The Return Of Howard McGhee / Howard McGhee
1960年ベツレヘム盤で2度目の復帰を果たしたハワード・マギー。ドナルドバードやリーモーガンなど若手の台頭が目覚ましい時期であったが、この時マギーは42歳。年齢的にはすでに若手というよりはベテランの仲間入りをしていた。
麻薬療養からの復帰という事もあり、プレースタイルも若い頃から変化させていた。
ライナーノーツには以下のように記されている。
復帰後ジェイムス・ムーディーやテディー・エドワーズと一緒にプレーをしたマギーは仲間がプレーをしているのを聴きながら自分自身を見つめ直し、今の自分を素直にプレーしようと決めた。今までのように縦横無尽に、そしてハイノートヒッターを止めることを。しかし、若い頃のパワーが決して衰えた訳ではなく、選ばれた音はよりメロディックに、そしてリズミックになっていった。
ゴルフをやっていると歳と共に飛ばなくなってくるのは世の常だ。若い仲間に囲まれてプレーをしていても、飛距離ではいくらあがいてもかなわない。無理に飛ばそうとしても、ただ体に力が入るだけ。フォームは乱れてさらに飛ばなくなる。しかし、ゴルフの勝負は上がってなんぼの世界。小技やパットを磨けば「上手いゴルフ」はまだまだできる。
ハイノートと超高速プレーズを諦めても、上手いトランペットはいくらでも吹けるというのと同じ心境かもしれない。
このアルバムでは、そのマギーのプレーを引き立たせるバックのメンバーが素晴らしい。
ピアノのフィニアスニューボーンは超絶テクニックで有名だが、ここでは有り余るテクニックから音やフレーズを選んでマギーに合わせている。トリオよりいいかも。ワンホーンということもあり、2人のコラボプレーが随所にみられる。
さらにベースのリロイビネガーは安定した低音の”The Walker”といわれたベースラインはこの2人のプレーのバックにはピッタリだ。さらにはドラムのシェリーマンが素晴らしい。ド派手ではないが、多用な手数が確実に、そしてタイムリーにきまってくる。
最近生音の良さに嵌っているが、この演奏も「生」で聴いたら素晴らしいであろう。アルバム自体もコンテンポラリー録音なので、いわゆるブルーノートサウンドとは一味違うクリアなサウンドだ。
60年代に入りウェストコーストジャズその物は下火になったが、メルルイス達の様にニューヨークに移り住む者もいれば、シェリーマンのように西海岸に留まりスマートなジャズをプレーし続けたプレーヤーもいた。このアルバムは復帰したマギーが西海岸組と残した演奏だが、マギーにはこのメンバー達、そしてウェストコーストの環境がピッタリだったように思う。
一曲目のDemon Chaseはテディー・エドワーズ息子の名前から命名された小粋なブルース。マギーとニューボーンの掛け合いからスタートするが、この雰囲気がこのアルバムの良さをいきなり感じさせてくれる。
スタンダードの「柳よ泣いておくれ」、「朝日のごとくさわやかに」、そして「サマータイム」ではミュートプレーをたっぷりと。Sunset Eyesはテディー・エドワーズの曲で他でも良く演奏される。
タイトル曲のマギーの復帰を歓迎した曲もマイナー調で覚えやすい曲。ここでもニューボーンのピアノのバック、そしてソロへの展開が秀逸。最後のBrownie Speaksは、そうはいってもクリフォードブラウンを意識してか、アップテンポの曲で往年のプレーを思い起こさせる。
復帰作というハンディーを差し引かずとも、控えめなトランペットの好演が聴ける名盤だと思う。
1. Demon Chase Howard McGhee 7:50
2. Willow Weep for Me Ann Ronell 4:20
3. Softly, As in a Morning Sunrise Oscar Hammerstein II / Sigmund Romberg 3:13
4. Sunset Eyes Teddy Edwards 5:10
5. Maggie's Back in Town Teddy Edwards 10:36
6. Summertime G. / I. Gershwin / DuBose Heyward 3:11
7. Brownie Speaks Clifford Brown 8:03
Howard McGhee (tp)
Phineas Newborn, Jr. (p)
Leroy Vinnegar (b)
Shelly Manne (ds)
Produced by Lester Koenig
Recording Engineer : Roy DuNann
Recorded on June 26 1961
Maggie's Back in Town | |
Howard McGhee | |
Ojc |