の焼き物、ゴーヤの酢の物、大葉とトマトのごま風味サラダ、もずく酢、キャベツの味噌汁。

Nは、ほっぺたがふっくらとした。よく笑うので、まぁ体調は悪くないのだろう。

午後から、歯科の予約をしていたので、家族そろって行き(Nは近くのカフェでお茶)、そこから郊外型の大型スーパー(イオン)に。ハワイアンのパンケーキ屋さんでお茶して、ペットショップをのぞいた。


そうしてこの、愛くるしい、『妖精』のようなキャットと出会ってしまったのだ。








まだ生まれて3カ月足らずであるのに、瞳には穏やかな品格が漂っていた。ブルーグレーの中に微かな黄味かかっている。品種は「ノルウェージャンフォレストキャット」。
Nと私は、ガラスに吸い寄せられるように、すばらしくバランスのとれた華麗なキャットを放心状態でみつめる。
(永遠にみていたいと思うほど)


すると、薄ピンク色の白衣をきた女性店員が、どうぞと、ばかりに私たちの前に、キャット!を抱きかかえてきて、
すっぽりと私の胸の前に。
生後3カ月のあかちゃん猫をそっと抱いてきては手渡してくれたである。




ふわーーー。かわいいこと。ミルクたっぷりの紅茶の色。
頭から顔、尻尾の先まで。ほわほわの産毛をなでると、信じられないくらい可愛くなって愛着がいっそうましてくる。

途中で、Nに呼ばれて登場した夫も(散髪していたらしい)、
しばらく硬直するも。うれしそうな、そして、やはり、赤子をみるような微笑みで、耳から首のあたりを強く、激しくなでていた。そして、このキャット!なかなかの甘え上手。

パパの顔に向かって、たかたかっーーっと駆け上がっていっては髭を甘噛みし、猛アピール。
こいつは金をにぎっている奴だと、わかるのかしら。動物的勘で一瞬のうちにそれらを嗅ぎわけ、絶大に甘えていらっしゃるのだった。 買物の帰りに、再び、ペットショップをのぞくと。

キャットさま、なでられ、持ち上げられ、振り回されて疲れたのか、スヤスヤ眠っていらっしゃった。

あぁ、一緒に暮らしてみたい。ケムジャラの妖精と。
出生地が岡山というのも、我らは大いに気に入った。





8月18日(日)晴

明石海峡大橋をわたって、淡路島に。
海の凪はおだやか。鏡のように広く大きな藍色の海がおおらかだ。

お昼を我が家で食べてから、ふらりと岩屋海水浴場にやってきた。











お盆を過ぎたというのに、波はゆったりゆっくり。浅瀬では白砂が透けてみえるほどの透明度だ。

近くには近隣の大学生だろうか、女4人、男が3人くらいでキャーキャーとビーチボールをしている。

また黄色い灯台のみえる岩場の近くでは、灯に焼けた男性のインストラクターの指導に従って、海に浮かべたサーフィンボードの上でヨガのポーズをする人。4人。

手をまっすぐに空にむかって「シューッ」とのばして、そのまま横に体を倒すポーズなど。
よほどバランスよくやらないとボードは転覆してしまうと思うのに、皆さん、うまいものである。

わたしもしばらくは砂浜の上から、そういったユニークな夏の景色・至福を焼き付けてたのしんでいたが、いよいよNとパパが、海においでと誘う。

「入りたいんでしょ。はやくおいでよ。」
 「気持ちいいよ」
 「クラゲいないよ。全然」
 「まだ冷たいよ」

もちろん、はいるよ。夏のうちに海水浴を5分でもしたいといいだしたのは、私なのだから。

小さな貝殻のかたちをした砂や小石をギュッギュッと足の指でにぎりしめ、浅瀬のところでそっと肩をつける。

ヒャー!冷たっ! この自然極まる塩分濃度が最高に気持ちいい。

顔をひょっこりと出すカエルおよぎで、足を蹴って「スイーッ」とゆるり進む。

よいねー。うん 。

よい気分。

海の自然を全身で感じて。そのまま10分ほど。無心になって泳いだ。

「ふーーっ」!







これで、夏の禊ぎは完璧だろう。


7月末。京都下鴨神社のみたらし祭ではおなかの中に、水の神様をお迎えして。
そして、これまた海の潮の恵みを全身で感じられるとは。




6時過ぎ。首やひたいが小麦色にやけた短髪のわんぱく坊主たちが連れだって泳ぎにきた。


おそらく近所に住んでいるだろう。独特の安定感のある泳ぎ、遊び方なのだった。





また、ひょっこりと現れたのは、80歳近くのおじいさん。
あばら骨が透けてみえそうなほど肉質の少ない痩せた体に、トランクスの海水パンツをちょんと腰の先につけてこっちに向かって歩いてきた。

おもむろに準備体操。ぐるぐると腕をまわし、足首もぐるぐる。ちょっぴり、よたよたしているが、目に鋭い意志が宿っている。砂浜をちょっと走ってみたりもして。いくぞ、と思ったら。
いきなり、どぼん!と海を風呂のように浸かり3分で上がった。そして、またあばら骨のみえるひょろひょろの体に濡れた海水パンツをちょこんと腰につけたままで、すたすたと歩き、帰って行った。



夕ご飯は、「淡路夢ホルモン」に行く。











住宅地の真ん中から細道を突っ切って、海からの最前列にこしらえたトタン屋根の絶景レストラン。

ポツン。ポツンと。かぼそく光る船の灯りしかしかみえないが、しっかりと波がたつ、夜の海の気配が店の中まで漂ってくるようだ。夜の海は、色々な生きものがうごめいている。豊富な生命や栄養分を蓄えて。

店主が厳選したという淡路ビーフホルモン。
例えば、国産牛白もつ、テッチャンなど。
おいしいのかな、と心配だったりしたが、これが肉の味にほのかなミルクっぽさが隠し味にあって。浸けタレはぴりっと辛く、肉は噛むほどにやわらかく。最高だった。脂も甘く、上質なので、たくさんの部位を注文した。

地元農家直送のコーンやタマネギ。淡路牛カルビ、塩タン、淡路鶏。

臭みのない旨い塩タンを久しぶりに味わった。
淡路産のクラフトビールに最高のごちそう。









夏日記つづき(第3週目)

2019-09-10 01:19:14 | writer希望を胸に執筆日記


8月12日(月)晴
盆あけ提出の仕事が進まない。
それで取り寄せた田辺聖子さんの本を一気読み。
やわらかい関西弁の中に人情が織りなす機微や大事な事をやんわり教わる。
あの頃のあの風土。
お聖さんという温泉で心の芯まで湯浴みしているような気持ちよさ。
登場人物の根っこは善良、悪人は1人も出さない。







8月13日火 晴
昨晩からトータルで9時間半も寝た。
眠すぎる日は宇宙から交信だと思って寝るに限る。おかげでもやもやした心の澱も全て忘れた。 仕事、はかどり、2本半完成。前回執筆の記事を見本誌と照らし合わせてみて、考察も終える。
夜。母から「今にも死にそうな気がします」などという電話が入る。死にそうにしては気丈な声で。

(母の方から掛けてくるのは珍しい。翌朝は早朝に家を出ようと緊張感の中に寝た)




8月14日(水曜)晴
お盆の帰省。今日はNの誕生日だ。着いた途端、2回もコープへ行き、ごはんづくり。
沢村貞子さんが26年作り続けた料理の記録、NHK「365日の献立日記」にならい、前日テレビでみた「冷やし茶碗蒸し」「枝豆のおろし和え」を。加えて、鯛と鯵のお造り、ピーマンの甘辛煮、トマトサラダをこしらえる。

母の家でつくる食事は、普段、家でつくるそれよりは品数が多くなる。基本はやはり母の食卓だ。
私のは、母の食卓にバリエーションをつけている、みたいなものだから。それでも食べてくれる「人」が一人でも多いと俄然張り切るのだ。



8月15日(木)晴

今日の台風は、家族みんなで迎えた(といっても母と私と主人の3人だけど)

実家にふらりと一人で帰省した日には一気に時間が逆もどりし、過去の時間軸を必死に駆け抜けている錯覚に陥る。 やっとここまで進んできたというのに。すごろくでまた、振り出しに戻ったような妙な焦燥感も。そんな時には、母の機嫌のいい時をみはからって、喫茶店にコーヒーを飲みに行く。









