ザイルと焚火と焼酎と

ザイルを使う登山にちょっぴり憧れ、山中に泊まると焚火を囲み、下山後は焼酎でほのかに酩酊。いい加減なのんびり登山の日記です

つづら岩も3年半ぶりです。ダブルザイルの練習をしました

2022年05月21日 | 岩登りトレーニング

つづら岩は奥多摩の大岳山1266.5mから南東に延びる馬頭刈(まずかり)尾根上にある岩場です。メインの南面は高さ40m、幅60mあります。

つづら岩は僕にとってはとても思い出深い岩場なんです。僕は27歳の時、沢登りのルート図集と沢登りの解説本だけを頼りに単独で沢登りを始めました。ザイルはもちろん、ヘルメットもハーネスもなく、地下足袋と草鞋だけでやってました。通い慣れた奥多摩の、ルート図があって、ザイルがなくても高巻いたりして遡行できる沢ばかりを登ったのです。奥多摩の沢でルート図に載っている沢は当時はまだ少ししかありませんでした。さらに、ザイル不要の易しい沢となると、本数は限られます。そんな沢を僕は季節を変えたりしながら何回も訪れたのです。3年間ほどそんなことをしていると、さすがに詰まらなくなって来て、他の沢にも行きたくなります。でも、そのためにはザイルを使用する岩登りが出来なくてはなりません。

『山と渓谷』の会員募集欄を通じて、2つの沢登り専門の山岳会に申し込みの手紙を送りました。でも、なしのつぶて。当時は少しでも先鋭的な山岳会では30歳を越えているとロートル扱いでお呼びでなかったんですよね。

そこで僕は方針を転換しました。つづら岩のことを思い出したのです。馬頭刈尾根を歩いた時に、つづら岩で岩登りの練習をしている人たちを見たことがあったのです。「そうだ! あそこに行けば岩登りをしている人とコネが出来るはずだ」と考えたのです。早速実行しました。軍道の登山口から歩き始めると、最初に東面の岩場に出会います。そこでは学生のような若者たちが大勢練習していました。「こんな若造に叱られながら訓練させられるのは嫌だな」と思い、そこから離れました。南面に行くと、中高年のおばさんが居ました。ザイルを操作しています。そのザイルの先、10mくらい上の岩場には男性がいて、登っています。つまり、その女性はそこでリードしている男性を確保していたんですね。僕は興味津々ですから、じっとそこで見続けました。当然、彼女はそんな僕に気付きますよね。「岩登りに興味があるんですか?」と声を掛けて来ます。「ええ」と僕は応えます。「じゃあ、電話番号を言いますから連絡してください」と言って、彼女は電話番号をその場で言うんです。僕はメモをして、その場を離れました。これほど年配の人になら、怒られたりしても我慢できるかな、と思ったのです。今から思うと、教えてくれる人を選ぶ基準が変ですね。

それはともかく、その夜すぐに電話して、次の週だったか、天覧山に連れて行ってもらいました。さらに翌週は日和田、少しあいて鹿沼の岩場。その鹿沼の岩場で僕のお師匠さんになる二人に出会ったんです。その帰路、その山岳会に入会することを決めました。

 

つづら岩の思い出話はほどほどにして、この日はダブルザイルの練習をしに来たんです。僕とS﨑君とK野さん、その3人です。もちろん、3人でもダブルザイルの練習は出来ますけれど、リードする人は1ルート1人になってしまいます。つるべ登攀することは出来ません。ですから、もう一人S上さんを誘いました。S上さんは岩トレが久し振りなので、易しい岩の練習をします。これで2人と2人になります。S上さんはダブルザイルの練習はしませんから、途中でメンバーチェンジするつもりでした。

 

2022年5月15日(日) つづら岩で岩トレ

▲8:48。この日はK野さんがシェアカーを借りて来てくれました。千足(せんぞく)の駐車場に停めて、つづら岩へ向かいます。途中、天狗滝があります。滝の左上の岩場も登攀対象ですが、僕は登ったことがありません。(撮影:K野)

 

▲9:28。続いて現われる滝は綾滝です。この日は水量が多かったのでそうは見えませんが、通常の水量の時は水の流れが綾をなすように流れ落ちているのです。(撮影:K野)

 

綾滝からの登山道は急登です。昔はクライマーだけが使っている単なる踏み跡でした。急登箇所のザレは3歩進むと2歩ずり下がるような場所でした。「沢の詰めのザレ場登りの練習だ!」と言っていたものです。でも、何時からだったか、このコースが『関東ふれあいの道』に組み込まれることになったのです。つづら岩や綾滝や天狗滝があったせいでしょうね。それで、登山道が整備され、山肌は道型に削り取られ、階段も付けられました。

とは言え、急登であるのは変わりません。僕は喘ぎ喘ぎ皆の後を追いかけました。

やっと、つづら岩に到着すると、皆はすぐに装備の準備をし始めますが、僕はゆったりと食べたり飲んだり。ここまで登って来ただけで満足状態ですね。

 

S﨑・K野パーティーとS上・僕パーティーに分けることにしました。この時はまだ、途中でS﨑・僕パーティーとK野・S上パーティーにメンバーチェンジしようと考えていましたね。

 

▲11:02。K野さんが左の一般ルートを登り始めました。本では4級になっていますが、僕は4級+あると感じています。

 

▲11:04。K野さんが今いるこの辺りが難しいんです。バランスを崩しやすく、体がドアスイングして右に流れてしまい易いですね。K野さんもしばらく苦労していましたが、突破していきました。

 

▲11:29。フォロウするS﨑君です。彼は4級+のオンサイト能力があったのですが、3月に10数年ぶりにクライミングを再開したばかりですし、体重も増えましたから、4級+レベルには苦労しています。ここでも1度、ザイルにぶら下がりました。

 

▲11:32。この辺りは3級です。左に確保しているK野さんが写っています。K野さんの右にいるクライマーは腕力ルート5級+をフォロウするようですね。

 

▲11:47。S﨑君が2ピッチ目をリードします。今いる場所から左上のフェースに出て登ります。3級の易しいフェースなんですが、ピンが少なくて、探しても見つかりません。そんな不安感が恐怖感に繋がりそうなフェースです。

 

ふたりの順調な練習風景を確認して、僕もやっとやる気が起きました。S上さんは久し振りの岩トレですから、易しい岩場のつづら岩東面へ行くことにしました。

 

▲12:13。つづら岩東面15mほどの高さの岩場です。左側面から見上げると尖った岩峰に見えるので、マッターホルン状岩峰とも称されています。4級+や5級-のルートもあるのですが、僕が登るルートはもちろん3級。写真は僕のリード後、フォロウしてくるS上さんです。

 

▲12:58。2本目は南面に移動して来ました。右端のルートです。このルートは4級-になっていますけれど、その日の自分の状態で凄く難しく感じる日もあります。この日は4級くらいに感じたかな? 僕のリードしている写真は滅多にありませんよね。K野さんが撮ってくれていました。(撮影:K野)

 

▲13:13。僕は途中のテラスで区切って、S上さんの確保をしています。S﨑・K野パーティーは2本目のルートにチャレンジ中。右の一般ルートです。1ピッチ目3級なんですが、難しい4級+のコースから登り始めたようです。ただ、S﨑君にはまだ難しくて、A0になってしまったと、後で聞きました。写真は1ピッチ目の終了点でK野さんの確保態勢に入っているS﨑君。

 

▲13:15。S上さんがフォロウして来ました。今いる辺りがこのルートの核心部です。頭上の木を掴んで登って来ました。写真に写っているザイルですが、細いでしょ! K野さんのザイルなんですが、8.2mmなんです。でも、しかし、シングルザイルなんですね! もちろん、ダブルザイルとしても使用できます。60mあります。

 

▲13:25。最初は今いるテラスから右の踏み跡に移って、歩いて下ろうと思っていたんですが、S上さんがブランクを感じさせない登りを見せているので、2ピッチ目を登ることにしました。もちろん、僕のリードで。登っている途中で、S﨑君を再び撮りました。

 

▲13:25。先ほどのテラスで僕を確保してくれているS上さんです。

 

▲13:42。今、S上さんがいる場所の少し下に確保できるボルトが何本か打たれていたのですが、下がるのも嫌ですから、上まで登って来ました。途中にも確保支点がありましたけれど、完全な安全場所まで登って来て、確保することにしました。写真では分かりませんが、足だけでも歩けそうなくらいの傾斜なんです。そうそう、2ピッチ目のグレードですがよく分かりませんね。難しくはないのですが、不安感や緊張感や怖さはありますね。ピンが少なくて、それがなかなか見つからないんですよね。ホールドだらけではあるのですが、本当にしっかりと使えるホールドはすぐには見つからないんです。そして、けっこう立っていて、90度の垂壁なんですね。3級+くらいでしょうけれど、感覚的には4級ありますね。

 

▲13:54。あれれれれ!? なんで? なんで? K野さんが僕の左、先ほど僕が出て来た場所の少し上(僕に近い方)に現われました! 右の一般ルートは反対側、僕のずっと右に登って来るはずなんです。それにK野さんが登って来たルートは5級くらいあるはずですから、S﨑君は大丈夫かな? と心配です。K野さんは「かなり必死で、軽く酸欠状態で登った」と言ってました。よくリードしましたよね。

