YYDでも2009年10月に実行されている、赤岳天狗尾根。 僕自身も2006年11月にS子ともう一人年配の女性H場さんとの3人で登っています。 その時は出合小屋と編笠山の青年小屋天場で2泊3日でした。 そして、僕は天狗尾根にもう一回、冬期に登ってます。 てっきり、2006年以降に行なったものとばかり思っていましたが、記録を確認すると、2004年1月でした。 赤岳天狗尾根を登ってから、阿弥陀岳北稜を登攀していますね。 こののち、ハイレベルなアルパインクライマーになっていったH原君とY根君との3人パーティーでした。天狗尾根の尾根上で1泊し、さらに行者小屋前でテン泊、そのまま帰るのももったいないので、阿弥陀岳北稜を登ってから下山したんでしょうね。
YYDの若いメンバーにも様々な岩稜を経験してもらいたいと思っています。YYDは沢登り中心の会です(あまり沢のレベルは高くありませんが)。でも、沢登りのレベルは熱意さえあれば徐々に上がっていくと思います。ただ、岩稜に関しては経験してみないとその面白さは分かりません。よく知らないと、行ってみようと思うこと自体があまりないと思います。ですから、あえて岩稜を多く計画してみたいと思っているのです。
2022年7月16日(土) 美し森~出合小屋
▲12:59。土曜日は天気が少し心配でしたが、この日は出合小屋までですから、途中で雨が降って来ても問題はありません。車を停めた駐車場からいよいよ出発。
▲14:01。林道を進んでから、地獄谷の河原に降りました。広い河原を右に左に、時々付けられている目印を確認しながら進みます。
▲14:04。堰堤がたくさん出て来ます。全部で8つだか9つだか出て来ました。
▲14:15。こんな梯子が架けられている堰堤も。
▲14:47。K野さんはカエル大好き人間!
▲15:06。最後は雨に降られて、雨具も着ました。しばらくして止むと、出合小屋が見えて来ました。
▲15:06。出合小屋の前にニホンカモシカ!
▲16:04。到着後、本格的に降り始め、夜中まで猛烈に降り続きました。出合小屋での夜の団欒の時はとても楽しいものでした。夕食は各自持ち寄り。 K野さんのサラダ(右)は女子力あり過ぎと、大好評でした。 S上さんのタイ料理ガパオ(左)も美味しかったですね。生卵まで乗っかっていて。
▲16:04。僕はお決まりのネパール風チキンカリー。各自持ちよりシステムの欠陥は、ついつい多めに持って来てしまうこと。ですから、各メンバーには少なめに持って来ることを徹底しました。結局、僕が一番たくさん持って来てしまいましたし、アルコールも一番飲んでしまいました。反省⤵
▲18:49。おかずとさっぱりとしたサラダが揃ったので、哲さんは飲み物の豚汁を用意してくれました。美味は当然として、僕はまったく気付かなかったのですが、S上さんによると、料理上手な人だからこそ出来る細かな手の込みようが見られたんだそうです。普段も料理をする哲さんのようですね。最後に申し込んできたA宮さんは気を利かしてデザート。心地よい甘酸っぱさのブドウを持って来てくれました。(写真がなくてご免なさい)
▲18:51。小屋は僕たちだけの独占でした。こたつ用のテーブルがあったので、それを出しての山小屋とは思えない居心地の良さですね。翌朝が早いですから、「早く寝ようね」と言っていた本人(僕)が「そろそろ寝ようか」となった時に「まだみんなで話そうよ」と言って駄々をこねたとか。僕は酔っていて記憶にありませんが。
2022年7月17日(日) 出合小屋~ツルネ東稜~真教寺尾根
