80年代Cafe

80年代を中心に、70年代後半~90年代位の懐かしいもの置いてます。
あなたにとって80年代はどんな時代でしたか。

べーしっ君 四コマアニメDVD・アスキー/ネオプレックス・エンジン

2017-01-31 01:31:17 | 映画・DVD・CD

 べーしっ君は、アスキー発行のPC誌、ログインに1984年より連載が開始され、MSXマガジンやファミコン通信にも連載されていた荒井清和氏の四コマ漫画。最近になって復刻版やグッズ等が発売されるなど、再注目を集めている。こちらは、2003年にたのみこむの企画で受注生産が決定して発売された、べーしっ君をOVA化したべーしっ君 四コマアニメDVD①


 物語は、マイコンに興味を持つ中学生の目森べーしっとその父の目森二五六(みごろ)、姉の目森エリア、友人(ライバル)の近藤ましんご臣、ガールフレンドの可愛ろり子などを中心とした、80年代当時のPCネタ、ファミコンネタ、ゲームライフを描いている。巨人の星をパロディにした漫画で、シュールなネタや駄洒落、意味のない擬音など、脱力系の落ちが多かった。そのちょっと斜め上を向いたような作風が、当時のログイン誌をはじめとするアスキーの雑誌のノリにあっていたと思います。


 DVD版のほうは、べーしっ君の四コマ漫画を30本収録している。アニメ化、OVA化とはいっても、フルカラーでべーしっ君が動くというようなものではなく、四コマ漫画そのままの画像に、エフェクトで動きやせりふを表示しているといったもの。注文数300本ほどで生産が決定されたようで、アニメスタジオが製作した本格的なものというよりは、PCで製作したといった感じ。ちなみに①とナンバーは付いているが、これのみで完結している。声優の加藤精三氏がお亡くなりになった今となっては、二度と実現しない企画なので、そういった意味でも永久保存版となっている。


 このOVAの一番の売りは、べーしっ君に古谷徹氏、べーしっ君の父に加藤精三氏と、巨人の星親子コンビを起用している点。べーしっ君は巨人の星のパロディという側面をもっているので、これが実現しなかったら、このOVAの価値が半減していたかも。古谷氏がよく引き受けてくれたなという感じもしますが、古谷氏はMSXマガジン誌のインタビューにて、MSXユーザーだったことを明かしており、PCマニアでもあるため、べーしっ君をやることにも、特に違和感はなかったのかも。すぽーんとかすぽぽぽーんなど、べーしっ君独特の擬音も、古谷氏がセリフで再現してくれています。もうひとつの売りは、本編より長い作者の荒井清和氏のインタビューが収められていること。


 当時、PCは最先端のホビーであったし、日本のビルゲイツとも言われた西和彦氏率いるアスキーも最先端の会社であった。最新ゲームの紹介記事や技術的な記事を読み漁った後に、箸休めのような存在として読者コーナーに掲載されるべーしっ君やのんきな父さんを楽しみにしていた。べーしっ君には、アスキー編集部を舞台とした楽屋落ちのような話も多いため、当時の雰囲気を今に良く伝えてくるように思います。


 タオルやTシャツなど、べーしっ君のグッズも発売されているけれど、これも一種のファングッズとでもいうべきものといえるでしょう。当時もののアスキーコミックの単行本はプチプレミアが付いているし、べーしっ君 完全復刻版も1,700円ほどと高めなので、何より中古で1円くらいから入手できるという価格が嬉しい。ログインやMSXマガジン、80年代のファミ通などを読んでいた人にお勧め。

参考:Wiki べーしっ君の項、MSXマガジン永久保存版、蘇るPC-9801伝説、それは悲しいくらいのピンク色だった/べーしっ君擬音集

BABYMETAL、METAL RESISTANCE・BABYMETAL/BMD FOX RECORDS(TOY'S FACTORY)

2017-01-07 12:34:13 | 映画・DVD・CD

 こちらは、昨年2016年に発売された2ndアルバムMETAL RESISTANCEが、全米総合アルバムチャート(Billboard 200)で39位を記録し、坂本九以来53年ぶりの快挙となったことが話題となった日本のメタルグループBABYMETALの1st、2ndアルバム。BABYMETALは、2010年にアイドルとメタルの融合を掲げて結成されたティーンの女の子3人組によるヘヴィメタル・ダンスユニット。あちこちで話題となっていたため、その名前は知っていたのだが、そもそも現在のアイドルの楽曲自体を聞かないので、特に注目したり曲を聴くこともなかった。それが何かのきっかけでライブ動画を見ていて、なぜ海外で受けているのかその理由が少しだけ理解できたためアルバムを入手した。


 元々BABYMETALとは、アミューズのローティーンアイドルさくら学園内の企画ものユニットとして登場した。同社に所属するPerfumeがアイドルとテクノの融合を掲げて成功していたことと、プロデューサーのKOBAMETALがメタル好きであったことから企画された。最初の楽曲ド・キ・ド・キ☆モーニングはコアなアイドルファンに話題となった程度で、広く知られることはなかった。ただし、この時点からYouTubu上では海外よりのアクセスが多かったそう。2012年にはヘドバンギャー!!、2013年にはメジャーデビュー曲イジメ、ダメ、ゼッタイ、続いて今やBABYMETALのアイコンとなった狐をテーマとしたメギツネを発表と順調に楽曲をリリースしていく。日本国内のツアーやロックフェスにも出演し、2013年には14.7歳という武道館公演の女性最年少記録を更新している。2014年には海外ツアーもスタートし、中でも転機となったのはyoutube上にギミチョコ!!の映像が公開されたこと。これが海外より注目され異常な再生回数を記録する。これをきっかけとしてレディー・ガガの北米ツアーのオープニングアクトに抜擢される。また、海外のロックフェスSonisphere Festivalに招待され、6万人の観客を魅了する。これを境として、海外での評価が飛躍的に高まり、単なる企画ものではなく新しいメタルの潮流として認知されることになる。


 2014年に発売されたファーストBABYMETALの海外(UK)版。彼女らの凄い点は、楽曲をほとんどすべて日本語で押し通していること。また、アイドルのCDだというのに写真すら掲載されていない。海外版では、日本語の歌詞カードと訳詩ではなくローマ字による日本語の歌詞カードが付いている。元々、歌詞を意味ではなく、音の響きとして使っているそうで、日本語が理解できたとしてもあまり意味はわからない曲が多い。


 2015年からは海外ツアーを積極的に行い、海外老舗メタル雑誌の表紙を飾るようになる。2016年からは更に加速して、2月に配信シングルKARATEをリリース、4月には2ndアルバムMETAL RESISTANCEを発表する。続いて英国の12000人規模のウェンブリー・アリーナで日本人としては初の公演を行い、同会場内での史上歴代1位となるマーチャンダイズの販売記録を更新する。7月には米国の雑誌オルタナティヴ・プレスが主催するAlternative Press Music Awards 2016に出演、メタルゴッドの愛称で知られるJudas PriestのRob Halfordと共演する。9月にはワールドツアーの最終として東京ドーム2日間公演を成功させている。12月にはRED HOT CHILI PEPPERSのUKツアーにゲストアクトとして帯同、2017年にはGUNS N' ROSES日本公演の前座、METALLICA韓国公演の前座が決定しており、最新の情報として4月からのRED HOT CHILI PEPPERSのUSツアーへの参加も発表された。また米ワーナー・ブラザースによるアニメ化も予定されている。


 個人的には、特に洋楽に詳しいというわけでもないのですが、90年代に入った頃に友達に影響されて聞くようになった。世界史、思想史を勉強するのと同じように、ロック史に付いてもお勉強をした。


 これらロック史の偉人のエピソードの数々は、過ぎ去った遠い過去の物語、遠い国でおこった伝説であるかのように感じられた。そのような場所に、日本のそれもティーンの女の子3人組のバンドが登場してくるとは、想像もできなかった。ヘヴィメタルは、70年代に誕生し80年代に全盛を迎えたジャンルで、日本より人気が根付いている海外でもコアなリスナーは40代~50代~(の特に白人男性)といったところらしい。BABYMETALの登場は、驚きと拒絶の両方の反応を引き出したようで、未だに評価が両極端に分かれるらしい。