できるだけレトロで、寡黙な店主がコーヒー豆にこだわって自家製焙煎をしているような店がいい。そこで本をよんだり、原稿を進めたり。そうして日常の時間を恢復させるのだ。




そんな折、主人がひまそうな顔で「こんにちは」と居間の部屋に顔を出して、ストンと座ってテレビなどをみはじめたりすると、だから少しホッとする。時間がまた逆もどりして、現在の時間軸に近づいてくるのだ。

さて、今日は昨日に続いて2回、買物に行き盛大に食事をつくり、夫婦で母の家を掃除&修理をした。
4時。クーラーの取付工事の職人さんが二人やってきたので、金額交渉などをして、パンとポカリスエットをお盆にのせて、機敏に、実家暮らしの娘のように立ち働いた。私たちがいくら立ち働いていようと、母はビクともせずやはりどこか威厳があり、ちょっとやそっとで慌てたりはしない。焦った風にみえても、片頬でふわふわっと笑っていられるゆとりがある。
6人きょうだいで長女の母は、やはりいつまでたっても家長の貫禄でいきっている。すごい人だ。




8月16日(金)晴

母を一人残して帰ることがきがかりで、「お盆の休憩がてらにこっちの家においで」と誘ってみるが、「庭の花に水やりをしないと枯れてしまうから」とどうしても聞き入れてくれない。

帰りに、父と先祖代々のお墓参りをした。夕方近くなのでヒグラシの鳴き声に、
高照寺から木魚を(ぼくぼく)叩く音がかぶさって安らかな夏の和音に。
清い白檀の匂いを漂わせて、線香が香る。
途中で、手にもった10本ほどの束に両隣の線香から火がぼおっと大きく燃えうつり、大きな火玉になるので慌てて、しゃっ!しゃっ!と払うが消えないので5本ほど土に投げてしまった。

階段を5段ほど上がって水道の蛇口がある水栓をひねる。
白と紫の小菊と黄色いおみなえし。それと、丸いぼんぼん(赤紫と白)が茎の先についたが盆花に、枯れないように水をつぎたしてまわる。

両手をあわせると、父の笑った顔がぽっと瞼の中に宿った。変わらない元気そうでやさしい顔。
般若心経を知らないとこだけ、あらふやにして、でも最後まで唱えた。

「また来ます。それまでごきげんよう」。
「ありがとうございます。私たちのことを見守ってくださいませ」。

帰り際。いつものように墓地の左側の道からわが墓の地へ広がっている山桜を見上げる。
耳に響くのは墓地や木々に響きわたる蝉時雨。


ずっと前のこと。
京都の法然院で、谷崎潤一郎、松子夫妻の墓参りをした。この時、墓石の背後からかぶさるように垂れ桜が植えられていたのが忘れられなかった。墓に桜か、なんて粋な、と思っていたら。

それから数カ月後の墓参りで、空をあおいだら、墓地の敷地いっぱい傘の下に覆い込むほどの大木の山桜が、隣との境目にあたる道からなだれのごとく緑の葉をこちらへ、たれこめていたのだ。不思議だった。急に桜が植わったのもおかしい、単に気付いていなかったのか。

見惚れていたら、母がこんなことをいった。

「一年中、落ち葉がうちの墓地に落ちるので根から切ってしまいたんだけどなぁ。本当は。(ビックリ!)
いーちゃんに思い切って枝を落としてもらってだいぶスッキリなったけど。全部、根から切ってしまおうと思ってお寺さんに相談したんだ。そしたら『それは絶対止めんさったほうがいい』といわれた。掃除しても掃除しても、落ち葉。それだけじゃなくて、墓地ごと崩れてこないかと心配でなぁ。でも、お寺さんにいわれたでな、切れんしなぁ。困ったなぁ」


母は冗談ではなく本当に困ったようだった。

お寺さんよ、ありがとう。

樹齢のいった桜である。
私はこの木の満開をみたことがない。
いつか、墓参りと花見を同時開催する計画を立てなくては。










夏日記 ここ最近のこと(8月第2週目)

