イズミル便り

IZMIR'DEN MERHABA

IZMIR DEVLET SENFONI ORKESTRASI(イズミル国立交響管弦楽団)

2006-04-29 19:52:29 | イズミル暮らし・イズミル案内
 コンサートホールへの入口

金曜日の夜、たんすの中の洋服をひっくり返してトルコでは滅多にはいていないスカートを引っ張り出し、夫と2人で出かけました。行き先はフアル(イズミル見本市会場)の中にある「イスメットイニョニュ文化センター」で「イズミル国立交響管弦楽団」によるコンサート。クラシックのコンサートなんてトルコで行くのは初めて、少しばかりお洒落をして優雅なトルコ人たちに混ざってなんだかいい気分。

「イズミル国立交響管弦楽団」は日本でも何度か演奏をしたことがあるそうなのですが、名誉常任指揮者が「大沢可直さん」と言う日本人、そんな縁もあってか今年は1年を通してJTI(日本たばこ)がスポンサーになっているそうです。
またイズミルにはJICA(国際協力機構)から日本で研修を受けたトルコ人青年たちも何人かいらっしゃるそうで、帰国後もトルコと日本のために何かをしたいと事業立ち上げの準備中、そのお手伝いをしていらっしゃるイズミル在住で「こんなトルコが好き」などのご著書がある作家中沢由美子さんの伝でこのコンサートの招待券を頂く事が出来たのです。中沢さん、どうもありがとうございました!

 招待状(左)とプログラム(右)

コンサートホールは大イズミル市ともあろうものがこんなちゃちなホールしかないなんて情けない!そして国立交響管弦楽団がこんなところで演奏するの?と言う感じでした。でも演奏は予想していたよりもすばらしく、よい時間を過ごすことができました。

1曲目はAllan Wareと言う方をソリストに迎えてモーツァルトの「クラリネット協奏曲、K622」。クラリネットの優しい音色が夫の眠気を誘いそう…ところが、コックリ…と行くかと思ったその瞬間、夫はまるでリズムを取るように頭を軽く揺らし始めていました。やるなあ。



カメラを構えている夫と目が合った大沢さん、その場で一瞬ポーズをとってくれました。ホントです!でもその瞬間は写っていませんでした。

2曲目は大沢可直さんが日本で初代終身音楽監督を務める「吉田正記念オーケストラ」の故吉田正氏作品を編曲した「交響組曲 東京シンフォニー第5番」、始まるとあれ、あれ?どこかで聴いたメロディー、「いつでも夢を(吉永小百合の)」とか「おまえに(フランク永井?)」とかその他に名前が思い出せないのですが日本の懐メロ(吉田正氏作曲)がモチーフになっている曲なのでした。

クライマックスになると指揮者の大沢さんの鼻をすする音、何度も鼻や目をぬぐっていらっしゃいます。横を見ると涙もろい夫「おじさん泣かせるぜ」と言いながらウルウルしています。他にも指揮者の姿を見て泣いたトルコ人多かったようです。最後にはなんとスタンディングオーベーション、拍手喝采の中コンサートは終了しました。

 スタンディングオーベーションでコンサートは終わりました。

私は懐かしいとは思うけれど、なんだか「懐かしのメロディー」(そんな番組ありませんでしたか?)を見ているようでちょっと笑えてしまって楽しい気分で家路につきました。夫に「また来ようね」と言うと「うん、よかったねー、2曲目が最高だったよー」といたくお気に入りのようでした。




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SALYANGOZ(サルヤンゴズ=かたつむり)

2006-04-29 00:57:43 | Weblog
昨日は週一回のパザルの日でした。冬の野菜から夏の野菜へとパザルの光景もうつりかわっていきます。出始めの頃は1キロ2.5YTL(約200円)だった苺も昨日は1YTL(80円)くらいになり来週はジャム用に大量に仕入れようかと思っています。エーゲの味エンギナル(チョウセンアザミ)も7個で2YTLでした。冬の間高騰していたトマトやキュウリ、ピーマンもようやく少しずつ安くなりました。


このかわいらしい花束のようなものがセミズオトゥです。ヨーグルトであえてサラダとして食べます。もちろん他のレシピも募集中!
因みに今晩はトマト、キュウリ、にんにくと一緒にオリーブ油、塩、レモンで和えました


