ぼちぼちやりま!

悪い時が過ぎれば、よい時は必ず来る。
事を成す人は、必ず時の来るのを待つ。
焦らず慌てず、静かに時の来るのを待つ。

独裁者

2020-05-20 22:59:52 | 映画曼荼羅
昨日、BSでチャップリンの独裁者が放映されていた。見遅れたが、最後の演説は正座して聞き入った。もう何度この演説を耳にしたか、そして何度涙を出したことか。世界中の多くの同時代人の共通の想いではないか。

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独裁者に間違われたチャップリンは、心細げに、頼りなげにマイクの前に立つ。
「・・・申し訳ないが、ボクは皇帝なんかじゃない。何にも関わりなんてないんだ。支配とか征服とかそんなの嫌だ。・・・みんなを助けたい、ユダヤ人も、ユダヤ人以外も、黒人も、白人も。ボクたちはみんな、助け合いたいのだ。人間とはそういうものでしょ。他人の不幸ではなく、お互いの幸福と寄り添って生きたい。ボクたちは憎み合ったり、見下し合ったりなどしたくない。・・・人の世の生き方は自由で美しい。けれどいつか生き方の本質を見失ってしまった。欲が人の魂を毒し、憎しみと共に世界を閉鎖し、不幸、惨劇へと私たちを行進させたのだ!」

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2020年、世界のあちこちで独裁者の姿が、いやあわよくば独裁者にならんとする愚か者の姿が見える。ただ映画の時代と違うのは、あまりに内向きな自国主義者だということ、強権主義の一党独裁国家であるということ、こざかしい忖度主義者であるということ。
パンデミックという人類共通の敵に協調して対峙しなければいけない時、それぞれが相手の非ばかリを指摘しののしりあうばかりで、その裏で何が何でもワクチン製造に先んじて大儲けしようとたくらんでいる。独裁者たちの主義主張に差異はあっても、<無能者の生命より選民の経済>の政策を重んじる国家主義政策のもとに、貧困格差社会が浸透した、窒息しそうな社会を生んでいるのだ。

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しだいに力を増し叫びに移っていくチャップリンの演説は、やがて正気を逸脱し獅子のような雄叫びをあげる。
「・・・この声が届く人達に私は言う、決して絶望してはいけないのだ!  私たちに覆いかぶさっている不幸は、単に過ぎ去る欲であり、人間の進歩を恐れる者たちの嫌悪なのだ。 憎しみは消え去り、独裁者たちは死に絶え、人々から奪いとられた権力は、人々のもとに返されるだろう! ・・・ 人が永遠には生きることがないけれど、自由が滅びることがない!・・・今こそ、みんなのために闘おうではないか! 世界を自由にするために、 国境のバリアを失くすために、 憎しみと耐え切れない苦しみと貪欲を失くすために! 理性のある世界のために、科学と進歩が全人類の幸福へと導いてくれる世界のために闘おう! 兵士たちよ。民主国家の名のもとに、皆でひとつになろうではないか!」

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昔、大陸はひとつだった。時が流れ、やがて5大陸と多くの島々に分かれていった。今、その大陸と島々はまた一つの大陸になろうとして動いていってる。あとわずか数十億年で。
そんな地球の脈動を感じとるリーダーが出現してくれたなら、また違ったパンデミックの終焉が見られるだろうに。