80年代Cafe

80年代を中心に、70年代後半~90年代位の懐かしいもの置いてます。
あなたにとって80年代はどんな時代でしたか。

遊園地の記憶・アルバトロス株式会社

2016-04-23 17:59:43 | 映画・DVD・CD

 こちらは、2010年にアルバトロス株式会社より発売されたDVD遊園地の記憶。巨大な遊園地からデパートの屋上遊園地まで、2010年の時点で現存する遊園地を収録している。遊園地とはいっても、ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンのようなメジャーなところは収録しておらず、昔どこかで訪れたようなノスタルジーを誘うところがメインになっている。


 遊園地の宣伝やガイドではなく、実際に観覧車やメリーゴーランドなどの遊具にカメラが乗り込み、記憶の中の遊園地をバーチャル体験できるというような作り。コストの問題もあるのだろうが、ナレーションや解説は最小限で案内役みたいなものもなし。カメラ目線のまま、ひたすら遊園地内を散策する。そのため、実際に自分がその遊園地を訪れているかのような印象になる。平日に遊具を動かしたのか、ほとんど観客の姿がない遊園地ということが、どこかで見たことのある心象風景の中にある場所を訪れているかのような、そんな不思議な効果を生んでいる。


 収録されているのは、よみうりランド、桐生が岡遊園地、大宮公園児童スポーツランド、おやまゆうえんハーヴェストウォーク、小田原城址公園こども遊園地、あらかわ遊園、丸広百貨店わんぱくランド、蒲田東急プラザ プラザランド、浅草花やしき、上野こども遊園地、富士急ハイランド、るなぱあくなど、関東周辺がメイン。現存するところ以外にも閉園してしまった小山ゆうえんち、谷津遊園の資料も収録されている。蒲田東急プラザ プラザランドと丸広百貨店わんぱくランドは、デパートの屋上遊園地。蒲田東急プラザ プラザランドは、2014年3月に閉店となり閉鎖される予定だったそうだが、屋上の観覧車はランドマークとして残されたみたい。丸広百貨店わんぱくランドは、素晴らしいことに現在でも健在。


 ライナーノーツには、2005年に閉園した今は無き小山ゆうえんちの貴重資料も特典として収録と謳われており、桜金造氏のTVCMも収録されている。ちなみに現在では、おやまゆうえんハーヴェストウォークとしてショッピングモールになっているそう。


 観覧車を模したようなデザイン。


 映像は綺麗なのですが、平日の人のいない時間帯を狙ったのか、休園日に取材したのか、ほとんど人がいない無人の遊園地を撮影しているため、どこかおぼろげで、まるで夢の中、記憶の中の遊園地を見ているかのよう。肖像権などの問題もあるからでしょうが、これが幻想的で郷愁を誘う意外な効果を上げている。


 外観からだけでなく、このように実際に乗り物に乗り込んで、遊具をバーチャル体験させてくれる。


 一日遊んで日が暮れて。ディズニーランドではこれからでしょうが、こういった遊園地では閉園の時間。楽しく遊んだ遊具たちは電気を落とされて、お客さんが来るのを明日まで待っていてくれる。


 題材として華があるためか、ゲームにもよく遊園地は登場します。代表的なものといえば、1995年に発表されたアトラクションを設置して遊園地の経営を行うテーマパークシリーズ。製作は、ポピュラスシリーズのピーター・モリニュー氏。大ヒットとなったときめきメモリアルにも、遊園地でデートするシーンがあったり、ファイナルファンタジー7では実際にミニゲームで遊べる仮想の遊園地をゲーム内に作り込んでしまうほどだった。


 こちらは、2015年に辰巳出版より発売された、デパートの屋上や遊園地の遊戯コーナーに設置してあった10円ゲームやエレメカを扱った日本懐かし10円ゲーム大全。こういったアナログなゲームも遊園地には欠かせないものでした。


 少子化の影響でこのようなものが置いてある場所も段々と減ってきているそう。デパートの屋上遊園地などは、もう絶滅寸前といっても良いくらい。昔は子供が多かったので、こういう場所は活気があって集客の意味でも確かに存在する理由があった。今だと、大人が懐かしんで訪れる方が多いくらいなのかも知れません。


