十七才は一度だけ

2023-10-15 07:49:32 | 青春歌謡
高田美和


谷のりんどう 山の百合
枝にないてる 鳥の声
指にちらつく 葉もれ陽に
ゆれるほのかな 胸のうち

十七才は一度だけ
十七才は一度だけ
草のささやき そよぐ風
水によじれる 白い雲


あわくもえたつ 恋の芽を
ひとり抱きしめ 歩く道
十七才は一度だけ
十七才は一度だけ

月のやさしさ 森の影
遠くうるんだ 窓あかり
耳になじんだ 水車まで
なぜか嬉しい 愛の唄
十七才は一度だけ
十七才は一度だけ




   
 
花が咲き鳥がうたう牧歌的な風景のなかを歩む娘です。

青春歌謡前期的なイメージかもしれませんね。(「水車」のある風景は高石かつ枝「林檎の花咲く町」(昭38-2)を思わせます。

1977年の千昌夫「北国の春」(いではく作詞)にも「水車小屋」が出てきますが、それはもう実景というよりはノスタルジー。

しかし、東京オリンピック前後のこの時期は実景です。水車はちゃんと生活のなかで使われていたはずです。)
 
しかも紋切り型の風景羅列ではありません。

「指にちらつく葉もれ陽」「水によじれる白い雲」「遠くうるんだ窓あかり」「耳になじんだ水車」、ディテール(細部)があります。

そのディテールが彼女の感受性のこまやかさを思わせます。
 
その風景のなかを歩く彼女の胸には「あわくもえたつ恋の芽」が芽生えています。

歌詞にある「ゆれるほのかな胸のうち」も、水車の音を「愛の唄」と聞くのも、この「恋の芽」のゆえでしょう。
 
「あわくもえたつ恋の芽」なので、いかにも清純な、まだ胸の内に秘めた初恋です。

実るかどうかもわかりません。

それでも初めての「恋の芽」をかけがえのない一度だけのものと思う、その思いを「十七才」という揺れる年ごろのかけがえのなさに結んで、

いま・このときの自分をいとおしみます。
 


































































































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