goo

桑原黙斎の「安倍記」 1

(散歩道の茶の花)

花の観賞用の品種だと聞いたが、品種名は忘れた。花が少しピンクがかっている。

午前中に、渋柿の追加を24個720円購入。合計で170個となる。

その後、焼津市立図書館の大井川図書館に行く。そこにあるという、吉永村誌から、瀬替え関連の部分をみるためである。まだ読んではいないが、興味ある内容であれば、このブログに載せる積りである。

********************

桑原黙斎の地誌としては、今までに「大井川河源紀行」「安倍紀行」と読んできたが、これから読む「安倍記」は「安倍紀行」とも違うようである。読んで行けばどういう性格のものか、追々判明するであろう。

    安倍記
       文化壬亥四月十六日、桑原藤泰、安倍記
       行の要を摘みて記す。


十八日、足久保の里に至り、なお奥に入りける。先ず、左の谷に入りて、谷川を渉りて行く。向いを仰ぎ見れば、丘に山家二、三軒あり。谷沢という小里なり。右の山の央に社あり。足杯神社とかや。
※ 足杯神社(あしつきじんじゃ)- 静岡市の足久保奥組にある神社。「駿河記」には「白髭明神社」、「駿河国式社備考」には「葦付天神」、「駿河國風土記」には「足都幾神社」とある。

こゝより川原を下(くだ)りへ数町戻りける。両岸の山畑には、今を盛りと、里人の老いたるも若きも、茶摘める歌の声高く、賑わしくぞ聞こえけり。むかし、神祖の国府(駿府)に入らせ給いし時は、この郷中の茶茗(お茶)を官吏下りて製法して、上の茶とはなりしとぞ。長島奥の狐石と云う、長さ二間、横二間許りの巨岩、近頃、芭蕉の句を彫り付けたり。
※ 神祖(しんそ)- 徳川家康の尊称。神君。
※ 狐石(きつねいし)- 静岡茶発祥の地の足久保にある、巨石の芭蕉句碑。狐石の由来は、昔この石の下に狐が住んでいたことによる。


   駿河路や 花橘も 茶の匂い

実にこの里の茶は、国中第一の名産にて、世に足久保茶と賞せり。程なく法明寺の坂にかかり、観音像を納めたとされる、駿河七観音(安倍七観音)のひとつ。山門、仁王門を入りて、左の方に数十歩入り、千手の御堂あり。
※ 法明寺(れい)- 静岡市葵区足久保奥組、高福山法明寺。行基が千手観音像を納めたとされる、駿河七観音(安倍七観音)のひとつ。

この寺に宿りしに、夜も更け行くまゝに、木魚の音、山谷に響く。怪しの事かなと思いしに、後に井河(井川)の郷、柚野村にて世更けてこの音を聞くまゝに、主(あるじ)へかの音は何ぞと問えば、あれはいぶと云う鳥の声なりと言えり。ある人に語りければ、

   山寺の 木魚の音と 聞えしは
        あないぶかしの 鳥の声かも

※ いぶかし(訝し)- 物事が不明であることを怪しく思うさま。疑わしい。鳥の名「いぶ」と「いぶかし」を掛けている。


読書:「紀尾井坂殺人事件 耳袋秘帖」 風野真知雄 著
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )