ザイルと焚火と焼酎と

ザイルを使う登山にちょっぴり憧れ、山中に泊まると焚火を囲み、下山後は焼酎でほのかに酩酊。いい加減なのんびり登山の日記です

今年最後の沢登りを奥多摩の惣岳沢で行ないました

2023年01月18日 | 沢登り/多摩川北秋川水系

最初に、惣岳沢か惣角沢かについて記しておこうと思います。僕が初めて惣岳沢の存在を知ったのは、1992年に発行された『改訂増補 東京付近の沢』を見た時だと思います。その本では「惣岳沢」となっていました。その後、1996年に発行された『奥多摩 大菩薩 高尾の谷123ルート』では「惣角沢」となっています。あまりメジャーな沢ではありませんから、他の本ではあまり目にしていませんね。最近はそんな本は購入していませんから、どうなっているのでしょう? 2万5千図では「惣角沢」となっていますが、2万5千図の表記はあまり信用できません。間違いが多いことはよく知られていますからね。

奥多摩を歩く人のバイブルと言われている宮内敏雄氏著『奥多摩』では「惣岳沢」となっています。ですから、戦前は「惣岳沢」だったのかというと、そうでもなさそうです。東京瓦斯山岳会編『秋川の山々』では「惣角沢」と書かれています。それぞれ『奥多摩』は1944年(1943年かも)、『秋川の山々』は1940年の発行です。まあ、宮内氏のファンとしては「惣岳沢」を選びたいですね。

さらに言わせてもらえば、奥多摩に限らず沢名と山名が一致していることは多いです。川苔谷と川苔山(この山名も川乗山とも書きますね)、月夜見沢と月夜見山、雲取山と大雲取沢、鷹ノ巣山と鷹ノ巣谷のように。そんな例はいっぱいあります。それなのに、惣角沢と惣岳山では可笑しいですよね。

 

この話題は以上にして、惣岳沢の遡行報告です。この日の遡行テーマは「濡れないこと」です。濡れた方が楽なケースでも、濡れずに突破する困難なルートを選択する。まあ、それほど大袈裟には考えてはいませんが。この日の惣岳沢がいつもよりも水量が多いことと、最近の気温の急激な低下で、濡れると酷く寒いはずだからです。僕自身、基本的に濡れるのは好きではありませんから。

 

2022年10月8日(土) 惣岳沢

▲9:28。この日のメンバーです。右からSRさん、H田さん、N村さん。ガードレールの右端から入渓します。

 

▲9:31。入渓地点を振り返ると、こんな感じ。ガードレールから階段を下ると、橋が架かっています。滝見台までの道が整備されています。

 

▲9:39。入渓後すぐにゴルジュが始まります。F1-5mは水流の右が3級で登れるようです。しかし、そこに取り付くまでが深そうな釜をへつるのでしょうが、濡れそうです。

 

▲9:41。左には手摺り付きの滝見物用山道が通っているので、それを利用して高巻きました。

 

▲9:51。F2-2段4mは釜も深そうで滝に取り付くまでに全身濡れそう。しかも、水を浴びながらのクライミングになるのも必至です。当然、高巻きます。左から高巻きました。SRさんが50mザイルを引いて、高巻きます。僕も様子を見るために、10mほどザイル沿いに直上し、SRさんと残りの2名ともに見える位置まで行きました。SRさんは15mほど横に進み、それから沢床へ下降します。下降する箇所でSRさんとしては時間がかかりましたから、そこが難しそうですね。

 

▲9:51。通常はこのようなケースではラストにはN村さんなのですが、H田さんがフリクションノットを 正しく使えるかどうかを僕は知りませんでしたから、2番手はN村さんにお願いしました。ラストはH田さん。

 

▲10:03。N村さんが僕の前を通過して、先へと進みます。

 

ラストは本来はクライミング能力が優れた人が務めます(トップも同様です)。ただ、僕はH田さんのクライミング能力、沢での歩く実力を知りません。H田さんが登って来るのに応じて、僕も先に進みます。沢へ下降し始めるところまで、僕は来ました。すると、そこから先に、プロテクションがないのです! プロテクションが取れそうな灌木や岩角もありません。泥っぽい斜面なんです。(SRさんも「取りたかったんだけど、取れる所がなかった」と言っていました)こんなやばそうな場所をH田さんに下降させるわけにはいきません。ここで滑ったら沢床まで一直線です。

 

▲10:16。と言う訳で、下降し始めるポイントから懸垂下降することにしました。僕が自分のセルフビレイを取っていた灌木を利用して懸垂下降をしました。H田さんに先に降りてもらいます。最後に僕が降りました。で、高巻き終了。この日の沢登りではここが核心部でしたかね。勉強になった場所だと思います。

 

▲10:22。F3-5mはよく見ると左壁に残置のシュリンゲがありました。登れそうですね。僕がリードしました。3級+くらいですね。濡れないつもりだったのに、右腕と右肩が濡れてしまいました。