 どんどん複雑になり芸術寄りになっていくハードロックやプログレッシヴ・ロックへのアンチテーゼとして、70年代の末に登場してきたSex Pistolsの勝手にしやがれ!!Never Mind the Bollocks。そもそもロックとは、社会の主流派、体制側への反抗、反逆のシンボルとしても機能してきた。そういった意味では、BABYMETALはどんどん細分化してゆき複雑になっていたヘヴィメタルへの最大の破壊者なのかも。実際には、高齢化してきていたリスナーの間口を広げる、若い人への導入口としても期待されているらしい。


 多くの人は、初見でなんじゃこりゃと感じるみたい。そこからいくつかの動画を見ていく過程で、①バックバンドの驚異的な演奏力に気付く、②ヘヴィメタルの爆音にかき消されることもなく、重低音を切り裂いて突き抜けるボーカルの声の特異性に気付く、③デビュー時のローティーンの頃から何百回と繰り返しただろうバックダンスやパフォーマンスの完成度の高さに気付くというプロセスを辿る様です。つまり、なぜ海外でそれも日本語で歌って受け入れられたかというと、単純に質が高かったからだろうということになります。


 海外のアンチの意見として根強いのは、彼女らは自分で楽器を演奏していない、楽曲を作っていない、資本により作られたギミックじゃないかというもの。特にロックは、アーティストの主張に共感してファンになることが多いという点からすると、そこが本物ではないということらしい。ただ、ローティーンの女の子たちがヘヴィメタルを聞き込んでいるわけもないし、自分で作詞作曲をしたり、超絶的な演奏を披露することを期待する方が無理がある。それぞれの専門家が互いの専門に特化したものを持ち寄って、より完成度の高いものが作られたとしたら、そのほうが自然だと思われます。ちなみにBABYMETALの振り付けは、Perfumeやリオ五輪閉会式、恋ダンスを担当したMIKIKO氏。


 BABYMETALを最初に見た海外の人の反応が面白く、Amazing!!、わけがわからない、日本にしかこんな狂ったものは作れない、Fuckinすげえとか、そういう反応が多い。METALにJ-POP(アイドル)の要素を持ち込んだこと、ダンスを組み合わせたこと、日本の民謡やカラオケ文化のような合いの手を持ち込んだことなどが新鮮に映っているようです。このよくわからない多幸感(UK)や、意味は分からないままに蹴飛ばされて走り続けるような疾走感(Switzerland)を見ていると、なぜ受け入れられたのかなんとなく分かってくる。メタルに限らず、ユーロビートやらラップやらレゲエやら入ってて、わけわかんないけど楽しいよね(mexico city)感は伝わってくる。


 BABYMETALが、海外で最初に大きく認識されたSonisphere Festivalは、Sonisphereの奇跡と呼ばれる。招待をした主催者側でもこれほど受けるとは思っていなかった様で、最初は小さなテントで演奏してもらう予定だったものが、反響が大きかったため急遽メインステージに格上げされたのだそう。日本好き、アニメ好きが集まるジャパンフェスティバルのような場所ではなく、演奏が気に入らないと容赦なく小便入りのペットボトルが飛んでくるようなガチのメタルフェスティバルの会場で、当時15歳~16歳の日本人の女の子たちが見せたパフォーマンスは、遠い過去の伝説でもなく現在進行形で進んでいるまさに奇跡なのだと思います。そういった意味でも、昔ハードロックやヘビメタなどにはまっていた年代(おっさん)の方が、彼女たちの凄さはより理解できる(泣けてくる)のかもしれません。


 なんだか、このままロック史に残る名盤になっちゃいそうな楽しい2枚。昔、ロック少年、ヘビメタ青年であったおっさん世代にもお勧めDEATH。

参考:Wiki BABYMETALの項、Youtube BABYMETAL公式チャンネル、ハワイとプログレとBABYMETAL、BABYMETALまとめ、ロック・ピープル101・佐藤 良明/柴田 元幸・新書館

