月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

ダックワーズの場合には

2020-10-17 23:52:00 | あぁ美味礼讃
 
 京都寺町で骨董の大吉やグランピエ、鳩居堂で紙物をみたら、ここ。明治創業のお菓子の店「村上開新堂」(京都で一番古い)


 朝ドラにでも、出てきそうな雰囲気のある駄菓子屋風の店内。小さなショーケースの中はジュエリーみたいな美しい焼菓子がならぶ。

 ダックワーズ、ロシアケーキ、ガレットをおみやげに。買ってよし。食べてなおよし。お茶の時間が待ち遠しくて、わくわくする。

 お気に入りはダックワーズ。ふわっとしっとりしてデリケート、キャラメル風味のバタークリームがメレンゲ生地の中にはいる。和三盆のような甘さの洋菓子。




武夷岩茶「白牡丹」と豆かんで

2018-09-17 23:59:11 | あぁ美味礼讃

9月17日(晴れ)


3連休の最終日。いま、お風呂の中で、ポメラを使ってこちらを書いています。
東向きの小窓からは、コオロギがまるで静かに呼吸するように、羽をふるわせて鳴いてくれています。

今日の朝で、手持ちの原稿はいったん終わりました。提出した後のことは、わからないけれど、
くぎりをつけられたことは、本当によかった。今は少し自由な心境を楽しんでいるところです。


今日は午後から、車で丹波篠山の岩茶房「丹波ことり」に、岩茶とスイーツを食べに出かけました。
よく知る面々のスタッフの方々が出迎えてくださって、それもうれしかった。


武夷山で収穫されたお茶には、「白牡丹」。






さわやかな口あたりで始まるお茶は、きれいにのどを落ち、芳醇な花のやさしさが淡くひろがります。落ち着いた後味で、きれいなお茶です。


急須から茶海にいれて、小さな茶杯のなかへ。
移すごとに、とろりと甘みが加わるのは、空気にふれるからなのでしょうか。
7煎くらい、頂きました。


スイーツの豆かんも、とてもおいしかった。(同伴の相方は肉まん)






固めの寒天、スプーンにすくうごとに、
きらっきらっと輝いて。
さすが丹波篠山の黒豆は、ふくふくと煮えて、やさしい味。
舌ざわりもつるり。あっという間に、お茶を一杯、二杯と飲むうちに平らげてしまいました。


さんざし、なつめにくるみ、いちじくのお菓子も。
そして、武夷山産の白きくらげを、蜜で炊いたコラーゲンたっぷりのデザート。
わが家でのお茶時間とは違う、はればれとした気持ちのなかで、
おいしいお茶を味わえました。
同行してくれた人よ、ありがとう。


帰りには、マーラカオ(蒸しカステラ)のおみやげと、
丹波篠山の新米(5分づき)、
ぶどう(ピオーネ)を買って家路へと、車でかえっていきました。



秋は、一年で一番、空気がさらさら、ひんやり、きれいです。気持ちいい。
来月になれば、これに、澄んだ強い花の香り、弾けた木の実の香りのおみやげが、加わるのです。







希望の朝のレモネード

2018-03-16 20:06:38 | あぁ美味礼讃





最近は週2〜4本くらい宣伝会議系列(月刊「事業構想」を含む)の原稿を書き、
今週は季刊誌の企業PR誌(全ページ)編集・ライティングなどにエネルギーを燃やして生きております。
先方の要望に応えられているのは重要ですが、
自分が納得のいくものをつくりたいと思います。書いたらすぐその案件は忘れますが。

気分転換といえば、それでも車で映画館に乗り付けてシネマを1本観て
さっと帰って何事もなかったように通常業務に戻るのですが
映画というのは、その時その時でひたすら釘付けになるのに。
すぐ忘れて、またしばらく経ってからまたじんわりと思い返したりして。

あの時あの人はこういう気持ちだったのではあるまいか、などと考えあぐねたり。
あの景色の場所にいきたいなと思ってみたり。
事実、本や映画は架空の話ではありながら、もうひとつの人生を生きたような
(見たような)絶対に私が観たことはそこに存在していた!と確信的で、鮮明な想いがあり。

日常の業務のなかで煮詰まってくると、シネマを観たくなります。
ヨーロッパやアジア映画。
バグダッドカフェのような乾いたアメリカ映画も。
先日はアンコールアワードで、「パターソン」「彼女がその名前を知らない鳥たち」を観ました。
最近、仕事をする前に「詩集」もよく開きます。



そうだ、奈良のお水取りが終わって、いかにも早春らしい希望の朝に
松浦弥太郎氏が薦めていらした「レモネード」を真似してつくってみました。
瀬戸内産レモン1個、半量づつギューッと絞りきって
そこへ、わかしたてのお湯をそそいで
スプーン1杯のハチミツを入れるだけ。

松浦さんはゆっくりと2杯飲まれるとのことです。
私は一杯ずつで十分。

これは、力を込めて飲まないといけない飲み物です。
ビタミンCのもつ黄色い酸っぱさが、ものすごくパワーをほとばしりながら
私をめがけて入ってくるので

こちらもパワーを全開にして飲まないと、おいそれとは飲めません。
鉄瓶仕立ての熱いレモネードはなおさらのこと。
そうするうちに体がぽかぽか温まる、
(若い、いかした男の子みたいな爽やかで情熱的な飲み物です)
体がシャキッと目覚めてゆきます。

