町ん中まで野生の動物が姿を現わすってのはニュースでよく見聞きする。狸、猪、鹿、猿、熊などが現れて田畑や生ゴミを荒らすらしい。
冬を前にすると其の数が増える。生息地が狭まり、冬に備える充分な餌の確保が困難になってるんだろうね。「熊だぁ、熊が出たあっ」って人々が騒ぐ。
動物にすれば、過去、同じ場所で「人間だぁ、人間が出たあっ」って騒いだ記憶がある。
昔、未開地の原住民が文明に追い立てられ山奥に退いて、食料が困窮すると生きるために文明人を襲ってでも奪い去る。
扶養するものに食料を、という思いは原住民も文明人も同じなのに「野蛮人」のレッテルが貼られて悪者扱いになる。「一緒やね」
最近、北海道では町にヒグマが出没するらしい。本州のツキノワグマとは違ってデカくて凶暴ってイメージがある。実際恐い。
横丁を曲がってバッタリ遭遇なんて有り得る。目の前で勢いよく立ち上がるヒグマに対し、
事情を察してお互い様「いやぁーご苦労さまですね。精が出ますなぁ」なんて笑顔で手を軽く振りつつ会釈で通り過ぎる。
ヒグマはアホやから予想外な反応に暫し立ち尽くし、胸の前に掲げた両手を、やや同じようにつられて振っている。
しかし、途切れた脳味噌の回路が接点したら牙剥いて追いかけてくるだろうね。接点するまでの僅かな時間に全速力で走って逃げるのがミソ。
「ちょっと無理があるかなぁ?」そんなの「まるで漫画やないかっ」
そうか眼を逸らさないって方法もあるな。裂ぱくの気合で眼が破裂しそうなぐらいに睨みつける。
目と目、眼力と眼力の威圧の戦い。「アホか?そんなもんなんの突っ張りにもならんわ」バリッと顔に四本筋喰らうわな。
と、云って、突然目先で死んだふりなんか通用せんやろね?
「バリバリッに噛まれて巣まで引きずられていくがな」で「やっぱり、ヒグマは悪者やな」に落ち着くんだろうね。
「昔、大正四年十二月九、十の両日冬眠を逸した一頭のヒグマが空腹から凶暴性を発揮し十人の婦女子を殺傷した事件があったそうです。
当時の開拓農民の方々が犠牲になった三毛別羆事件と云われています。
羆は前日に襲った太田家の通夜に再び現れたあと、その足で明景宅を襲ったのです。ここには附近の女、子供達十人が避難をしていました。
激しい物音と響、窓のあたりを凄しい勢で打ち破り、イロリを飛び越え巨大な羆が崩れ込んできて、
大鍋はひっくり返り焚火はけ散らされランプは消えて逃げまどう女子達に巨羆は襲い掛かりました。
臨月の婦人は「腹破らんでくれ」!!「のど喰って殺して」と絶叫し続けついに意識を失ったのです。この巨羆は事件発生後六日目に射殺されました。
巨羆は金毛を交えた黒褐色の雄、身の丈二.七メートル。体重三四◯キロ。七、八才」(三毛別羆事件跡探訪と銘打ったサイトから)
こんなの読むと冗談言ってる場合ではないね。羆(ヒグマ)って恐いねぇ。
昔、洋画の西部劇全盛の時代、凶暴なインディアン(アメリカ原住民)はより凶暴でないと「面白くない」なんて期待して観たね。
白人開拓者を襲って暴れまくる。此れを合衆国騎兵隊がやっつける。相手が悪ければ悪いほど、敢然と戦い挑む騎兵隊がより勇ましく格好いい。
これが物わかりのいいインディアンだと「がっかり」する。勇猛果敢な騎兵隊が悪者になってくる。
太鼓叩いて裸で「アイヤーホイヤー」なんて叫びながら踊ってるインディアンに同情できなかったね。
かたや騎兵隊は紺色の上下の軍服、スラックスの両脇には黄色いラインが入り黒の長靴で脚長い。
黄色いハンカチを首に巻き紺のハットで男前が極まってる。
原住民なんか「やってまえっ」って思ってた。米国で差別問題が大きく取上げられる世情に合わせて、映画のインディアンが皆物わかりが良くなって、
文明侵略の立役者「騎兵隊」が悪者に変わっちゃった。
裸で焚き火囲んで「ハイヤーホイヤー」絶叫あげて踊ってる奴らが正しいと云われてもイメージが悪過ぎる。
其処へ行くと、町に侵入する動物たちには同情できる。彼らの生息地に足踏み入れた人間側も悪い。
撃たれて間延びして引きずられていくツキノワグマなんか「哀れに思えるね」
動物たちは「皆、可愛いもんね(羆はコワイ)」やっぱり、幾分かは見た目も大事なんかね? 「そら、おまえ、偏見やろ」