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リタイアーのよもやま話

津波予測「不作為」の大罪

2011-09-22 22:59:02 | 放射能

アエラ 2011.9.19号の記事である。

 


東電の勝俣会長は「関係ない!」とアッカンペー

津波予測「不作為」の大罪


東京電力は3年も前から原発に巨大津波が来襲することを
知っていた。

なのに有効な対策を講じなかった。

その不作為は万死に値する。

東京電力の武藤栄は3年も前から知っていた。いつか巨大津
波が福島の原発を襲うことかありうることを。それなのに何も
手を打たなかった。

 武藤はこのとき、原子力部門のナンバー2である原子力・立
地本部の副本部長だった。

この年、2008年の6月、彼は副本部長を兼ねたまま、執行
役員から常務取締役に昇格している。

 東電は同年4月、マグニチュード8クラスの明治三陸地震
(1896年)をもとに津波の規模を想定し直し、福島第一
原発には遡上高で最大15・7メートルもの巨大津波が襲うという
試算を弾き出していた。

同年12月には、平安時代にあった貞観地震(869年)をもとに、
第一原発の取水□付近で高さ8・7~9・2メートルの津波が
来る、との試算も出している。

東電の同原発の想定津波は最大で5・7メートルだったから、彼
らの予想の2、3倍の規模の津波が襲うという試算値である。

早急に抜本的な対策が講じられてしかるべきだった。武藤は08年
6月、部下から報告を受けると、彼らが津波対策を依拠してきた
土木学会に対し、津波対策の指針を見直してもらうよう指示して
いる。

これら一連の経緯は、土木学会に見直しを要請した後、当時の
原子刀・立地本部長である武黒一郎副社長にも伝えられた。

 

原子力村で内々に処理


東電のスポークスマンである松本純一原子力・立地本部長代理
によれば、この年の6月、傍流から抜擢されたばかりの清水正孝
社長には伝えられていない。

清水を引き立て、院政をしきはじめた勝俣恒久会長にも報告さ
れなかった。

松本は「原子力・立地本部として動いていました」と言った。

だが、公表されることはなく、具体的な改善策は図られなかった。

 お役所体質の東電の中で、原子力・立地本部は際だって特異な
部門である。

修士や博士が少なくなく、高度の専門性ゆえに、外からくちばしを
挟みにくい。

しかも約3千人いる彼らの拠点は、原発のある福島や新潟で、東京
の本店から隔絶した地にある。エリート集団でありながら、社内から
「原子力村」と奇異にみられてきたのは、そんな異質性に由来して
いる。

 聖域化された「村」の風通しをよくすることを期待されて02
年に社長になったのが、勝俣だった。あのとき、原発トラブル
隠しが発覚し、東電は荒木浩会長や南直裁社長らが総退陣する
大がかりな体制刷新を強いられた。

それなのに松本の言が正しいとすれば、巨大津波の想定は会長と
社長に伝えられず、「原子力村」で内々に処理されてきたことに
なる。

 経済産業省の原手力安全・保安院で、原発の耐震審査を所管
する小林勝耐震安全審査室長が、東電から報告を受けたのは、そ
れから3年後の今年3月7日のことだった。

文部科学省が事務局を務める地震調査研究推進本部が、どの
くらの規模の地震がどこで起きそうかという「長期評価」を
4月にもまとめる予定で、その中には、学界で話題になって
きた貞観地震の分析が新たに加えられそうだった。

すでに貞観津波に関する論文や研究報告がいくつも発表されてい
る。それなのに東電は無反応だ。
それで小林が呼び出した。


保安院には知らされず


「いったいどうするんですか、早く対応をしないと大変なこと
になりますよ。どう考えているか、お示しください」

小林が2月末にそう求めると、東電は3月7日夕刻、3人で
現れ、シミュレーション結果を打ち明けた。

といっても10メートルを超える津波が来るという想定結果だけ
で、計算式や対策はない。これではダメですよ、きちんとした
ものを出してください-そう小林が言った4日後、本当に津波
がやってきたのだ。

 保安院を驚かせたのは、東電が8月24日、3年前の08年に巨
大津波の想定をしていたと明らかにしたことだった。保安院の
森山善範原子力災害対策監は9月8日の会見で、珍しく撫然と
した面もちで、「速やかに公表して、専門家の間で議論をすべ
きでした」と、東電を批判した。

