雪渓の恐怖、再び

2010-07-16 00:10:56 |  7月の夏休み
翌朝も晴れ。
空はすっきり晴れ渡り、草花は朝露に濡れ、吸い込む空気はすがすがしい。
これは住環境の悪い山中に泊まったが故のご褒美。
山小屋の朝は早い。
5時半から朝食。
しっかり食べて今日の道行きに備え、さっ出発だ。

行く手にそびえる外輪山の上から太陽が顔を出し、露を纏った草花が逆光に輝き私の足を止める。
<イワベンケイ>


<ミヤマキンバイ?>



今日の行程は外輪山に上り、稜線を七五三掛まで下り、昨日来た道を戻る。
まずは外輪山へ。
山小屋の人に道を聞くと、雪渓があるので上に登り横切れと言う。
雪渓手前で先に歩いていた人がルートを探して立ち止まってる。
私:「おはようございます。」
彼:「おはようございます。外輪山へは、あの矢印を登るのですかね?」
 と雪渓を横切った先に見える、直登コースを指差す。
彼:「さすがにあれを登ると言うのは無いのでしょうか?」
私:「どうでしょう。上に行けと聞いたので、私は雪渓を登って見ます。」
と分かれました。

雪渓は夜固く締まったようで、昨日より滑りやすく脚に余計な力が入り、疲れる。
やだな。
傾斜は外輪山に向かいどんどん急になり、危険を感じる様になる。
これ、滑ったら途中で止まれないだろうな。
怖いので、アイゼンを付ける事にする。
初アイゼン。
大昔に買って一度も使わず置いてあった6本爪の軽アイゼンを、もしもの時の為に持って来た。
やっと日の目を見る。
レジ袋を取出しお尻に敷いて雪渓上に腰を降ろし、装着。

…これはいい。
滑る気配は全く見せず、少し位の傾斜はものともせず歩ける。
さくさくと歩き、先を見通せる場所まで行って、この先に外輪山への取り付き場所はどう見ても無さげであることが分かる。
さっきの人が向かったコースが正しそう。
そちらに戻ろうとすると、途中まで登っているらしいその人が、「こちらの道でいけますよ。」と大きな声で呼びかけてくれました。
そこからだと傾斜が急なので、一度戻って横切るといいですよと教えてくれる。
私:「はーい。」

戻る途中、下からガスが湧いて来るのが目に入る。
あれれ。
元の場所に戻った時には一気にガスが広がり、目の前が真っ白になってしまった。
これは歩けない。
ガスが晴れるのをしばらく待つことにする。
10分ほど岩に座って待っていると、少し霧が薄くなり、10mくらい先まで見えるようになる。
それでも対岸はまったく見えず、さっきは見えた上り口がどこにあるのか分からないので、目測で歩いて行かねばならない。
迷ったが、左から右への傾斜傾向がはっきりしているので、方向が分からなくなることはないだろうと、横切ることにした。

アイゼンのおかげで、足元の不安がまったく無いのが力強い。
歩いていくと、対岸の斜面が見えてきた。
白くガスっているので白い矢印が見えず取り付き場所が分からない。
下のほうを探すか、上のほうを探すか。距離の短い上から探してみる。
ビンゴ、登山道発見。
見た目垂直に見える凄い斜面(大袈裟。60度位)ですが、雪渓の恐怖に比べれば、フリクションの効く岩土の道はなんてことはなし。
行く手を照らす太陽の光が雪渓からの脱出先を指し示してくれるよう。


登りきり、外輪山の稜線に到着。
その頃には太陽は隠れてしまい、稜線の反対側もガスって真っ白。
すっかり雲の中に入ってしまったようだ。
この日は、濃くなり薄くなりする雲の中をずっと歩く事になる。
左から右に風が強い。
目に見える水の粒が吹き流れ、メガネに付着して水滴となり視界をふさぐ。
雨の中を進む状態となり、カッパを着る事に。
朝のあのお天気は一瞬で終わっちゃって、幻のよう。
ホントに山の天気って…。


独り占め

2010-07-14 23:41:52 |  7月の夏休み
鳥海山中腹にある御浜の小屋は鳥海湖が見下ろせる火口壁の稜線にある。
小屋を越えると突然視界が広がり、半分凍った湖の眺めに目を見張る。
登山道脇や火口壁の斜面には、たくさん高山植物の花々が咲いて、良い所。
登り着いた人はみな、喚声を上げ休憩していく。
私もここで昼食。


この日は日曜日。
こんな梅雨時でもたくさん登山者が来ていた。
さすが鳥海山。
でも扇子森を過ぎると、突然人が少なくなった。
日曜のお昼、山頂までまだまだの場所に結構な登山者数だと思っていたが、今日は上まで行かずに降りる人がほとんどらしい。(あるいはもう行って降りてきて休んで居たのか。)
鳥海湖が目的地でお弁当を食べて帰る。
ここまででも十分花が見れるし、それもいいのかも。
件の白蛇谷では前から降りてくる数パーティーとすれ違っただけだった。


