A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

サドメルを辞めたサドジョーンズがヨーロッパで新たに編成したオーケストラEclips・・

2014-04-21 | Thad Jones & Mel Lewis & VJO
Thad Jones Eclipse

有名ジャズビッグバンドのレパートリーにこだわって演奏しているビッグバンドは多い。有名になった曲を他のミュージシャンがカバーすることは音楽の世界では一般的だが、ビッグバンドの場合はアレンジが命。アレンジもオリジナルオーケストラのスコアを使ったレパートリーバンドは、やはりメンバー達のオリジナルバンドへの思い入れが半端ではないということだろう。このようなオーケストラは、聴く方もどうしても「本物にどこまで迫れるか」といった聴き方になってしまうのは仕方がないものだ。

日本では、グレンミラーのミラーサウンドオーケストラ、秋吉敏子のアートオウルジャズオーケストラ、カウントベイシーのベイシーサウンドオーケストラ&高瀬龍一ビッグバンド、ハリージェイムス&レイアンソニーの岸義和ビッグバンドなど・・・、まだ聴いた事のないバンドもあるし、アマチュアバンドを入れるとその数はかなりになるだろう。
サドメルも人気があったオーケストラなので、その曲をレパートリーに加えているビッグバンドはプロでも多い。そのサドメルの曲だけをやっているというビッグバンドがあると聞き、先日東京TUCで行われたそのライブに出かけてみた。



それはMake me smile Jazz Orchestraという社会人バンド。
結成されて20年近く経つバンドのようだが、東京大学のビッグバンドサークルのメンバーと、その関係者を中心に編成されたようで、メンバーの結束は強そうだ。メンバーには若手も多く歴史を感じるオーケストラだ。客席は関係者が多く、年一度のお祭りの様相であったので、一般のお客は少し居場所が無い感じの会場の雰囲気ではあった。

プログラムは、サドジョーンズアレンジ一辺倒ではなく、リトルピクシーのようなサドメルのクラッシックからVJOになってからのジムマクニーリーのハードリーエバーまで様々。こだわりはオールドサドメルだけでなく、VJOまでをカバーする幅広い



サドメルの場合は、アンサンブルワークの難しさだけでなくソロも変化に富んでおり、コピーをするのも難しいとは思うが、そこそこのプレーでサドメルファンとしては十分に楽しめた。これもアマチュアならではの日頃の繰り返しのリハーサルの成果であろう。以前宮嶋みぎわのオーケストラにダグラス:パービアンスが加わっただけでオーケストラ全体のサウンドが引き締まった感じを受けたが、きっと、このオーケストラもサドジョーンズが指揮をすると一段とサウンド&リズムにメリハリがついてくると思う。

本家、サドジョーンがサドメルを去ったのが1977年10月といわれている。創設以来のメンバーであったペッパーアダムスがバンドを去ったのが8月24日。その後を追うようにしてのリーダーであるサド・ジョーンズの離脱であった。
活動の拠点をヨーロッパに移したサドは、その年の12月には盟友のメルルイスと共にフィンランドのUMOオーケストラと共演し、翌年78年には今度はデンマークでDanish Radio Big bandと3月にコペンハーゲンのモンマルトルでのライブアルバムを残している。活動場所は替われど、ヨーロッパに移り住んでもオーケストラへの情熱は衰えていなかったようだ。

ジョーンズはヨーロッパでは色々などんなオーケストラに客演することが多かったが、彼の指揮の下で一緒に演奏するとバンド全体がサドジョーンズ独特の味付けがされる。これは彼のアレンジだけでなく他のメンバーのアレンジでも同様であった。サドの指揮のマジックである。

しかし、そのうちサドはやはり直接自分の息のかかったオーケストラが欲しくなったのであろう、78年7月にコペンハーゲンのジャズクラブ”Slukefler”にヨーロッパ各地からメンバーが集められた。彼らはこれまで共に一緒に演奏したことが無かっただけでなく、中にはビッグバンドの経験の無いメンバーもいたとか。助っ人としてヨーロッパ在住のアメリカ出身の仲間達も参加した。ピアノのホレスパーラン、ドラムのエドシグペン、サックスのサヒブシハブなど、皆腕達者達の実力者であった。

メンバー達は初めて見る譜面を何とか演奏し終えて、思わず皆で目と目を合わせた。そこでサドは、お得意の白い歯を出した満面の笑みで一言「さあ、何を皆で一緒にやらなければならないか分かったよね」と。それから2週間のリハーサルでこのバンドはサドジョーンズサウンドを立派に奏でるようになった。

このCDにはそのオーケストラの2か月後のスタジオ録音、そしてその一年後、このオーケストラがリハーサルに励んだクラブ”Slukefler”でのライブ録音の2枚のアルバムが収録されていて2年間での変化も比較できるが、2枚目ではメンバー達のオリジナルアレンジが中心に進化している。

世界中にサドメルのアレンジをレパートリーに加えているオーケストラは数多くあるとは思うが、やはりサドジョーンズ自ら育てたオーケストラは一段と輝かしく響き渡る。サドの直接の指導と指揮が活きているのだろう。

リチャードブーンのボーカルも聴ける楽しいセッション。サドの指揮ぶりも見ることができる



1. Basically Yours            Thad Jones 5:45
2. To You                Thad Jones 4:17
3. Snickerdoodle           Keith Foley 4:20
4. I Can't Give You Anything But Love  Dorothy Fields / Jimmy McHugh5:41
5. Honky Punk              Ole Nielsen 3:26
6. This Bass Was Made for Walking    Thad Jones 4:39
7. Baby, I Can't Get Over You      Sahib Shihab 8:25
8. I Hope This Time Isn't the Last    Tim Hagans 8:05
9. Arrival                Horace Parlan 6:05
10. Scrapple from the Apple        Charlie Parker 5:38
11. La Solitude              Gilbert Bécaud 5:38
12. My Centennial             Thad Jones 10:14

#1~6
Erik Tschentscher (tp)
Tim Hagans (tp)
Lars Togeby (tp)
Egon Petersen (tp)
Jan Glaesel (tp)
Ture Larsen (tb)
Axel Windfeld (tb)
Richard Boone (tb)
Bjarne Thanning (tb)
Niels Neergaard (tb)
Ole Thoger (as)
Nielsen (as)
Jorgen Nilsson (ts)
Michael Hove (bs)
Bent Jadig (ts)
Sahib Shihab (bs,as)
Jesper Lundgard (b)
Horace Parian (p)
Ed Thigpen (ds)

Recorded on Sep.17&18,1979, at Metronome Studio in Copenhagen

#7~12
Erik Tschentscher (tp)
Tim Hagans (tp)
Lars Togeby (tp)
Egon Petersen (tp)
Jan Glaesel (tp)
Ture Larsen (tb)
Palle Jensen (tb)
Bill Beecroft (tb)
Jens Engel (btb)
Sahib Shihab (as)
Ole Thoger (as)
Nielsen (as)
Jorgen Nilsson (ts)
Jesper Nehammer (ts)
Michael Hove (bs)
Jesper Lundgard (b)
Horace Parian (p)
Nicolai Gromin (g)
Bjarne Rostvold (ds)
Emmanuel Khaliq Rahim (congas)

Recorded live at ”Slukefler” Tivoli Copenhagen on Sep.15&16,1980
コメント (2)
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