800回の「冷酷の時代」にBrown氏からコメントを頂いた。いつも開いて頂きありがとうございます。
この場を借りて御礼申し上げます。こんなのでも読んでやろうって、お気持ちが嬉しいです。また、勢いが出てきます。
「ライフ・オブ・パイ」を、もう一度始めから観直したんだけど、正直、訳解らんと云うのが本当だね。
凄いって感動は、最初観たままなんだけど、絵となって展開された物語が、事実なのか、少年の作り話なのかが解らんのだね。
此れを、原作や解説なしで観て、この映画の意図するところが理解できる奴は、とんでもない創造力と推理力のある人だと思うよ。
絵に映る物語を、事実と捉え、そのまま信じて終わっても映画は上出来なんだけど、保護されて病院で少年が話す内容が、ラストで混乱を引き起こすよ。
どう、考えても解らんので、ネットで検索してネタバレの記事を読んでみたら、そういう見方だったの?とは、解釈できるけど、
おまえら、ホンマに、あの映画を観ただけで、そこまで分析できたの?って、甚だ疑わしいよ。名探偵コナン以上じゃないか。
『推測により補完する内容が数多くあるので、行間を読めないような人が観るとただのわかりづらいクソ映画になるかも。
レビューを観ていると、内容を全く理解しないで糞と言っているものもあり、それは残念だと思った』 (Google-ライフ・オブ・パイ ネタバレから)
理解できずともクソ映画ではないよ。
経営していた動物園を閉園し、インドから、遥かカナダまで動物たちを貨物船で運ぶんだね。動物たちを売って、其のカナダに移住するのが目的なの。
少年パイと兄と両親なんだけど、途中、大嵐に遭遇して貨物船が沈没する。
パイと、大ジャンプして飛び乗ってきたシマウマだけが救命ボートで、深夜の大しけの海へ放り出されるんだね。兄と両親は助からない。
シマウマは足を折って動けない。パイは、大しけの海に向かって絶叫するけど誰もいない。ボートは波に翻弄され放題。
其処へ、泳ぎ来るものが居た。パイは必死で櫓を差し出し助けようとするんだけど、其れは虎だったんだね。パイは「来るな、来るな」って
慌てて追い払うんだけど、大波が襲ってきてボートが一旦海中に押さえ込まれるの。描写が凄いね。
夜明けと共に嵐も峠を越すんだけど波は高いまま、ボートにはシマウマとパイだけと、思ったら、ボート半分を覆っているシートの中から
凶暴なハイエナが出て来る。動物の酔い止めに鎮静剤が打たれてあるらしく足元が定かでないんだね。でも、ガルルルッって凶暴なの。
其処へオラウータンが浮遊物に乗って漂流しているのを救出する。
ボートには、シマウマ、ハイエナ、子供を失った母親オラウータンと、そしてパイ、乗組員が増える。
パイは、ボートの半分を覆うシートの上、足を折ったシマウマは船尾、オラウータンはその隣、ハイエナは、ガルルルッってうなり声を上げて
時折、シートの上のパイに襲いかかろうとするけど、シートが滑るのかして上がって来れないのが幸いしてる。
其のうち、悲劇が起きる。ハイエナが、抵抗できないシマウマを襲う。
「やめろっ、やめろっ」ってパイは、無力ながら怒鳴るんだけど、ハイエナは、構わずシマウマに牙をたてる。シマウマは息絶える。
次は、オラウータンに襲い掛かるんだけど、オラウータンの一撃でハイエナは気絶する。
パイは、オラウータンに話しかけて「子供は大丈夫だよ」って慰める。突然、意識の戻ったハイエナがオラウータンの喉に噛み付くんだね。
パイは、激昂し櫓を手にしてハイエナと対峙する。オラウータンは絶命する。パイの怒りにハイエナは死んだシマウマの後ろに後ずさりしてる。
其処へ、グワワッギャアアオーッと、凄いうなり声とともにシートの下から虎が飛び出して船尾のハイエナを一瞬で殺してしまうの。吃驚もんだよ。
こうして少年パイとベンガル虎のリチャード・パーカーとの227日に及ぶ長~い漂流が始まるんだね。
油断したら一撃で殺される。パイは、櫓や救命具などで筏を拵えボートから離れて身を守る。虎のリチャード・パーカーは気が荒い。
この漂流記が、実にいいねえ。緊迫した状態から、いつしかボートを生活圏として共有していく過程が面白いんだね。
リチャード・パーカーの縄張り意識、食料(魚)の確保に雨水の確保、パイの試行錯誤の努力で、それなりに生活を維持するんだね。
いろいろな出来事を経て、やがて、メキシコの砂浜に漂着して、息も絶え絶えのパイを尻目にリチャード・パーカーはジャングルに消える。
