山の頂に登るには、舗装された道もあれば、過去に幾多の人々に踏みしめられ、手を加えられ、それらしき道になった登山道もある。
はたまた獣道もあれば、道なき道を沢を手がかりに登り往く迷い道もある。湾曲の無駄を削いで直線的に登る危険なコースもある。
おまえが、どんな道を登り往くのかは解らない。
今、お前は、それらの道に繋がる山の裾野の階段を上がってる。
好きじゃない階段なのに、一歩、一歩、休むことなく黙々と上がり続けてる。もうすぐ、また、一区切りの階段を登りきる。
お前は、寡黙で粘り強い登攀(とうはん)者だね。
今日は、そのまた上の一区切りの階段の切符を手にして帰って来た。「大したもんだ。おめでとう」
好むと好まざるに拘らず、目標を掲げたら、克己の精神で、只管(ひたすら)歩み続けて休まない。
おまえの場合は、蓄えた知識、教養を、社会や自分に生かす基をも磨いているよ。「嫌」と向き合って戦うのは人間修行だよ。
「嫌」の立場でないと見えないものがある。「嫌」から学ぶことは多いんだよ。そして、それが、やがて「利」に誘う糧になるんだよ。
知識(し)ってるだけで終わる奴じゃないね、おまえは。「そんなのを感じるよ」
しかし、この娘(こ)は、いったい、オレにとって「なんなんだろうね?」 そのうち、解らぬままに終わるんだろうね。
友達なんてもんじゃないし、ただの知人でもないしね。オレにとって「漂う香水」みたいなものかね?
そういえば、花は、なにも云わずに咲いてるね。