でも私は夏のパザルよりも冬のパザルが好きです。
なぜなら、夏はナスかズッキーニ、さやいんげんなどの豆類でいつも夕飯のメニューを同じ材料で考えなければいけないような気がするから。それにひきかえ冬はホウレン草、葱、ブロッコリー、カリフラワー、根セロリ、きのこ…と少し数えるだけでも色々なメニューが頭に浮かびます。これからは夕飯に毎日頭を悩ませる季節の到来です。


ももちゃん3号。かわいいでしょ。

そして昨日のパザルでパセリやミント、ルッコラ、ディル、レタスなどの青物を売っている店でパセリとセミズオトゥ(辞書によるとスベリヒユ)を買っている時、ふとパセリの上を見ると小さなかたつむり。思わず手に取り、買ったパセリの袋の中へ。以前もパザルで買った野菜の袋の中に入ったまま冷蔵庫の中で潜んでいたかたつむりが1週間後に現れたことがありました。小学生の頃、「ももちゃん」と名づけてかたつむりを飼っていた過去ありの私、前回もしばらく飼っていたのですが、砂糖大根の葉っぱを入れたら死んでしまいました。その時夫は「かたつむりを飼ってるってあまり人に言わない方がいいよ」と言っていましたが、今日は「また飼うの?今度は死なせるなよ」と前向きなお言葉。ももちゃん3号となりました。




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ユルミウチニサン=子供の日

2006-04-25 04:40:57 | イズミル暮らし・イズミル案内
 
中等部の生徒達による開会の挨拶=誰も聞いていない。

4月23日はトルコの「国民議会設立記念日」及びトルコ共和国建国の父ケマルアタトュルクが子供たちに贈ったと言う「子供の日」でした。
私たちの姪っ子ビルテンが学校の行事で「日本人になる!」と宣言して以来、皆様からもたくさんの色々なアイデアをコメントしていただきありがとうございました。結局「花笠音頭」を半纏姿、背中に花笠を背負って踊ったら?という案を義妹に提供したのですが、担任の先生の好みで長い着物ではないと「日本人だとわからない!」と言うことで仕立て屋にそれらしきものを作ってもらい、振り付けは、あのスピルバークの映画SAYURIを参考に義妹と姪っ子のペアになる子供の母親が創作しました。音楽は「花笠音頭」。

 出番を待つ準備クラス(1年生にあがる前)の子供たち

学校へ10時に行くと狭い校庭は既に人であふれていました。「日本人姿」のビルテンが私を見つけて抱きついてきました。朝の9時に美容院へ行って「切れ長の目」風に化粧をし髪の毛も日本髪風に結ってもらったせいでいつになく大人っぽいビルテン。着物風衣装いかがですか?帯部分は前にもうしろにもパールっぽい飾りが縫い付けてあり、髪にさした簪は焼肉用の串!に同じくパールをくっつけてあります。踊りやすいように裾を広くとったので何となく韓国のチマチョゴリ風にも見えます。

 2人の新日本人?謎の東洋人といった感じでしょうか

ビルテンのクラスは世界の踊り?と言うことでメフテル(オスマントルコ軍楽隊)、日本、スペイン、エフェ、アフリカの順に2分程度でそれぞれをイメージした踊りを踊りました。

 扇子を使って

花笠音頭の音楽が青空に響き、毎日練習で聞いていたクラスの子供たちがみんな歌詞を口ずさんでいるのが微笑ましかったです。

 出番が終わっていい気持ち♪

どこの国でも学校の行事で我が子の晴れ姿をカメラにおさめたい親達の姿は同じ、でもここはトルコです。子供たちの席も親達の席も先生の席もなく、校庭に全員が立ちっぱなし。そして我が子の出番の時は必死にカメラで追っていますが、それ以外は全く我関せずで校長先生の挨拶の時も、先生の1人が激情して詩を朗読した時も校庭は騒音の坩堝。ただ一度だけ国歌斉唱で前奏が流れた時だけは誰一人声を出さず静まり返りました。隣にいた人が「ずっと国歌を流しているといいわ」と言っていました。同感。

 
3年生になるとさすがに動きがトルコ人らしくなり、腰振りも上手に

ビルテンの出番が終わると、義妹は担任の先生に「先に帰ります」と言ってさっさとビルテンを連れ私たちと一緒に帰って来てしまいました。なんともおおらかと言うかいい加減と言うか…いいのかなあ。