 前回、ネタとしてやった電動ライド、ムーバー。これも遊園地の風景には欠かせないものだった。


 このような遊具のルーツはどこから来ているのかはわかりませんが、群馬県前橋市のるなぱあくに置いてある電動木馬は1954年製で、2007年に国の登録有形文化財に登録されているそうです。木製の木馬だと紀元前5世紀頃、回転木馬(メリーゴーランド)だと1860年頃まで遡れるようです。遊園地自体は、遊園地に類似する施設がデンマークで1583年、ロンドンで1661年にオープンしているそうです。かなり昔から存在しているのですね。


 日本近代詩の父と呼ばれる偉大な詩人、萩原朔太郎の作品の中に遊園地(るなぱあく)にてという詩があります。一部抜粋します。

遊園地(るなぱあく)にて

遊園地(るなぱあく)の午後なりき
廻転木馬の目まぐるしく
艶めく紅のごむ風船
群集の上を飛び行けり。

今日の日曜を此所に來りて
われら模擬飛行機の座席に乘れど
側へに思惟するものは寂しきなり。
なになれば君が瞳孔(ひとみ)に
やさしき憂愁をたたへ給ふか。

見よこの飛翔する空の向うに
一つの地平は高く揚り また傾き 低く沈み行かんとす。

明るき四月の外光の中
嬉嬉たる群集の中に混りて
ふたり模擬飛行機の座席に乘れど
君の圓舞曲(わるつ)は遠くして
側へに思惟するものは寂しきなり。

 朔太郎は群馬県前橋市の出身なため、前橋市のるなぱあくは、この詩から名前を採っているそうです。この詩の中に歌われているのは、浅草にあった遊園地なのだとか。この詩が収録されている氷島は1934年(昭和9年)詩人が48歳の時に刊行され、遊園地(るなぱあく)にては昭和6年詩人が45歳の時に発表されている。浅草のルナパークは1911年(明治44年)に閉園されており、詩人は昭和4年に家庭破綻により娘二人を連れて一旦前橋の実家に帰っている。すでに存在していない遊園地で、やさしい憂いをたたえた瞳で詩人を見つめていた人は誰だったのでしょう。年代、時代などは関係なく、いつの時代であっても遊園地とは郷愁を誘う場所なのかも知れませんね。


 それにしてもいろんなDVDがあるものだなと思わせてくれる一本。なかなか目の付け所がすごい企画だと思います。ぜひデパートの屋上の記憶だとか、駄菓子屋の記憶だとか、ドライブインの記憶だとかをやって欲しいと思います。

参考:Wiki 遊園地、木馬、回転木馬(メリーゴーランド)、テーマパーク(ゲーム)、ピーター・モリニュー、小山ゆうえんち、丸広百貨店川越店、萩原朔太郎、るなぱあくの項、東急プラザ/屋上かまたえん公式HP、日本懐かし10円ゲーム大全、萩原朔太郎 遊園地(るなぱあく)にて

マイライフ・アズ・ア・ドッグ・株式会社アイ・ヴィー・シー/CBSソニー

2015-10-02 17:27:42 | 映画・DVD・CD

 マイライフ・アズ・ア・ドッグ(Mitt liv som hund/My Life as a Dog)は、1985年に製作されたスウェーデン映画。日本では、1988年に公開された。


 ジョニー・デップ、レオナルド・デカプリオが共演し話題となったギルバート・グレイプ、ジョニー・デップ主演のショコラ、リチャード・ギア主演で日本のハチ公物語をリメイクしたHACHI 約束の犬などを手がけたラッセ・ハルストレム監督の出世作。スウェーデン映画という、日本ではあまり公開されない国の映画だが、大手の映画会社の製作、配給ではなかったにもかかわらずヒットした。いくつもの賞を受賞するなど、世界的にも高い評価を得ている。


 タイトルにもなっているマイライフ・アズ・ア・ドッグとは、実験のため1957年にソ連の宇宙船スプートニカ2号に乗せられたライカ犬のことを思いながら、「人工衛星に乗せられて死んでいったライカ犬より、僕の人生のほうがまだ幸せだ」と考えて、人生の辛い時期を乗り越えようとしている少年の気持ちを表している。