2日目の朝は空が白みかけたら起床しようということになっていました。3時半くらいにはS上さんが最初に起き始めたようですね。僕も起きてましたけど。準備出来次第、出発します。朝食は行動食扱いで、出発後に各自で食べることにしています。
▲4:59。出発直前の時間です。トタンで囲われたこの建物はトイレです。入り口には分厚い毛布が扉の代わりに下がっています。
▲5:00。トイレの中はこんな感じ。以前、この小屋に泊まった際の印象では、とても酷いトイレだったとの印象でした。でも、今回は素敵(誉めすぎ?)なトイレだなと、思いましたね。この小屋は地元の山岳会が管理してくださっているのですが、ここまでしっかりとトイレは作れませんよね。
▲5:08。沢の水は早く平水近くに戻ると予想していましたが、夜明け前にもまだ沢音は轟いていました。5時にスタートし、沢の渡渉をすることになると、「これは大変だ」と実感できます。何回か渡渉を繰り返し、赤岳沢出合に到着。ここで、天狗尾根を実行するか否かを判断しなければなりません。
▲5:08。この場所での渡渉も大変そうだったのですが、赤岳沢自体(写真の右から流れ落ちている沢です)の水量も相当のものでした。僕のいい加減な記憶では、ここまでは沢岸の踏み跡を辿り、時々渡渉するパターンでしたけれど、赤岳沢は沢の左側を進んでいたように記憶しています。沢の流れの左端を登って行くのです。これだけの増水ですから、水に濡れずに進むのは無理そうです。他にも理由は幾つかありますが、天狗尾根は断念し、ツルネ東稜を登ることに決定。地獄谷本谷を進んで行きます。
▲5:30。ニホンカモシカです。途中で2回ほど出遭いました。
▲5:52。苦労の渡渉を繰り返して、右岸から流入する権現沢に出合います。たしか、ここの渡渉だったかどうかは分かりませんが(僕の記憶は超あやふやです)、一番大変だった渡渉がありました。激しい流れを挟んで、岩から岩へ大ジャンプしなければなりません。僕は覚悟を決めてジャンプしましたが、なかなかの緊張感です。女性二人には、まず重いザックをこちら岸に手渡してもらうことにしました。その時です。 別の場所から渡渉していたK野さんが、岩と岩の間の急流に入って、サポートをしてくれました。膝から下は急流の中です。女性2人も安心してジャンプできます。 K野さんが手を取ってくれていますから。まさにリーダーの鑑ですね! 哲さんも「思いっ切り、強く手を握っちゃったよ」と言ってました。
▲5:56。ここが地獄谷本谷(右俣)と上ノ権現沢(左俣)が出合っている二俣です。ここの中間尾根がツルネ東稜なんです。
▲5:58。この場所にツルネ東稜の標識がありました。別の標識もあって、本谷の対岸からも天狗尾根に登れるみたいです。地形図で確認できる範囲では危険な感じはありません。踏み跡があるのなら、大丈夫そうですが、一度「ツルネ東稜を登る」と決めた後での変更は何となく嫌だったんです。恐らくK野さんは行きたかったことと思いますね。ご免なさいね。
▲6:06。ツルネ東稜自体は踏み跡もしっかりしているルートです。今回のように増水していない時なら、比較的気楽に楽しめるコースだと思いますね。
▲6:23。途中にこんな標識までありました。これでは一般登山道ですね。でも、そんなに甘くはありませんけどね。
