ザイルと焚火と焼酎と

ザイルを使う登山にちょっぴり憧れ、山中に泊まると焚火を囲み、下山後は焼酎でほのかに酩酊。いい加減なのんびり登山の日記です

『朝鮮紀行 英国婦人の見た李朝末期』イザベラ・バード著 時岡敬子訳 講談社学術文庫

2016年01月01日 | 読書

2015/12  韓国や北朝鮮は日本の隣国ですから高校生のころから人並み程度、もしくはそれよりは少し多くの関心を抱いていました。最近はNHKで放送された韓国歴史ドラマを通じて、韓国の歴史にも少しですが関心を向けるようになりました。「宮廷女官チャングムの誓い」から始まって、「イ・サン」、「太王四神記」、「ファン・ジニ」、「トンイ」などを観て来ました。ドラマとしてよく構成されていて面白いですし、朝鮮歴史の勉強にもなります。

しかし、幾つかのドラマを観ていくうちに少し違和感も抱くようになりました。「太王四神記」以外は14世紀末から20世紀初頭まで続いた李氏朝鮮王朝のドラマなのですが、日本の戦国時代から幕末、明治時代を扱った歴史ドラマと比較して、人物構成があまりにも単純なのです。日本のドラマなら主役級の歴史上の人物が綺羅星の如く登場して、国の歴史が一人一人の人物の決断、躊躇、愛憎、運不運などで様々に変貌していくのですが、韓国の歴史ドラマは王宮内限定のように思えます。中でも印象的なシーンは、高級官僚である両班たちが発する「王様! どうぞお考え直しください!」などと口を揃えて繰り返し嘆願するシーン。日本の歴史ドラマではありえないシーンです。

一時期の韓流ブームも過ぎ去り、振り子は嫌韓の方向へすら振れているようですが、日本人も韓国人も相手国の歴史や自分の国の歴史をありのままに見つめる目が必要だと思います。先入観や断定なしに相手と自分を知ること、否むしろ、尊敬の気持ちをもって相手を見、謙遜の気持ちを忘れずに自分を見ることが大切だともいます。


▲『朝鮮紀行 英国婦人の見た李朝末期』イザベラ・バード著 時岡敬子訳 講談社学術文庫

書店で目に留まったこの本を読んでみました。文庫本とは言え、600ページ近い本ですし、夜寝る前に眠たい目をこすりながらちょっとずつ読みましたから、何ヶ月かかったでしょうか? 途中、他の本を読むこともしょっちゅうでしたから、半年間はかかったような気がします。

イザベラ・バードは『日本奥地紀行』でも有名な旅行作家で、この本は彼女が1894年1月から1897年3月にかけて4度にわたる朝鮮旅行を記録したものです。この時代は朝鮮半島をめぐって日本と清国が争った日清戦争の時代と重なっています。日清戦争は1894年7月から1895年3月ですから、まさにその時代ですね。

読後の感想文を書くにも、旅行記ですから旅の見聞を淡々と記録したものがほとんどです。そのところどころにイザベラ・バードならではの印象や感想が書かれてるのです。そんな、彼女の感受性溢れた部分から僕にとって印象的だった言葉をテーマ別に書き抜いて列記したいと思います。あえてそういう箇所だけを通して読むと、彼女が知って欲しかった当時の朝鮮の姿とはずれてしまうかもしれません。でも、それはそれで現代に生きている僕の視点が影響してるのでしょう。

