渡辺淳一の『無影燈』上下を読んだ。写真に写っている本は上が角川文庫、下が文春文庫版でかなり体裁が違っている。何かのきっかけで上巻を1冊88円のものを勝っただが、下がなくて文春文庫の新刊のものを買った。古本を買って読んでいるとたまたまこんなことが起こる。
大学病院の講師だった外科医・直江はなぜか栄達の道をすて個人病院の医師になった。優秀な腕を持ちながらニヒルな影のある彼に、看護婦倫子は惹かれてゆく。彼の周辺にはさらに、院長の娘や夫人らが群れ、慕い寄る。酒に酔い女におぼれながらどこか冷たい直江には、ある秘密が隠されていた。体の交渉を重ねながらも、倫子にとって直江は、依然、不可解な存在であった。正月休みに直江から旅行に誘われた倫子は、その優しさに当惑しながらも北海道に旅立つ。しかし、この優しさの内には、生きる時間があとわずなき迫った直江の重大な秘密が隠されていて、直江は自殺という形で忽然とこの世から姿を消す。
この作品をもとに『白い影』という題でテレビドラマ化されたらしい。渡辺淳一がもともと外科医で、医学的な問題もよく承知している作品を書くことはしっていた。医療現場の裏にまで踏み込んだ作品で、面白かった。