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アイスクリーム

2012-07-26 23:08:36 | 日記
戦争による食糧難が始まる前でもアイスクリームはちょっとした贅沢品であって、街の駄菓子屋さんで簡単に買えるものではなかった。祖母が神戸のデパートへ行った帰りに、円筒型の箱を抱えてきて、ドライアイスが溶けていないかと心配しながら、あの独特の形の容器を家族に配っていたのを思い出す。 アイスクリームの味は、氷塊を使った冷蔵庫の中の飲み物(コーヒーシロップなんかがった)と違った高級感があった。  アパートの近所の銭湯へ二人で行って、帰りにアイスバーという名の、アイスクリームを平たい木片に貼りつけたものを食べるのが、私達の新婚時代の夏の愉しみだった。風呂代は15円、アイスバーは10円の時代だった。かき氷を作る器具を持っていて、それ用のシロップを買ったりしていたが、やはり、湯上りのアイスクリームは格別だった。アパートは多摩川に近く、夏の夜風も快適だったが、風呂のある家に住みたいというのが、私達の願望だった。 18年前のちょうど今頃は、脳梗塞の治療のために入院していた。娘がハーゲンダッツのアイスクリームを持ってきてくれた。旨い!ひとくち食べて、思わずそう言ったのを憶えている。  7月下旬の暑い日であはるが、病室はクーラーが効いているから、汗をかくということもないし、特に喉の渇きがあったわけでもないが、あのハーゲンダッツ・アイスクリームは絶品だった。その話をすると、家人は「冷たいビールを懐かしく思ったのでは?」と言うが、それとは違う。別の言い方をすれば、あれは、生涯でいちばんのアイスクリームの味だった。脳梗塞を忘れさせる味だった。

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