 帰り道、風船を買ってもらいました。いつも人は私を見るのに、今日はビルテンに注目でした。




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BONZAI

2006-04-21 05:09:39 | Weblog
 
鳥の落し物の中から芽が出たと思われる名無しさん、今のところ元気です

夫は大の植物好き。でも夫から花束のプレゼントをもらったのはたったの2回。なぜなら切花はかわいそうだから…。以前も書きましたね。
と言うわけで夫の買う植物は鉢ものになります。そしてご近所のおばちゃんやおじちゃんからもいつの間にか色々な枝をわけてもらって来ては、挿し木をして増やしています。おかげで小さなうちのベランダは「雑草の園」。

 
柘植、緑の葉っぱが出てきました

先日の日本滞在中はそんな植木たちを2ヶ月放ったらかしにして3代目にしてようやく枯れずに育ったベンジャミンも、まだ枯らしてしまうのか?と心配していたのですが、たまに寄って水遣りをしてくれた義妹のおかげでどれも驚くほど色艶よく大きく成長していたのにはびっくりでした。うちにいてしょっちゅうかまっているよりもかえってよかったみたいです。

 
竹、どうやら3つのうちの1つが生き残ったようです

夫もBONZAI(トルコではミニ観葉植物のようなものをBONZAIだと思って売っています)に憧れています。でも盆栽好きの日本の友達に聞いたところ通は種から育てるのであって黒松でも10センチくらいになるまで2・30年かかると聞き「盆栽の粋」を極めることはすぐにギブアップ。
日本の実家の母から「柘植」「竹」「名の知らぬ木の芽」「カニシャボテン」をわけてもらってきました。そしてそれを1つずつ湿らせた脱脂綿でくるみ茶筒の中に入れて密輸入!見事イズミルのバルコン(ベランダ)に植えることが出来ました。
日本の木は、果たしてトルコで育つことが出来るでしょうか?乞う御期待。

 
大好きなカニシャボテン。実家で毎年こぼれる程花を咲かせてくれます。トルコに馴染んでくれるかなあ、枯れていないようなので冬に期待

その他に、大葉、ミツバ、朝顔の種も買って来て昨日ベランダガーデンに植えました。去年友達に送ってもらった大葉を植えたのですが似ても似つかない葉っぱがたくさん出てきたものの、結局大葉らしきものは出ずじまいに終わったという過去あリ。日本の味が食卓にのぼる日はいつ?




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Spil Dagi Milli Parki (スピルダー国立公園)

2006-04-17 06:16:29 | 
 広々としたマニサ平野、遠くに光るイズミル湾が。

夜更しの我が家、夕べも3時過ぎに就寝だったので今朝目が覚めたのは10時、夫が「どこかへ行く?」と珍しく自分から言ったので「行く行く!」と飛び起きました。その時点でどこへ行くかは未定。でもせっかくお天気のいいピクニック日和の日曜日、やっぱり先週流れたスピルダーへ行こう!

何も準備をしていなかったので、朝食後あわててトマトやキュウリ、玉ねぎを刻んでパンを1本用意、あとはいつもたっぷり沸かしてあるチャイをポットに詰めて果物とお菓子をかばんに入れたら準備OKです。

我が家からお隣のマニサ県にあるスピルダー国立公園の入口までは約1時間程、そこから急カーブをくねくねとのぼれどのぼれどそれらしき公園は見えず、20キロ以上走ってようやく公園の料金所に着きました。車1台5YTL(約400円)。

 木陰に車をとめて

公園内はシンプルに松林の中にベンチと水汲み場があちこちにあって既に何組かの家族がトルコのピクニックには欠かせないマンガル(炭火焼肉)をするいい匂いがします。鳥のさえずる声に耳を澄ませながら、木陰に寝っころがりました。
なぜか車にあったゴムボール、「バレーボールしよう!」と言う私、「いい年した大人なんだから恥ずかしい」と言う夫。

  簡単ランチでお恥ずかしいですが! 