希望の朝のレモネード。
寒い冬にふぅーふぅーいいながら。
それとも早春にぴったりの飲み物なのでしょう。






出張後の博多ラーメン「一双博多駅東本店」

2018-03-04 00:16:21 | あぁ美味礼讃





昨日は朝早くにおきて、ディレクターのおじさんとふたりで
長崎・諫早までの取材出張となりました。

新大阪より新幹線で博多まで行き、
そこから在来線特急の「かもめ」を乗り継いで諫早まで。

車窓からみた有明海が春のどけき海苔色にのったりして。



またあるところでは青い空の色を鏡のように群青色に映し、
ゴトンゴトンと車窓の横、
広く果てしなく続いていたのがとても印象に残りました。


5人分のインタビューを終えたあと、長崎へ立ち寄りたかったのですが、
涙をのんで博多まで。

せっかくなので、博多駅を東側へ出て築紫通りを歩き約7分。
博多一双・博多駅東本店へ。







店の外まであふれてくる、屋台風のとんこつスープの匂いよ。
濃厚なだし汁はすするごとに深味があって一度飲むと、
あぁ違う!とほっと安堵。3種の寸胴で丁寧にとっただけあり、濃いのに後味はスッキリ。
平打ちの細麺とよく絡み合い、さすがの博多ラーメンでありました。

この味、なかなか関西では味わえません。
仕事後の生ビールととんこつ博多ラーメン、
実に旨し!と思ったので記述して残しておきます。







焼栗に感動した今年の秋

2016-10-19 16:04:01 | あぁ美味礼讃



毎年、季節がめぐるごとに思うのは、あぁ〜この季節すきだなという素直な喜びだ。
春がくれば春の、初夏になれば夏の、
秋がめぐるとやっぱり秋だと、
寒くなればツンと透きとおった冬の空気に…、というように
その季節が一番いいな、とみっともなく浮気してしまうことである。



秋はなんといっても、空気そのものが、かぐわしいのが素晴らしい。
夏の終わりから鳴き始めていた鈴虫やコオロギの声が
急に弱々しくなってくるあたりから、
私の町では金木犀やくちなし、色々な実を付けた植物から、一斉に放たれる香りが、あたりを包む。
散歩していて自然の香りが、甘い香りで満たされるなんて、なんて誇らしいこと。

先週はだから、気をよくして、丹波篠山の味まつりというイベントに出掛けた。
メイン会場自体は普通だったが、商店街や普通の露店で売っていた黒枝豆や栗、焼栗、柿、黒豆茶や。
和菓子屋さんでは、栗大福や栗餅、栗おはぎなどを見つけて心がウキウキした。
結局、黒枝豆も焼栗や生栗や柿をふんだんに仕入れて、




それらを毎日1品、ふだんのメニューに組み込んで秋を楽しんでいる。


篠山の味まつりで、一番おっ!と心から驚いたのは焼栗のおいしさだ。


ほくほくした栗は、加工された甘味ではなく(天津甘栗のような)
野性的な匂い立つ甘味があって、そこにやられた。
栗の木っぽさが、後味に感じられた丹波栗はすごい。
高熱の中で無理やりにはじらかされた栗の実よ。
ああ、いいものを食べた、と感動していたら。
同伴してくれていた主人が、先程歩いてきた道を1人で引き返して、
あと1袋(大入り)をお土産に買ってくれた。
「これだけ美味しい、美味しいと言われたら買わないわけにはいかない」と言っていた。



先週末は、これら秋の味覚をお重につめてお弁当を娘と一緒にこしらえた。




本当は彼女がピクニックにいくというので、手伝っただけなのだが。
夜のうちからステーキ肉をマリネしたり、金平ごぼうを煎ったりして。張り切ってこしらえた。


食欲の秋というが、この季節は台所に立つのが、ふだんより楽しく明るくなれるのは、食材の持つ豊かさにふれられるからなんだろうな。

これからは、海鮮ものや冬野菜を煮るお鍋の季節がやっくる。

ここ数日、個人的に心配なこと、気重な事柄が頭をもたげていて、
眠れなかったり、朝は床を離れて起きたくない瞬間が多いのだけれど。
いざ、一日が始まれば秋はこんなにもキラキラとしている。
それを忘れないように、こうして書きてみた。

冷たーーい、ダークチョコがたまらん!

2015-08-11 00:18:11 | あぁ美味礼讃

これ!Lindt(リンツ)のミルク&ダークチョコのソフトクリーム(699円)。





高いけれど、舌ざわりの冷たさとともに、
高級カカオの濃厚さと後味のスッキリ感がたまらなく、うまかった!!
かき氷もいいけれど、こんな夏も、なかなか乙!得もいえずニッコリ!なのであります。

ヌガティーヌやメレンゲ生地のカリカリとした食感とのコントラストも楽しめます。

リンツのカフェは東京・名古屋しかないそうですが、
関西では三田プレミアム・アウトレットモールで、手軽にテイクアウトさせてくれます。


創業170年のスイスのチョコレートブランド「リンツ」。


一番大好きなチョコレートブランドといえば、やっぱり、Lindt(リンツ)。
スイスシン・ミルク・エキストラシルバーは私の仕事の友。





パリの空港では、たっぷり1キロ入ったチョコの詰め合わせを買ってかえったほど。

ひんやり冷たーーい、おいしさは、やっぱり女子の媚薬なのですね。

秋半ば、「むかご」の季節です。

2014-11-06 23:32:00 | あぁ美味礼讃

今日でノンストップで走り続けた原稿が、とりあえず出し終わりました。
ホッとひと息。月曜日提出が、今日に速まった時は焦ったけれど、やればできるではありませぬか。




さて、これはナンでしょうか。河原で見つけた小石(!?)






いえいえ、こちらは、「むかご」です。
10月後半。武田尾・武庫川廃線跡の道端(でっかい岩のような御影石と武庫川の濁流の景観が美しい渓谷沿い)で収穫したもの。
毎年秋になると家の誰かが真っ暗なトンネルを5つ6つと、くぐり抜けて採集に行きます。

写真がないのが残念ですが、春夏秋冬のそれぞれが素晴らしい。
ゴツゴツした自然がむき出しになった、ありのままの風景。
電気のない真っ暗なトンネルを抜けると、そこは「雪国」ではなく
現実の太陽の光が眩しくて、明るくて、
一体自分はどこの世界へ行っていたのだろうか、と首をひねりたくなるような不思議さがユニークなのです。

さて、「むかご」のお話でした。
山芋の蔓の地上部分にできる直径1センチくらいの大きさの球芽です。




山芋はご存じのように、地中にのびていく作物ですが、
地上では、にょきにょきっと長い蔓がどんどん、どんどん伸び、沢山の枝分かれをして葉っぱを付けます。
その枝分かれした部分に、ぽちっと生まれるのが、小さな粒々の「むかご」。
山芋より若干高い栄養価。
鉄分やカリウム、マグネシウムが豊富で、皮ごと食べるので繊維がたっぷりと摂取できるとも。
いかにも栄養豊富そうな自然な味。

舌上にのせるとぬめっと!とした少し粘りのある食感。
のどかな里山風情を彷彿させる、淡泊な味わい。里の味ですね。

料理法はいろいろ試してみたけれど、
やっぱり2分ほど茹でて、ゴマ油で軽く乾煎りして塩をふっていただくのが
一番シンプルでおいしいでしょうか。




さてさて今晩は、新米に新ショウガ(種子島産)を混ぜて秋の味覚「むかごのご飯」をいただきました!
いよいよ、秋が深まってまいります。











5月の味、わが家で旬を楽しむ時。

2014-05-07 22:14:55 | あぁ美味礼讃


5月4日(日)
ゴールデンウィーク後半だというのに、1人で家に残ってカリカリ、カリカリと仕事をしている。
先ほどまで賑やかに食卓を囲んで、マンゴーを食べ、フランスパンとコーヒーを飲みながら騒いでいた家族は、あっという間に姿を消して、私の母の家(実家)へ行ってしまった。
晴れやかな空、緑がわたる風、陽気な外気の音。
改めて5月だな、と思う。この季節は風が緑色。それも光に透けたウグイス色。明度の高いグリーンは見てて気持ちいい。

本当は、もう家族たちの後を追いかけて車に飛び乗りたい!陽光の中へ飛び出したい、そんな気持ちを抑えて、冷静に、心を静めて、部屋に戻る。
でもちっとも集中できない。
ゴールでウィーク明けは2本+1本提出だ。

昨年は、自分のキャパと力量不足や、そのほか諸々のことが重なって、
結構の量のお仕事を、お断りせねばならなかった。
相手(依頼先)のコトを想い、自分の実情を思えば、無責任にお受けすることもできずで。
でもお断りするたびに、なんだか分からないけれどドーンと暗い鈍りのような重い重いものが自分の胸の中にどっかりと居座るのは、どうしようもなくて。
いろいろ言い訳はしてみても振り払えないものが、何日も何日もしこりとして残った。それが辛くて、結局はお受けしていない仕事は、ご縁がなかったのだ、と結論づけた。
だから今年は、出来るだけお仕事はお断りしないように、努力をしている。そのほうが、しんどいけれど気持ちはラクだ。


このゴールデンウィークは、旬のおいししいものを、沢山、沢山いただいた。

朝とったばかりの「しらすの釜揚げ」。
静岡産の吉田漁港からの直送を、友人が毎年取り寄せていて、
さっそく、一箱分けていただいた。




試しにひとくちだけ、とスプーンにすくい上げて口に入れると、
プーンと肴臭い礒の匂いが飛び込んできた。香住の青緑色の海を思い出す。

塩味も自然な感じで、なんておいしいの!わー、おいしい!
もう一口、もう一口と。本当はこれから食事の準備をしようと思っていたのに、待ちきれなくて。
やめられない、とまらない!
そして、ベランダに生えている三ツ葉をとって刻み、アツアツごはんの上にしらすをたっぷりとてんこ盛り。三ツ葉をチョコンとのせて。モリモリいただいた。
これは醤油なんていらないわ。

そうだ、そうだ。
あー伊勢からいただいたワカメで(パパの部下の女性)、お味噌汁もつくりましょう。

そして、昨日京都で買った「平野豆腐店」のお揚げを直火の網で火にあぶって、ショウガをのせて。
もういいや!どうせ私1人だし!「いただきまーす」。
あーー幸せ。幸せ。やわらかくて、甘くてほんのり潮味。まるみのある海の味だ。新鮮だから、こんなにおいしいんだろうな。





そしてそして。翌日は、これまたボーと1人で仕事をしていたら。
近所のお友達から「たけのこ」の差し入れが!

わーん。待っていました!
もう10年以上前から毎年、毎年頂戴しています、これ。
比叡山近隣のお寺のお庭で(実家が比叡山の塔頭にある寺院)、堀りたてのおいしいたけのこ。3本も!




野性味あふれるたけのこの仰々しい黒皮は産毛が逆立って、
こりゃあ、もう見事に元気。その勇ましいこと。
やつぱり、どこからみてもたけのこは野生の生きものだなーと感動しながら、新聞紙の上において撮影した。
3本並べたら、まるで親子のように身を寄せ合って微笑ましい。
毎年、毎年いただくたびに、ちょっとづつ味が異なっていて、それも楽しい。
さて、今年のお味はどんな味?

さっそく、一番深いパスタ鍋にお湯をはって、「米ぬかお風呂」にどーぞ。丁寧に1時間半も入れてあげました。



おしまいは、Nとパパが翌日に、私のお土産として買ってきてくれたタイ産マンゴー!!




そういえば、その昔タイ産マンゴーのリーフレットやシールやら、ポスターを作っていたことがありましたっけ。

しばらくその時期になると、タイからマンゴーやマンゴスチンがどっさりと段ボール箱で贈られてきたものでした。
これはこれは、と実家にいくつかを送ると父がたいそう喜んでくれたもの!あー、そんな時季なんだなぁ。
これまた、きれいに3枚におろしてお皿に盛りつけ。

フレッシュで甘くて、ねっとりとした果肉は、やはりフィリピン産とは比べものにならない。
台湾産もおいしいけど(バナナは台湾)
やっぱ1番はタイ産だ。

もう娘のNと取り合いになるほどの、新鮮さ。とろっととろの果実でなんて濃い味。
さすが熱帯フルーツの王様!脱帽の味でございまする。マンゴーも5月の味です。

翌日は、タケノコごはんはもちろん、
タケノコとシラスと三ツ葉のパスタや、それに伊勢産のワカメを加えて若竹煮にしたり、焼きめしに少しと天ぷらと。
「しらす」の卵焼きもおいしいーー。
旬のうまいものをわが家で堪能いたしましたとさ。たけのこの苦みは春ならぬ初夏の山の味だなー。ふむふむ。

11日間ものゴールデンウィーク。
こちらは、ずっーと家。などというのもガマンならず。結局は初旬、中旬、後半で3日ほど出掛けてしまいました。
その話しはいずれまた!



冬の甘味といえば、梅園の「粟ぜんざい」です。

2014-03-07 22:54:16 | あぁ美味礼讃


今週は先週の予想どおり、ずっーーと原稿を進めるということに専念しています。

ここのところ長編もの(1案件2万文字原稿とか、冊子もの、全サイト記事。長いだけでメジャーな案件というわけじゃない)が固まってきているので、
全て2週間くらいの時間を頂戴し、
それら2つ3つ、1日のうちに平行して仕事をしています。
1日単発で仕上げるよりは、ずいぶんラク。少しずつ微調整や修正を加えながら、自分ペースで出来ますから。(などと脳天気なことをいわないように気をつけるべし)


今日は、移り気なお天気であるな~、などと窓の外を眺める。
雪が斜めからブリザードしていたかと思いえば。
真っ青な大空に、ゆったりと丸い雲がぽこぽこと、のんびりと過ぎていって。
ほーっと。窓の外の景色には癒やされ、また原稿に集中する日々です。


癒やされるといえば、昨日の打ち合わせのあと、錦市場で和の食材(今晩の肴)をいくつか見て、
それから立ち寄った甘味処の「梅園」(京都河原町から徒歩10分)さんも、よかった。



先々週と続けての来店となります。

昨日は、この時季ならではの「粟ぜんざい」(単品850円)を愉しみました。

「粟ぜんざい」。



ふっくらと蒸してついた粟とひえの餅に、アツアツの漉し餡をたっぷりと。

この熱さがたまんない。「ふーふー」と口をすぼめて息を細く吐きたくなる。
ひえと粟はモチッチリとして雑穀の苦みもあって、素っ気ないほどに素朴でありながら、どっしりと安定のある味。
上からかぶさったアツアツの餡は実に丁寧な手仕事の結晶。上品で甘すぎない。
季節ならではの甘味だなーと思う。

昨年も頂いたのだけど、今年も食べられてよかった。

ちなみに、先々週にいただいたのは名物の「みたらし」とぜんざい。ほうじ茶。






これまた、おいしかった。梅園らしい定番である。
特に「みたらし」の甘辛いタレはいくら多くかかっても、くどさをしらない。
団子の味わいを、引き立てることに徹している。

だけど、この時季なら、やっぱり「粟ぜんざい」に、旗!

あー、書いているだけで、口のなかがほっーと。うーん。冬の京都に旅立った。
あー日本に生まれて、愉しいな。

さあ、また原稿に戻ろう

パリの高級ホテル、プラザアテネの朝食に登場する「ショコラティーヌ」の作り方を習いました。

2014-01-18 20:05:44 | あぁ美味礼讃


旅先で出会った忘れられない味というのは、帰路に着いてからも、そして年月がたっても、
いつまでも舌が覚えていたりするもの。

一昨日は、パリの5つ星ホテル「アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ」の朝食に登場するメニューの中から
「ショコラティーヌ」「ガトー・バスク」の作り方を習ってきました。

友達がぜひとも参加したいイベントがあるの!と、メールで誘ってくれたのですが、
思い切ってご一緒させてもらって、ホントに幸運でした。

「ADPA(アーデーペーアー、アラン・デュカス氏の本丸ともいえるレストラン)」の朝食は、
41ユーロ(5800円)~。高い!
そのお値打ちを再現するこのお菓子教室。

「プラザ・アテネのショコラティーヌを教えられるのは、日本でここだけ」とのこと。
これは価値ある~。






(拝借写真です)


教えてもらったのは、ル・コントワール・ド・ブノワの若武者パティシエ、
波多江篤氏(左は総料理長の上野宗士氏)です。




お菓子教室といってもレストラン内の厨房に侵入し、
パティシエの目前&直伝で作り方を習うのですから、非常に興味深い。

ショコラティーヌは、強力粉と全卵、牛乳、グラニュー糖、生イーストからなるブリオッシュ生地を重ねて焼き上げ、最後に
生クリーム、水、グラニュー糖、水あめ+チョコレート・ジャンドゥージャのクリームをおしりの部分から入れる。
シンプルな行程。
だからこそ、手抜きのない行程だったり、厳選素材だったりがキラリと光る。


ほら、このとおり。かわいいどんぐり帽子をかぶったコロンとした姿。




小さくてカワイイ!!

お味は、パン生地みたいなサックリとしたビスケットのなかから飛び出してくる、
ジャンドゥージャのクリームが最高。
しっかりと濃厚なんだけど、上品。
チョコはヘーゼルナッツの風味に近いのかな。
フランス菓子はシンプルだけど香り高い。これらを、光の中のダイニングまたはテラスでカフェオレとともに
いただけたら、と思うとなんとも
たまんない!

もう1品のガトーバスクも、やはり、クリームの勝利!!