2019-08-14 01:20:01 | writer希望を胸に執筆日記




8月5日(月)晴 

午後4時に原稿2本提出。一文節につき1つに特化して書いてみた。
書く必要のあること、書かねばならないことだけに限定すると、伝えたい主張が一本の線のように浮かび上がってきた。
夕方、買物へ行くと、インドの女性が斜行エレベーターに乗ってこられて、あまりの美しさに釘付けになる。
彫刻のよう。
土色の肌、縮れ毛をアップにした横顔に見惚れた。
隣では中年サラリーマンが宙をみてふと噛み殺した笑いをしていた。
なんて面白い、心からそう思った一抹の時間。






8月6日(火)晴

昼、仕事も読書も中断して三井住友銀行へ。
数週前から執拗に何度もアポをとってこられていたのだ。2階の個室でアイスコーヒーを頂く。
銀行はもはやコンサルに特化している。驚いたのは私の個人情報のみならず、相方の会社のことなど、色々と把握なさっていたことだ。
双方にとって有益な情報を探ること2時間半。
疲れたので退散。帰宅後、原稿を書く。読書して寝る。



8月7日(水)晴 

盆までの案件をほったらかして午後から千早茜さんの「魚神」読了。
読んでいる最中、私はここにいない。作家がみている世界を脇役の一人として見て、呼吸し、同じスピードで伴走する。
江戸末期、日本の廓。それともアフリカの孤島か。
ピュアにして濃密。
一途な愛のかたちに心うばわれる。雨極の森の美が瞼からしばらく消えなかった。






8月8日 晴
夕方まで原稿。7時半から兵庫・川西の一軒家イタリアン「Bottega DAI」。
料理にあわせてペアリングワインを楽しむ。
白のスパークリング、ロゼ、白、赤、デザートワイン…。
オーナーシェフとイタリアの修行時代の話などを聞いて盛り上がった。
けれど、朝には何一つ思い出せないのが哀しい。

















8月9日晴

最近、夜明けとともに目が覚め、5時半には寝室側の雑木林のセミに起こされるので朝散歩。
一日の終わり、映画『#桃さんのしあわせ』アン・ホイ監督 。
料理の腕や家事能力が高い人はそれだけで崇高、尊敬に値する。
続けて、テレビで放映中の「旅猫レポート」。
どちらも良い映画だった。
映像の世界を思いだしながら眠りにつく至福。




8月10日(土)晴

朝からガス工事の人がきて、レンジフード、ビルトインコンロ、食品庫などの機材を入れ替え。
プチリフォームである。
日本の技術の進化よ。
コーヒーやお菓子などを用意するふりをして、60代のガス職人のおっちゃんの器用さと働きぶりを感心して眺めていた。
夕方、地域の夏祭りの会議に夫婦で出席。
当マンションの住人、皆25年来のお付き合い。
良い年齢の重ね方をなさっている。25年後の夫婦の移り変わりの姿が興味深い。




8月11日(日)晴

かつての会社時代のクリエーターが一邸に集まって、夏の猪鍋と手作りの和食を囲んで、しゃべる会を催す。
家族やご近所、仕事仲間以外の、こうした集いこそ、貴重で愉しい。面々は多趣味、才人。
いつかは追いつきたいと思いつつ、あの頃の役柄から抜け出せない。
帰路、美しい星空を見上げて。










夏日記 ここ最近のこと(8月第1週目)

2019-08-14 01:14:01 | writer希望を胸に執筆日記





8月3日(土)快晴

1日仕事の原稿を書いて過ごす。
昼過ぎ夫婦で同じ歯医者に行き、私は歯の検診と歯石取り。
背後で、麻酔をかけて治療をしている夫。
少しびびっている様子が先生のドリルづかいと空白の時間から読みとれて、おもしろい。
帰りにスーパーを2軒はしご。
果物どっさり。
帰宅後、夫に前髪を短くつんでもらった。
「あ!いい感じ」と褒めたら真剣なまなざしでさらに短くつまれた。
前髪が芝生にも似て、ジグザグで
ツンツンした印象。




8月4日(日)晴
60分の対談をそもそも2千字にするなんて無理があるのだが、ひたすら削って過ごす。
まだこれから千字削らなければならない。
それでも今日一番よかったのは、80分もソファで眠り、目覚めた時の子供のような気持ちだ。
夜中。ポストに届いていた#田中泰延氏「読みたいことを書けばいい。」を読み始めた。
眠れないほど突き刺さる言葉たち。
コピーライターの語り口調。
隣で大声で叫ばれているような衝撃。