【朝鮮人の肉体や精神や能力】
・朝鮮人はたしかに顔だちの美しい人種である。体格はよい
・知能面では(中略)理解の早さと明敏さ(中略)外国語をたちまち習得してしまい(中略)優秀なアクセントで話す
・東洋の悪癖である猜疑心、狡猾さ、不誠実さがあり、男どうしの信頼はない
・体格は日本人よりはるかに立派である
・庁舎に必ずたむろしている知識層から、わたしたちは育ちの悪い無作法な行為を何度も受けた(中略)それとは逆に、無学な階層の男たちはこまやかな親切をさまざまな形でわたしたちに示し
・日本人のこまやかなところにも目のいく几帳面さや清国人の手のこんだ倹約ぶりにくらべると、朝鮮人の農業はある程度むだが多く、しまりがない。
・朝鮮にいたとき、わたしは朝鮮人というのはくずのような民族でその状態は望みなしと考えていた。ところが沿海州でその考えを大いに修正しなければならなくなった(中略)朝鮮本国においても真摯な行政と収入の保護さえあれば、人々は徐々にまっとうな人間となりうるのではないかという望みをわたしにいだかせる
・どんな男もできるかぎりニュースを集め、あるいはつくる。耳に入れたことをうそと誇張で潤色する。朝鮮は流言蜚語の国なのである。朝鮮人は知っているとこと、というより耳にしたことを人に話す。ダレ神父によれば、朝鮮人は節度の意味を知らず、それでいながら率直さにははなはだしく欠ける
・狭量、マンネリズム、慢心、尊大、手仕事を蔑視する誤ったプライド、寛容な公共心や社会的信頼を破壊する自己中心の個人主義、二〇〇〇年前からの慣習と伝統に隷属した思考と行動、視野の狭い知識、浅薄な倫理観、女性蔑視といったものは朝鮮の教育制度の産物に思われる
・その一方で、国民のエネルギーは眠ったままである
・朝鮮ではなにもかもが低く貧しくお粗末なレベルなのである
・朝鮮の重大な宿痾は、何千人もの五体満足な人間が自分たちより暮らし向きのいい親戚や友人にのうのうとたかっている。つまり「人の親切につけこんでいる」その体質にある

【朝鮮王朝】
・わたしは王妃の優雅さと魅力的なものごしや配慮のこもったやさしさ、卓越した知性と気迫、そして通訳を介していても充分に伝わってくる話術の非凡な才に感服した
・国王は反外国的な感情はまったくいだいていない(中略)外国人の助力を遠慮なく頼りとしてきた(中略)国王の人柄について長々と記したのは、国王が事実上朝鮮政府であるからである(中略)その意志薄弱な性格は致命的である

【朝鮮の宗教や思想など】
・儒教は公認の宗教であり、孔子の教えは朝鮮人道徳の原則である
・聖職者に対して過酷な法律が制定されたのは、三世紀前に日本が侵略してきたとき、日本人が仏教僧に変装して都に入る許可をもらい、守備隊を虐殺したからだと朝鮮人はいう
・朝鮮人の受け入れる宗教は、努力せずに金を得る方法を教えてくれる宗教である。無関心がはなはだしく、宗教的機能が欠如しており、興味をそそられる宗教理念が皆無で、孔子の道徳的な教えはどの階級にもたいして影響をおよぼしていない
・朝鮮人は宗教を持たない
・神、祈り、道徳的悪、善といった最も初歩的な概念を持たない人々を相手にまともな礼拝を行うのは不可能だった(中略)宗教的な観念のない人々なのである
・人々の心に宗教の入りこんでいる形跡がなんら見られないのは、朝鮮人の非常にめずらしい特徴である

【朝鮮の自然や気候】
・気候は疑問の余地なく世界で最もすばらしく
・トラとヒョウはおびただしく棲息し
・城内でトラやヒョウが撃てると自慢できる首都はたしかにソウルをおいてはめったにない!
・城壁の外はうっとりするような田園地帯で(中略)すぐ近くにこれほどすてきな散策や乗馬の場所のある都会は東洋にあまりない
・隣国日本でよく見られる、土地を荒廃させるような洪水は地震とともに朝鮮にはない

