Midtown / The Warren Vache Trio
ジャズを聴き始めた時、リズムセクションというのはピアノ、ベース、ドラムが揃っていること、時にはギターが加わることもあるがこの3点セットが揃っていないと何となく物足りなさを感じたものだ。ピーターソンのドラムレスのトリオを知り、ロリンズのピアノレストリオを聴き、一人いなくとも良いものは良いというのが次第に分かってきた。ドラムの無い殺風景さがかえってプレーにリズム感を生むことも。
コンコルドレーベルが生んだスターの一人はスコットハミルトンだが、そのハミルトンと一緒にデビューしたのがウォーレンバシェ。ハミルトン同様、オールドスタイルの演奏を得意としていていた。ハミルトンとの共演以外にも、歌のバック、コンコルドジャズフェスティバルの舞台、あるいはコンコルドオールスターズのメンバーにも加わったり、事あるごとに登場していた。このアルバムへの参加でコンコルドレーベルにおいて彼が加わったのは何と17枚目にも上った。その中には、バシェのワンホーンのアルバムもあり、けっしていつも脇役という訳ではなかった。そもそもコルネットとフリューゲルホーンを吹くせいもあり、若さには似合わずトランペットのきらびやかさとは違ったいぶし銀のプレーが得意であった。最近ライブを聴きに行くと、テナーの渡辺恭一やトランペット二井田ひとみのようにオジサン顔負けのスイングスタイルの演奏を聴かせてくれる若者が目につく。きっとハミルトンやバシェも当時そのような存在だったのだろう。
そのバシェがニューヨークでニューオリンズ料理を食べさせる"Crawdaddy”という店に良く主演していた。そこで、自分のグループでライブを行う時はいつもドラムを入れていた。ライブといってもこのような店だと普通のライブハウスとは違う。食事がメインなので、ドラムのボリュームコントロールにいつも悩んでいた。その店には、このアルバムで一緒にプレーをしている、ジョンバンチやフィルフラナガンも出ていたようだが、ある時この3人が一緒になった。そこで、バシェがこの機会を逃さず決断した。ドラム抜きでやってみようと。
このバンチはというピアニストはあまり有名では無い割に良く聞く。と思って自分が紹介したアルバムを見返しても、出てくる出てくるぞろぞろと。古くは新生バディーリッチオーケストラのデビュー盤にも、昔のファーガソンオーケストラのニューポートの舞台にも、グッドマンとモスクワに行ったメンバーにも、ハーマンと一緒の時も、神出鬼没とはこのことだ。そして、そのピアノは実にスインギーで味がある。一緒にプレーするのが楽しくなるようなピアノだ。バックに回っ時も、時と場合に合わせてツボを押さえた音が出てくる。
そして、ベースのフラニガン。ハミルトンと一緒にニューイングランドから出てきたが、バシェとはすでに何度も共演済み。このようなトリオでは、けっしてリラックスして休ませてくれることなくバックを固めるベースとしては適任。そしてもう一つ気に入っているのは、最近多い「ビンの中で飛び回る蜂の羽音」のようなベースではなく、ベース本来の図太いフルサウンドを聴かせてくれるからだというのは、バシェの弁。
このような3人がプレーすれば結果は大体予想がつく。バシェも大満足でドラムレスでその後もやることを決心したそうだ。この3人の場合はアレンジも必要なく、同じ曲を違った日や場所でやると全く違う展開になることもあったそうだ。これが本当のコラボプレーかもしれない。
そして、このような演奏はやはり食事をしながらのレストランでのバックに似合う。ダウンタウンにあるジャズクラブではなく、少し郊外にあるミッドタウンの小洒落た店にお勧めだ。最近は日本でも少し郊外のジャズを聴かせる店も多いようだ。きっとこおようなドラムレスの演奏を聴かせてくれることも多いとは思うが、こんな演奏こそ本物の職人芸を持ち合わせたミュージシャンが本領発揮できる。大ステージでハイノートを駆使するプレーを感心するばかりがトランペットを聴く楽しみではない。
名手バシェが、ジャズトランペットのすべてを13分で早わかり。名手は結局どんなスタイルでもできるということか?