千蛇谷の雪渓を越えて山頂小屋への最後の登り。
急斜面にあえぐ。
誰も登って来ないし、誰も下って来ない。
ええい、しんどい、休憩だ。
手頃な岩にどっかと座り一息付く。

谷の対岸、外輪山の雪渓が目の前に白い。
斜面は緑で覆われ、黄色い花々が至るところに群落を作り、風に揺れる。
聞こえて来るのは鳥の声と虻の羽音と谷を渡る風の音だけ。
・・静か。
歩みを止めると汗も引き、今この場にいる幸せを噛みしめる。


山小屋に着いて荷物を置き、天気の良い今日の内に新山(鳥海山頂上)へ登っておく。
積み重なる岩の上を越え、巨岩の隙間を抜けて山頂へ。
んー、よき眺め。

山の天気って

2010-07-13 23:44:57 |  7月の夏休み
鳥海山登山を決めるに当たって最後まで迷ったのは、この時期まだ雪渓が残っていることだった。
霧が出ると方向が分からなくなるらしい。
梅雨時だし、山上はすぐ雲の中に入ってしまいそうで、ガスに巻かれる可能性大だ。
登り口は鉾立、御浜を経由して、七五三掛から千蛇谷へ降り、雪渓を登って山頂小屋へ行くコースを選択。

駐車場から、覚悟を決めて上り始める。
天気は曇り。
さっそく小さな雪渓に遭遇。
そんなに登ってないのに・・。


ガッシガッシとキックステップで平らな踏み場を作り登る。
氷はぐずぐずと柔らかく、歩くだけなら難しくはない。
石畳の登山道に戻っては雪渓が現われる、繰り返し。
雪渓直上は冷気で靄がかっている。
雪渓の上に立って実感。
ガスったらホントに方向が分からなくなるな、これは。

御田ヶ原の辺りから霧が出てきた。
この後、千蛇谷の巨大雪渓がある。
大丈夫だろうか。(ドキドキ


七五三掛に向けて上る内に周りの見通しも回復してきた。
千蛇谷はこんなところ。
これを横切り、所々縦に登る。


あれ、むちゃくちゃ天気が良くなって来た。
すごい日差し。
・・焼けるんじゃないか?
上から下から・・。
日焼け止めを顔に塗ったが、首筋に塗らなかったため、翌日ヒリヒリとする。
さらに翌日、鏡で見てみるとひどいことになっていた。
真っ黒だ。
皮膚ガンになりませんように。
ほんとに山の天気って・・。

7月の夏休み

2010-07-11 13:13:04 |  7月の夏休み
ども、ごぶさたしてます。
みちのく一人旅から無事戻ってまいりました。
いやー、充実したお休みでした。
旅した8日間の内、6日も山中に身を置く時間を持ったのは今回が初めて。
どっぷりと自然に浸ってきました。


主たる目的地は二つ。
鳥海山と尾瀬です。
あと、帰阪途中のおまけに、草津白根山。

鳥海山も尾瀬も有名どころですが、これまで行った事がありませんでした。
私のこれまでの山行スタイル(山中泊しない)に合わなかったからです。
鳥海山は巨大な山体で、日帰り(大阪に帰るわけではない)登山出来なくは無いですが、ちょっと厳しい。
尾瀬は日帰りで入口付近を見ることはできますが、入口だけ見て帰るなんてたぶん私にはできない。
一番おもしろい所を見ずに帰るなんて・・。

なんで山中泊しないかというと、ギュウギュウ詰めの小屋に泊まりたくないから。
なので近くを通る時、行ってみたい思いはつのりつつも、これまで行けない状態だったのです。
で今回、梅雨時で、一番人気のある花の時期から1~2週間ほど早い平日に宿泊できる日程を取れるので、小屋に泊まる人も少ないだろうと決行しました。
目論みはバッチリ合って、小屋は空き空き。
ニッコウキスゲの群落は見えませんが、花の種類は今が一番多いと思うので、アップの写真好きのよかばかとしては、今がベストシーズン。
いいときに休暇が取れました。

旅程を紹介すると、
3日(土)未明、出発。酒田市泊。
4日(日)鳥海山登山。山頂の山小屋泊。
5日(月)鳥海山下山。移動。米沢市泊。
6日(火)移動。檜枝岐村泊。
7日(水)沼山峠-尾瀬沼-尾瀬ガ原。片品村の小屋泊。
8日(木)尾瀬ガ原周遊。檜枝岐村の小屋泊。
9日(金)燧裏林道-御池。移動。中野市泊。
10日(土)草津白根山。帰阪。

心配していたお天気は、「あれ、こんなに都合よく切り替わっていいの?」というくらいありがたい空模様でした。
そんなに日頃の行いよかったかしらん。
カッパが必要になったのは、鳥海山を下山する日、雲の中を歩いたときだけ。
後は夕刻や夜間、車で移動している時や、小屋に入ってからドッチャリと雨が降りました。
尾瀬では3泊した毎夕、毎晩雨が降ったのに、日中は曇りや晴れでカメラが濡れる心配なく、存分に写真が撮れました。
出来は・・・、ですが。

また、記事にしていきます。