【朝鮮の社会】
・これほど安全な環境をもつ都会はほかにない
・北京を見るまでわたしはソウルこそこの世でいちばん不潔な町だと思っていたし(中略)ソウルの悪臭こそこの世でいちばんひどいにおいだと考えていた
・朝鮮の女性はきわめて厳格に家内にこもっている
・貨幣はほとんど流通しておらず、取り引きは物々交換、もしくは農民が労働で支払う
・借金という重荷を背負っていない朝鮮人はまったくまれで
・学校といっても私塾である。家々でお金を出しあって教師を雇っているが、生徒は文人階級の子弟にかぎられ、学習するのは漢文のみで
・漢江流域には郵便施設がなく、もちろん新聞もない
・朝鮮の災いのもとのひとつにこの両班つまり貴族という特権階級の存在がある(中略)伝統上、両班に求められるのは究極の無能さ加減である
・上流階級より下層階級の方がしあわせな結婚ができる。朝鮮の女たちはつねにくびきをかけられている
・日本と土壌がきわめてよく似ているのであるから、しかも朝鮮は気候には日本よりはるかによく恵まれているのであるから、行政さえ優秀で誠実なら、日本を旅した者が目にするような、ゆたかでしあわせな庶民を生みだすことができるであろうにと思う
・悪政はこれ以上ひどくなりようのない状態で、あまりな搾取に対し、よくある農民蜂起を超えた規模で武装抗議するための時は熟している
・わたしの宿泊先にかぎらず、どこもかしこもみすぼらしくてほこりとごみだらけというのは信じがたいほどではあっても(中略)給水のひどさは話にならず、あらゆる種類のごみと汚物が井戸の口まで堆積している。
・朝鮮の官僚は大衆の生き血をすする吸血鬼である(中略)政府官僚の大半は、どんな地位にいようが、ソウルで社交と遊興の生活を送り、地元での仕事は部下にまかせている。しかも在任期間がとても短いので、任地の住民を搾取の対象としてとらえ、住民の生活向上については考えようとしない
・平壌をのぞいては、わたしの旅した全域を通して「交易」は存在しない
・概して相手を信用しないこと(中略)階級による偏見があること、一般に収入が不安定で(中略)まったくもって信じられないほど労働と収入が結びつかないこと
・もしも「搾取」が、役所の雑卒による強制取り立てと官僚の悪弊が強力な手で阻止されたなら、そしてもしも地租が公正に課されて徴収され、法が不正の道具ではなく民衆を保護するものとなったなら、朝鮮の農民はまちがいなく日本の農民に負けず劣らず勤勉でしあわせになれるはずなのである
・朝鮮の下層階級の女性は粗野で礼儀を知らず、日本のおなじ階層の女性のしとやかさや清国の農夫の節度や親切心からはおよそほど遠い
・農家の女性にはなんの楽しみもない(中略)働きづめに働くばかりである。三〇歳で五〇歳に見え、四〇歳ともなればたいがい歯がない
・朝鮮女性の地位の現状を推しはかるのはじつにむずかしい(中略)女性がいないと考えるのが礼儀なのである。女性は教育を受けず、どの階級においてもきわめて下位に見なされている。朝鮮人男性は女性とは当然男性より劣ったものだという、ある種二元的な哲学を持っている
・読み書きのできる朝鮮女性は一〇〇〇人にひとりと推定されている
・朝鮮国内は(中略)官僚主義の悪弊がおびただしくはびこっているばかりでなく、政府の機構全体が悪習そのもの、底もなければ汀もない腐敗の海、略奪の機関で、あらゆる勤勉の芽という芽をつぶしてしまう
・朝鮮における司法はおしなべてひどいものである。立法府はまだ創設されていないのも同然であるし、法を執行する裁判官も同様にまだ存在していない
・一八九七年にソウルに導入された最も画期的な変革のひとつに監獄の改善がある。これは元上海警察顧問官で現在朝鮮警察庁顧問官のA・B・ストリップリング氏によるところが大きい。氏はもともと日本人が提唱した監獄の改革を人道的かつ進歩的に実行している

【朝鮮の産業など】
・商店はどれも、商品のすべてが手を伸ばせば届くところにあるほど小さい
・地方に特産物はとぼしい
・朝鮮には卵はあるし、地方によっては鶏もある。栗の実はおいしい
・朝鮮ではほかのどこよりも紙の用途が多様であり、生産される紙のじょうぶさと耐久性は測り知れない
・朝鮮は非常に原始的後進的なタイプの純然たる農業国であり、その最上の農地の大半はろくに道も通っていない山脈で実質的に隔絶されているのである。また慣習の支配が強固である。さらに朝鮮の農夫は、米や豆が利益を生むこと、外国には米や豆の需要が無尽蔵にあること、高い綿の衣服を着るよりも外国から糸や布を輸入すれば衣服にかかる出費が抑えられること、外国製品が入ってくれば生活が便利になること、をようやく知りはじめたばかりである