                          
あちこちから漂ってくるマンガルのかおりに食欲だけはすぐに刺激されて、簡単ピクニックランチを頂きました。こんなに簡単ランチでも青空の下で食べるとどうしてこんなに美味しいのでしょう。でも次回は、マンガル持参でね。

帰り道、桜っぽい花が満開でした。畑の持主らしきおじさんに「何の花ですか?」と聞くと「桜だよ。1ケ月半後においで、大きなサクランボがなるよ。イズミルのマーケットに送るんだ」との返事。私はこの満開の桜に出会えたことが嬉しかったのに、おじさんにとっては花が咲いた後にサクランボがなることが嬉しい春の知らせなんだなあ、と人それぞれに喜びは違うものだということが新鮮に思えた日曜日のプチ旅行でした。

 満開の桜の花、1ケ月半後には大きなサクランボがなるそうです。






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春爛漫

2006-04-13 04:29:17 | イズミル暮らし・イズミル案内
 桐の花

最近とんと遠出をしていなかったので、久しぶりに週末はイズミルから30キロほどのマニサ県にあるスピルダー国立公園へ行こうと言うことになり、前日はお弁当やチャイ、果物の準備をルンルン♪でしていました。そろそろ寝ようかと言う夜中の1時すぎ、友達とメッセンジャーでチャットをしていた夫が「明日仕事へ行くと言ったら怒る?」と言い出しました。そんな時間にチャットしていたのが運のつき…。チャットの相手が仕事の連絡をしてきたのでした。「怒る?」と言われても真面目に日本で永年勤続してきた私が怒れるはずがありません。顔で笑って心で泣いて…と言うことでせっかくのピクニックの準備も、ルンルンな私の気分もお流れ。

 藤の花
                                     藤棚              


日曜日はお休みだったので密かに、スピルダー?と期待していたのですが、やっぱり「アンネと一緒の朝ごはん」は、何がなんでも決行でした。アンネ宅からの帰り道、ささやかに近所のお気に入りの公園をお散歩して来ました。季節感があまりないと思っていましたが、この公園はまさに「春爛漫」。藤の花も桐の花も日本のそれとは少しイメージも違ってたくましあっけからんと咲き誇っていました。

 大好きな公園からイズミル湾を遠くに眺める

スピルダーレポートが出来るのはいつのことでしょう。

 ミモザも満開



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日曜日のKAHVALTI(カフヴァルトゥ=朝食)

2006-04-10 21:15:23 | イズミル暮らし・イズミル案内
毎週日曜日はアンネ(義母)と義妹親子と一緒に朝食をとることにしています。トルコ人の友達に話すと「大変だねえ」「やめちゃえば」などと同情されるのですが、私はいい子ぶっているわけでも何でもなく、アンネの用意してくれる美味しい朝食をとって、義妹と女同士で気楽に買い物に行ったり、新聞を読んだり、姪っ子の宿題を見たり、アンネたちは編み物をしたり、夫は定番の昼寝をして、帰り道には近所をゆっくりお散歩する日曜日を結構楽しみにしています。今日は先日TVの料理番組で見た「KOLAY PIDE」を皆で作りました。こういう生地を使うものは得意ではないのですが、これは簡単!ま、アンネが主導権を握っていたのでうまく出来るのは当たり前なのかもしれませんが。

作り方
ユフカ(春巻きの皮のような小麦粉で作った薄い皮)  3枚
スジュク(トルコのサラミのようなもの)       200g
カシャルペイニル(溶けるチーズ)          200g
卵  2個
油  大さじ2杯
牛乳 

①ユフカを1枚広げて、卵1個、油、牛乳を混ぜたものをぬる。



②その上に2枚目、3枚目を重ねて同様にする。
③3枚がさねのユフカを長方形になる様にナイフで8等分する。
④それぞれの中央にカシャルペイニル、スジュクをのせる。
⑤船の形になるように両側から折り、両端をつまんで、表面に卵黄をぬる。



⑥200度のオーブンで表面がいい色になるまで。

 Afiyet olsun!



