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「亜米利加応接書」 14 (解読終り)

(五月晴れの茶畑)

まだ4月だが、五月晴れと言ってよい今日の茶畑。いま束の間の、一年で一番美しい季節である。間もなく茶刈が始まれば、この黄緑色はたちまち失われてしまう。

きょうで、「亜米利加応接書」を読み終る。当時、日本を取り巻く列強諸国が、群れ成す狼のように見える。中でもイギリスは、民主主義の御手本のように思われているが、阿片戦争で参戦と軍艦派遣を決めたのは、その民主主義だったことも事実である。イギリスは、さらに、第二次世界大戦で二枚舌を使い、今も続く中東紛争の火種を残したことも知られている。

次には、江戸時代の島田宿の国学者、服部菅雄の著した「壺石文」という、陸奥(みちのく)の旅日記を読むことにした。服部菅雄の短冊の解読を頼まれて、解読したものの、全く見当はずれの解読になってしまった反省から、国学者の書いた書物を解読することにした。大変に難しいことは承知しているが、旅日記ならまだ読みやすいだろうと判断して、これを選んだ。事前に読み進めているが、思いの外、面白い。

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「亜米利加応接書」の解読を続ける。

一 余事にはこれ無く、唐国戦争故、遅れに及び候事に候。さもこれ無くば、疾(はや)くに参り候事にこれ有るべく候。

一 唐国戦争相止み候わば、直様(すぐさま)参り候段、聊か相違これ無く候。

一 格別上智の者の申し候には、今般唐国の戦い、永くは相堪え候儀、迚(とて)も出来申すまじきよし。左候えば、程なく御当地へ参り申すべく候。
※ 上智(じょうち)- すぐれた知恵。また、すぐれた知恵をもつ人。

一 憚(はばか)りながら、御手前様、御同列様、談判の上、その節の御取り扱い方など、御作定成し置かれ候様存じ奉り候。私考候処にては、交易条約御取り結びの外は、御取り扱い方これ有りまじくと存じ奉り候。

一 少し模様相替り候。交易条約は早速にも、御治定相成り候事と存じ奉り候。

一 私名前にて、東方に罷り在り候、英吉利、仏蘭西の高官へ、書状差し遣わし、日本政府に於いて、交易条約御取り結び相成り、なお外国へも一般に御免許相成り候筈の趣、申し達し候わば、五十艘の蒸気船も、一艘または二、三艘にて、事済み候様相成り申すべく候。

一 今日は、大統領の存じ寄り、並び兼ねて申し立て置き候、英国政府の内存など、内々申し上げ候儀に御座候。
※ 内存(ないぞん)- 心の内で思うこと。内々の所存。

一 今日は、私一世中の幸いの日に御座候。

一 今日申し上げ候趣、御取り用い相成り、日本安全の御媒(なかだち)に相成り候わば、この上無き幸いの儀に御座候。

一 右の趣、得と御勘考成し下され、御同列様へも御申し伝え、御談判遊ばれ候様、仕りたく候。

一 唯今申し上げ候趣は、世界中の誠にて、一切取飾りなど御座なく候。

右の通り申し立て候事。


(解読おわり)

読書:「ニッポン硬貨の謎」北村 薫 著
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