月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

チャーミングなメンツと、ぼたん鍋!

2015-02-10 18:53:55 | ご機嫌な人たち




少し前のことである。
珍しいメンツだったし、愉しかったから記しておこうと思う。
以前での勤め先の新年会が4×4で開かれた。

「男女4×4の合コン行ってくる」と出掛けに夫に告げたら、
「僕そんなことしたことない…」と羨ましそうだった。

会社を退職して、もう13年も経ったのだなと思う。
メンバーと会うのは、退職して2回目。
一番の若手が42歳の男子(あえて男子といおう)
長老が72歳の男子(心は一番純粋な人ではないだろうか)。

男子はプランナーの方以外は全員がデザイナーさん。もしくはイラストを描いていらっしゃる。全員現役というのが素晴らしい。

気取りも飾りもない。
なのに、こんなに格好良く年齢を重ねられるものなんだね。
それぞれの分野にほどよくおたくで、博学多才。


言葉ひとつひとつが丁寧だし、軽滑りしない。深みがある。
1文に必ずといっていいほどユーモア(笑い)を織りまぜて会話される。

対して女子は、サバサバしているなぁ。人やモノへの観察力に優れ、指摘が鋭い。そんな男女に共通して言えるのは、皆、底辺のところで「親切」だということ。

フランソワーズ・サガンへのインタビュー記事で彼女が答えていた。
昨日お風呂で読んだ下りだ。

―――どういう人がお好きですか?―――
単純に見えるかもしれませんが、私は自分の本当の姿以外の姿を人に見せようとしない人が好きです。そういう人はかならず利口で、
内面的にはある意味で幸福で、ある意味で親切です。私は親切な人がとても、とても好きです。

――どういう人が嫌いですか?ー
寛容でない人。心配事のない人。真実を握っているような顔をしている人。ばかな人とは退屈します。
その愚かさの混じった自信というのが満足できないのです。うんざりします。私は被害者ぶっている人やインテリぶっている人、
本当におしゃべりな人は嫌いです。



御影から車で5分のマンションに暮らされている家の主は、
奥さんと離婚して1人で暮らしていらっしゃるのだが、
女性が見惚れるほど、「いいもの、好きなものだけ。ほんの少し」という、
ミニマムな生活を実践されている。
玄関と廊下には文庫本の書棚がズラリ。
彼が描くイラスト画(風景画)で白い壁は埋められて。
トイレには、懐かしいステーション(古駅)のミニチュアなどが
ポンと置かれていたりして。


また我々の荷物置き場は、彼の寝室となっているのだが、
男性の寝室!!!と頬を赤らめることもなし。清潔でホテルの1室のような紀律正しさがあるベッドルームだった。
あと仕事部屋にしている港が見える高台のアトリエ。
キッチン・ダイニングから続く和室。

掃除が行き届いていて、どの棚を開けても、流し台を開けても、
調理器具や器が少しだけ。使いやすい位置に静かに置いてあるだけだ。

この主は、これまた料理が趣味?というほどおいしいものを作る人だ。

この日のメインは、丹波篠山から取り寄せた、猪肉で作る恒例の「ぼたん鍋」。そして、その日作った素朴な男の料理がズラリとテーブルを飾る。
蒸し豚肉、ブリ大根、牛蒡とこんにゃくのきんぴら、大根皮の酢の物、子持ちシシャモの丸天ぷら…などなど。















素材本来の旨みを引き出すためにと、砂糖は使わないし、ダシ汁もとらないで、こんな美味しい料理を仕上げるナンテやっぱ凄いなぁ。
食べても食べても舌が飽きない、素朴で力のあるお料理だった。

この日は、吟醸純米酒と純米酒が10本以上開いた。
ビールもいいが、やはり日本酒だなぁ。こういう場合には。
私も最初ペースは落としていたが、後半ぐいぐい飲む。

12時くらいに飲み始めて、8時のお開きまでずっと飲んでいた。
手製の棚から好きなぐい飲みを選んで、旨い日本酒を注いでもらう。




白味噌・八丁味噌などを使うダシ汁が、香りよく深い味。
脂身の少ないおいしい猪肉とこのダシだけでも、すこぶる、ごちそう。
それに日本酒。

誰も遠慮はしないので猪肉を次から次に入れても、すぐに無くなってしまうほど盛況だった。
箸があちらからも、こちらからも。







そして会話!!!
今、振り返って感じるのは、年齢を経るごとに会話は磨かなければということ。
1つの話題をとことん深掘りできて、それをまた深掘りできる人の会話って、
1冊の専門書を読むほどの満足感があるということ。
覚えていられないのが残念だけど。総じてウイットに富んでいた。

男子も女子もチャーミングでなければ、ね!
これって天性なのかしら。
それとも後天的に培われるものかしら。

私が関わってきた先輩方というのは、マニアック!!な会話がほどよくできる、チャーミングな人が多い。きれいな大人なのである。

42歳の若者しかりである。「壁ドン」の定義を、あれだけ深堀で論じられるのもアホみたいに面白かった。

「春画」の専門書も見せてもらったし、なぜ作家がこうして赤裸々に人を諷した絵を描くのか(家の主が描いた春画があったが私は見ていない)、という話も
私には未体験すぎて非常に新鮮な領域なのであった。


もっともっと専門性を深掘りしないと、つまらない大人になるなぁーー。
ディテールを、その繊細を自分のフィルターを通して丁寧に語れること。
面白く語れること。内なるものを、外へ外へと発散させる勢い!力量!
これには愉しい仲間を側においていないと…ね。 

私ってある意味、何歳になっても素人っぽさというか、青っぽいところのある人なんだけれど。このままいくと、危ないなぁ。怖いなぁ。
最近、富に不精者だし。

つまらなく孤独な老人とチャーミングな老紳士・不良淑女は明らかに違うのだから。

自分の世界感って、想像的で広がりがないと。やっぱチャーミングにはなれないよね。