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Mercan(メルジャン=鯛)

2006-04-07 04:43:42 | 料理
 taptaze(タプターゼ=超新鮮)なMercan(鯛)

日本で毎日の様にお刺身を食べて、夫もすっかり刺身通になったのに、トルコ帰国以来早1ケ月半がたとうとするのにまだ一度も魚を食べていませんでした。ついに先日「来週の火曜日は魚を買おう!」と宣言。当日はりきって我が家&お隣さんご用達のとても新鮮な魚を扱う魚屋さん へ行ってみると夫が大好きな鯛がぷりぷりと光って待っていました。値段は1キロ30YTLのものから42YTL(約3500円)まで。清水の舞台から落ちたつもりで2尾購入、17YTL也。

suisui78さんのお薦めがあったのと、刺身の様にきれいに切る自信がなかったのでカルパッチョもどきを作ってみました。
口にするなり夫は「いいねええ!(←ここだけ日本語)日本にいた時の味が食べられるねえ!17YTL出せばだけど・・・」と興奮。

 
カルパッチョもどき。塩、レモン、胡椒、にんにく、オリーブオイル、そしてやっぱり醤油をかけてしまいました。

身を出来るだけ無駄のない様にそいだものの、骨の周りや頭にはまだたくさん残っていたので、翌日は豪華鯛飯を炊きました。炊いている時には家中に美味しそうなかおりがただよってうっとりでした。お味噌汁と浅漬けの素で作った大根風漬物で頂きましたー!






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カルメンの白いスカーフ

2006-04-03 20:33:24 | Weblog
 
「カルメンの白いスカーフ 歌姫シミオナートとの40年」 武谷なおみ著 白水社

日本を発つ前に新聞の書評を読んで慌てて購入したこの本、本好きな私の嗅覚は衰えていなかったと嬉しくなったと同時に、久しぶりに夢中で最後まで一気に読み、ページが残り少なくなるのがもったいなくて悲しくなるような本でした。

音楽は好きで自分で楽器を弾くこともコンサートへ足を運ぶこともありましたがオペラについては全く知りませんし、イタリアにさほど興味があった訳でもありませんでした。

作者であるイタリア文学者武谷なおみさんと20世紀最大のディーヴァことメゾソプラノ歌手ジュリエッタ・シミオナートさんの不思議なめぐり合せの物語です。

小学校5年生の武谷なおみさんがある日、TVでシミオナート演じるカルメンを見た瞬間、武谷さんの人生にシミオナートとイタリアが流れ込んだと言います。
そのTVは武谷さんのおばあさんが「ここへ来てテレビの前に座んなさい。五分間だけ我慢して聞いてごらん。今夜の歌手はほんものやから。五分たって嫌やったら、遊びに戻ってよろしい。」と叫んだことがきっかけ。武谷さんのおばあさんは大正元年に初めて故郷を出て東京音楽学校に入学したハイカラさんだといいます。
このおばあさんがその番組を見ていなかったら、またこの出会いは別のものになっていたはずでまさに運命の不思議です。

そのTVで見たシミオナートに魅せられて10歳の少女が片言の英語でイタリアへファンレターを書くのです。そしてシミオナートもイタリア語の短い返事を送り、それ以来40年過ぎた今も続く「イタリアのマンマ」「ちいさな日本の娘」の交流が始りました。

誰もが絶賛する芸術性と美声を持ちながら、ファシスト達の後ろ盾がないばかりに10数年も日の目を見ることが出来なかったシミオナート、惜しまれる時に引退、引退後も後進の指導などで95歳の現在までまさにディーヴァの輝きを失わないシミオナート。
そんなシミオナートの92歳の誕生日に武谷さんが「カーサ・ヴェルディ」でイタリアのマンマに捧げる講演をバースデープレゼントとして行った時、講演後に武谷さんにシミオナートが駆け寄り「今日は発音のミスがひとつもなかった」と囁いたシーンにシミオナートの飾らぬ愛情、そしてそんなシミオナートに愛される武谷さんを祝福したくなりました。

因みにカーサ・ヴェルディと言うのは、かの有名な作曲家ヴェルデイが生前「音楽家の為の老人ホーム」をと言う構想で建てた「憩いの家」。土地の購入から工事費まで全てを自前、その後の運営もオペラの印税でと定められていたそうです。入居者の誇りを重んじて「保護される人」ではなく「客人」と呼ばれるよう遺言されたと言います。
こんなことを読んでいると、ヴェルディにまで興味が沸きさっそくシミオナートが歌う歌曲「運命の力」が入ったCDを探してしまいました。そしてこの曲は高校時代ブラスバンドで演奏した思い出の曲でもあります。ここにもちょっとした巡りあわせがあったのかもしれません。

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