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腕時計

2020-11-22 11:28:18 | 日記
会社の購買課に居た頃のこと、下請けのSさんと話していて、彼がいつも高級そな腕時計をしているのに気づいた。「すごいですね!100万円ですか?」と訊くと、「まさか、そんなにはしません」と笑顔になった。普通のサラリーマンの給料が10万円あるかないかの頃である。Sさんは町工場の副社長的な存在であって、オーナーの息子だったから、金はあっただろう。そのうちに外注先全体の寄り合い小旅行のようなものがあって、当然にSさんも参加した。いつもの作業服姿でなく背広である。彼には背広は似合わなかった。旅行があるので仕方なくその辺の洋服屋で既製品を買ってきたのだと想像された。私は、Sさんは腕時計マニアなのではないかと思った。そしてもう1つ余計な心配をした。仕事の際に高級品を腕に巻いていて、傷をつけたりしないのだろうかということだった。その頃は、もう誰かから聞いて、Sさんの時計は50万ぐらいだと知っていた。背広はオーダーメードで2万円で楽勝だったのも憶えている。

次女が、ちょっと洒落た腕時計をしているので褒めたら、「これ、3,000円」と言った。たぶん、使い捨てだろう。しかし、たとえば子供の結婚宴か何かに招かれて、きちんとした装いをした時でも立派に通用する品だ。時代が変わったのである。安くて見栄えのするものがナンボでもある時代になったのだ。こういう話をすると、必ず、でもホンモノはやっぱりいいと言う人が出て来るものだが、それはそれでいい。腕時計のおしゃれに限らず、たいていの着飾り、付け飾りは、自己満足が起点なのだから。

社内結婚

2020-11-22 11:18:59 | 日記
K子が私の居た製造部に配属されて来たのは地方の高校を出て2年目だったから、まだ19歳になるかならないかの頃だった。某日、私は外注先へ行った帰りにたばこ店でチョコレートを買ってK子に渡した。K子は礼を言いながら笑顔になった。初めて見る笑顔だったかもしれない。無理もない。同じ部屋にはほかに2人の女子社員がいるが、いずれも席が遠く、周りは男ばかりだった。K子の臨席に座るH君が「それは、3時になったら食べるんだよ」と注意事を言ったのが、斜めトイメンの席の私にもわかった。途端にK子の顔が朱に染まった。目が怒った。「そんなことわかっています!」と言いたいのを我慢したのだ。H君はそういう、言わなくてもいいことを口に出してしまうタイプだった。先輩ぶりたかったこともあったのだろうか。

それから2年余が経った。私が購買課に移ったり、多少の異動はあったが、K子とH君は同じ部署にいた。2人の近くにいる男たちの話や、いわゆる社内の噂によると、K子は別の品質管理課にいるS君と恋仲になっているとのことだった。製造会社ということもあって、独身の女性社員は少なかったし、反対に独身男性は多かった。そこから、あれこれの噂が出るわけだが、私はなんとなくK子とS君は似合っている感じがした。

それからまた1m年が経っただろうか。私が1人で部品倉庫にいるところへH君が近寄って来て、K子にプロポーズをしたことを告げた。私はすぐに昔のチョコレート事件を思い出した。ああいうことは尾を引くのではないかとも思った。

K子はS君と結婚し、今も時々は電話で話したりする。H君は江の島の老舗の土産物店の娘と結ばれて、店を継いでいる。ところで、現在でも社内結婚は多いのだろうか。それともネット時代だから、相手探しも昔とは違うものになっているのだろうか。