 物語は、1950年代のスウェーデンの何もない寒村が舞台となっている。主人公イングマルの父親は遠くに出稼ぎに行ったっきり音信不通であり、母親は病で床に臥せっている。他に家族は兄と、愛犬シッカンがいるのだが、母親の病気が重くなってきたため、イングマルは田舎に住む叔父の元へ預けられることになる。叔父のところは、ガラス工場ぐらいしか産業のない、海沿いの田舎の小さな寒村。そこで出会う個性豊かな人々との暮らしが、ゆっくりとイングマルを癒し、変えてゆくことになる。


 ということで、母親の病気が原因で親元から離れて田舎で暮らす少年の話。村の住人には、延々と屋根の修理を続ける人がいたり、ケーブルを使った宇宙船のような乗り物を作る人がいたり、ヌードモデルばかりを描く画家がいたりと、かなり個性豊かで悪く言えば変人みたいな人が多い。ハリウッド映画ではないため、明確なストーリーや感動を呼ぶクライマックスなどはなく、様々な人々の個々のエピソードが、脈絡も無く積み重なって物語が展開していく。少年のようなガキ大将サラという少女がヒロインであり、子供から思春期の入り口への成長を描くエピソードが挿入されて、それが物語の柱となっているが、基本的にはどこまでいっても何も起こらない村の日常が淡々と描かれていく。ひと言でいうと、虫プロが製作した第一期のアニメ版ムーミンのムーミン谷のような世界でのお話。


 イングマルと愛犬シッカン。どこかに預けられていると思い込んでいたが、母親の元を離れるときに一緒に処分されてしまっていたことが後から判明する。ちなみに主人公のイングマルという名前には、50年代当時スウェーデンの国民的英雄であるボクサーのイングマル・ヨハンスンと同名であるという意味がこめられていて、映画のラストシーンはその英雄の試合の中継をラジオで聞きながらサラと一緒に眠るイングマルというようになっていますので、あちらの人でなければ理解できない要素も含まれているのかもしれません。


 こちらは、当時もののVHS版。この映画が公開された頃はちょっとお洒落なミニシアターがブームとなり始めた頃で、ニュー・シネマ・パラダイスだとか、ベルリン天使の詩、ライフ・イズ・ビューティフルのような、ハリウッド製ではない欧州系の映画が話題になり始めていた。これらの映画は、ちょっと知的な感じだったり、ちょっとお洒落な感じで、地味だが根強い人気を誇っていた。個人的には、この当時通っていた学校の近くにミニシアターがあって、わざわざ調べなくともちょっとよってどんな映画が上映されているのか知ることが出来る環境にあった。1,000円くらいと映画料金も安かったため、週末の午後などにふらっと立ち寄って見ることができた。最近だと、ミニシアターも減少傾向にあるみたいで、複合施設や大型のショッピングセンターに併設されたシネマコンプレックスに代表されるような大型の映画館が多くなり、これらは同時上映なし一本立て、入れ替え制のところが多いようで、気軽に映画を見に行けるという環境ではなくなってしまった。


 昔は、一般の映画館でも2本立て、3本立てで入れ替えなしが当たり前で、夜終電がなくなった後だとか、バイクで遠方までツーリングに出かけたときなど、オールナイトの映画館で朝まで過ごしたりできて、ちょっと気軽に入れるというように映画館の敷居が低かったように思います。今では劇場公開されて半年もしないうちにDVDが出るような時代ですから、シネマコンプレックスの近代的で豪華な設備の維持のためには仕方ないんでしょうが、なんだか味気ないという気もします。


 ということで、ミニシアター系の名作と言われる超有名な作品、マイライフ・アズ・ア・ドッグ(Mitt liv som hund/My Life as a Dog)でした。個人的評価は、星★★★★。ムーミン谷で癒されてみたい人にお勧め。