アーモンドパウダー入りの固め生地に、バニラビーンズとレモンのカスタードクリームが美味でした。



このあと、ランチタイムでの大忙しの厨房を望みながら、お食事タイム。




この日のメニューは
小さな前菜

ポテブイヨンと色とりどりの野菜 トリュフ風味





スズキのポワレ ビーツと葉タマネギのソティー





苺とピスタチオのヴァシュラン。




紅茶、お菓子。

   
いつものレストラン内とは雰囲気も違って
お菓子好きな有閑マダムたちといただくのも新鮮。
毎月参加する女性グループもいたりして、人間観察をするものまた一興。

しかも、菓子教室のお土産付き!




焼き上がったばかりの「ショコラティーヌ」「ガトー・バスク」のほかに、



1月のお菓子で定番の「ガレット・デ・ロワ」が1ホール。



お愉しみは帰ってからも続くのであります。
そして。ラッキーな人にはもれなく、ケーキのなかから、青い馬のフェーブ1万円のお食事券(1名様)が入っているというプレゼント付き。

スイーツファンにはたまらないお年玉イベントでした。


秋の篠山「ことり」で岩茶と手づくりのマーラカオをいただく。

2013-11-21 19:05:50 | あぁ美味礼讃


どうしたことか。2週連続で丹波・篠山へ行った時のことを書いてみようと思う。

少し前のこと。
その日は、昼過ぎまで仕事をしていて、2時をまわってから家を出たので(車)、夕方前に到着。
いちばんの目的は、篠山城の堀端にある旧武家屋敷を改装して、うまれた『岩茶房丹波ことり』だった。
来訪は2度目だが、何年も前なので道を忘れてしまっている。
お堀の周りを2週くらい回って、ようやくiPhoneナビが指し示す小道がみつかり、
駐車場の案内がある。


店の前には柿の木があって、オレンジに熟した実がおいしそうに見えた。



古い古民家風の玄関を入ると、上がり口はギャラリーのようになっていて、
地元の作家さんの作品(ボタンやお皿、便箋、絵画用品のようなもの)や、海外の小さな用品も展示されている。


ここは、篠山駅からも少し離れた田舎町(城下町)だというのに、

どこから集まってこられたのか、40~70代くらいの大人のお客さんがこんなに!
それもご夫婦づれや家族づれで、お茶を飲みにこられているのが、いいなあと。

30分ほど待って奥へ案内していただいた。


都心では感じることのできない、静かで、心がはだかんぼうになるような時間。
縁側に近い席だったので、茫々とした庭が見える。

室内は、ゆったりと木のテーブルと椅子が配されていて、日本家屋独得の、不思議だけど味のある空間。
部屋と部屋を仕切るガラス戸は曇っていて、
昭和初期のような佇まいだった。

私たちは、武夷山でとれた茶葉を使う岩茶を注文。
3人で訪れたので、それぞれ3種を。




鉄羅漢(てつらかん)1400円
…鉄観音にも少し似た清浄な青茶のよい香り、奥深い後味が特徴。


鳳凰水仙(ほうおうすいせん)1100円
…茶葉にフルーツのような爽やかなさがあるやわらかいお茶。


佛手(ぶっしゅ) 800円
…重みはあるが飲みやすい番茶にも似た味わい。肝臓によい。


岩茶は始めてではないのだが、(神戸岩茶荘という店を仕事で取材したことがあった)、久しぶりだ。
中国茶や台湾茶に比べて、味わいが、やわらかい。
それに、ほんのり甘みもあって、青茶なのに「ほわん、」としている。
その「ほわん、」が体の中をしんしんと温めるので、私は昔よく飲み過ぎてお茶酔いしたものである。

岩茶とは、世界遺産に指定されている武夷山(中国大陸東南部の最高峰)という標高の高い山でしか採種されないお茶。
雲に届くほどの崖だった山々の岩肌に貼り付いた茶葉を収穫するのだから、
貴重で栄養価も高い。
そんな懐かしーいお茶を、いい茶器でいただけるのがここ「ことり」さんの、よいところ。







赤ちゃんを背なかにおぶった楚々とした女店主のお父様は、
日本を代表するスリップウエア(英国の古陶。器の表面を泥と粘土を程度な濃度に混ぜた化粧土で装飾して焼く)の
名手・柴田雅章さん。









表面の飴彩のこっくりとした色合いと、カドのないまるみの、
かたちの茶器は、やはり、いいなぁーと改めて思う。

茶には茶の、グレーにはグレーの。
この人の器でしか表現できない独得の品格のようなものに見惚れてしまう。
(柴田さんの器は、大山崎山荘美術館や大阪府島本町水無瀬にある「花染」で目にして以来、憧れる陶芸家のおひとりになりました)

この店の、お茶道具、用品はすべて、父上である柴田氏が丹精込めた、灰釉スリップウエアというのが、どれだけ贅沢なことか。
そう考えれば、お茶代も高くはなし。

店内の棚という棚には、さりげなく
柴田さんの花器や茶器などが整列されているのだから、こんなに豊かな気持ちでお茶をいただけるのかもしれない。




私たちは、お茶のほかに、

皮から手作り野菜まん・豚まん、ミルクまん、「馬拉カオ(マーラカオ)」(各300円)
ココナッツ豆腐、乾燥フルーツなども沢山いただいて、

ほっこりした気持になって店を後にした。
お茶は、ひとり10煎以上いただいたと思う。









相方が、お茶代とは思えない金額だね、といっていたのを、
聞こえないフリして鼻うたをふん、ふーんと、唄ってやりすごす。

それから、国道173号線をまっすぐ北上し、京都府との境にある草山温泉(観音湯)ということころまで足を延ばし、
秋の山の香りを感じながら、外湯の金泉に入湯。

ほかに客が2名ばかり。2名!?

