A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

主役がいないバックオーケストラ、主役になるには一体どうすれば・・・?

2007-09-20 | MY FAVORITE ALBUM
Don Sebesky / I remenber Bill a tribute to Bill Evans



DON SEBESKYというアレンジャーは何故か気になるアレンジャーだ。
CTIで、クリードテイラーとコンビを組んで様々なアルバムを残したが、ストリングスを生かしたアレンジはジャズとかクラシックとかいうジャンルを越えたひとつのジャンルのような気がする。
しかし、そのアレンジを前面に打ち出した、自己のアルバムというとそれほど数が多くあるわけではない。やはり主役が一人いて、曲に合わせてその「主役」を浮か上がらせるようなアレンジが得意技なのだろう。ソリストの個性と曲の持つ特徴の掛け算の無限の可能性を引き出すマジシャンなのだ。

新しいアルバムをあまり買うことも無かった時期、一枚のCDが目に留まった。10年近く前のことだ。
ドンセベスキーのリーダーアルバム。ビルエバンスの思い出をアレンジで綴った一枚だ。
エバンスが亡くなったのは1980年9月。主役はビルエバンスだがもちろんこの世にはいない。すでに世に居ない人間を主役に据えて、果たしでどのようなアレンジをするのだろうか?
ビルエバンスの曲だけを取り上げたSONG BOOKかと思ったらそうでもない。有名な枯葉が入っている。他にもエバンスが好んで演奏した曲が入っている。そして、SEBESKYが自ら書き下ろしたエバンスに捧げる曲も。さらには、マイルスとの共演、あの”KIND OF BLUE “からも。
選ばれた素材の曲は、確かにエバンスに因んだ曲ばかりだ。曲名を見るとエバンスの演奏が思い浮かぶから不思議だ。それほど、エバンスのピアノはユニークでありひとつのスタイルと時代を作っていたのだ。
それでは、このアルバムに誰かエバンスの代役がいるかと思ったらピアノがいない。エバンスを偲ぶのにピアノ無しでいいのか・・・?
とは言っても代役を務める度胸がある人間はそうはいるまい。ベースとドラムを見るとエバンスと演奏を共にしたメンバーがちゃんといる。
これで何となく想像がついた。エバンスのユニークなピアノをオーケストレーションで再現しようという試みなのかと。

オーケストラのメンバーを見ると、エバンスワールドに似合うプレーヤーが集まっている。リーコニッツ、ボブブルックマイヤー、そしてラリーコリエル。エディーダニエルス、ヒューバートロウズ・・・・・・と。
誰をとってみてもエバンスのサウンドと共通点が思い浮かぶ。
勢いでパーソネルを書き出してみた。この音作りに、いやはやたくさんの人間を集めたものだ。
メンバーを見ると、自分が持っている楽器をすべて持って集合という感じだ。
さらには、”NEW YORK VOICES”のコーラスも加えて。
これは、SEBESKYが全知全霊を傾けて、とにかく出せるだけの音を出し切ってみようという試みなのだろうか。
一体誰がエバンス役を演じることができるのか?
一曲目は御馴染みのワルツフォーデビーで始まるが、無数の音が絡みつく様と、軽快な心地よい響きはエバンスの世界を見事にオーケストレーションして始まる。ギルエバンスやこのセッションに参加しているブルックマイヤーのテクスチャーとも似ている所がある。
やはりセベスキーは、とんでもないことをやったのだ。
あのエバンスのピアノをオーケストラで再現しようと。エバンスの聴きなれたソロやインプロビゼーションまでをも。
L・H&Rはベイシーの名演に歌詞をつけてコーラスに仕立て上げた。SUPER SAXはパーカーのアドリブをサックスのアンサンブルに。そしてセベスキーはエバンスをカラフルなオーケストラに。
久々に聴いたセベスキーであったが、オーケストラが主役になる、また新しいセベスキーを発見したのだった。

この録音からすでに10年が経っている。
今は一体何をしているだろう。またまた興味が湧いてきた。

1. Waltz for Debby (4:43)
2. I Remember Bill (5:26)
3. So What (8:21)
4. Quiet Now (4:03)
5. All the Things You Are (6:13)
6. Peace Piece (6:44)
7. Bill, Not Gil (5:55)
8. Very Early (7:18)
9. T.T.T.T. (Twelve Tone Tune Two) (4:18)
10. Autumn Leaves (4:49)
11. Blue in Green (5:03)
12. I'm Getting Sentimental over You (7:48)
13. Epilogue (1:06)
14. Bill Evans Interview (5:53)

<Personnel>
Brian O'Flaherty Trumpet, Flugelhorn
Joe Mosello Trumpet, Flugelhorn
Barry Ries Trumpet, Flugelhorn
Tom Harrell Trumpet, Flugelhorn
John Mosca Trombone, Horn (Baritone), Contractor
Jim Pugh Trombone, Horn (Baritone)
Alan Raph Horn (Baritone), Trombone (Bass)
Bob Brookmeyer Trombone, Trombone (Valve)
Randy Andos Tuba, Horn (Baritone)
Peter Gordon French Horn
Lee Konitz Sax (Alto)
Hubert Laws Flute
Joe Lovano Sax (Tenor)
Eddie Daniels Clarinet, Strings, Woodwind, French Horn
Chuck Wilson Clarinet, Sax (Soprano), Piccolo, Flute
Kenny Berger Clarinet, Woodwind, Brass, Sax (Tenor), Clarinet (Bass), Bassoon, Flute
Tom Christensen Flute, Violin, Horn, Sax (Tenor), Sax (Soprano), Oboe
David Tofani Flute, Sax (Tenor), Sax (Soprano), Violin
Lawrence Feldman Flute, Violin, Sax (Soprano), Sax (Alto)
Sue Evans Percussion
Dennis Mackrel Cymbals, Drums
Jeanie Bryson Percussion, Strings, Vocals
Joe Passaro Percussion, Cortale, Woodwind, Tympani (Timpani), Maracas, French Horn, Gong, Glockenspiel, Cymbals, Violin, Strings
Larry Coryell Guitar
John Pizzarelli Guitar, Vocals
Toots Thielemans Harmonica, Strings, Woodwind
Eddie Gómez Bass
Marc Johnson Bass
Johnny Miller Bass, Strings Contractor
Marty Morell Drums
Joe La Barbera Drums, Brass, Woodwind
New York Voices Vocals
Kim Nazarian Woodwind
Peter Eldridge Woodwind
Lauren Kinhan Woodwind
Darmon Meader Woodwind
Dave Samuels Strings, Woodwind, Vibraphone, Brass
Laura Seaton Violin
Shinwon Kim Violin
Evan Johnson Violin
Cenovia Cummins Violin
Dale Stuckenbruck Violin
Martin Agee Violin
Max Ellen Violin
Jesse Levine Viola
Roy Lewis Violin
Kenneth Burward-Hoy Viola
Mitsue Takayama Viola
Sarah Carter Cello
Caryl Paisner Cello

Don Sebesky Arranger, Engineer, Main Performer, Producer, Conductor

Recorded June 4 & 9,1997 , at Sound on Sound Recording , New York City

そして
Stringsは、June 21 , 1997
Brass は、June 11, August 12
New York Voices は、July 15 ,1997
Mixedされたのが、August 27-29,September 2,24,30 ,1997
 めでたくマスターが完成したのが、October 2,3 ,1997

今風の音作りのプロセスだ。それにしても、頭の中でこの完成形をイメージできるアレンジャーとはたいしたものだ。
Concordのような一発勝負のアルバム作りとは対極にあるアルバムである。

コメント
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