熊澤良尊の将棋駒三昧

只今、生涯2冊目の本「駒と歩む」。配本中。
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上弦の月

2009-08-03 01:32:26 | 文章
8月3日(月)、晴れ。

月齢は12日頃でしょうか。只今、赤っぽい潤んだような色の上弦の月が低い南の空に浮かんでいます。
昨日の午後は、長かった梅雨空が、ようやく夏の空に変わったような気配を感じました。

一昨日の来客は、岐阜県からの男女の方。
駒が12組ほどと、足つきの将棋盤が4面、卓上盤が3面ほど。そのほかに駒台が数点車に積んで来られ、見て欲しいとの事でした。

とりあえず工房の2階でコーヒーを飲みながらお話を聞くと、アマ五段の弟さんが生前に集めたり愛用していたもので、そろそろ誰かに譲りたいが、それぞれどのくらいの価値があるか知っておきたいと言うことでした。

駒は、天童の「T作」が3組。新潟の「T作」が2組。それに見覚えのある駒が7組ほど。
見覚えのあるのは「小生作錦旗」と、駒づくりを楽しむ会会員の面々が作った駒でした。
それらは以前、四日市で「とうかい将棋ファンの集い」で毎年、会員が作った駒を集めて展示即売会を開いていて、そこで購入されたということがすぐに分りました。

弟さんは知っている人に違いないと思ったので、「写真はありますか」と、見せてもらいました。
「ああ。この方なら良く覚えています。毎年来られていましたね」と言うと、お兄さんは少し涙ぐまれたような気配でした。

お兄さんも多少将棋をされるようで、「アマチュアの方が作られた駒の方が、上等のような気がします」との感想でした。
「そうですね。最近は多少変わりましたが、特に昔は、プロは数を作らないと食ってゆけない環境だったので、とに角、やっつけ仕事が目立ちますね。技術以前の気持ちの問題です。手間のかかる磨きなどはほとんどしていない。だから、同じツゲでも、ツゲの持っている艶とか色合いという木質の良さが出ていない。それに対してアマチュアもいろいろレベルの違いはありますが、時間を気にしないで一生懸命作るから、心がこもって、いいものが多いと言えます」

「この、橘中仙人という作者は、10年ほど前に亡くなられましたが、愛媛県の方です。自分で山に入りツゲの木を切って自分で整形して作られていました。阿波の山で採ったツゲですから、小生は”阿波ツゲ”と命名しました。今でも多少は採れるようです」

「この竹水作ですが、しっかり作ってありますね。駒づくりを楽しむ会の会員の中でも、彫り盛り上げともにトップクラスだと私は思っています」

「駒は使ってやるのが一番いいんです。箱に入れっぱなしにすると、黄色いカビが生えたりして。生えたカビは除れません。中には金庫に入れっぱなしにする人がいるようですが、最悪です。時々空気に触れさせて、人の指で触ってやる。これが一番いいんです」

「この盛り上げはほとんど使っていませんね。裏側の漆の具合、その減り方を見れば使った度合いも分ります。これは幾分使っています。日ごろ愛用の駒としておられたようですね。値段ですか、これはコレコレほどだったら、欲しいと言う人が居ると思いますよ」

3時間ほど、このような会話が続きました。

夜も更けました。寝ることにします。ではまた。
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駒の写真集

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