「みてごらん、この人たちきっと、お尻に尻尾あるよ」と、
いいながら湯浴み、する。おかしくてたまらない。
最後は私たちだけになったので、露天風呂で泳いでしまった。それくらい広~い秘湯の温泉だった。

虫の声と、ケモノのけはいがする不思議なお湯。


金泉だが有馬温泉より泉質は軽い。塩分濃度が海水に近いのだという。

しばしの、仕事の一服。秋の篠山を、愉しんだ。











夏柑糖の季節ですよ

2013-06-08 23:59:44 | あぁ美味礼讃

毎年、新しい季節がめぐるたびに、その頃に食べた同じものが食べたくなったり、
同じ場所を訪れてみたくなったりすることはないだろうか。

今年の近畿地方は梅雨入り宣言をしてから、雨の日が少ない。
それでも6月の声を聞くと、甘酸っぱくて爽やか味が恋しくなるのである。
最初は、むこうから自分の元にやってくるのを待ったりするのだが、いよいよ訪れないと、
もっとさらに食べたくなってくる。もう時季が終わってしまう…と焦るほど(笑)
季節の花を見るのと同じ感覚なのだ。

そういう時にタイミングよくコラムを書く仕事などがあると、ちょうど良い。
3年ほど前には「甘夏かあちゃん」(佐賀県唐津市呼子町加部島3748)から
「呼子夢甘夏ゼリー」をお取り寄せし、食コラムの記事に掲載してもらった。

「みずみずしい香りと自然のままのほろ苦さ」




光の透けるぷるぷるの黄金肌。半分に割っておくられた皮の器を切ると
柑橘アロマのシャワーが飛び出し、ん~、南国のエネルギー!
つるんと滑らかな口溶け。自然な甘酸っぱさの後には、ちょっぴりのほろ苦さが駆け抜けて、
体のなかを清々しい風がわたった。

はっきりしない梅雨時期だからこそ、このほろ苦さが醍醐味なのだ。

地元のお母ちゃんたちが玄界灘の段々畑で夏みかんを収穫する姿が浮かぶよう。
せっせ、せっせと、雨の日も風の日もバラックの小屋でゼリーをこしらえる光景まで頭をよぎる。
そしてああ、素朴でうまいなあ!すごい果汁!と感動して食べるゼリーなのである。

翌年の梅雨には、「銀座のジンジャーシロップ」の記事を書いた。
そして「雪の下人参のジュース」なんかを取りあげたりして、
次に見つけたのが柑橘生活研究所からの「檸檬れもん」!
これはおそらく地元の人しか知らないんじゃないかしら。




手作りのレモンジュースだけれど、ジュース!?などという半端なものとは違っていた。
ナント、レモンよりも檸檬の味がするのである。
広島の呉市豊町は、瀬戸内の気候と海から照り返す陽光に包まれた黄金の島だ。
水はけのよい土壌、急傾斜地を生かしてげしと呼ばれる石積が築かれ、
空に向かって仰ぐと柑橘類の段々畑が延々と続く。そんな地の利を生かしてつくる大長レモン!

宅配にはレモンが数個、ごろん。と無造作に放りこまれていて、村の匂いを運んできてくれた。
ゴクリと飲んだ時に、あ、太陽の味がすると直感した。

大長レモンを100%使い、苦みが出る手前でストップする贅沢な搾り方。
これに大長みかんの花蜂蜜とグラニュー糖だけを加えた傑作らしい。
農薬が一切含まれていないので、安心して飲めるし、4倍ほどに薄めればレモネードに。
炭酸で割ってスカッシュにしてもいい。2年続けてお取り寄せて、お友達にも配った懐かしい味だ。

そして、そして。
昨日大阪の伊勢丹の地下でついに購入しましたよ。
これこれ、老松の「夏柑糖」!!(ああここまでが長かった)




とりあえず、一人で丸ごと1個を食べたい気持ちを全身全霊で抑えて、
半分に切って(その半分に切る時もあるが)丁寧にスプーンで果汁をすくって頂く。



ああ、これこれ。夏みかん。
果汁感もたっぷり、
京都の老舗和菓子屋・老松さんならではのほろ苦さ、上品である。

甘夏、のほうがみずみずしさは勝つかもしれないが、キリッとした酸味がすっきり解けていく感覚…。

夏みかんの中のある小袋を一つ一つ手で取り出し、小袋についている苦みの強いシロジュウを
取り除いてから果汁を搾っている。
これと並行して作っておいた寒天が冷めたところで
両者をあわせるとおつな冷菓に仕上がるのだ。
1個1460円と結構な値段だが、致し方ないね。

夏みかんというと、国語の教科書に載っていた
夏みかんの随筆を思い出してしまう。
揺れる赤いランドセル、どこからか漂い流れてくる香り。
誰かがポツリ。
「これは、レモンの匂いですか?」
いいえ、夏みかんですよと答えるタクシー運転手。そのセリフだけで、
小学生の私は、ゴクリとツバを飲み込んだものだ。

この夏柑糖、
「今年は萩の夏みかんは不作で、7月中旬で終わってしまうのかもしれませんので」とのこと。


そういえば、京都・若菜屋の「焼き栗きんとん」も。

一昨年の6月に社寺特別拝観の
お茶請けとして頂いたことがあって、あまりに感動して翌月の祗園で若菜屋を訪れたら、
「もうあらしまへんわ。残念どすなあ。秋まで待っておくれやし」
とニッコリ笑いながら、いわれたのを思い出した。

和菓子の旬!
甘泉堂の水ようかんや、先斗町駿河屋の竹露(1個158円)もそろそろ時季だなあ。来月は夏だ。

カツオの本枯れ節で削ったおだし

2013-03-08 19:16:25 | あぁ美味礼讃


皆さんは、おだしはご自身で取っていますか?それとも粉末のパック?

