新刊紹介『またやぶけの夕焼け』

　土管の中は幅一メートルもないくらいにドブの水が流れている。その上をまたいで歩いていたら、シゲオが足をすべらせ、その拍子にやつの半ズボンの股の継ぎ目がビリビリっとやぶけたのだ。「うおおお！」シゲオは叫んだ。「股がやぶけたあああ！」土管にその声が反響し、僕はあまりのおかしさに笑い、笑い疲れたとき、僕らはこの土管を「またやぶけ」と名づけた。・・・本文より

　・書名　　『またやぶけの夕焼け」

　・著者　　高野秀行

　・出版社　集英社　2012年7月初版　　￥1200＋税

　・グレード　中学生～大人


　本書は1970年代の八王子を舞台に、５年生のカッチャンを隊長に隊員は６人。
下校後は冒険に探険、そして野球にプロレスごっこに虫捕りに魚釣り、ゴルフの真似ごとから土器作り、はたまた火遊びに秘密基地作りと毎日天気の日は日暮れまで遊びまくっている小学生男子の物語。また著者は、今の時代にはめったにお目にかかれない元気で逞しく破天荒な子ども達の姿やその時代を、見事に描いている。
また、子安・北野・片倉城址・湯殿川・・等今でも実在する場所が本書の中で随所に登場し、八王子在住の方はもとより現在４０歳後半から５０歳位の方には親しみをもって読んでもらえる一冊だと思う。とにかく面白い！

まだ夏の花

　まもなく９月も中旬になろうというのに、今年の残暑は異常なほど厳しい。

そこで近くの土手のフェンスに絡まって咲いていた見た目も涼やかやイケマをとってきて玄関の外に活けてみた。

このイケマ、アイヌ語で大きな根を意味するイケマから名づけられ、地下に太い眼があって、この根は有毒だそうだが、一方で漢方薬としても利尿効果があることで知られている。

花は純白で花弁がそり返っている。花に近づくと、ほのかに甘い香りがするのでイケマは好きな夏の花の一つだ。