本来、この日の葛葉川本谷はS崎君の会社の後輩お二方と一緒に行く予定でした。でも、やんごとなき所用でしたり、体調不良で、結局、S崎君と二人旅になってしまいました。
S崎君と沢へ行くのは実に久し振りで、調べてみると2008年7月の大雲取谷以来。彼はその後、結婚をし、お子さんも生まれるなどで、山からは遠ざかる生活になっていたのです。
S崎君は仕事柄、自然に対する知識が豊富です。一緒に山に入ると、いろいろなことを教わるので、それも彼と一緒に山へ入る際の楽しみの一つになっています。一般的にはむさ苦しい男二人旅ですが、彼となら楽しく遡行できそうです。
2012/9/30 ザイルは9ミリ×40mと8ミリ×30mの2本。富士形ノ滝で新人に懸垂下降の練習でもしてもらうつもりだったからです。なので、40mの方をS崎君に持ってもらうことに。
S崎君と二人なので、ある程度のスピードで短時間で遡行終了するというのも本日のテーマのひとつになります。でも、二人ともあまりあくせくと歩くタイプではありません。ですから、とりわけスピードアップを意識する訳ではありません。
菩提からの道も久し振りなので、この道でいいのだろうかと少し不安に感じながらのアプローチでした。それも桜沢橋が現われると解消し、多くの人が水を汲む「葛葉ノ泉」で沢支度です。
▲このような小滝が連続して現われます。良いウォーミングアップ! ともに10:02ころ。
▲初心者がいる場合はこれくらいの高さがあると、念のためにザイルを出すかもしれません。10:14ころ。
▲こんな滝はどこからでも登れそうです。銘々勝手にルートを決めて登りました。10:18ころ。
▲2条の滝です。10:19ころ。
ここまでせいぜい5、6mまでの小滝ですが、次々に出て来ます。初心者には本当にいい沢ですね。
▲板立ノ滝7mです。葛葉川本谷では一番難度の高い滝。10:24ころ。
S崎君は最初、流れの左を見ましたが、ピンがなく岩も逆層なので、難しそうです。次に流れのすぐ右のカンテ状を検討。ピンはありますが、グレードはかなり高そうです。アブミが欲しいルートです。
結局、右の凹角状っぽい通常ルートに落ち着きました。
▲S崎君がリードしました。久し振りの滝のリードで緊張したでしょうが、見事リード。10:35ころ。
フォロウでは上部のワンムーヴが4級-くらいに感じました。最新のガイドブックでは3級+になっています。
滝の上で最初の休憩を取りました。
ところで、僕は経験ないのですが、板立ノ滝の高巻きは僕たちが登攀したすぐ右の笹藪でした。「でした」と言うのは、以前は濃い笹藪でしたのに今は跡形もないからです。これも鹿の食害なのでしょうか。
▲ゴルジュの先に林道のガードレールが見えます。11:13ころ。
▲林道から上流ではこの写真のようなナメ滝が多くなります。11:27ころ。
▲これが富士形ノ滝10m。11:27ころ。
水流の左壁がリードするには面白そうなのですが、ピンがありません。結局、水流右の2級+~3級-くらいのルートをザイルを出して登りました。
ここで懸垂下降などのトレーニングが出来ればいいなぁと考えていたのです。
▲S崎君がちょっと難しそうに登っていたので、他に楽そうなルートはあったのですが、僕も続いて登ってみました。瞬間4級-くらいでしょうか? いいバランスのムーヴを探さなくてはなりません。11:56ころ。
▲上流になると、この写真のように渓流シューズのフリクションで登るナメ滝が幾つか出て来ました。微妙な凹凸を拾いながら登ります。12:04ころ。
▲写真にはよく写っていませんが、上流の明るくなっている場所が崩壊地になっています。この先を行ってもガレた沢が続くだけでしょうから、そろそろ沢から離れたいと思い始めました。12:25ころ。
▲すると、すぐ左の斜面に微かな踏み跡があります。ここから沢を離れることにしました。12:26ころ。
普通より早めに沢から離れましたから、三ノ塔から大倉へ降りている登山道へはまだ距離があります。でも、鹿だか人だかの踏み跡を拾いながら、比較的楽に登山道へ到着。
S崎君の超ユニークな弟さんの話などで盛り上がりながら楽しく下山しました。
▲牛首で林道に飛び出します。13:41ころ。ここからは山道コースもあるのですが、あえて林道を下りました。
この時はS崎君のヤマビル話が秀逸でした。単に面白いのではなく、僕にとっては新しい知識をたくさんもらいました。ヤマビルひとつでも、自然と言うのは実に不思議や神秘や感動や好奇心やらを呼び覚ましてくれるのですね。
風の吊橋を渡り、大倉バス停が見えて来ます。幸運なことにバスがいて、すぐにでも発車しそうな雰囲気。50mほどを走って飛び乗りました。14:38発のバスです。
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渋沢の「いろは」には15時ジャストに入りました。S崎君はまずは生ビール、僕は最初から芋焼酎「黒霧島」のお湯割りです。グラスにはまずお湯を入れてから、焼酎を後から注ぎます。
閑話休題。8年以上前のこと、奄美大島へ行った際、名瀬市内の酒屋さんで何杯も何杯も10種類ほどの黒糖焼酎の試飲をさせてもらったことがありました。その時、「お湯に焼酎を注ぐと実にまろやかな味わいになるよ」と、店の御主人が目の前で実験をして飲ませてくれたのです。同じ焼酎、同じ割合で割っているお湯割りなのに、まったく別物のように違っているのです。お湯を先に入れて、そこへ焼酎を注ぐと実に柔らかな舌当たりになる。その時以降、僕はずっとその入れ方です。
その日は台風17号が関東地方を直撃する日でしたから、早めに「いろは」をおいとまする予定でした。店へ入ったのが15時ですから、普段よりはずっと早くではあったのですが、店の女将さんから「もう帰んなさい」と追い出され、結局最後の客になっていました。
自分では分からないのですが、相当酔っていたようです。小田急線の登戸で南武線に乗り換える予定でした。S崎君は相模大野ですでに下車しています。気が付くと、新宿駅でした。驚いて電車から飛び出たのですが、すぐに発車することが分かり、恥ずかしくもあるので、別の車両に再び乗ったのです。
登戸で南武線へ乗り換えたのですが、次に目を覚ますと、何を勘違いしたか、降りなくていい電車から降りてしまいました。南武線に乗り換えたこともその時には忘れていたようですね。その後ももう一回くらいひと悶着あって、やっと拝島駅に到着。夜の9時を過ぎていました。あちらこちらの路線が不通になる中、無事に着いたのは幸運です。
S子からは心配のメールや留守電が雨あられ。電源を切っていたので知りませんでしたが、心配をかけていました。………反省。