ただ、ここから僕自身に問題が発生しました。山体力復活途上の僕ですが、小同心クラックも無事にこなせ、今回の山行も大丈夫なはずと自分では思っていました。でも、大問題が発生! 疲労感が半端ありません。ツルネ東稜取り付きまでも、その感覚はあったのですが、ツルネ東稜の急登になった途端、明確に自覚できました。息は荒く、足は重く、乳酸が溜まっているようで、無理するとすぐにすぐに脹脛が攣りそうになります。皆から遅れる僕の様子は皆の知るところとなり、僕も「ちょっと調子が出ない」と言います。ハーネス等を哲さんが持ってくれ、20m補助ロープはS上さんが持ってくれました。それからはゆっくりゆっくりとパーティーは進みました。S上さんは僕の後ろに付いて、僕の様子を見ていてくれます。僕のすぐ前を歩く哲さんは僕の数歩前をキープしながら歩いてくれます。呼吸法も教えてくれました。とにかく、たくさん酸素を吸いたい気分なんです。そのために一生懸命、息をたくさん吐きました。(哲さんに教えてもらったんです)
▲7:00。急登が続きます。朝の陽射しが差し込み始め。心地よい雰囲気が高まって来ました。
▲7:12。ツルネ東稜は森に覆われた尾根です。森の木間(このま)から右隣りの天狗尾根が覗ける場所がありました。写真で一番高く見える岩峰が大天狗です。
▲7:13。天狗尾根の下方(右下)にカニのはさみと呼ばれている岩峰が見えました。
▲7:48。大天狗は天辺が切られてしまっていますね。大天狗のすぐ左隣りの細く尖った岩峰が小天狗です。右下にカニのはさみも見えてますね。薄っすらとガスも棚引いています。天狗尾根の迫力あふれる岩峰の姿を眺めて、A宮さんはますます天狗尾根への想いを強めたようです。
▲8:24。ゴゼンタチバナ。これは多年草なんですが、樹木のハナミズキやヤマボウシなどと近縁の種類なんですね。そう言われれば、花の感じが似ています。白い花びらのようなものは総苞なんだそうです。
▲8:28。ツルネ山頂2550mでパチリ! 左からA宮さん、哲さん、S上さん、K野さん。僕のペースが遅かったのでこの時刻ですが、写真の4人だけなら8時前には余裕で到着していたはずですね。
▲8:29。一般登山道にもこのような標識が。出合小屋と書いておくよりも、ツルネ山頂との標識がある方がいいと思うのですが。
▲8:31。山頂付近にはコマクサがたくさん咲いていました。綺麗ですね。女王の風格です。
▲8:53。ヨツバシオガマだと思います。
▲8:56。キレット小屋で休憩しました。天狗尾根がよく見えます。
▲9:35。赤岳目指してアップダウンが続きます。青空が見えることもありますが、霧雨が当たることもあったりします。
▲9:39。コマクサが群生する場所が再び出て来ました。実に愛らしく美しい花ですね。
▲9:43。チシマギキョウかなと思います。
▲9:49。青空バックにガレ場の急登を登って行きます。
▲10:16。緊張するクサリ場も出て来ます。
▲10:16。ミヤマキンバイ? それともシナノキンバイ? 葉の形がよく見えません。
▲10:18。ウスユキソウでしょうか? いわゆるエーデルワイスですね。
▲10:22。ハクサンシャクナゲだと思います。
▲10:23。2つの尾根がくっきりと見えています。右がこの日下りる真教寺尾根、左は県界尾根です。
▲10:47。真教寺尾根の分岐に到着すると、僕は皆に言いました。「僕は赤岳へは行かずに、先に真教寺尾根を降りるね」と。僕のせいで時間がかかっていますから、少しでも下山時刻を早めたいと思ったのです。真教寺尾根を数m下って、僕を見てくれている4人を撮りました。4人はこれから赤岳へ向かいます。A宮さんは「小屋でコ-ラを買って飲む」と、嬉しそうです。
▲10:59。これはミヤマキンバイだと思います。
▲11:14。このようなクサリ場が何ヶ所も出て来ました。出来るだけ、鎖には頼らずにクライムダウンしようと思うのですが、頼り切る場面も多く出て来ました。
▲11:18。右(南西)側には天狗尾根が見えています。大天狗と小天狗の岩峰。
▲11:24。これが最後くらいのクサリ場かな?