参考:Wiki マイライフ・アズ・ア・ドッグ、ラッセ・ハルストレム、ライカ(犬)、ミニシアター、映画館、シネマコンプレックスの項

幸せの教室 LARRYY CROWNE・ウォルトディズニージャパン

2015-09-10 11:41:26 | 映画・DVD・CD

 幸せの教室 Larry Crowneは、2011年に公開されたトム・ハンクスとジュリア・ロバーツ主演のコメディ映画。


 主演だけではなく、共同製作、共同脚本、監督までもトム・ハンクスが務めたという、トム・ハンクスが長年企画を温めていて撮りたかった作品ということになる。彼が監督を務めた作品としては、1996年のすべてをあなたにに続いて15年ぶり2作目にあたる。物語は、善良で常に前向きな中年男ラリー・クラウン(トム・ハンクス)は、長年務めてきて優良社員として何度も表彰されていたショッピングモールを、学歴が足りないからという理由でリストラされてしまう。妻との離婚、家のローンなど色々な問題を抱える彼は、再就職のための学歴を得るためにコミュニティーカレッジに通うことにする。そこには、教えることに意欲をなくしたやる気のない教師メルセデス(ジュリア・ロバーツ)がいた・・・。


 幸せの教室という邦題からも分かる通り、中年からのやり直し、学び直し、中年からの青春映画という趣の作品。背景としては、金融バブルの崩壊により、リストラや失業、自宅を手放すといった現象が起きた、2007年頃からのアメリカのサブプライムローンがある。そのため、物語冒頭のスーパーをリストラさせられるくだりは、妙なリアリティがあり、住宅ローンを払えなくなった彼は、何件もの求人の電話をしては断られ、銀行からは冷たくあしらわれてしまう。ただし、深刻なのは冒頭の10分程度で、学歴を得るためにコミュニティカレッジに入学すると決めてからは、どんどんと物語が展開していくようになる。コミュニティカレッジでは、就職に有利だからと経済学とスピーチの授業を進められ受講することにする。ガソリンが無駄だからと車を手放した彼は、ヤマハ製の中古のスクーターで通学をし、若い同級生の女の子に誘われて、若者のスクーターギャングの仲間らと一緒に走り回ったりするようになる。


 メルセデス(ジュリア・ロバーツ)が担当しているのは、このスピーチの授業。小説を書くと言って働かないひものような旦那を抱え、教えることへの意欲も失っている。ラリー・クラウンと関わっていくなかで、次第に彼女の方にも変化が訪れて・・・という展開。ちなみに経済学のエド・マツタニ教授は、スタートレックの機関士ジョージ・タケイが演じており、スタートレックネタも散りばめられている。


 物語冒頭は、アメリカの深刻な社会問題を背景として始まっているのだが、物語の舞台の設定であるロサンゼルス近郊の街中をスクーターで走り回るシーンは、ほとんどローマの休日のノリ。妻との離婚により家族を手放し、ガソリンを大量に喰う大型のSUV車を手放し、中古のスクーターに乗り換え、ローンの抵当のために家を手放すことで、ラリーはどんどん身軽になっていく。同時に表情もどんどんと明るくなり、幸せ、幸福というのは、どんな状況にあっても見つかるということが、トム・ハンクスが描きたかったことのように思える。2度のオスカーを受賞し、全米でも最も成功したハリウッドスターの一人であるトム・ハンクスが、自ら撮りたかったのが、このような小さな幸せについての映画だったというのは、ちょっと面白い。


 ジュリア・ロバーツは、物語の冒頭ではギスギスした感じで登場して、老けたなと感じさせるのだが、物語が進むにつれて生き生きとしてゆき、物語後半では全盛期を思わせる表情を見せるようになる。メイクで変化していく様子を見せているんですね。


 冒頭でラリー・クラウンがスーパーをリストラされるのは、学歴が足りないから。大卒でないという理由で解雇できてしまうのは、解雇の規制が緩やかな欧米ならでは。ただし、ラリーが通うことになるコミュニティカレッジは、入学試験もほとんどなく、誰でも、どんな年齢からも入学が出来て、短大卒の資格を取れるという2年制の公的機関。そこから大学に編入して、学士の称号も取れる。解雇もされやすいけれど、学び直しもしやすい環境がセーフティネットのひとつとしてあるわけです。映画では、経済学とスピーチという2コマしか取っていないため、2年では卒業できないだろうし、1年目で物語が終わるためラリーが再就職できたかどうかも描かれない。車も手放したままで、住処もアパートとなり、学び直しをすることですべてを取り戻したという展開になっていない。ディズニー映画なので大人のおとぎ話とでもいうべき話なのだけど、アメリカ映画的なハッピーエンドとはしないことで、リアリティを保っている。


