A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ベイシーオーケストラのリードアルトがテナーで大ブローすると・・・

2015-10-14 | MY FAVORITE ALBUM
Standarlize / Marshall McDonald

カウントベイシーオーケストラのリードアルトというと長年マーシャルロイヤルが務めた。あの艶やかなアルトは黄金期のベイシーサウンドのひとつといってもいい。

ベイシー亡き後のベイシーオーケストラ、リーダーは昨年来日時、トランペットのスコッティーバーンハートに交代していた。リーダーは代わってもそのサウンドを引き継いでいる。リードアルトはマーシャルマクドナルド。このマクドナルドも在籍期間はかなり長く、現在のベイシーオーケストラの顔の一人、ベイシーサウンドの継承者である。

このマクドナルドが先日し、バイソン片山率いるビッグバンドにゲスト参加してライブが行われた。元々ベテラン揃いのスインギーな演奏を得意とするバイソンビッグバンドでは、前回のライブでは澤田一範がリードアルトを務めていた。この日はその席にマーシャルマクドナルドを迎えて、すべてベイシーナンバーというプログラムであった。

ベイシーオーケストラを始めとして、ビッグバンドでは見かけることのあるこのマーシャルマクドナルドのコンボでの演奏は?というと、これまで聴いた事が無かった。当日は彼をフィーチャーした演奏も数曲、なかなかいい演奏だった。もっと聴いてみたいものだと思ったら、当日会場で彼のコンボでの演奏のアルバムを販売していた。早速買い求めたのがこのアルバムだ。

お馴染みの当然アルトの演奏かと思ったら、このアルバムでは全編テナーサックスでの演奏だった。確かに、他のビッグバンドではテナーを吹く事もあり、サックスはオールマイティーのようなので、コンボでは何を選んでもよかったのだが、このアルバムではテナー一本に拘ったようだ。
ベイシーオーケストラの前は、ライオネルハンプトンのオーケストラにも長く在籍した。ビッグバンド生活が長かったせいもあるのか、コンボでリーダーアルバムという今回のレコーディングにあたっては、普通のミュージシャン以上に「アルバムの狙い」には拘ったようだ。

まず決めたのがジャズのスタンダード曲。それらを、ピッツバーグ出身のマクドナルドだが、若い頃まだ地元で日々繰り広げていたブローイングセッションのスタイルでやるということだった。

確かに、曲は誰もが知っているスタンダード曲ばかり。当然、ジャズファンであればそれぞれに過去の名手の演奏が思い浮かぶが、当のマクドナルドも、それぞれの曲には彼自身の思い出の演奏があったようだ。

例えば、一曲目のジャストインタイムはスタンレータレンタインであり、イエスタデイズは、彼の先生であったジョージコールマン、インビテーションはジョーヘンダーソンといった感じで、一曲毎にマクドナルドが自らの活動経験から得た先輩達のプレーへの思い出があるようだ。我々聴き手との印象とはまた違ったものなのだろう。これらの元の演奏との聴き較べも楽しいかもしれない、新たな発見があるかも。

マクドナルドのテナーは、あまり重々しくなく、かといって軽いクールな音質でもなく、癖のない演奏スタイルだ。古臭くもなく、かといって新しくもなく。音質といい、スタイルといいある種ジャズテナーの標準型とでもいうような演奏スタイルだ。スタンダード曲をお手本のようなスタイルで演奏すると、ある種教科書的な演奏で、面白みに欠けるアルバムになりそうだが・・・・

しかし、良く聴くと微妙に曲によってスタイルが異なっているようにも聴こえる。ある時はロリンズ風に、ある時はベンウェブスターのように。多分、彼が印象に残っている(影響を受けた)過去の偉大なプレーヤーの演奏が頭の中に蘇っているのかもしれない。そして、どの曲も当初の狙い通り段々熱くブローしてくる。ベイシーのオーケストラの中では、どうしてもソロでフィーチャーされても思う存分大ブローになるというのは稀であろう。という点だけでも、このアルバムを作ろうと思った主旨は十分に実現できたということになる。

最後に、Ridin’n The Traneとされたオリジナルのブルースが収められている。曲名にあるようにこの曲はコルトレーンに捧げられた曲。そして一転して演奏スタイルも別人のようにがらりと変る。それはマクドナルドのテナーだけでなく、ピアノもベースもドラムも。小気味よいドラムを叩いているジムモーラも一転して、パルスが迸るドラミングに。この曲だけは同じメンバーでの演奏とは思えない。

アルバムのコンセプトは同じでも、やはりコルトレーンスタイルというのは一線を画するものかもしれない。マクドナルドのbioを見ると、好きなプレーヤーの中にコルトレーンの名前が挙がっている。テナーを吹いてこのアルバムを作る以上はコルトレーンを無視できないし、「俺だってコルトレーンスタイルはできるんだ」ということをアピールしたかったのかもしれない。しかし、アルバム全体から見れば少し場違いな演奏を自覚したのか、この曲はフェードイン、フェードアウドで終わる。

いずれにしても、いつもはサックスセクションの要であるマーシャルマクドナルドがソリストとしての実力を存分に披露しているアルバムだ。それも、いつも聴き慣れているアルトではなくテナーサックスで。聴き慣れたスタンダード曲を、決して物まねではなく様々なテナーサックスの先輩たちのスタイルを「マクドナルド風にスタンダライズするとこうなるんだ」ということをアピールしたかったのだろう。

1. Just in Time
2. Yesterdays
3. Invitation
4. Have You Met Miss Jones
5. You’d Be So Nice To Come Home To
6. Sweet Georgia Brown
7. Lester Leaps In
8. Fungi Mama
9. One O’Clock Jump
10. Ridin’ The Trane

Marshall McDonald (ts)
John Colianni and Jim West (p)
Bill Moring (b)
James Mola (ds)

Produced by Marshall McDonald
Recording Engineer : Tom Tedesco
Recorded at Tedesco Studios, Paramus, NJ on March 25 & June 7 2010


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