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再びの巨木巡礼 37 長源寺のクスノキ


長源寺の山門
門の右手にクスノキが見える



10月2日、二本目の巨木は、吉田町神戸の長源寺のクスノキである。長源寺は東名吉田インターから、東名沿いに南へ1キロ進んだ東名の東側にある。かと言って東名沿いに道があるわけではない。説明し難く、自分もカーナビ頼りになる。駐車場に車を止めると、喪服の人が数人、お寺から出て来た。法事でもあったのだろう。クスノキを探したところ、山門脇に二股に分かれたクスノキがあった。

さらに、本堂へ進むと、墨染の僧衣の老僧に呼ばれた。堂前、階(きざはし)下に二つ置かれたパイプ椅子に、まず座れと勧める。自分は目線の合う2段目あたりに座り、話し始めた。

今まで納骨の法要が終ったばかりで、一息ついた所だ。自分は、今78歳だが、リュウマチの持病があって、病院通いをしていて、一時間仕事をしたら一時間休む。一日仕事をしたら、一日休むというように、決めている。今は納骨の法要が終り、休む時間である。

法事の椅子を並べたり、お茶やお茶菓子を出すのは、四人いる孫たちがやってくれる。お茶は法要の前は熱いお茶、法要の後は冷えたペットボトルのお茶を出す。ぺットボトルならそのまま持ち帰ることが出来るから便利だろう。息子は役所勤めを兼務していて、休みの日には手伝ってくれる。

保険は3割負担だったが、収入を息子に移して、自分の収入を3割に減らしたら、1割負担になった。定期的に入院加療で病院に入るが、注射が15万円、施薬が10万円と高額で、保険がきいても、従来はその度に7、8万かかった。高額の患者だったので、ある時、院長が新しい知識が豊富な若い医師を付けると、もったいをつけて言った。あとで考えると自分は研究対象にされたようであった。

また、特別に若い看護師を付けると言い、実際若い看護師が二人でやって来た。入浴の介助をすると言って、身体の隅々まで洗ってくれるというのだが、これはさすがに気が引けて、風呂は家で入ったばかりだからと断り、以降は中年の看護師に代えてもらった。

ヘリコプターの操縦資格を取ろうとした話とか、富士山静岡空港の新幹線地下駅の話とか、爺さんの畑が東名に取られ、補償金が数百万円、すべて自分の学費になったとか、水道工事を自分で勝手にやって、メーターを通らない水を使っていて、水道課に叱られた話とか、話しが次々に飛び、話に時間軸が抜けているから、78年間のいつの話なのか、解らない。ただ、それぞれ面白おかしく、この老僧は説教もこんな感じなのだろうと、檀家さんたちに同情した。

クスノキの巨木を見に来たと告げると、クスノキは昔切って袈裟箪笥を作ってもらったことがある。その香りが虫よけになるし、柔らかく加工がしやすい木だが、今は伐る積りはないという。どうやらクスノキの買い付けに来たものと勘違いしたようだ。巨木を見て回るのが趣味で、夫婦で見て回ってると説明すると、買い付けではないことは理解してくれたが、趣味に付いては理解できないようであった。

町のお昼を告げるチャイムに、老僧の話は終わった。別れ際にも、草履が本堂にも庫裏にも幾つも置いて、好きな所から境内へ出られる。また境内のあちこちにパイプ椅子が置いてあり、疲れたらそこに座って休み、訪れた人と話し込んだり出来ると話す。

お話は、ほぼ一方的に、半刻近く続いた。この間、富士山静岡空港に近く、飛行機の爆音に、何度か話を遮られた。後日、地図でみると、空港の東端に近く、離着陸する飛行機の通り道に当っていた。


長源寺のクスノキ
右の白壁は山門の袖塀


そばによるとその太さが分かる

ここでクスノキといえば、山門脇にあるものだけという老僧の言葉に、最初に見たクスノキの所へ戻り、写真を撮った。「静岡県の巨木」のデーターによると、幹回り4.5メートル、樹高30メートルのクスノキである。

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第9回目の「再びの巨木巡礼」に女房と出かける。今日は焼津、岡部、藤枝方面である。

読書:「平蔵の首」 逢坂剛 著
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