【朝鮮の道路事情など】
・道路事情は劣悪
・道はとにかく悪い。人工の道は少なく、あっても夏には土ぼこりが厚くて、冬にはぬかるみ(中略)たいがいの場合、道といってもけものや人間の通行でどうやら識別可能な程度についた通路にすぎない。橋のかかっていない川も多く、橋の大半は通行部分が木の小枝と芝土だけでできており、七月はじめの雨で流されてしまう。そして10月なかばになるまで修復されない

【朝鮮の文化、芸術、芸能など】
・美術工芸品はなにもない。
・朝鮮語は東アジアで唯一、独自の文字を持つ言語である点が特色
・朝鮮人の文学、迷信、教育制度、祖先崇拝、文化、考え方は中国式である
・ソウルには芸術品はまったくなく、古代の遺物はわずかしかないし、公園もなければ(中略)見るべき催し物も劇場もない。他の都会ならある魅力がソウルにはことごとく欠けている

【朝鮮の中の日本】
・良質な日本円またはドルは現在全国で通用する
・釜山の居留地はどの点から見ても日本である(中略)銀行業務は東京の第一銀行が引き受け、郵便と電信業務も日本人の手で行われている。居留地が清潔なのも日本的であれば、朝鮮人には未知の産業、たとえば機械による精米、捕鯨、酒造、フカひれやナマコや魚肥の加工といった産業の導入も日本が行った
・清国人は彼(袁世凱)を恐れるあまり、朝鮮人に対してはまずまず態度がよかった。これに比べれば、日本人の朝鮮人に対する態度は話にならない
・方法のちがいが肉をこうさせてしまうので、ソウルでもほかの町でも外国人は日本人の肉屋で買わざるをえない
・わたしたちは朝鮮国内で最も整然として魅力的な町に入っていた(中略)元山条約港の日本人街である
・元山は(中略)朝鮮人が戦時中に日本人の払ったとほうもない労賃で裕福になったこと
・日本軍による占領は済物浦のこの区域を中世の悪疫のように壊滅してしまった
・日本人街と海岸沿いは殷賑をきわめていた(中略)物価は高く賃金は二倍以上になっており、「搾取」はなくなって朝鮮人は自発的に働いていた(中略)お供がいらないほど治安はよく(中略)日本の郵便局で(中略)親切な日本兵に迎えられ、お茶と火鉢でもてなされた
・日本の将校が朝鮮軍を訓練していた。改善といって語弊があるなら変化はそこかしこにあり、さらに変化が起きるといううわさがしきりにささやかれている
・現在朝鮮の改革は日本の保護下で行われていないとはいえ、進行中のものはほとんどどの段階においても日本が定めた方針に則っていることを念頭に置かなければならない
・このように堕落しきった朝鮮の官僚制度の浄化に日本は着手したのであるが、これは困難きわまりなかった(中略)日本が改革に着手したとき、朝鮮には階層が二つしかなかった。盗む側と盗まれる側である
・日本は朝鮮人を通して朝鮮の国政を改革することに対し徹頭徹尾誠実であり、じつに多くの改革が制定されたり検討されたりしていた
・平壌は猛襲を受けたわけではない。市内では実際の戦闘はなく、敗退した清国軍も占領した日本軍も朝鮮を友邦として扱っていた。この荒廃のすべてをもたらしたのは、敵ではなく、朝鮮を独立させ改革しようと戦った人々なのである。「倭人(ウオジェン=矮人=こびと)は朝鮮人を殺さない」ことが徐々に知られるようになり、多くの住民はもどってきていた
・そのあとの占領中、日本軍は身を慎み、市内および近郊で得られる物資に対してはすべて順当な代金が支払われた。日本兵を激しく嫌ってはいても、人々は平穏と秩序が守られていることを認めざるをえず
・そのための改革は日本によって行われてきたが、日本も自由裁量権をあたえられているわけではなく、また改革に着手した(とわたしは心から信じる)ものの、役割を果たし調和のとれた改革案を立てるには未経験すぎた(中略)改革は断続的断片的で、日本は枝葉末節にこだわって人々をいらだたせ、自国の慣習による干渉をほのめかしたので、朝鮮を日本の属国にするのが目的だという印象を、わたしの見るかぎり朝鮮全土にあたえてしまった
・慈山でもほかと同様、人々は日本人に対してひとり残らず殺してしまいたいというほど激しい反感を示していたが、やはりほかのどこでもそうであるように、日本兵の品行のよさと兵站部に物資をおさめればきちんと支払いがあることについてはしぶしぶながらも認めていた
・断髪令は朝鮮人を日本人と同じような外見にさせて自国の習慣を身につけさせようとする日本の陰謀だと受けとめられた。朝鮮人らしさを奪う勅令は日本の差し金だという考えはきわめてつよく、あちこちで起きた断髪令反対の暴動は日本人への敵意を公然とあらわしており、殺人にいたった場合が多い
・現在行われている改革の基本路線は日本が朝鮮にあたえたのである。日本人が朝鮮の政治形態を日本のそれに同化させることを念頭に置いていたのは当然であり、それはとがめられるべきことではない
・日本人の制定した改革が最も著しくあらわれているのはこの分野である(中略)きわめて野心的な部分をなしており、賞賛に値する青写真だった。そのまま実行されていれば、朝鮮の宿痾たる多くの悪弊が根絶されたはずである
・朝鮮の教育改革計画はもともと日本人による改革時代に発案されたもので、初等学校制度、直接成果の出る師範学校、中等学校の創設がその内容である
・朝鮮市場におけるイギリスの手ごわい競争相手は日本で、わたしたちは二四時間以内に朝鮮の海岸線に到着できるうえ、海運をほぼ独占しているばかりでなく、現在最も頭の回転が早く、適応性があり、忍耐強く、進取の気象に富んだ人々と競合せねばならないのである
・日本の成功は、地の利はべつとして、朝鮮の津々浦々に目はしのきく出張員を送り、その出張員から仕入れる情報の正確さ、そして朝鮮市場の好みと要求を調べる製造業者のきめ細かな配慮に主として起因している
・わたしは日本が徹頭徹尾誠意をもって奮闘したと信じる。経験が未熟で、往々にして荒っぽく、臨機応変の才に欠けたため買わなくともいい反感を買ってしまったとはいえ、日本には朝鮮を隷属させる意図はさらさらなく、朝鮮の保護者としての、自立の保証人としての役割を果たそうとしたのだと信じる