 日本には、コミュニティカレッジに該当する機関はない。けれど少子化の影響で、難関大学以外であれば社会人入試などで、誰にでも再度学び直しをする門戸は開かれている。試験のない専門学校ならなおさら。そこまで本格的ではなくとも、夜間の学校、通信過程という手段もあるし、生涯教育ということで公開講座なんかも多くの学校で開かれている。さらには職業訓練校や各種のカルチャー教室もある。大作映画ではないし、制作費のほとんどトム・ハンクスとジュリア・ロバーツの出演料なんじゃないかと思える小さな作品ですが、こういう方向性もあるのだと気付かせてくれる意味で、良い映画だとお思います。個人的な評価は、星★★★+☆(70点)。

参考:Wiki 幸せの教室、トム・ハンクス、ジュリア・ロバーツ、コミュニティカレッジの項

ガチ☆ボーイ・フジテレビジョン/ポニーキャニオン

2015-08-02 18:48:47 | 映画・DVD・CD

 ガチ☆ボーイは、2008年に公開された日本の青春映画。監督は、タイヨウのうたの小泉徳宏監督。


 舞台は、北海道にある大学のプロレス研究会。いまいち盛り上がっていないプロレス研究会にある日、入部希望者がやってくる。名前は、五十嵐。学際で行われた、プロレス研究会の試合を観戦していて感激し、自分も学生プロレスをやってみたいと思ったらしい。入部希望者は、五十嵐一人だったため、弱小プロレス研究会としては暖かく迎え入れてくれる。しかし、彼は活動風景をいちいち写真に収め、何かやるたびひとつひとつメモを取るという変わった行動を見せる。どこか違和感を感じる部員たちであったが、そこには彼のある特殊な事情が関わっていた…。


 フジテレビが製作したということもあってか、出演者がこの時期の旬の人を集めていてえらく豪華。主演は、海猿やROOKIESで人気者となった佐藤隆太さん。弱小プロレス研究会を率いる正義感の強いリーダー役に向井理さん、主人公を理解してくれるヒロイン役にダルビッシュの元奥さんであるサエコさん、五十嵐の妹役に仲里依紗さん、父親役に泉谷しげるさん、部OBでバーを経営しておりリングアナを兼ねる先輩役に宮川大輔さん、みちのくプロレスが監修やレスリング指導をしており、現役のレスラーたちも出演しています。元々は、話題となった舞台が原作のよう。


 プロレスという男臭い題材を扱っていながらも、ちょっとポップな感じ。


 この映画の鍵となるのは、主人公の五十嵐が司法試験の一次試験に通るほどの秀才でありながら、事故による高次脳機能障害で新しいことが覚えられなくなっているということ。彼は、一晩寝ると一日あったことを全て忘れてしまうため、写真を撮り、メモに取り、朝起きると同時にそれらのメモを全て読み返して、昨日と同じ生活を継続している。そのため、プロレスの段取りがなかなか覚えられずに常にガチで挑んでしまうことから、ガチボーイということになる。彼を理解してくれるヒロインも、彼女としてではなく告白して振られたことを忘れて何度でも告白してしまうという、この設定をより際立たせるための位置付けとなっている。


 彼は、失敗を繰り返しながらもまりりん仮面というリングネームで人気者となる。これを利用しようとする、北海道学生プロレス連合のライバル役シーラカンズとのガチンコ勝負が物語のクライマックスとなる。これは、本職のプロレスラーの指導を受けながら、役者さんたちが実際に体を張ってプロレスの試合を演じており、それがプロレスの持つ楽しさを伝えてくれるものとなっている。また、リーダー役の向井理さんをはじめとして、出てくる人々がみんな良い人ばかりなので、学生サークルの独特のぬるいほんわかとした関係性が伝わってきて、プロレスという暑苦しい題材を取りながらも、とても爽やかな青春映画となっている。