わたしは、料理の手間は省いてもおだしだけは出来るだけ自力でとる。
特に和食の場合、おだしを普通にとって調味料がまあまあの品質のものなら、
料理の味は、たいがい悪くはならないからだ。
市販のおだしの、舌のうえに残る化学調味料独特の痛い味が苦手なのである。


昨日、主人が会社の友人にもらったという枕崎産の「カツオ本枯れ節」。




白い粉(黴)を落として、流水に流した後で、「鰹節削り器」の上に置いて
なめらかに滑らせて削る。
料亭などでは板さんがシャカシャカとカンナで木を削るようにして
軽快にやっているが、これがなかなか素人ではうまくいかない。
すぐにつっかえ、止まってしまう。それでも、10分もしないうちに慣れてきた。
要するに削ろうと思わずに、カツオの表面をまっすぐに滑らせることに集中すると、
意外にできるようになってきた。




せっかく取ったカツオで何をつくろうかと考えて、
やっぱり最初はお吸い物に。
今日は昆布の力は借りずにいこう。
お湯をわかして、自分で削ったカツオを勢いよくいれて、あとは約2分とろ火で。
カツオが下に沈んだらおだしが冷めるのを待って調理にとりかかる。
お揚げと春ゴボウ、椎茸を入れただけの簡単な具材だけでこしらえた。
ほんまに黄金色のおだしの色だ。
清んでいるし、濃い。すごいなあ。


ほかのメニューも和風料理で。ひじきのたいたんや一口カツを天ぷらにした。あと苦みのある菜の花も。

さあ、いよいよ試食の時間である。
やさしい温かい味かな、と思ったらこれが違う。
ほとばしるような旨み満点のお吸い物だった。
白身魚など何も入れていないのに、強いだしの味だった。
うわあ、なんとも、ビックリである。

揚げも春ごぼうも椎茸も、みんないきいきと素材が際立って
超いいもの(まるで高島屋で買った野菜みたいに)を使っているという風である。

ふと思い出したのが、北新地の「びりけん」で飲む椀物の味だ。
カツオの力かあ。でも全く臭みもないし、いかにも和風料理のおだしだなあと、感嘆した。
こんなのを飲んだら市販の花かつを
が買えないではないか、
それも困るなあ、と思いながら。
はて、今夜は何をつくろうかしら。




あの日の回想、そして食のこと

2013-01-18 10:44:55 | あぁ美味礼讃


昨日のことである。

ずっとブログを綴りたいと思っていて、リビングと子供部屋に掃除機をかけられたので、少し落ち着いてようやくデスクの前に座る気になった。

明日こそは一日中、家の掃除をしたいと思う。
トイレもお風呂も、台所もピカピカに磨き、不要なものは処分して、
整理整頓をしよう。

そうすることで、少しでも心がフラットになるかもしれない。

できれば、アダージョばかりを集めた「ベストオブベスト」のCDを聞きながら。

リストの「愛の夢第3番」や「ラ・カンパネラ」やドビュッシーの「月の光」「版画」などの音楽がふり注ぐなかでとても幸福な気持ちになって掃除がしたい。

実は今日も掃除、を予定にいれていたのだが、大幅に狂ってしまった。
理由は、うちの受験生が高校生活で始めて学校を休んだことも、要因だったのだろうか。

そう、彼女がいつもギリギリまで登校準備が間に合わないことは常であり、
「ママ駅まで車出して…」とお願いされることも、これまた日常茶飯事なのだが、

駐車場に向かったら車は凍結していて、家に戻ってお湯を汲みに行く時間もないなあ…と考え、迷ったあげくに、

フロントガラスが凍結して霜に覆われた状態で、ノロノロ運転で家の前まで辿り着き、
そこから霜を取り除く作業をしたので、駅に到着したらナント、電車は過ぎ去った後…という始末なのだった。

あ~あ。と思いながら、
アクセルと踏み込もうとした瞬間に、見慣れた薄紫のシュシュとポニーテールの頭がみえた。あれ?

「私、遅刻は絶対にいやだから今日は休む。家で勉強する」。

そう言って、再び彼女は車に乗り込んできたのである。

今日は入稿前で電話がガンガン鳴りっぱなしなのに、

おかげでリビングではセンターの過去問を解いていたりするから、いつもの甲高い声が出せない。
電話はなるし、メール音はなるし、どんどんこちらもいつもの大きな声になっていくしで…。ちょっとイライラしていたら、リビングの向こうから彼女は言った。

「家は携帯の電話がうるさいし、ママの切羽詰まった声で話すのを聞いていたら、しんどくなってきた。やっぱり塾に行く…」。
あらら。わたし、切迫つまってた?
そうでもないと思うんだけどな。

しかしながら、彼女は、
11時過ぎにお弁当を食べ、スープポットの野菜たっぷりのコンソメスープを全部飲み干し、デザートのいちごまで食べて、
家を飛び出していったのであった。ああ、申し訳ない。でも内心ほっとした。

だから、せめて、
お部屋でもお掃除してさしあげましょう、という感じなのであった。

さて、本題の話を…。
1月10日(木)に時間をさかのぼっていこう。
この日は、毎年恒例のライター友達と西宮神社の戎さんに参拝に行った。
よく晴れた日だったと思う。

4時頃に到着した時には、混み具合も普通で、本殿までは長い列はなしていなかった。沢山並んだ屋台からもおいしそうな匂いがこぼれていた。

毎年の光景をぼんやり眺めながらも、ともかく参拝と西宮神社の本殿前で財布をあけると、
お賽銭用の小銭が5円、1円。
という哀しい懐事情に遭遇し愕然としたが、それでも樋口一葉さんや福沢諭吉さんを入れるほどの勇気がなくて、少ない有り金を賽銭箱に。
まあ、こんなことで御利益はあるのかしら。

それでも、3千円の福笹と一緒に、今年は「福銭」と書かれた御守りを買った。
金色にキラキラ光って、きれいなのが嬉しかった。



それから、今年はイタリアンバルの「Gastronomia e Bar Giulietta」 (ガストロミーア エ バール ジュリエッタ)へ。

ここは、一昨年には5回くらい足を運んだと思う。
それも春から秋にかけて。
あったかい季節には、店の扉を開け放って風がぬけていくのが心地よく、いつ訪れても人・人・人で賑やかで。
気取っていなくて。イタリアのバルさながら、上品でない店構えも好きなのだった。