【朝鮮人の日本観】
・三世紀にわたる[豊臣秀吉の朝鮮出兵以来の]憎悪をいだいている朝鮮人は日本人が大嫌い
・住民たちは三世紀前の遺産である憎しみから日本兵を嫌っているが、彼らに対してはなにも言えないでいる。日本兵がきちんと金を払ってものを買い、だれにも危害を加えず、庁舎の門外にはめったに出てこないことを知っているからである
・人々は日本人に対して激しい嫌悪感をいだきながらも、日本人が騒ぎを起こさず、なにを手に入れるにもきちんと金を支払っていることを認めざるをえない

【イザベラ・バードの印象的な言葉】
・このように旧態依然とした状況、言語に絶する陳腐さ、救いがたくまた革新のないオリエンタリズムの横溢する国に、西洋による感化という動揺がもたらされたのである。このか弱い属国は何世紀にもわたる眠りからいきなり揺さぶり起こされ、なかばおびえ、また完全にとまどいながら、強力で野心があり、性急で必ずしも節度をわきまえているとはいえない列強が、押し合いへし合いしつつ自分の上に覆いかぶさっているのを知った。そして、新しい道へとむりやり連れていかれ、由緒ある慣習の弔鐘を乱暴に鳴らされ、利権をよこせとやかましくせつかれ、求めてもいなければなんの意義も見いだせない改革やら提案やら万能薬的解決策やらでめんくらわせられているのである
・絶対王政が立憲政治に変われば事態は大いに改善されようが、言うまでもなくそれは外国のイニシアチブのもとに行われないかぎり成功は望むべくもない
・わたしには羽根つきの羽根のように列強にもてあそばれる朝鮮が、なんの望みもなんの救いもない哀れで痛ましい存在に思われ、ロシアの保護下に入らないかぎり一二〇〇万とも一四〇〇万ともいわれる朝鮮国民にはなんの前途もないという気がした
・清との関係が終結し、日清戦争における日本の勝利とともに、中国の軍事力は無敵であるという朝鮮の思いこみが打破され、本質的に腐敗していたふたつの政治体制の同盟関係が断ち切られた
・朝鮮にはその内部からみずからを改革する能力がないので、外部から改革されねばならない

                                      以上


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