森の中のティータイム

離婚を経験し子供達も独立 
暮らしの小さな発見をノートに。

「AIでよみがえる 美空ひばり」

2019-10-14 | 思い・つれづれ
先週金曜、NHK総合で「NET BUZZ NHKスペシャル ”AIでよみがえる美空ひばり”」
を観て、生前の彼女にほとんど関心が無かった私も、思わず涙してしまった。
というのも、このプロジェクトを実現するために動いた方々の努力と「想い」に心動かさ
れたから・・。

10年前、マイケル・ジャクソンを失った後の喪失感から、ファンの多くが「ホログラ
ムでもいいから、もう一度彼のパフォーマンスを観たい」と切望したことにも通じる思
いだった。そして、それは5年後にラスベガスの音楽イベントで実現した。

けれども、数億円とも言われた製作費で半年かけて実現した「ホログラム」映像が公開
されると、「唯一無二」の存在を失った「現実」を突きつけられてしまうことになった。

そのダンスは振付師やそっくりさんの動きを元に作られただけに、長く彼のパフォーマン
スを観てきたコアなファンには、「キレ」も「滑らかさ」も「独特のリズムの捉え方」も
全く違うものに見えた。あの「遺産管理団体」なら、これでゴーサインを出すだろうことも
頷けたけど;とにかく「死後のニューアルバムを売りたいがため」に感じた。

演じた「未発表曲」もデモから作られたらしく、何処かつぎはぎ感が否めずで・・私はこ
の「ニューアルバム」は購入しなかった。殆どの曲が、マイケルは決してこのクオリティ
で発表しないだろうと思えたから・・。それ以前にネットで度々リークされ、これらの曲
の殆どが、既にファンのPCには保存されていたけど。

ひばりさんのプロジェクトも、ヒット作「川の流れのように」を手掛けた秋元康氏が「新曲」
をこのために作るとのことで、もしかしたら「二匹目のどじょう狙い?」などと穿った見方
が出来なくもない。(ごめんなさい・・なにかにつけ《ヒット狙い》のお上手なこの方が、
私は昔からちょっと苦手です;)でも、このプロジェクトに関わった多くの人たちの努力は
素晴らしいモノだった☆

曲の発表の途中にひばりさんが「お久しぶりです」から始まるファンに話しかけるシーンが
興味深かった。これを作るために必要な彼女の話声のデータが、極端に少なかったことから
スタッフは息子の和也さんに協力を求めた。

ひばりさんが地方公演に行く際に、幼かった息子のために自らの声で録音した童話の読み聞
かせテープを、彼は大切に保管していたのだ。それにより、彼女の優しい声のデータを得る
ことが出来た。

これまでの彼女の歌から作り上げた歌唱部分は、ひとまず古いファンに聴いてもらったが
制作側が意図した反応とは違い、一様に「ダメだし」されてしまう結果に。彼女の声が持
つ独特の力が感じられないという。AIは音符どおり正しく歌うことはできるが、雑味や人
間臭さがなく、人を感動させることはできないことに気付かされる。

更に、ひばりさんの歌唱には「高次倍音」という特殊な音が見つかった。
これは元の音の高さより数オクターブ上の高い音との二つが、同時に出るものらしい。
それだけではなく、楽譜に対して音程やタイミングのズレが随所に見られ、専門家によると
「正直これがなんでいい歌に聴こえるのか、はっきり申し上げることができない」らしい。

しかし、確かにこういうことが起こっているという。AIにこれを学習させ改良し、新曲を
歌わせてみると・・それはファンが涙するものに仕上がっていた。

動きはいくら技術を駆使しても乗り越えられない課題があった。「新曲」を歌う時の動きを
推測をすることはAIをもってしても困難だった。これを、ひばりさんを尊敬してやまない天
童よしみさんが「モーションキャプチャーセンサー」を着けて担った。コアなファンから見
たら、微妙に違うかもしれないけど、その思いが充分伝わるものだった・・。

専属の美容師さんだった女性、衣装を担っていた森英恵さんなどが、彼女をイメージしながら
新たな衣装や髪形を作り上げた。
ラストでは、それらの結晶のステージが。息子の和也さん始め、近しかった人たちの目にも涙
が溢れていた・・。

最後に秋元氏が「これは、人間の思いを科学がサポートしてる」と言った言葉にはちょっと
共感できたかな。

三浦大地くんのナレーションも良かった☆
「私はこう思うのです。私たちに感動を与えてくれたのはAIという機械だけではない。
ひばりさんにもう一度会いたい、歌って欲しいと願う人たちの情熱がAIに命を吹き込ん
だのです」

・・いつか「本当の思い」を持って作ろうとする人たちの手で、一晩だけでも私たちの
マイケルをよみがえらせて欲しい・・そう願った夜☆
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