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細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

土木学会 イブニングシアター

2015-11-25 15:08:43 | 趣味のこと

昨夜、YNU土木の見学会企画としては初めての試みだったのですが、土木学会のイブニングシアターに参加しました。

私以外に6名の男子学生と、飛び入り?のOGも1人が参加してくれました。 OGは、いまだにYNU見学会ブログ等も見てくれているようで、それもうれしく思いました。

昨日は第87回のイブニングシアターだったそうですが、土木学会でのイブニングシアターには初めて参加しました。

非常に秀逸な内容で、トルコのボスポラス海峡鉄道トンネルで現場所長をされた大成建設の今石さんのお話から始まり、ボスポラス海峡の工事記録の動画、明石海峡大橋の上部工の記録映画、昭和17年に鉄道の運行を開始した関門トンネルの記録映画、を堪能しました。大変に感銘を受けました。

鑑賞後、東京駅近くの餃子、中華の店で、男子生徒6名と懇親会。私はベトナムから帰国した日で睡眠時間も2時間程度だったので極めて疲れていましたが、心地よい談議に話が咲きました。

土木史を講義で教えているものにとっても大変に貴重な、楽しい勉強の場となります。

今後も、自分自身のためにも、また学生たちのためにも、活用していきたい場です。皆さんもぜひどうぞ。

 


ストック効果

2015-11-25 14:45:18 | 人生論

一つ一つの仕事をできる範囲で誠実に行うしかない、というのがいつもの結論ではあるのですが、なぜ?という話になると、「ストック効果」というのが物の見方の参考になるかと思います。

土木学会の全国大会の全体討論会で紹介されていた、「社会資本の効果」について。

1. 社会資本のフロー効果
(公共事業の事業実施に伴うお金の動きにより、生産、雇用、消費等の経済活動が派生的に創出され、経済全体が拡大する効果)

生産活動の創出 → 雇用の誘発 → 所得増加による消費の拡大。

上記のフロー効果にばかり注目が集まりますが、実は社会資本の真骨頂は、以下のストック効果、です。

2. 社会資本のストック効果

(1) 安全・安心効果 (地震、津波、洪水等への災害安全性を向上させ、安全・安心を確保する効果)

(2) 生活の質の向上効果 (衛生状態の改善、生活アメニティの向上などの生活水準の向上に寄与し、生活の質を高める効果)

(3) 生産拡大効果 (移動時間の短縮、輸送費の低下等によって経済活動の生産性を向上させ、経済成長をもたらす効果)

++++

そして、ストック効果の威力の大きいのは、社会資本が供用される間、ずっと効果が継続する、ということなのです。

紀元前6世紀につくられたエトルリアの灌漑用トンネルは長さ1200mもあるものですが、現在でも機能しているそうです。

1670年に貫通した箱根用水(深良用水)のトンネルは1280mですが、この事業は投資としては失敗したそうで、請負人は失意のうちに立ち去ってしまったそうです。しかし、この箱根用水は深良川周辺で米6000石の増収をもたらし、村は後代に至るまでその恵みを享受した、とのことです。事業としては失敗、すなわちフロー効果は十分に発揮されなかったのだけど、ストック効果は著しかったわけです。米1石は、人間一人が一年間で食す米の量です。現代の私たちは、公共事業のフロー効果ばかり気にしてはいないでしょうか。無駄だ無駄だと騒ぐ人たちは、本当に歴史のことを知っているでしょうか。

さて、社会資本と自分自身の生活を比べるのはおこがましいかもしれませんが、個人の生活においても、誠実に生きることのストック効果は無視できません。

面倒くさいとは思うときも無くはないですが、外部での講演の準備や、講義資料の準備も、そのときどきの自分の実力、知識を反映したものを造っておくと、それが本質的なものであるならば、様々な状況で活用することが可能になります。上記ストック効果の(2)と(3)でしょうか。

様々な外力が個人にも襲いかかりますが、ストック効果により、多少は安全・安心な気持ちで荒波に向かっていくことも可能になります。

怒涛の秋学期も、あと1ヵ月で年末年始の小休止です。その間も様々な活動をすることになりますが、一つでも二つでも、優良なストックを築けるよう、地道ですが努力を重ねたいと思います。