アーケードゲーマー ふぶき COLLECTION・吉崎観音/バンダイビジュアル

2016-08-02 16:43:59 | 映画・DVD・CD

 アーケードゲーマー ふぶきは、ケロロ軍曹の吉崎観音氏が1998年~1999年頃に月刊ファミ通Wave、ファミ通ブロス誌上で連載していた漫画。


 物語は、普通の中学生だった桜ヶ咲ふぶきが、ある時に謎の人からパッション・パンティをもらう。このパンティは、その力を発動するとゲーム魂が宿り、ゲームをする際に必殺技が使えるようになるというものだった・・・。漫画の好評を受けて、2002年から2003年にかけてアーケードゲーマー ふぶき①~④巻としてOVA化された。2006年に発売されたアーケードゲーマー ふぶき COLLECTIONは、それまでの①~④巻までの作品を一本にまとめて収録したコレクション版。これ以外にも、バラで発売された①~④巻までをまとめて収納できるBOXと特典DVD1枚をセットにしたアーケードゲーマーふぶき 一撃でクリアー BOXというのが発売されている。


 OVA版では、原作では全18話の話を4巻にまとめてあるわけですから、細部が色々と異なっています。原作では、ふぶきと友人の国分寺花子の学校とゲーセンでの日常的な生活を描いた話がメインで、最終話付近で世界ゲーム大会が開かれるという展開になっています。OVA版ではゲーム大会の日本予選にふぶきが参加し、そこから勝ち進んでいく中で原作にも登場したライバルキャラが絡んでいくというようになっています。


 OVA版について特筆すべきは、セガと日本物産、すがやみつる氏協力の元、実在のゲームがOVA内に登場しているというところ。ベスト・オブ・アーケードゲーマ(世界ゲーム大会)の予選が日本で行われ、最初のバトルは中野サンプラザの壁を使用した特設ステージに日本物産の1980年のアーケードゲーム・クレージークライマーで勝負をするという展開。しかもその筐体はバンダイのLSIゲーム・クレージークライミングを模したものという、どんだけマニアックなんだよという設定になっています。この後も、ファンタジーゾーン(86)、ムーンクレスタ(80)、トランキライザーガン(80)、バーチャファイター(93)など、実在のゲームを使ってのゲームバトルが繰り広げられます。声の出演にも、キーとなる人物に古谷徹氏、藤岡弘、氏などの豪華なキャストがあてられている。アーケードゲーマーふぶきは、ゲームセンターあらしのオマージュ漫画として有名ですが、OVA版では原作に登場したキャラやエピソードなどを上手くストーリの中に盛り込みながら、ラストの方ではオリジナルの展開に変更されている。藤岡弘、氏を起用している点、漫画の連載時期が1998年~1999年だったこと、セガが協力していることなどから、これも当時を知る者にとっては、感涙ものの一種のパロデイ的な展開になっている。


 こちらは、ユージン版の桜ヶ咲ふぶき。ふぶきの必殺技一撃でクリアを再現。ちなみにこの筐体は、クレージークライマーのものでOVA一巻に登場する中野サンプラザでのクレージークライマー勝負の時のものを再現している。前述のように、この筐体の元ネタはバンダイの電子ゲームであるFLクレイジークライミング。


 すがやみつる先生協力の元、ゲームセンターあらしオマージュ漫画ということであらしも謎の人さんとして登場。原作では、クライマックスのラストシーンでゲームに対する万感の思いのこもった一撃を披露したが、OVA版では最初から登場している。少年時代のあらしと、現代の謎の人さんとして、全編に渡って活躍を見せる。


 ふぶきのライバルである十文字ちづる。ギュラシック四天王の1人で、人呼んでシューターちづる。ディグダグのプーカを模したゴーグルがお洒落。


 金髪アメリカ女性のゲーマーメロディー・ハニー。同じ吉崎観音作品のケロロ軍曹にも登場している。お笑い好きで、ライバルとして登場しつつも、わりと中立的なキャラとなっている。作品内では、明るい天然なキャラだった。もちろんOVA版にも登場している。ノーブラボイン撃ちとかやれそう。


 こちらは、ふぶきと親友の国分寺花子のコンビ。この2人設定としては、女子中学生。ルーズソックスが流行っていた90年代末頃の話なので、今だと30歳過ぎか。時が過ぎるのは、早いですね。