この日は、赤ワインを3杯ほど飲んで、前菜の盛り合わせを注文し、
生牡蠣を食べて、ラザニアを食べて、
ほたて貝と菜の花のサラダを食べて、
ゴルゴンゾーラのパスタを食べた。



おいしかった。

おいしかったが、もっとモリモリと食欲がわき上がってくるはずなのに、
思ったほど食べられない自分の胃袋を疑った。

その昔、ここのカウンターに座って外からの風に吹かれながら、今日食べたいろいろに加えて、
レバーペーストやチーズの盛り合わせや、野菜サラダ、手づくりソーセージ、子羊ロースト、バジルソースのパスタや魚介のパスタ、
チョコレートケーキなどを食べても、まだ食べたかった頃がちょっぴり懐かしい。

もっと料理の出来上がる臨場感が味わえたような気がするんだけど
まあ、その日、その日の楽しみ方があるので気にしないでおこう。

私たちはこの日、ワインを飲みながら、仕事の話や食談義、フェイスブックについて、
そして人との関わり合い方などを、いろいろ語り合った。

彼女との会話はいつも愉しい。建設的な話になることが多く、いつも刺激を感じる。近くなら、毎日でも会いたいと想う。

この日も、彼女は食談義のなかで、
「おいしい、おいしくないというのはその人の、味覚の好みの問題も大いにあると思うわ」というような事をいった。「私は基本的に、食べて幸せになれるものが好き」と。

そうだなあ。好みかぁ。確かにそうだなあ。

家にかえってお風呂に入りながら再び、考える。
わたしは22歳から食の取材を繰り返してきて、どんな料理をおいしい!と定義づけているのだろうかと。
私の好みのおいしさ、って?なんだろうかと。

うちの父は旅館の経営者で料理人だったから、職人そのものには大いに興味があるんだけど、
それでも決して職人の手技からなる渾身の一皿というものだけに、感動するタイプじゃないなあ。
人柄のいい料理人のつくる、ごはんは確かに好きなんだけど。
また、つくり手の心意気を感じられる一皿には確かにテンションもあがり、脱帽もするけれど、それでも…、
再び足を運びたくなる店の料理って、なんなのかなあ。

人が醸し出す、店の雰囲気もたいせつなポイント。

私が好きなのは、そう野菜であれ、
肉料理であれ、魚介類であれ、異国の料理であれ
生きている味わい、が大好きだ。

素材の生きている生命力というか、そのもののちから(power)がストレートにこちらにも伝わってくる料理が
好きなんじゃあないんだろうかしら。
言葉をいい替えると、いきいきした味!かな(勢いのあるおいしさ、とも)。
それは、ものすごくこってりした重い味であっても、
シンプルすぎるくらいシンプルで、料理人のひと手間だけという料理であっても、
そんなのはあまり重要でない。

生きているエネルギーのあるものを食べた時に、私の食欲は一気に花開く。
ものすごい勢いでそれを平らげてしまう。そんな時は感動して、
インタビューしていても職人の顔がまともにみれないほど、うれしくて、感動する。
泣いてしまうのである。

野生的なのだ、わたしは。

だからコンビニのごはんとか、
既成の冷凍食品にありがちな、
妙に整った味は苦手だ。

ほんとうに時々はっとするような本物の、
そう私が思う本物に出会えるからまた、味の旅・食の旅を求め続けるのかもしれないな。



生命力のあるものを、しっかり自分のなかで受けとめられるように、
普段から体調と舌を準備しておかないとね。

今、わが家の受験生がお風呂からあがり、私の部屋に来て「おやすみなさい」を言いにきた。

真っ黒な瞳をらんらんと輝かせながら、いくつもの不安を口にする。
どうしたら「明日にならなくて済むんだろう」と本気で言っていた。

ガンバレ、受験生よ。あと2日でセンター試験だ。

冬の京都で、あわぜんざいを食べる

2012-12-14 19:23:55 | あぁ美味礼讃



冬は空が白い。空気も白い。

冷たくキリッとして透明だけど、
そこに息をするものがたつだけで
白い残像となって、
冬の匂いが包む。

だから、太陽の陽差しをなおのこと、ありがたく感じる。

冬の太陽はほんとうに、すばらしい。

東南をむいているわが家のリビングは、
夏は短い陽差ししかないのに
12月になると、光の束が斜めに角度をつけながら部屋の奥までいっぱいに、届くのである。

12月の太陽は夏よりもまぶしい
希望の色をしている、と思う!

この太陽のなかにいると、どんなことも「そんなの、たいしたことないよ」
「自然の力に比べたら、人間の営みなんて小さいね」

照りつける明るさのなかで、そう教えてくれるような気がするのだ。

さて、

先日、京都へ行った帰りに
甘味恋しくなって、
河原町の「梅園」(本店)へ立ち寄った。



最初は、みたらしか、ぜんざいか、と考えていたのだが、
メニューをみると、一目で惹かれたのが、「あわぜんざい」(単品850円・ドリンクセット1,250円)である。

ひえと粟を蒸してついたものに、アツアツの漉し餡をかけるという。

東北に行く列車の車両のような店内は、静かで、昭和っぽい空気。
せわしなさを感じないのがいい。


真っ白な粟とひえの粒は、もちもち、ほっこほこ。



餡もなめらかで、上品だ。

普通なら、これほどアツアツならば、白砂糖の甘さがたってくるのだが、
ここのは、素朴で、ほどよく甘い。
粟の控えめな味を引き立てる「脇役」に徹していて、
最後まで飽きの来ない、いい甘さである。

全く汁気のない、「あわぜんざい」は、冬の京の風物詩として覚えておこう。

北野天満宮の前の「澤屋」の粟餅もいいけど

より粟好きなら、「あわぜんざい」もオススメである。