 保安院は3月7日以前は、何も知らされていなかったという。
今回の原発事故では東電とともに「被告席」に立つ保安院だが、
この件に関しては保安院の言い分に分がありそうだ。

 保安院の幹部は、匿名を条件にこう打ち明ける。「08年と
いうのは重要です。あのとき何があったかご存じですか。

東電の柏崎刈羽原発のF-B断層をですね、東電が実質的に
活断層であると評価しておきながら、隠していたんです」
 07年の新潟県中越沖地震で、東電の柏崎刈羽原発は想定を
上回る揺れに見舞われ、火災や放射能漏れの事故を起こした。

そのときまで東電はFーB断層が「長さ7、8キロで、活断
層ではない」と公言してきたが、実は秘かに03年の時点で再
評価をおこない、F-B断層が「長さ20キロを超える活断層」
だと知り(実際は30キロだった)、ほかにも6本の活断層を
見つけていた。

それなのに東電の原子力村だけで秘匿され、首脳陣には報告
されなかった。当然、公表はおろか対策も講じられない。

だが、地震の震源断層は、彼らが隠し続けてきたF-B断層ら
しかった。

「プルサーマルのため」


今回明らかになった隠匿された巨大津波の想定と、うり二つで
ある。

福島原発を襲う巨大津波の想定を東電が08年の時点で明らかに
しなかったのは、柏崎刈羽の活断層と同様、彼らの当初の地震
対策が「甘すぎる」と露見するのを恐れたからだろう。

 09年には、経産省の総合資源エネルギー調査会の地震・津波
対策の部会で、地震の専門家が「まったく比べものにならない
非常にでかいものがくるのに、貞観津波に触れられていないの
はなぜか」と、東電の無為無策ぶりを難詰している。

そこには東電の2人の地震の専門家も同席していたが、彼らは
前年の解析結果に言及しなかった。

東電は09年、保安院の担当職員に口頭で「大きな津波が来る」
と報告したというが、保安院幹部はこのときのことを「津波の
高さを想定したであろう資料をチラツと見せられただけで、
すぐに引っ込められてしまった」と言う。

「説明した」と強弁する東電だが、相手に伝わる説明ではない。

 保安院幹部は、東電の隠蔽理由をこう推理する。

 「すべては福島第一原発3号機のプルサーマルですよ。
あれを円滑に進めるため、来電は津波の解析結果を隠してきた
んだ。
津波の想定を出せば、地元は不安を抱く。プルサーマルをおじ
ゃんにしたくなかったんです」激高する勝俣会長この見立て
通りなら、たいへんな大罪である。

人災を通り越して犯罪である。東電はなるほど昨年10月、悲願
だった同社初のプルサーマルを3号機で実施した。

保安院に津波の想定を持参したのは、その5ヵ月後の今年3月
だった。

 想定していたのに、震災後、東電の清水や武藤は国会や記者
会見で「想定外の津波」と、「想定外」を繰り返した。武藤に
取材を申し込むと、6月末に顧問に退いた身だから、と広報部員
を通じて断ってきた。


 勝俣会長の自宅を8月30日に訪ね、問いただしてみた。

 ー08年の津波の想定を聞いていなかったのですか。

 「聞いてないよ」

 彼が改革を掲げた原子力材の閉鎖性打破が、改善されずにき
たのではないか。9月1日に再訪して聞くと、披は激高した。

 「そんなん……問係ないっ!」

 彼は振り向きざま私にアッカンベーをして、1億2千万円を
借りて建てた豪邸に消えた。


以上。


アエラの記事である。その内容があまりにも、酷い話しなので、
とりあげてみた。

津波予測「不作為」の大罪 まさに、そのとおりである。


ところで、次の文章は、新聞にシリーズで掲載された記事の
抜粋である。

 東電の元副社長は「政治が流動化し、派閥の領袖
クラスを抑えれば済んだ時代は終わった」と指摘。

 「来電はこのままだと賠償債務を返済するだけの
会社になる。若い人たちにとって、本当にこれで良い
のか」と話す。

 40代のある社員は正直お先真っ暗だ。同僚と飲む
と転職の話ばかりになる」と顔を曇らせる。国策の行
方は首相の交代で見えず、事態を打開する力を失った
東電の漂流が始まった。
   
以上。


エリート集団の原子力村の面々の大罪は、誰が裁く。