 あらしとふぶきの直接対決。ちなみに何故、筐体の上に倒立しているかというと、あらしのエピソード内で飛行船の中での勝負があり、揺れる不安定な中、筐体と一体化することでそれを克服したという話があるから。ここから、ムーンサルトに発展した。CGを使って数々の必殺技を再現した実写版あらしとかあれば楽しそう。ピクセルのような企画を日本でやる場合、あらしかふぶきの実写版をやって欲しい。


 漫画版は、ケロロの吉崎氏の作品ということで有名ですが、OVA版も出色の出来。作られたのが、もうちょっと後だったら発売元のバンダイとナムコが一緒になっていますので、パックマンやラリーXなどのナムコゲームも登場してきたのかなと思うと、そこだけが惜しい点。今からだと、4巻まとめたアーケードゲーマー ふぶき COLLECTIONが出ていますので、こちらの方が入手しやすい。


 個人的には、連載当時アーケードゲーマー ふぶきは知らなかった。この1998~1999年頃には、ファミ通とかゲーム雑誌はもう買っていなかったので。OVA版に関してもネット上でタイトルだけ知っていて、テレビ放映されたものかなと思っていた。90年代末に約15年ぶりくらいに、一種のオマージュとしてあらしが復活したことになる。この作品には大人になったあらしが出ているなど、オリジナルのあらし世界とはパラレルワールドのような関係になっている。この頃でも、懐かしいレトロゲームを扱った漫画として当時を知るファン向けに作られ受けたものだと思いますが、そこから更に15年以上が経過してしまっています。今となっては、昭和だったあらしの世界も懐かしいし、ルーズソックスのふぶきの時代も懐かしいという、2重の入れ子構造のような関係になっているのかなと思います。



参考:アーケードゲーマーふぶき/吉崎観音・エンターブレイン、ゲームセンターあらし/すがやみつる、Wiki アーケードゲーマーふぶきの項

ピクセル Pixels・ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

2016-07-23 22:02:26 | 映画・DVD・CD

 ピクセル Pixelsは、2015年9月に公開されたアメリカ映画。80年代のゲームキャラが現実化して、街を襲ってくるという奇想天外な話を、ハリウッドが約100億円という金額をかけて実現してしまった作品。


 物語は、1982年にNASAが宇宙に送った友好のメッセージには82年の全米のゲーム大会の記録が収められていた。2015年になって突然、その友好のメッセージを誤解した宇宙人が、メッセージに収められていたゲームキャラを再現して地球に来襲してくる。未知の宇宙人から挑まれたゲーム勝負には、米軍もまるで歯が立たない。そこでゲーム大会の元世界チャンピオンで、現在ではさえないオタクおやじとなった主人公たちが救世主として召集される…。元ネタは、2010年に映像作家のパトリック・ジャン氏が作った2分半ほどの短編映像が原作。古いテレビから登場したゲームキャラが町へと襲来し、やがて世界をゲームのようなキューブ状のドットで作られた世界へと変えてしまう。


 ゲームに興味のない人、あるいはこの時期のゲームについて知らない人にとっては、なにがなんだかという映画ですが、80年代のゲーム好き、映画好きな層にとっては、中学生の妄想をそのまま実写映画化したような夢のような作品。世界的にも大変な反響を呼んで243,700,000ドル(約260億円)という大ヒットとなった。


 主演は、全米の最も稼いだ男優ランキング常連のアダム・サンドラー氏。よくこんな映画に出演してくれたなと思いきや、自身が製作も務めている。1966年生まれなので、世代的にもドンピシャなのでしょう。監督は、グレムリン、グーニーズの脚本、ホームアローン、ハリーポッターシリーズの監督を務めたクリス・コロンバス氏。ということで、B級映画っぽい設定ですが、実は超豪華な布陣で作られたハリウッドA級の作品ということになります。