 

▲13:56。右側を見ると、こんな感じです。K野さんは本当ならこの写真の岩場の中央付近を登らなければならなかったのです。

 

▲14:01。確保するK野さんの下にS﨑君の白いヘルメットが見えて来ました。

 

▲14:03。S﨑君もよくフォロウしましたよね。

 

▲14:32。4人で懸垂下降することにしました。K野さんがセットします。50mのダブルザイルを2本繋ぎます。2つに分割して、下方に投げたのですが、途中の木に引っ掛かってしまったようです。ちょうど引っ掛かっているところにテラスがあったようですが、その引っ掛かりを外すのに苦労しています。どんな感じで引っ掛かっているのか、上から見ても分かりませんから、K野さんに任せるしかありません。なかなか外れないみたいです。辛抱強く岩場の上で待っていると、2本のザイルの結び目が見えました。それで、K野さんに大声で声を掛けました。「その結び目を解いて、1本ずつ引き抜きな!」。しばらくすると、木の枝に絡まっていたザイルがほどけました。これで安心です。K野さんもいろいろな体験をして、次第に立派なクライマーになっていくでしょうね。こんな場所では束ねたザイルを持ったままで、下降するにつれ、ザイルも出していくような方法を身に付けておいた方がいいのでしょうね。

 

▲15:03。続いて、僕が下降しました。次はS上さんです。S上さんにとってもこれほど長い懸垂下降は初めてではないでしょうか。地面の上のザイルの長さを見ると、この懸垂下降は40m以上あるようです。(撮影:K野)

 

▲15:04。地面に降り立つS上さん。K野さんが念のためにザイルを持ってくれています。

 

本当なら、ここでメンバーチェンジして、僕もダブルザイルの練習をすべきだったのでしょうが、わざわざ練習しなくても、問題はなさそうです。S上さんが「オケラルート3級を登りたい」と言うので、4人で登ることにしました。

 

▲15:20。リードするのはK野さん。3級となっていますが、今いるところからしばらく、ちょっと嫌らしいムーブが続きます。4級あるといっても可笑しくないと思いますね。4人が繋がって登るので、K野さんが今使っているザイルは8.2mm×60mのシングルザイルです。この先でK野さんは穴の中、トンネルの中、煙突の中に潜り込んでいきます。そこからK野さんの悲鳴が聞こえてきました。「頭が通らないよ~っ!」。

 

▲15:34。K野さんは無事にリードし、2番手で登るのはS﨑君。そのS﨑君はダブルザイルを1本引いて登ります。

 

▲15:55。3人目はS上さん。彼女が穴から抜け出すところです。(撮影:K野)

 

▲16:04。これが穴の入り口。

 

▲16:06。穴に入ったところ。ここからオケラ気分をたっぷり味わうことが出来ます。オケラ気分と言われても、オケラは土の中でこんなに苦しまないでしょうけれどね。

 

▲16:07。上を見上げるとこんな感じ。ここから穴が狭くなります。ヘルメットが周囲を擦ってガリガリ鳴ります。ホールドがあるわけでも、スタンスがあるわけでもないのですが、体全体が挟まっていて落ちる不安はありません。上へ登れないのでは、という不安はありますけどね。

 

▲16:09。出口が近づいて来ました。体格がでっかい人、太った人には通り抜けられないでしょうね。

 

▲16:19。2ピッチ目は僕がリードしました。リードと言っても、3級-もないでしょうね。2級でしょう。高度があるので念のためにザイルで確保はします。2番目にS上さん、続いてS﨑君、最後にK野さんが登って来ます。この写真の頃から時折ポツ、ポツと小さな雨粒が落ちて来ました。

 

この日はオケラルートで終了です。小雨が降り始めましたし、僕たちが最後のクライマーです。下山するまで雨は降り続きましたが、雨具を着るほどではありませんでした。

H島でシェアカーを返却し、4人でレストラン『ネパールキッチン』へ。 首都カトマンズの場末のレストランの雰囲気を湛える僕お気に入りのお店です。 いつ行っても、やる気が感じられません。 この日はとりわけやる気がないようで、メニューすらないとのこと。「ネパールご飯しかありません」と言います。 ネパール女性で、日本語も少ししか通じません。 ネパール体験のある(僕もあるんですが)S﨑君がいろいろと聞いてくれて、いろいろと食べることが出来ました 。

チキンカレー(汁はなし)、大根のアツァール、モモ、白ご飯、ダルスープ。3人は生ビール、僕はククリラムのオンザロック。山やネパールの話が弾んで、楽しく、 美味しく、食べたり飲んだりして時が過ぎていきました。

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