振り向くこともなく消えるんだね。パイは保護される際、そのジャングルを見詰め泣きじゃくるんだね。
呆気ないリチャード・パーカーの去りように、苦労を共にした仲間の情愛のなさに泣くんだね。
そして、病院で、貨物船の沈没、漂流の経緯を日本の保険会社の担当員に話すんだけど、担当員は信じない。納得できる事実を話してくれって迫る。
パイは、涙ながらに事実を話す。それは、ボートには、コックと船員と自分の母親、それに自分の4人が乗っていたと云うの。
コックは凶暴な男で、足を折った船員の足を切らないと壊疽で死ぬと言い出し、皆で押さえつけて切り落とすんだね。でも、船員は死ぬ。
コックは、その足に針を刺して魚を釣るって言い出す。母親は、始めから、その気で足を切ったのかって怒りコックを責める。
コックは、ナイフで母親を刺し殺す。刺し殺した死体を海へ落とすと、鮫たちが寄ってきて母親の死体を喰い漁るんだね。
怒りに狂って自分は、コックを殺してしまったって云うの。あまりの内容に、保険会社の担当員は、何も言わず立ち去るんだね。
この漂流記を本にしたいと云う作家は、コック(ハイエナ)が、船員(シマウマ)、パイの母親(オラウータン)を殺し、
その後、パイ(トラ)がコック(ハイエナ)を殺して食べたってことになる、と推理して云う。
今は成人して家族を持つパイが、どちらの漂流記がいい?って問うんだね。作家は、「虎と少年のほうがいい」って応える。
成人したパイは、「ありがとう」って、礼を云って微笑むんだね。
ネタバレの解説では、どうも、人間同士の殺し合い、おぞましい食人事件のほうが事実のようなんだね。もっと、奥深く書いてあるね。
原作も、解説も観ないで、この映画を観ただけで、そこまで読むなんて信じられない思いだよ。スンバラシイ脳味噌だね。
ただ、少年のパイからは、そんなの微塵も窺えないけど、成人したパイを観てると「こいつやったら、有り得るなあ」なんてのは、思ったよ。
「おまえは、なんでも見た目で判断するね、役者が怒りよんぞ」 裏を読ますんだったら、その配役にも考慮されてんじゃないの?
成人したパイ
虎のリチャード・パーカーという名前をめぐっては奇妙な元ネタがあるなんて紹介されている。
リチャード・パーカーとは、エドガー・アラン・ポーが1837年に発表した長編小説「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」
の登場人物のひとりと同じ名前らしいんだね。
この小説は海を漂流中に食料が尽きた4人の男が、“いけにえ”となるひとりをクジで選ぶという恐怖物語だそうで、
その結果、仲間に食べられるはめになった哀れな船員がリチャード・パーカーだったらしい。
ミニョネット号事件
そしてポーの小説発表から47年後の1884年、“ミニョネット号事件”と呼ばれる事件が実際に起こった。
イギリスからオーストラリアに向けて航海中のミニョネット号が難破し、乗組員4人は救命ボートで脱出。
漂流20日目、衰弱した最年少17歳の乗組員が殺害され、他の3人の食料となった。
生き残った3人は後日、裁判にかけられたが、何と殺された少年の名前はリチャード・パーカーだったんだって。
まさに驚くべき歴史上のシンクロニシティ(意味のある偶然の一致) 難しい英語使いよんなあ~。
「このエピソードを念頭に置いて映画を鑑賞すると、新たな受けとめ方が浮かんでくるかもしれない」なんて云ってるよ。
「個人的にはこの名前は、作品から推測できるパイの食人の事実を示唆しているのではないかと思った」 なるほどね。原作者の意図するところだね。
(Google-ライフ・オブ・パイ ネタバレから)
『ライフ・オブ・パイ』 ベンガル虎のリチャード・パーカー
パイは、頭のいい子だったから、架空の世界を創り上げ、現実逃避で精神の破綻を防いだんだろうね。
何も、推理せずに、素直に観たほうがいい場合もあるよ。おまえらが、根掘り葉掘り解説するから、この映画の雰囲気が悪くなったよ。オエエ~ッだよ。
そう云う状況に置かれれば、誰もが偉そうなことは云えないかも知れない。満てた状態の理性じゃないからね。
まさしく飢えた獣と同じ衝動を持ち得るだろうね。
でも、映画のリチャード・パーカーは、首を伸ばせばガブリと容易い位置で横たわるパイを、なんとも優しい目で見つめておったよ。
漂流記を執筆希望の作家じゃないけれど 事実を量り知った上で 「虎と少年の漂流記のほうがいい」