 80年代から90年代に掛けては、プロレスはテレビのゴールデンの時間帯で放送されていました。アントニオ猪木やジャイアント馬場、タイガーマスクや長州力、スタンハンセン、ブルーザーブロディ、ハルクホーガンといった綺羅星のようなスター選手が登場して盛り上がりを見せた。80年代の終わりから90年代にかけては、前田日明、藤原喜明、高田延彦などの格闘技色の強いUWFという団体も生まれ、新しいプロレスの流れも生まれた。その後、趣味の多様化やミスター高橋、高田延彦のプロレスの内情を書いた本の影響などもあって、プロレス人気もしだいに低下していったが、このガチ☆ボーイが公開された時期というのは、総合格闘技のK1やPRIDE、エンターティメント色の強いハッスルなどがブームの頃で、再びプロレス人気が盛り上がっていた。大晦日に紅白の裏番組で格闘技の試合が放映されるなど、ある意味80年代頃の黄金期に近い輝きをプロレスが見せていた時期だったのかも知れません。


 個人的には、泉谷しげるさんの演じた親父さんが良かった。昨年、遠方に出かけた際に友人の親戚宅に留めてもらう機会があったのだが、そこの親父さんが俳優の卵である息子の活躍をiPadで、繰り返し繰り返し眺めていた。その息子さんはすでに30を超えており、しかも地方都市なので俳優で身を立てていくことは困難だと思われたが、子を思う親の気持ちがとてもよく伝わってきた。この親父さんは自営業だったので、いざとなったら継がせればよいという気持ちもあるだろうが、もうからないのであまり積極的には考えてなかった。五十嵐の実家も寂れた銭湯で、客は入らないが彼が食っていくために継がせようとしている。司法試験に通った五十嵐は期待の息子だったわけで、事故でそれらは失われてしまった。失望しつつも、プロレスをしている息子を静かに見守っている泉谷氏の演ずる寡黙な親父さんを見て、そんなことを思い出していた。


 学生プロレスという、一見男臭くて暑苦しそうなテーマを扱いつつ、実は見終わった後に爽やかな余韻を残す夏の青春映画です。ということで、個人的な評価は星★★★+☆(70点)。良い意味で期待を裏切ってくれた、暑い夏に見たい映画ガチ☆ボーイでした。お勧め。



参考:Wiki ガチ☆ボーイ、小泉徳宏監督、佐藤隆太さん、サエコさん、向井理さんの項

バタアシ金魚・ビクターJVC/講談社

2015-07-27 18:08:25 | 映画・DVD・CD

 バタアシ金魚は、80年代後半にヤングマガジン誌に連載されていた望月峯太郎原作の同名の漫画を原作とする、1990年に公開された青春映画。監督は、トイレの花子さん、東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜、深夜食堂などの松岡錠司監督。


 2001年にウォーターボーイズが登場するまでは、プールや水泳部を主題とした夏を題材とする青春映画の筆頭だったといってよい一本。以前一度紹介していますが、DVD版を入手したので、夏に見たいお約束映画として再度紹介。物語は、高校の水泳部が舞台。主人公カオル(筒井道隆)は水泳部のソノコ(高岡早紀)に一目ぼれをする。そこで彼女の気を惹くために水泳部に入部する。思い込みの激しいカオルは、断られてもめげず、ソノコを追いかけていくが…。


 70年代には、巨人の星やあしたのジョー、エースをねらえ、ドカベンなどスポーツ根性漫画がブームとなりましたが、80年代に入ると時代の変化とともにうる星やつら、タッチなどのラブコメ全盛期になります。スポーツ漫画も、根性で勝つことを目的としたものから、タッチ、ラフ、キャプテン翼、スラムダンクなどのように、恋愛、友情まで含めて学園生活の全般を描くスマートなものになっていきます。ブームとなったタッチの終了と前後して、85年に連載を開始したバタアシ金魚の時代ともなると、もう一ひねりあってラブコメといっても単純な恋愛ものではないし、スポーツを題材にしているといっても単純に勝利を目的としたものでもないといった具合に変化していきます。