 登場してくるゲームキャラも架空のものではなく、実際にゲームメーカーに許諾を得て実在する有名作品が使われている。代表的なところでは、米国のATARI社からセンチピード、ミサイルコマンド、ペーパーボーイ、ナムコからパックマン、ギャラガ、ディグダグ、タイトーからスペースインベーダー、アルカノイド、任天堂からドンキーコング、ダックハント、コナミからフロッガー、その他にもQバート(パーカー・ブラザーズ)、テトリス(アレクセイ・パジトノフ)、ディフェンダー(ウィリアムス)、ロボトロン2084(ウィリアムス)、ジャウスト(ウィリアムス/バルーン・ファイトの元ネタ)、バーガータイム(データイースト)などが登場している。以下ネタばれがあります。


 友好のメッセージを誤解した宇宙人は、メッセージに収められていたゲームキャラに姿を変え、ネタ元となったゲームのルールに則ったゲーム勝負を地球人に仕掛けてきます。一本目は、米軍グアム基地を襲ったギャラガ勝負。これは、何がなんだか分からないうちに一方的に負けてしまう。二本目は、インドの宮殿を襲ったアルカノイド。ここまできて、ようやく地球人側にも事態が飲み込めてきます。三本目は、当時のゲームを良く知るゲームオタクに救援を頼んだセンチピード勝負。元ネタは、1980年製作の米ATARI社のきのこ畑をあらすムカデ退治のシューティングゲーム。


 アメリカ映画なので、ATARI社やウイリアムス社などの日本人には馴染みのないゲームも数多く登場する。アメリカ市場向けに作られているので仕方がないが、ある程度マニアな人でないと分かりにくい部分。逆にナムコのパックマンやコナミのフロッガー、データイーストのハンバーガーなどは、日本以上にアメリカで人気が出たため、アメリカ人に受けるポイントとしてしっかりと入っている。


 四本目は、市街地で車を使ったパックマン勝負。パックマンの生みの親である元ナムコの岩谷徹氏が岩谷教授として登場。岩谷徹氏本人もオープニングにちらっとカメオ出演している。


 アメリカではパックマンは、テレビアニメ化されるほどの有名なキャラクターで、日本よりも圧倒的な人気を誇っている。そのため、劇中のパックマンも敵役として登場するが人は襲わないとか色々と配慮して作られているそう。


 パックマン勝負に勝った景品としてQバートが登場。味方側のキャラとしてマスコット的な扱いになる。ここで、ひとつのエピソードとして、オタクの一人が子供の頃に惚れ込んだドージョークエストという架空のゲーム内のキャラとのバトルが入る。ここは、ちょっと惜しいところで、ワルキューレとかワンダーモモとか、アテナとか、麻宮アテナ(サイコソルジャー)とか幾らでもいそうな気がするけど。一応82年縛りがあるし、これらはアメリカでは人気、知名度ともないため仕方のないところでしょうか。


 ラスボスはこの方。堂々の登場。ドンキーコング版のマリオも市街地を襲来するシーンでちょこっと写っている。すべてCGで作られていると思いきや、メイキングを見ると俳優が演技するステージの方は実物大のセットが作られている。日本だと予算の問題ですべてCGでやると思いますが、リアリティを重視するハリウッド映画ではCGを使うシーンでも実際のセットも併用することが多いよう。


 ということで、ゲームオタクの友人の一人が大統領になっているなど、脚本はかなりご都合主義で、オタクを戦場に立たせるためだけに無茶な設定になっている部分も多い。映画を見た人からの不評の原因も、それらの脚本や物語の流れによるもの。ただ、元々がゲームキャラに扮した宇宙人が攻めて来るという荒唐無稽な話なので、スムーズに物語が進んでくれれば、脚本の矛盾点などはそれほど気になりません。それよりも惜しいのが、登場するゲームキャラが少ないということ。一応82年のゲーム大会からのメッセージを元にしているという縛りがありますが、テトリス(84年)、ペーパーボーイ(84年)、アルカノイド(86年)と例外があって、矛盾が見られます。それならば、いっそスーパーマリオやゼルダの伝説、グラディウス、ラリーX、ボスコニアンなどもっと詰め込んで欲しかったところ。ディグダグが万里の長城を侵食するというネタが中国への配慮で削られてしまったため、余計にそう感じてしまうのでしょう。