1. I'm Old Fashioned Jerome Kern / Johnny Mercer 5:48
2. A Time for Love Johnny Mandel / Paul Francis Webster 5:33
3. Rhythm-A-Ning Thelonious Monk 2:58
4. I Let a Song Go Out of My Heart D. Ellington / I. Mills / H. Nemo / J. Redmond 4:37
5. Tempus Fugit Warren Vaché Trio 4:14
6. Out of Nowhere Johnny Green / Edward Heyman 4:57
7. Two for the Road 3:36 Henry Mancine/Leslie Bricusse 3:30
8 .It's Love in the Spring Warren Vaché Trio 3:38
9 .We'll Be Together Agai Carl Fischer / Frankie Laine 4:58
10.I'll Remember April Gene DePaul / Patricia Johnston / Don Raye 4:54
Warren Vache (cor,flh)
John Bunch (p)
Phil Flanigan (b)
Produced by Cark Jefferson
Enginner : Ed Trabanco
Recorded at Soundmixers,New York in February 1982
Originally released on Concord CJ-203
ジャズを聴き始めた時、リズムセクションというのはピアノ、ベース、ドラムが揃っていること、時にはギターが加わることもあるがこの3点セットが揃っていないと何となく物足りなさを感じたものだ。ピーターソンのドラムレスのトリオを知り、ロリンズのピアノレストリオを聴き、一人いなくとも良いものは良いというのが次第に分かってきた。ドラムの無い殺風景さがかえってプレーにリズム感を生むことも。
コンコルドレーベルが生んだスターの一人はスコットハミルトンだが、そのハミルトンと一緒にデビューしたのがウォーレンバシェ。ハミルトン同様、オールドスタイルの演奏を得意としていていた。ハミルトンとの共演以外にも、歌のバック、コンコルドジャズフェスティバルの舞台、あるいはコンコルドオールスターズのメンバーにも加わったり、事あるごとに登場していた。このアルバムへの参加でコンコルドレーベルにおいて彼が加わったのは何と17枚目にも上った。その中には、バシェのワンホーンのアルバムもあり、けっしていつも脇役という訳ではなかった。そもそもコルネットとフリューゲルホーンを吹くせいもあり、若さには似合わずトランペットのきらびやかさとは違ったいぶし銀のプレーが得意であった。最近ライブを聴きに行くと、テナーの渡辺恭一やトランペット二井田ひとみのようにオジサン顔負けのスイングスタイルの演奏を聴かせてくれる若者が目につく。きっとハミルトンやバシェも当時そのような存在だったのだろう。
そのバシェがニューヨークでニューオリンズ料理を食べさせる"Crawdaddy”という店に良く主演していた。そこで、自分のグループでライブを行う時はいつもドラムを入れていた。ライブといってもこのような店だと普通のライブハウスとは違う。食事がメインなので、ドラムのボリュームコントロールにいつも悩んでいた。その店には、このアルバムで一緒にプレーをしている、ジョンバンチやフィルフラナガンも出ていたようだが、ある時この3人が一緒になった。そこで、バシェがこの機会を逃さず決断した。ドラム抜きでやってみようと。
このバンチはというピアニストはあまり有名では無い割に良く聞く。と思って自分が紹介したアルバムを見返しても、出てくる出てくるぞろぞろと。古くは新生バディーリッチオーケストラのデビュー盤にも、昔のファーガソンオーケストラのニューポートの舞台にも、グッドマンとモスクワに行ったメンバーにも、ハーマンと一緒の時も、神出鬼没とはこのことだ。そして、そのピアノは実にスインギーで味がある。一緒にプレーするのが楽しくなるようなピアノだ。バックに回っ時も、時と場合に合わせてツボを押さえた音が出てくる。
そして、ベースのフラニガン。ハミルトンと一緒にニューイングランドから出てきたが、バシェとはすでに何度も共演済み。このようなトリオでは、けっしてリラックスして休ませてくれることなくバックを固めるベースとしては適任。そしてもう一つ気に入っているのは、最近多い「ビンの中で飛び回る蜂の羽音」のようなベースではなく、ベース本来の図太いフルサウンドを聴かせてくれるからだというのは、バシェの弁。
このような3人がプレーすれば結果は大体予想がつく。バシェも大満足でドラムレスでその後もやることを決心したそうだ。この3人の場合はアレンジも必要なく、同じ曲を違った日や場所でやると全く違う展開になることもあったそうだ。これが本当のコラボプレーかもしれない。
そして、このような演奏はやはり食事をしながらのレストランでのバックに似合う。ダウンタウンにあるジャズクラブではなく、少し郊外にあるミッドタウンの小洒落た店にお勧めだ。最近は日本でも少し郊外のジャズを聴かせる店も多いようだ。きっとこおようなドラムレスの演奏を聴かせてくれることも多いとは思うが、こんな演奏こそ本物の職人芸を持ち合わせたミュージシャンが本領発揮できる。大ステージでハイノートを駆使するプレーを感心するばかりがトランペットを聴く楽しみではない。
名手バシェが、ジャズトランペットのすべてを13分で早わかり。名手は結局どんなスタイルでもできるということか?
1. I'm Old Fashioned Jerome Kern / Johnny Mercer 5:48
2. A Time for Love Johnny Mandel / Paul Francis Webster 5:33
3. Rhythm-A-Ning Thelonious Monk 2:58
4. I Let a Song Go Out of My Heart D. Ellington / I. Mills / H. Nemo / J. Redmond 4:37
5. Tempus Fugit Warren Vaché Trio 4:14
6. Out of Nowhere Johnny Green / Edward Heyman 4:57
7. Two for the Road 3:36 Henry Mancine/Leslie Bricusse 3:30
8 .It's Love in the Spring Warren Vaché Trio 3:38
9 .We'll Be Together Agai Carl Fischer / Frankie Laine 4:58
10.I'll Remember April Gene DePaul / Patricia Johnston / Don Raye 4:54
Warren Vache (cor,flh)
John Bunch (p)
Phil Flanigan (b)
Produced by Cark Jefferson
Enginner : Ed Trabanco
Recorded at Soundmixers,New York in February 1982
Originally released on Concord CJ-203
Midtown Jazz | |
Waren Vache | |
Concord Records |