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「澁谿シブタニをさして吾が行くこの浜に月夜ツクヨ飽きてむ馬しまし止め(還る時に、浜の上にて月光を仰見る歌一首(#19.4206 守大伴宿禰家持)」
「澁谿シブタニを目指して行けるこの浜に月を楽しもう馬を止めつつ()」
「判官の久米廣縄に霍公鳥の怨恨ウラミの歌の贈るといえる(二十二日、判官久米朝臣廣繩に贈れる、霍公鳥の怨恨ウラミの歌一首、また、短歌)」
「君の家よく来るらしき霍公鳥我が家は来ない花散るときも(ここにして背向ソガヒに見ゆる我が背子が垣内カキツの谷に明けされば榛ハリのさ枝に夕されば藤の繁みに遙々ハロバロに鳴く霍公鳥我が屋戸の植木橘花に散る時をまたしみ来鳴かなく)」
「恨まずにそこは我慢も霍公鳥聞いてるあなた云わぬを恨む(そこは恨みず然れども谷片付きて家居れる君が聞きつつ告げなくも憂し)」
「ここにして 背向ソガヒに見ゆる 我が背子が 垣内カキツの谷に
明けされば 榛ハリのさ枝に 夕されば 藤の繁みに 遙々ハロバロに 鳴く霍公鳥 我が屋戸の 植木橘 花に散る 時をまたしみ 来鳴かなく そこは恨みず 然れども 谷片付きて 家居れる 君が聞きつつ 告げなくも憂し(#19.4207)」
「吾がここだ待てど来鳴かぬ霍公鳥独り聞きつつ告げぬ君かも(反歌 #19.4208 )」
「こんなにも待てど来鳴かぬ霍公鳥独りで聞いて言わぬあなたは()」