 そうはいっても、小中学生の頃に誰しも抱いた妄想を100億もかけて具現化してくれた遊び心に対して個人的評価は星★★★★。Queenを初めとする80年代の楽曲が散りばめられている点、82年縛りでゲームキャラを出し渋ったのも、続編のためかもという期待をこめて星★★★★★とします。この頃のゲームに思い出がある人、ファミコン好き、ATARI好き、任天堂好きな人にはお勧め。

参考:Wiki ピクセル(映画)、アダム・サンドラー、クリス・コロンバス、ATARI、ウイリアムス、センチピード、ドンキーコング、ペーパーボーイ、ロボトロン2084、ジャウスト、Qバートの項、パトリック・ジャン氏の公式サイト、OLD GAMERS HISTORY Vol.5 アクションゲーム黎明期編・メディア・パル

ラビリンス 魔王の迷宮 Labyrinth・ソニーピクチャーズエンターテイメント

2016-06-08 16:24:36 | 映画・DVD・CD

 ラビリンス 魔王の迷宮 Labyrinthは、1986年に製作されたファンタジー映画。1982年に公開されたダーククリスタル The Dark Crystalに続いて製作され、主人公、魔王以外のキャラクターがほとんどマペットにより演じられている。


 この当時、すでにカリスマ的な人気を誇っていたデビット・ボウイが、主演、楽曲の提供をしたことで話題となった作品。主人公のサラ役には、当時まだ15歳で売り出し中の新進女優だったジェニファー・コネリーが抜擢されている。製作は、ジョージ・ルーカスで製作会社はルーカスフィルム 、監督はモペット操者の第一人者だったジム・ヘンソン。2016年1月にデビッド・ボウイが亡くなった事を受けて、最近になってリメイクの噂が出るなどもあったようです。


 制作費は2500万ドルに対して、興行収入は1300万ドルほどと、当時としてはそれほどヒットしなかった。ただ、その後ビデオ化やDVD化などを経てカルトな人気を獲得しており、今日では再評価もされているのだそう。前述のリメイクの話もそうですが、こんなものも発売されるみたいで、ずいぶん昔の過去の作品だと思っていたらそうでもなかった。ちなみに、日本では当時RPGやファンタジーがブームだったため、ファミコンやMSX2でゲーム化されており、映画もそこそこの人気を得ていた。


 物語は、15歳の少女サラが継母より腹違いの弟(赤ちゃん)の子守を任されたことより始まる。泣き止まない赤ん坊に業を煮やしたサラは、赤ん坊をどこかに連れ去ってもらおうと愛読書に書かれていたゴブリンの王を呼び出す呪文を唱えてしまう。呪文により呼び出されたゴブリンの王ジャレスは、サラの希望通りに赤ん坊を自分の支配するゴブリンシティの城へと連れ去ってしまう。サラが弟を連れ戻すためには、13時間以内にラビリンスを抜けて、魔王の城まで到達しなければならない・・・。


 DVDのコレクターズエディションには、当時のメイキングやイメージスケッチ、ストーリーボードなど製作過程について記された、色々な特典が付いている。CGは主にオープニングの梟にのみ使われ、そのほとんどは、マペットや巨大なセット、マットペイントなど当時のSFXを駆使して作られている。


 劇中に登場するゴブリンのデザインは、ファンタジーのイラストを得意とするイラストレーターのブライアン・フロウドの手によるもの。ちなみにサラの弟トビーを演じたトビー・フロウドは、ブライアンの息子。


 ラビリンスというタイトル通り、迷宮探索を主なテーマのひとつにしており、天井の無いオープンフィールドの迷路から、ひたすら直線が続く悪夢のような迷路、植木を刈り込んだ庭園型の迷路、下水道風の地下通路、壁が警告してくる地下のダンジョンまで、様々なタイプの迷路が登場する。それだけではなく1人はいつも正直で、もう1人はウソしか言わない扉や、マウリッツ・エッシャーの相対性(騙し絵)、ルネ・マグリットのトロンプルイユ(錯視)など、精神を惑わせるあらゆる意味での迷路が登場してきます。


 イメージスケッチが作られ、それにあわせてセットが作られる。CGが本格的に使われる前の時代なので、模型やミニチュアを含めて全てが本当に実際に作られている。メイキングを見ると、とんでもない手間や人手、時間をかけて作られているということがわかる。