 

▲10:35。H田さんも軽やかに登って来ます。

 

▲10:38。N村さんも続きます。全員スムーズにフォロウ。

 

▲10:45。F4-5mは見るからに登れそうにありません。

 

▲10:46。高巻くしかありません。右の方が小さく巻けそうです。

 

▲10:51。ひとつ間違えると谷底に落下して、酷いことになりそうですが、ザイルを出すほどでもなさそうです。緊張感を持ちながら、慎重に高巻き終了。

 

▲11:25。しばらくは穏やかな渓相が続きました。

 

▲11:46。崩壊地もあります。

 

▲11:48。蜂の巣ですね。スズメバチの仲間の巣のようです。熊とかハチクマに食べられた残骸かもしれませんね。

 

▲12:02。久し振りの滝です。

 

▲12:05。水流の左を登りました。

 

この後は難しい滝も難しい高巻きもなく、順調に進みました。僕が記憶していた4級-くらいのスラブ滝は結局ありませんでした。どこに行っちゃったんだろう?!

 

▲12:10。巨樹ですね! カツラの木かな?

 

▲12:11。水量は乏しいですが、立派なゴルジュですね。

 

▲12:13。倒木帯もありました。

 

▲12:23。分岐点では地図読みもします。僕はいい加減で、本流らしきルートを選ぶだけ。奥多摩ではその程度のルートファインディングで危険な目には遭っていません。

 

▲12:39。今年の奥多摩はが綺麗です。

 

▲12:53。この滝が少し難しい滝かもしれません。土砂で滝の下部分が埋もれてしまっていますね。

 

▲13:02。ナメ滝も現われました。

 

▲13:05。緩傾斜の滝ですが、慎重に。

 

▲13:27。次第に源流の雰囲気になって来ました。

 

▲13:40。水流もそろそろ消失しそうです。

 

▲14:08。ラストに待ち受けていた感動は湧き水でした。水も消えた最後の詰め直前、沢形の右の泥壁に岩場があって、その岩の下から水が流れていました。この湧き水は僕もほぼ毎回見ています。

 

▲14:21。さらに沢の奥壁にぶつかった時のことです。その岩場の下から1.5mほどの滝になって水が流れ落ちていました。水が枯れてしまって相当登って来ているのに、突然の小滝です。やはり、奥壁の岩場の下から水が湧き出ていました。ここを見たのは僕は初めてだと思います。いつももっと左を登っていたのだと思います。直前に三俣がありましたけれど、僕はいつも左に入っていたのでしょうかね?

 

▲14:28。奥壁を右側から巻きました。急な泥斜面です。この写真の辺りでは少し傾斜が緩み始めています。

 

▲14:41。最期を詰め上げて、無事に遡行終了。易しい沢なんですけれど、充実感はありますね。元気者のSRさんがトップで到着。僕は2番手でした。

 

▲14:44。ラストのN村さんが最後の力を振り絞って駆け上がって来ました。

 

▲14:55。ヘリが飛んでいました。僕たちの上空で2度ほどホバリングしていました。何か事故か遭難があったのでしょうか? 

 

▲14:58。装備解除する前に記念撮影。右からH田さん、僕、N村さん、SRさん。

 

御前山山頂で装備解除して下山開始しました。すると、すぐに先頭のSRさんが向こうから登って来た女性と英語で語り合っています。そして、その女性は僕たちと一緒に下山することになりました。彼女はシンガポール人で仕事で1週間ほど日本に来ていたんだそうです。来日は3回目だそうですが、この日初めて日本の山を登ったんだそう。明日、成田から帰国するんだそうです。少し不安を感じ始めていたのでしょうね。僕たちと一緒に下山するという選択は正しいと思います。この時間ですから、1回でもルートミスをすると、下山が日没後となりかねません。小さなナップザックのようなのを背負っていました。懐中電灯は持っていたのかな? 彼女は日本語も話せませんし、標識を見ても理解できるかどうか?

 

▲15:31。御前山避難小屋。

 

▲15:59。カツラの巨樹が出て来ました。ここを通るたびに目にする立派な樹です。

 

SRさんは勿論ですが、H田さんも彼女と話していましたね。若いころ、ワーキングホリデイの経験があるのだそうです。さらには、奥多摩駅での反省会にも誘ってみました。彼女は快諾。

 

▲17:11。境橋バス停に到着。

 

▲17:48。彼女にとっても日本での今回最後の夜に楽しい思い出が出来たことでしょう。そして、なんと偶然ですが、H田さんがたまに行っているクライミングジムと同じジムに来日中の彼女も行ったのだそうです。クライミング(ボルダリング)を始めて2年だそうです。 動画を見せてくれましたけれど、ランジ(次のホールドに飛びついて掴む)など交えていましたから、上手なんですね。電車で一緒に帰りました。

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