のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

フェアリースノーの夢 /松本 祐子

2007年09月20日 21時17分52秒 | 読書歴
■フェアリースノーの夢 /松本 祐子
■ストーリ
 「どうやったら、植物の声が聞けるようになるの?」
 「耳をかたむけるのよ」
 20年に1度、花ひらくフェアリースノー。それは未来の夢を
 見せてくれる花だった。「未散と魔法の花」シリーズ第3弾。

■感想 ☆☆*
 第1作「リューンノールの庭」と
 第2作「ブルーローズの謎」の感想はコチラ。

 ファンタジーらしくないファンタジーの第三弾。
 今作品では叔母さんの影は更に薄く、焦点は今までよりも一層
 未散にあてられる。夏休みも叔母さんの家で過ごすことが
 できずに、塾へ通う未散は魔法とは無関係のように見える。
 というよりも、今作品では、未散の周囲の環境が騒がしく
 魔法修行どころではないのだ。大人になる、ということは
 自分の興味あることだけに神経を集中させることなんて
 できなくなることなのだろう。
 自分自身の未来のことにも不安はたくさんある。

 だから未散はフェアリースノーに興味を示す。
 未来を見たい、できれば花が見せてくれる未来の中に
 遠く離れることになる大好きな男の子と
 一緒に過ごしている自分の姿を見たい。
 しかし、彼女が見るのは自分の姿。
 ひとりで前に進んでいる自分の姿だけだ。

 ラスト、指南役の叔母さんも遠くに旅立つことになり、
 未散はひとりになる。いつまでも同じ環境にい続けることは難しい。
 変化は必ず訪れる。分かっていても、一抹の寂しさを感じるラストだった。

子どもたちは夜と遊ぶ(上) (下)/辻村深月

2007年09月20日 00時12分06秒 | 読書歴
■子どもたちは夜と遊ぶ(上) (下)/辻村深月
■ストーリ
 同じ大学に通う浅葱と狐塚、月子と恭司。彼らを取り巻く
 一方通行の片想いの歯車は思わぬ連続殺人事件と絡まり、
 悲しくも残酷な方向へ狂い始める。掛け違えた恋のボタンと
 絶望の淵に蹲る殺人鬼の影には、どんな結末が待つのか?
       毀れた絆と哀しい片想い
    深い闇を湛えた連続殺人事件が始まる・・・。

■感想 ☆☆☆☆
 上下巻を息もつかずに読み終えた。
 推理小説としてではなく、恋愛小説として。
 まさに「掛け違えた恋のボタン」の話だ。

 幸せになれたはずなのに、ちょっとした保身や恋愛特有の
 弱気な気持ちが未来を変えていく。長い長いプロローグとも
 言える上巻には、いくつもの伏線が張られていて、怒涛の
 ストーリ展開が行われる下巻では、分かっていく真実や
 人が抱えていた想いとその結果、現れた行動の種明かしに
 ちょっとしたカタルシスを味わうことができる。

 そして、すべてが分かった後、どうしようもない哀しみに
 身を包まれる。あのとき、誰かが自分の思いを口にしていれば。
 先のことや周りのことなど考えず、思いを伝えていれば。
 そうすれば、救えたかもしれない人がたくさんいる。
 そのことが哀しい。
 想っているだけではだめなんだ。愛は地球を救わない。
 その愛情をきちんと口にしなければ。行動で示さなければ。
 人に伝わってこその想いなんだと思った。