goo

桜ヶ池の奇祭「おひつ納め」(後半)

(おひつ納めの行列)

(前半から続く)
拡声器で、12時半に宮司さんの家から行列がやってくるという。道路に出て待っていると、先頭に制服の消防団員二人が、細い竹を路面上で振りながら露払いをして、行列がやってくる。ドン、ドン、ドンの太鼓の音に合わせて、珍妙なテンポで宮司さんをはじめ、30人余りの白装束に烏帽子の行列がやってきた。旗や五色の吹流しが色を添え、中程に高下駄を履いた天狗が一人、金糸の装束をまとっている。行列の最後に、御櫃納めを奉納する若者が10人ほど、簡略な白装束に身を包んで続いた。

行列はそのまま池宮神社の本殿に上がり神事があった。祭神がお御輿に降りて、お御輿の行列が池を見下ろせるお旅所に進んで行った。行列とは別に白い六尺褌姿の若者たちが池の端に進む。頭は茶髪ながら泳ぎを鍛えた男たちの身体は褐色で緩みがない。まず小舟に五色の吹流しを立てて、二人の若者がゆっくりと櫓を漕いで池の中央に出る。後を追うように一人また一人と間隔を空けてゆっくりと岸辺から泳ぎ始めた。真っ直ぐ池を横断して、放送では「奥池」と言っていたが、向こう岸の照葉樹林の陰に隠れて行く。


(おひつ納め-遠くてよく写っていない)

間もなく、同じ場所から、一人づつ間隔を空けて現れる。今度は顔の前に浮かべたおひつと一緒に、池に中央へ泳いで来る。おひつを水上で回すのを合図に、両手をおひつに掛けて一気におひつを沈める。中に赤飯の入っているからおひつはそのまま沈んでいく。同時に岸辺の旗が上がり、鐘楼の鐘がゴーンとなる。観客席から小さく拍手が起きた。沈めたら元の対岸に泳ぎ戻って、次のおひつを持って来る繰り返しである。本日のおひつ納めは何と90個もあり、奉納した人々の名前が紹介される。

観客が目に見えて減ってきた。あまりに単調な繰り返しに観客が飽きてきた。そばの子供たちが縁日で買ってきた麩(ふ)菓子を池に投げ入れる。大きく育った鯉の群れが麩菓子を水音を立てて取り合うのが面白いらしい。ついついそちらに目が奪われてしまう。赤飯を食べ尽くして、空のおひつを水面に戻して寄越す犯人は、この鯉たちだろうと思った。

一時間たって、我々も池の畔を後にした。還る道すがら両側に並んだ縁日の店に沢山の子供連れが群がっていた。池の畔から居なくなった人たちがこんなところに滞っていた。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )