Bud Powell Trio (バドパウエルの芸術)
最近、アナログディスクがまた復活の兆しを見せているという話を良く聞く。ネット時代に入って「今後音楽は皆ダウンロードになってしまう」と声高に言われていた頃もあった。自分も現役時代はデジタルビジネスに携わっていたので、その当事者でもあった訳だが、CDの売上は減っても、どうやらダウンロードも思ったようには伸びていないようだ。
自分も車の中などBGMで聴く時は、iPhoneでシャッフルにして聴く事も多く、あまりアルバム単位にこだわらない聴き方をする。これにはデジタルが確かに便利だ。しかし、腰を据えて聴く時はやはりLPでもCDでも、20年以上使っている昔のオーディオで、アルバム単位で聴くのが基本だ。「アルバム単位」と「アナログディスク」というのは何故か相性がいいのかもしれない。
音楽に限らず、コンテンツという物は、それを楽しむには編成、編集といった概念が捨てられない。編成があるからこそ個々のコンテンツが生きてくるのだと思う。ライブでも、いい加減な選曲、無頓着な曲順の演奏と、きちんと考えられたプログラムで行われるステージは全然違った印象を受ける。
瀬川さんのビッグバンドに関する記事が載っていた’67年のスイングジャーナルを見ていたら、長年続いたSJ選定<ゴールドディスク>のスタートがこの年の5月号だった。
ジャズを聴き始めたものの何を聴いたら良いのか分からない頃、過去の名盤なるものを知るには良い企画だった。まさに「アルバム単位」でのお勧め盤であった。
あのトミーフラナガンのオーバーシーズがそのゴールドディスクの記念すべき第一回の発売。このオーバーシーズは、当時幻の名盤(今や死語になっているようだが)の代表格、当時でもオリジナル盤は1万円を超えていたそうだ。それが世に出るということで、予約だけで1万枚を超えたという。当時自分はまだ俄かジャズファンであったが、世の中にはジャズファン(というより訳知りのマニア?)が沢山いたようだ。
そして、その後名盤の復活が続くが、11月にはバドパウエルのルースト盤も続いた。モダンジャズピアノの祖といわれるパウエルのトリオ演奏の原点といえる有名なアルバムだ。
先日パウエルの後継者バリーハリスのアルバムを聴いたので、久々に本家パウエルでもと思ってこのアルバムを出してみた。
1967年に出たこのアルバムは、ルーレットで12インチ盤で再発された国内盤。47年の録音と53年の録音から12曲が収められていた。ところがこのアルバムはルースト盤の2枚の10インチLPが元になっていて、オリジナルはそれぞれ8曲ずつだった。
ところがこのアルバムでは53年の録音からは4曲だけが収められていた。残りの4曲も聴きたくなるのが人情だし、そもそも時代も違った2枚のアルバムを一緒にしたのに片方が半分というのでは座りが悪い。拘りのファンが多い日本のファンからは当然完全盤を望む声が大きくなった。
その後、このアルバムが再発された時にはやっと本来の16曲に戻った。自分の手元にあるアルバムもその再発物だが、元々2枚のアルバムが一枚になって裏表というのであれば納得できる話だ。ところが、この時残りの4曲のマスターテープが見つからなかった。仕方なく評論家の佐藤氏が所有していたオリジナル25センチ盤から残りの4曲をコピーして収録して完成させたと記録されている。
最近はコンプリートなら良かろうという判断からか、別テイクや未発表曲までを詰め込んだアルバムも多い。よほどのファンでない限り「そこまではいいよ」というのが本音ではないだろうか?
このようなコンプリートは編集でも編成もない。コンプリートを目指す熱烈ファンには有難いが。ただ詰め込んだだけ、アルバムとしての意図は「コンプリート」以外何も感じないものだ。
また、最近は、過去のアルバムが名盤から駄作まで何十枚単位で安価で再発され、その気になれば簡単に入手できる。憧れの名盤といわれるものも、有難味を感じなくなってしまった。
このパウエルのアルバムは、最初にゴールドディスクで発売された時は、原テープをオリジナルのピッチに合うように復元して発売されたと記されている。16曲への拘りとか、このピッチの調整とか、名盤と云われるものは、是非このように手をかけて本来の形で大事に残してもらいたいものだ。
さて、このアルバムの内容に関しては、色々な所で多く人が語られているので説明の必要は無いと思う。自分としてはパウエルといえばクレオパトラであったが、パウエルの火の出るようなアップテンポのインディアナに驚き、反対にバラードの良さも知り、ドラムのフラッシングへの拘りに感心し、療養前後のプレーの違いを感じたアルバムだ。
バウエル派のピアニストの原典ともいえる演奏の数々、自分のように聴くだけのファンはなるほどと感心するだけだが、きっと演奏する人にとってはそれ以上に学ぶべき点が沢山あるのだと思う。きっとバリーハリスに引き継がれているエッセンスのような物が。
1. I'll Remember April Gene DePaul / Patricia Johnston / Don Raye
2. Indiana James F. Hanley / Ballard MacDonald
3. Somebody Loves Me Buddy DeSylva / George Gershwin / Ballard MacDonald
4. I Should Care Sammy Cahn / Axel Stordahl / Paul Weston
5. Bud's Bubble Bud Powell
6. Off Minor Thelonious Monk
7. Nice Work If You Can Get It George Gershwin / Ira Gershwin
8. Everything Happens to Me Tom Adair / Matt Dennis
Bud Powell (p)
Curly Russell (b)
Max Roach (ds)
Recorded in January 10, 1947, NYC
9. Embraceable You George Gershwin / Ira Gershwin
10. Burt Covers Bud Bud Powell
11. My Heart Stood Still Lorenz Hart / Richard Rodgers
12. You'd Be So Nice to Come Home To Cole Porter
13. Bags' Groove Milt Jackson
14. My Devotion Roc Hillman / Johnny Napton
15. Stella by Starlight Ned Washington / Victor Young
16. Woody 'N You Dizzy Gillespie
Bud Powell (p)
George Duvivier (b)
Art Taylor (ds)
Recorded in NYC, September, 1953
最近、アナログディスクがまた復活の兆しを見せているという話を良く聞く。ネット時代に入って「今後音楽は皆ダウンロードになってしまう」と声高に言われていた頃もあった。自分も現役時代はデジタルビジネスに携わっていたので、その当事者でもあった訳だが、CDの売上は減っても、どうやらダウンロードも思ったようには伸びていないようだ。
自分も車の中などBGMで聴く時は、iPhoneでシャッフルにして聴く事も多く、あまりアルバム単位にこだわらない聴き方をする。これにはデジタルが確かに便利だ。しかし、腰を据えて聴く時はやはりLPでもCDでも、20年以上使っている昔のオーディオで、アルバム単位で聴くのが基本だ。「アルバム単位」と「アナログディスク」というのは何故か相性がいいのかもしれない。
音楽に限らず、コンテンツという物は、それを楽しむには編成、編集といった概念が捨てられない。編成があるからこそ個々のコンテンツが生きてくるのだと思う。ライブでも、いい加減な選曲、無頓着な曲順の演奏と、きちんと考えられたプログラムで行われるステージは全然違った印象を受ける。
瀬川さんのビッグバンドに関する記事が載っていた’67年のスイングジャーナルを見ていたら、長年続いたSJ選定<ゴールドディスク>のスタートがこの年の5月号だった。
ジャズを聴き始めたものの何を聴いたら良いのか分からない頃、過去の名盤なるものを知るには良い企画だった。まさに「アルバム単位」でのお勧め盤であった。
あのトミーフラナガンのオーバーシーズがそのゴールドディスクの記念すべき第一回の発売。このオーバーシーズは、当時幻の名盤(今や死語になっているようだが)の代表格、当時でもオリジナル盤は1万円を超えていたそうだ。それが世に出るということで、予約だけで1万枚を超えたという。当時自分はまだ俄かジャズファンであったが、世の中にはジャズファン(というより訳知りのマニア?)が沢山いたようだ。