 74年のダンジョン&ドラゴンズから、80年代初頭のウルティマ、ウィザードリィを経て世界的にファンタジー世界や地下迷宮(ダンジョン)が、注目を集めていた頃でしたから、それらのファンタジー世界の実写化という意味もあったと思います。


 魔王に毒入りの林檎を食べさせられた事による幻覚により、泡の中の世界でのダンスパーティに参加することになるシーン。こちらも、子供から大人になる前に大人の世界を垣間見るという意味合いで、思春期の精神世界という迷宮を表現していると思う。主要なシーンではデビッドボウイの楽曲がかかり、ミュージカル仕立てとなる。


 こちらは、当時もののVHS。ポスターやサントラなんかも、こちらのイラストを使用していた。


 当時は、この頃ルーカスがよく作っていた子供向けの金のかかったB級映画という印象でした。なぜかルーカスは、ハワード・ザ・ダックとかイウォーク・アドベンチャーとか、Willowだとか、あまり評価されない特撮映画をたくさん作っていた。アクションや剣劇があるわけでなし、迷宮や特撮は良いけれどストーリーは子供向けで退屈な映画といった印象だった。※ここから先は、ネタばれしてます。


 今見ると、不思議の国のアリスやオズの魔法使いといった、異世界を通り抜けることで大人になる少女の通過儀礼を描いた映画だということがわかります。オープニングに出てくるサラの部屋には、オズの魔法使いやこの映画の元ネタである“まどのそとのそのまたむこう”の本が置いてある。マウリッツ・エッシャーの騙し絵が壁にかかっており、劇中に登場するゴブリンたちのぬいぐるみ、それだけでなく魔王らしきフィギュアまで置いてある。つまり、このラビリンス、迷宮とはサラの精神世界を暗喩したものだということがわかる。デビッド・ボウイ扮する魔王は、劇中あれこれと様々な手段でサラを幻惑しますが、最後には、おまえが望むことはすべてしてやった。私を崇拝し、愛してほしい。そうすれば、私は喜んでおまえの僕(しもべ)になろう・・・などと言い出します。あげくにサラにYou have no power over me(あなたは、私に対して何の力もありません)と言われて、梟になってピューっと飛んで逃げて行ってしまいます。 これは、同時に美少女を前にした中年のおじさんの悲哀も描いているんですね。


 デビッド・ボウイは、白のタイツを履いてこの哀愁ある魔王役をノリノリで楽しそうに演じていますから、実にふところが深い。まあ実際には、ジェニファー・コネリーはデビット・ボウイと共演したことから高校では、嫉妬によるいじめにあったそうです。結局、大人の世界を垣間見せてくれる誘惑者への憧れや好奇心と、子供のままファンタジーの世界にいたいサラの葛藤の夢世界ということで、非常にロマンチックな話なんですね。この作品のもうひとつの売りであるゴブリンのデザインや世界観は、イラストレーターのブライアン・フロウによるところが大きい。この方、有名なようでアマゾンでも画集が売っている。


 このブライアン・フロウはイギリスの人なので、そのまんまイギリス製のゲームブック、ファイティングファンタジーの世界観に通じるところもある。日本製のゲームにありがちなアニメ絵ではなく、このような濃いファンタジーの世界の実写化としても楽しめます。日本のような甘いファンタジーではなく、油断するとバクっと喰われそうな、ダーティな闇や暗がりの怖さをも含めたファンタジーの世界。


 ということで、あらためて見直してみると、とても良く出来た作品であるということが理解できる。個人的評価は、星★★★★☆(90点)。ファミコン好きやRPG好き、ウィザードリィ好き、ダンジョン好き、ゲームブック好き、ファンタジーな気持ちを忘れないすべての人にお勧め。

参考:Wiki ラビリンス/魔王の迷宮、デビッド・ボウイ、ジェニファー・コネリー、ジム・ヘンソン、マウリッツ・エッシャー、ルネ・マグリットの項、amass.jp、ミドルエッジ【美少女出身】ジェニファー・コネリー☆ワンス・アポン・ア・タイム~子役出身