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雀荘

2020-04-04 12:07:02 | 日記
昭和30年前後、私は東京・三軒茶屋の雀荘で腕を磨いた。学校の仲間同士と打つのと違って、現金清算であるから、真剣だった。相手はヤクザ、近所の商店主、保険のセールスマン、廃品回収業者など、色川武大の『麻雀放浪記』に登場するような面々が揃っていた。ヤクザの幹部クラスになると、商店主や不動産屋などを相手に賭け金の高い勝負をする。とても私が参加できる卓ではなかった。

カミさんと呼ばれている60過ぎの老人がいた。神木とか上山といった姓だったのかもしれないが、誰もがカミさんと呼んでいたから私も倣った。カミさんは職業不詳だった。どこから来るのかも知らなかった。ま、雀荘はそれでいいのである。勝てばナンボかの金を持って帰り、負ければそれだけの金を払って帰ればそでいいのである。カミさんは沈黙の人だった。リーチ、ポン、ロンなどは小さく声を出すが、あとは黙っている。無駄口は利かない。麻雀は渋い打ち方だった。大負けはしない。かわりに、ちょっとツキがまわると大勝する。麻雀でメシを食っているのではないかと思ったことがある。この雀荘でただ一人のプロ雀士ではないかと思ったのだ。

昼過ぎに来て、夕方の6時か7時まで打って帰って行く女性がいた。酒場の手伝いをしているらしいという噂があって、50前後に見える年齢から考えて、それが当たっているように思えた。私は中学時代にいた茨城の町の雀荘を思い出した。そこでは毎日のように一人のオバサンがにぎやかな声を出しながら、牌をかき混ぜていた。オバサンの職業は産婆だった。

町の雀荘では多くの人と知り合い、中の何人かとは帰りに一緒に飲み屋へ行ったりしたこともある。しかし、雀荘で友人ができたという例は無い。

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