そして、その後名盤の復活が続くが、11月にはバドパウエルのルースト盤も続いた。モダンジャズピアノの祖といわれるパウエルのトリオ演奏の原点といえる有名なアルバムだ。
先日パウエルの後継者バリーハリスのアルバムを聴いたので、久々に本家パウエルでもと思ってこのアルバムを出してみた。
1967年に出たこのアルバムは、ルーレットで12インチ盤で再発された国内盤。47年の録音と53年の録音から12曲が収められていた。ところがこのアルバムはルースト盤の2枚の10インチLPが元になっていて、オリジナルはそれぞれ8曲ずつだった。
ところがこのアルバムでは53年の録音からは4曲だけが収められていた。残りの4曲も聴きたくなるのが人情だし、そもそも時代も違った2枚のアルバムを一緒にしたのに片方が半分というのでは座りが悪い。拘りのファンが多い日本のファンからは当然完全盤を望む声が大きくなった。
その後、このアルバムが再発された時にはやっと本来の16曲に戻った。自分の手元にあるアルバムもその再発物だが、元々2枚のアルバムが一枚になって裏表というのであれば納得できる話だ。ところが、この時残りの4曲のマスターテープが見つからなかった。仕方なく評論家の佐藤氏が所有していたオリジナル25センチ盤から残りの4曲をコピーして収録して完成させたと記録されている。
最近はコンプリートなら良かろうという判断からか、別テイクや未発表曲までを詰め込んだアルバムも多い。よほどのファンでない限り「そこまではいいよ」というのが本音ではないだろうか?
このようなコンプリートは編集でも編成もない。コンプリートを目指す熱烈ファンには有難いが。ただ詰め込んだだけ、アルバムとしての意図は「コンプリート」以外何も感じないものだ。
また、最近は、過去のアルバムが名盤から駄作まで何十枚単位で安価で再発され、その気になれば簡単に入手できる。憧れの名盤といわれるものも、有難味を感じなくなってしまった。
このパウエルのアルバムは、最初にゴールドディスクで発売された時は、原テープをオリジナルのピッチに合うように復元して発売されたと記されている。16曲への拘りとか、このピッチの調整とか、名盤と云われるものは、是非このように手をかけて本来の形で大事に残してもらいたいものだ。
さて、このアルバムの内容に関しては、色々な所で多く人が語られているので説明の必要は無いと思う。自分としてはパウエルといえばクレオパトラであったが、パウエルの火の出るようなアップテンポのインディアナに驚き、反対にバラードの良さも知り、ドラムのフラッシングへの拘りに感心し、療養前後のプレーの違いを感じたアルバムだ。
バウエル派のピアニストの原典ともいえる演奏の数々、自分のように聴くだけのファンはなるほどと感心するだけだが、きっと演奏する人にとってはそれ以上に学ぶべき点が沢山あるのだと思う。きっとバリーハリスに引き継がれているエッセンスのような物が。
1. I'll Remember April Gene DePaul / Patricia Johnston / Don Raye
2. Indiana James F. Hanley / Ballard MacDonald
3. Somebody Loves Me Buddy DeSylva / George Gershwin / Ballard MacDonald
4. I Should Care Sammy Cahn / Axel Stordahl / Paul Weston
5. Bud's Bubble Bud Powell
6. Off Minor Thelonious Monk
7. Nice Work If You Can Get It George Gershwin / Ira Gershwin
8. Everything Happens to Me Tom Adair / Matt Dennis
Bud Powell (p)
Curly Russell (b)
Max Roach (ds)
Recorded in January 10, 1947, NYC
9. Embraceable You George Gershwin / Ira Gershwin
10. Burt Covers Bud Bud Powell
11. My Heart Stood Still Lorenz Hart / Richard Rodgers
12. You'd Be So Nice to Come Home To Cole Porter
13. Bags' Groove Milt Jackson
14. My Devotion Roc Hillman / Johnny Napton
15. Stella by Starlight Ned Washington / Victor Young
16. Woody 'N You Dizzy Gillespie
Bud Powell (p)
George Duvivier (b)
Art Taylor (ds)
Recorded in NYC, September, 1953
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