この後すぐに、休憩し易そうな場所がありましたから、30分間も休みました。水分補給をし、行動食を食べました。小さな羊羹も1個食べました。少しずつ体調も良くなってきている感じです。下りですから、息もそれほど荒くはなりませんしね。
休んだ場所に白っぽい小石を使って12じと書き残しておきました。僕がここを12時に通過したことが分かるようにです。
▲12:16。休憩を終え、歩き始めるとすぐに、上から哲さんが僕を呼ぶ声が聞こえました。30分も休憩していたのですから、追い付かれて当然ですね。逆に言えば、一人で降りていたおかげで30分間の休憩が取れたということです。白い小石の12じには誰も気付いてくれなかったようです。絶対気付くはずと思ったんだけどな。
頂上小屋にはコーラは売っていなかったようで、A宮さんは残念でした。合流してからは、僕が先頭で歩きました。下りですし、僕もまずまずのペースで歩けるようになりましたし、何より一番遅い僕のペースがこのパーティーのペースですから。
▲13:24。牛首山2280.1mだったと思います。
▲14:16。ハナビラタケだと思います。20cm近くありました。奥多摩で2回ほどもっと大きく成長したのを採って食べたことがあります。癖がなくて美味しいキノコでした。これも採って帰ろうかなとも思ったのですが、止めておきました。
▲14:27。清里スキー場の最上部の横を通りました。
▲15:01。羽衣池です。
▲15:22。途中、工事中の登山道があって、少しだけ遠回りしました。
▲15:30。到着です。
帰路、甲斐大泉温泉パノラマの湯へ寄りました。汗を流して、さっぱりとします。食事も畳の広間で食べたのですが、味付けが駄目でしたね。カツ煮の卵とじ丼を頼んだのですが、塩味がまったく効いていませんでした。塩味だけではないと思いますが。哲さん曰く「〇〇さん(僕)の味覚がちゃんとしてることが分かった」とのこと。
A宮さんとはここでお別れです。彼女は山梨県在住ですから、ここからは近くて、自分の車で来ているのです。他のメンバーは哲さんの車に乗せてもらっています。彼は埼玉県ですから、H島駅で集合し、解散もそこです。僕にとっては有難い限りです。本当はH島駅辺りで、S上さんとK野さんとで再度の打ち上げ(アルコール込み)をしたかったのですが、それなりに遅い時刻になりましたから、大人しく解散となった次第。😢
今回の山行は僕にとってはショックでもあり、反省点も多い山行でした。
そうだかどうだかは分かりませんが、僕自身の考えでは軽い高度障害を起こしていたのではと思います。前の晩、僕にしてはアルコール摂取が多かったこと、ほとんど眠れなかったこと、小同心クラック以降の疲労が抜けずに蓄積されていたこと、などがその原因として考えられます。しっかりと高度順化できていなかった気がします。以前なら、この程度のこと、もっと大変なことがあっても、山行に影響が出るようなことはありませんでした。でも、今回は影響が出ました。今後の山行では、このような事態が起こる可能性も考慮した上で、山行を実行しなければならないと思います。前の晩のアルコールは少なめにする、よく眠れるように温かくする(今回はシュラフカバーだけでしたから)、山行の疲労を取るための努力をする、等でしょうか。長くそれなりの山行を続けるためには、自らの年齢とも真正面から向き合わないといけないと強く思わされました。
思わぬ迷惑をかけてしまった、今回の山行でしたけれど、高齢者が通過しなければならない必然の道だと思いました。「いつまでも昔の体力や体調のままではないんだぞ」と痛感させられました。僕にとっては人生で初めての体験でしたから。前向きにとらえて、このようなことも克服する努力をしながら、自分自身をレベルアップし続けたいと思います。若いころはことさらの努力がなくても、山体力はアップしましたし、登攀能力も向上しました。でも、高齢者になると努力しないと低下し続けるんですね。山人生で初めての計画的努力をこれからしたいと思います。そんな努力を前向きに楽しめればいいな、と思っています。
最後に、今回も長い距離を歩きました。2日目の行動時間は休憩込みで10時間30分です。ツルネ山頂からは一般登山道ですから、標準コースタイムが分かります。ツルネからゴールの駐車場まではおよそ6時間10分。そこを6時間58分かかりました。休憩時間を引くと、途中で30分も休んだりもしましたから、6時間9分です。ほぼコースタイムと同じで歩けていますね。本当は休憩込みでコースタイムと同じ時間で歩きたいのですが。