ザ・ピーナッツ
おばかさんなの私
あの日別れた人
今夜も逢えそな気がして
ひとり待つ待つ 銀座よ
悪い人でもいいの
つらくされてもいい
愛してもう一度 私を
霧に泣く泣く 赤坂
夢で終った恋を
今も探がしてるの
あなたがいないまま灯りが
消えてゆくゆく 青山
恋を失くした日から
影もうすいみたい
ひとりで踊ってもはかない
夢が散る散る 新宿
どこに行ったらいいの
夜が更けゆく街
私のため息が流れて
霧になるなる 東京
この曲の特徴として先ず思い浮かぶのは、非常に短い曲だということです。
たった12小節しかありません。
珍しいと称していいと思います。
これだけ短いと、俳句や短歌の世界みたいなものですから、詩も曲も白眉の出来でなければ名曲となりえませんよね。
そこが辛いところです。(笑)
作詞:山上路夫 作曲:沢田研二、これだけで編曲:宮川 泰がなかったなら、いかにザ・ピーナッツの歌唱でも、この歌が聞き惚れられる要素があるでしょうか。
実に簡単なメロディーですし、音域も狭い、ハーモニーの聞かせ処もないし、起伏がないので感情の乗せようもない、テレビでもステージでも一向に
映えない歌です。
メインディッシュになりえないような前菜や洒落たデザートのイメージかも知れません。(笑)
しかし、このお洒落感覚を精一杯活かしたのが宮川 泰の編曲での工夫ではないでしょうか。
印象的なギターのメロディーでイントロが始まります。
これは普通に4小節流れます。
次いでトランペットで続きが奏でられますが、5小節という不思議な半端さに注目。
普通は4の倍数にするのではと思うのですが、この「5」が全体に異様な感覚を与え、楽曲が不安というか虚ろというか奇妙な印象を残したのではないかと
感じます。
1コーラス目と2コーラス目は続けて歌われますが、2回目は「パパヤパー」という多重録音でのスキャットが入ります。
なかなか効果的で、あれっという意外性をここに与え単調な繰り返しを避けています。
2コーラス目と3コーラス目の間はイントロのショートバージョンが使われます。
とにかく単調に流れるのを嫌い、楽曲に変化をつけようという意図が感じられますよね。
3番と4番の歌詞は、1。2番と同じパターンで歌われます。
ここでマンネリ気味のように感じられることを察知したかのように曲の先頭に戻り、今度はフルバージョンのイントロが流れますが、
そこでいきなり「パパヤパー」です。
総集編のように聞かせたら、エンディングでの今迄にないメロディー、そして、新たなスキャットで大きく変化をつけて曲を終らせています。
う~ん、たった12小節しかない曲で、こんなに難しく説明を要したのは初めて。(笑)