ぼちぼちやりま!

悪い時が過ぎれば、よい時は必ず来る。
事を成す人は、必ず時の来るのを待つ。
焦らず慌てず、静かに時の来るのを待つ。

海も暮れきる

2015-09-07 22:50:22 | 読書
胸が苦しいという母親の入院を兄貴任せにしておいて、一人大阪で吉村昭「海も暮れきる」を読んでいる。尾崎放哉(ほうさい)のラスト8か月の死闘を描いたもの。サスペンスでもなく感動巨編でもない、ただ人を愛し、酒に溺れ、病に倒れた一人の男の死を執拗に描く。
東大卒業時に放哉は従妹の芳衛に求婚する。両家もほぼ承諾の方向にあったが、従兄の東大医学生から近親結婚だとして猛烈に反対され、破談になる。そのころから彼はどこか投げやりになり、酒癖は重症化し、俳号も芳哉から放哉に変えている。大企業に就職するも酒席での悪態が原因で多くのトラブルをおこし、転職を繰り替えし、39歳で世捨て人、漂流の俳人になる。寺男として托鉢し、肉体労働をしてようよう一食にありつける生活に落ち込む。
貧困生活が結核を悪化させ、死の恐怖から逃れるために酒を飲んだ。体調の悪化を和らげるために酒をあおった。その酒のためにますます病は深刻なものになった。しかし不思議と体調が悪化するにつれ作句は研ぎ澄まされ自然体の境地に達していく。最後は骨だけになる程やせ衰え、小豆島の庵で命を絶つ。42歳だった。吉村昭は自らの結核闘病の恐怖をもとに、放哉の末期を冷徹な目で描いた。

山頭火とともに自由律俳句の頂点に立つ放哉の句から。

 【漬物桶に塩ふれと母は生んだか】
 【肉がやせて来る太い骨である】
 【春の山うしろから煙が出だした】(辞世)

   ***

起立性低血圧のような眩暈が続き、ちょっと困っている。ジムには行くのだけど運動できず、湯につかって帰るだけ。3日ほど断酒してみたけど改善せず。頼るのはやっぱり酒かと、放哉の如くに軽く一杯やってみる。
季節の変わり目、皆の衆ご自愛を。