 原作の方は、ほとんど忘れているのため、どれくらい原作のエピソードが再現されているかわかりませんが、映画のほうも原作を反映してか、水泳競技の場面は出てくるのだけれども、特にそれに執着するわけではなく、恋愛ものといっても(今だったらストーカー扱いされそうな)カオルがソノコに一方的に付きまとう展開になっており、しかも情熱的にソノコを追いかけつつも、カオルにはプーという彼女がいたりするなど、この時代らしくちょっとひねった物語になっている。対するソノコの側も嫌がりつつもライバルの永井(東幹久)を当て馬にしたり、過食症のようにドカ食いをしてストレス激太りをしたりと、単なるアイドル映画としては片付けられない、ある種のリアルさを持っています。このような流れの中で、カメラはこの年代特有の微妙な心の動きと駆け引きを丹念になぞっていきます。


 当時の書籍の映画評に青の映画という評価がありましたが、とにかく空の青、水の青、プールの青と、青が作品世界を表現するキーワードになっているかのよう。ちょっとシュールなくらいに、常に自信満々で自意識過剰なくせに口ばかりの主人公を描いており、誰しも経験のある思い通りにはならない青春の不条理を描いた作品でもあるのですが、この不条理で不合理なストーリ展開がラスト前のプール内での格闘シーンへと繋がり、それぞれの想いは吐き出され表現されて、そこにラストシーンのカタルシスが生まれている。


 今では中堅俳優となった筒井道隆さんのデビュー作。この後、あすなろ白書などトレンディ俳優として人気を博した。他にも浅野忠信さんのデビュー作でもあり、若き日のかわいらしい浅野氏の姿が見れる。また、売れる前の若き日の東幹久さんも出演している。


 原作のソノコは、スリムに描かれているためイメージとしては少し異なる高岡早紀さん。ミスマガジンということで、ヤングマガジン繋がりで選ばれたよう。ビクターJVCのCMなどにも登場していた。とはいっても、この映画の魅力は8割方この人にあると言ってよい。


 こちらは、当時もののVHS版。だいたい同年代で、当時リアルタイムにこの作品を見たけれど、その時には随分と共感できた。さすがに、今となっては共感しづらいわからない部分も増えたのだが、今回再視聴して感じたのは、バイクで疾走するシーンなど時代の空気感がよく出ているということ。この頃はバイクブームだったので、原作にもバイクは登場しており、高校生などがバイクに憧れたり、バイクの話題で盛り上がることも普通だった。また、(カオルや永井など主人公周辺は異なるが)学生服などのシルエットもこの時代らしく、ちょっと太めのものが見られる。それから、空や夏の雲、プールの水面、虹、新興住宅地の風景、都市モノレールなど、印象的な映像が多い。松岡監督のインタビューを読んでいたら、これはハッとした瞬間を見つけたら、その場ですぐに撮影をするという手法によって撮られており、監督が来る前にカメラマンが勝手に風景を撮っていたものもあるのだとか。そのようにして、時代の空気(瞬間)を切り取ったものが収められ、封じ込められている。


 アマゾンや映画サイトでの評価は、星★★★★くらい。日本アカデミー賞、ブルーリボン賞、報知映画賞を受賞しており、邦画の青春映画としては、単純にアイドル映画として以上の評価がなされている作品だと思います。ウォーターボーイズは未視聴のためわかりませんが、個人的には、未だに夏の映画のベスト。80年代には、角川映画全盛期ということもあって翔んだカップル、セーラー服と機関銃、時をかける少女、転校生、さびしんぼう、アイコ十六歳、台風クラブ、家族ゲーム、パンツの穴など、名作といわれる青春映画がたくさん作られましたが、個人的にはこれが一番の夏の映画だと思います。


 ということで、夏の一瞬を切り取って封じ込めたような作品、バタアシ金魚でした。



参考:Wiki バタアシ金魚、松岡錠司さん、筒井道隆さん、浅野忠信さんの項、シネマジャーナル 松岡監督監督インタビュー