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行儀

2021-02-20 18:11:27 | 日記
昭和15年か16年か、その頃の自分の記憶と8つ年上の叔母の証言をあわせた話である。私は祖母によく「お行儀よくしなさい」と言われていた。朝の食卓。畳の部屋に大きな和机が置かれ、その一角を祖父が占めている。祖父だけが家族と違うものを食べている。みんなは米飯に味噌汁、ほうれん草のおひたしに目玉焼き玉子と佃煮数種類だが、祖父だけは食パン、オートミール、半熟卵に、チシャ菜といったメニューだった。祖父が西洋かぶれなのではなく、専売局勤務時代に2年間のロンドン駐在の経験があって、そのときの習慣をひきずっていたらしい。チシャ菜は苦みがあるので他の誰も食べることはなかったが、時々私だけが祖父の席へ行って食べさせてもらっていた。もちろん5歳の子供に生の葉野菜が美味であるわけがない。私が欲しかったのは、その葉に塗るマヨネーズの味だった。昨今のチューブ入りと違って、昔のマヨネーズは大きな丸瓶に入っていて、それをスプーンでとって、チチャにのせるのだ。私がそれを狙って席を立つと祖母の声が飛んで来る。「坊や、お箸を1本だけ持ってどうするんですか。お行儀よくなさい。走ってはいけませんよ」。私は行儀という言葉を見るたび、聞くたびに、祖母の声を思い出す。最近はあまり使わない言葉であるようだが。

トイレへ行くために廊下に出ると、お嬢が端の方に佇んでいる。何を考えているのかわからない(それがネコの価値の最たるもの)が、前脚を揃え、かしこまっているような形に見える。つまり行儀のよい雰囲気がある。一方のリャンピンは、常に動いているので佇むという形にはならない。決して行儀が悪いわけではなく、自由が好きなのではないか。家人や娘がよく、ネコが2名いるからおもしろいと言うが、その通りだろう。2名がどちらもお行儀良しでもおもしろくない。

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