暇つぶし日記

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地方選挙の討論会に出かけた

2018年03月15日 15時33分39秒 | 日常

 

四年ごとの地方選挙の季節が戻ってきた。 3月21日の市会議員選挙の投票日に向けて各政党が町の政治に関わる政策討論会を町内会が主催してして子供たちが通っていた近所の中高一貫校で7時半から始めたのは4年前と同じ成り行きだった。 4年前には下のように記している。

https://blogs.yahoo.co.jp/vogelpoepjp/63928990.html

 

政治・法律・文化の様々な分野において日蘭の違いは多岐にわたり、なおかつそれが日本語に翻訳されると例えば政党名などにしても訳された名前が同じでもその性格が違うことから時には誤解を招くおそれのある中でオランダの選挙制度について在蘭年数は少ないものの親ユーゴスラビアと思われる日本人フリー・ジャーナリストが去年の国政選挙を中心に手短に説明したサイトがあったので下に牽く。 時間と辛抱があればネットで例えばウキペディアやオランダ大使館のサイトなどを手繰って参照すると興味深いことが浮かび上がって来るかもしれない。

https://kotaro-journal.com/introduction-of-dutch-election

さて、地方政治は中央政治と間接的に関係しているものの町の政治である市議会選挙はそこに住む外国人にも一定条件つきで選挙権があり、そんな自分はこの20年ほど機会がある毎に自分の権利を行使するのに投票には参加しているのだが地元の政治であるからその主な論点は主に地区の問題をどのように解決するかということになるのは当然のこととして、それを巡って中央政党の主張が重なり、このような討論の場で具体的に選挙権者が候補者自身とその背景にある所属政党を厳しく値踏みし微細な個人の一票を投じることになる。 そして先週予め各家庭に政党・候補者のリストが送られていた。 これを例えば次に揚げる前回4年前のものと比べると興味深い変化が見られるだろう。 前回11政党だったものが今回9党になりその順位が少々入れ替わっているのは去年の国政選挙、日本の衆議院に相当するオランダ第二院選挙の結果がもたらしたものであって、それはPvdA(オランダ労働党)の著しい後退が原因である。 尚、国政選挙では極右政党である自由党(PVV)が第二党となったが第一党のオランダ保守党(VVD)がPVVとの連立を拒否したことから現在のオランダ内閣は VVD,CDA,D66、CU の連立政権となっている。

 

2014年 ライデン市市会議員候補者選挙リスト         (当選者数)

1  D66党  (リベラル)            50    (12) 
2  PvdA  (オランダ労働党)          39    (  5)
3  VVD  (オランダ保守党)           28    (  5)   
4  SP   (オランダ社会党)         32    (  5)
5  CDA  (キリスト教民主党)         50    ( 4)
6  GROENLINKS (オランダ緑の党)       39    ( 4)
7  ライデン市解放党              26    ( 0)
8  住みよいライデン党             15    ( 2)
9  CU (キリスト教同盟)          25    ( 1)
10 動物愛護党                  13    ( 1)
11 PVV  (自由党)              1    ( 0)
12 現代党                     7    ( 0)
13 鍵の党 (ライデン市の紋章の鍵に由来する) 13    (0)   


計 338人                                                                        (39)       投票率 56.8%


2018年 ライデン市市会議員選挙候補者リスト

1 D66党  (リベラル)                              50            

2  SP   (オランダ社会党)                        29

3    VVD  (オランダ保守党)                            28

4    PvdA  (オランダ労働党)                           27

5    GROENLINKS (オランダ緑の党)                  48

6    CDA  (キリスト教民主党)                      45

7    PvdD      (動物愛護党)                                10

8  CU  (キリスト教同盟)                        29

9    鍵の党 (ライデン市の紋章の鍵に由来する)   18


計  284人

 

近年日本を含む欧米各国の政治に右傾化が言われる中、オランダもその例にもれないものの、流石に極右政党PVVが国政で第二党になってからはもし第一党のVVDと連立政権を打ち立てたならば国内が混乱することがは目に見えていることから結局長い組閣期間の結果「通常の」右寄り政府となったことには一定の理解と安心がもたらされたもののオランダを含むフランス、オーストリアの極右政党の動きは漸次世界ニュースの材料になっている。 幸いなことに前回選挙の折にはPVVは一人の候補者を立て当選しなかったことから今回は党自体がこの町では選挙に参加しなかった。 その理由はいくつか考えられるがその一つがこれら極右政党がどこでも主張する、外国人排除はこの町ではアピールしないということだ。 モロッコ、トルコ、カリビアン系の移民が多い都市は極右政党の温床ではあるけれどライデンはもともと移民、避難民を市が積極的に受け入れてきた市であることと住宅のゲットー化が小さく表面だって問題化していないことが考えられる。 人口11万人ほどの中都市で貧困層の割合が小さく中産階級の割合が多いということも政治が先鋭化しない、ということの理由であるのだろう。 そのことの証にこの町の第一党は保守党ではなくリベラルのD66であることが挙げられるだろう。 絶えず様々なモニターで小規模な国勢調査をおこない選挙民の動向をさぐった結果の被選挙人名簿がここに見られる。 だから国政では第二党であるPVVがこの町の選挙には参加しないということになって、逆に言うとこの「いびつさ」が国政の「あやうさ」を象徴していることにもなる。 まともな「常識」のある市民なら耳を貸さないような政党の主張が国政で第二党となるような現状がある種現在の世界の政治状況を象徴しているようだ。 現にありえないとだれもが思っていたことがアメリカの大統領選挙で起こっていて誰が猫の首に鈴をつけるのかとみられている間にもう1年が過ぎているではないか。 ここでも潜在的には同じようなことが起こっているのだ。

毎日メディアで海外・国内の政治ニュースやその解説が見られる中、地元の政治についてははっきり認識する機会は地元のラジオ・テレビ局、市政報告を含む地元のフリーペーパーぐらいでしかないからこのような機会は自分の周りに何が起こっているのか、これからどうなるのかというようなことを知る得難いものとなる。 

今回の論点は自分の住む地区の微細な計画についてである。 自分がよく散歩する近くの公園がある。 そこには回遊庭園と金網で囲まれた地区が管理する幼児遊園地がありそれに続いて子供たちが所属していたフィールド・ホッケークラブのクラブハウスにフィールド6面、およびテニスクラブとそのクラブハウスにコートが6面あって、その向いが小学校、幼稚園、医療センター、自分の通うジムとなっている。 10年ほど前に小学校・幼稚園の改増・新築が済み敷地に出来た小さな区画にアパート一棟、20軒ほどを立てる案が出ていたものが様々な理由から地元、父兄からの反対で公聴会、アンケートが行われその結果廃案になったのが去年のことだ。 そして今この公園のテニスクラブ、ホッケークラブを郊外に移転する計画が立ちあがっているのだという。 そして残った土地をどうするか、というのがこの日の論点になっていた。 第一になぜ移転させなければならないのかという理由が提示されない。 賛成派・反対派が各自その理由を述べて賛成派は跡地の「再開発」案を提示する。 動物党、緑の党などは環境破壊反対、自然化推進の立場からグリーンゾーンを増やすこととして「再開発」には反対である。 SPやPvdAなどは反対しないが住宅開発には反対しそこに老人医療の為のセンターや介護老人施設を建てる案を提示する。

推進派の論点の基本にあるのはこの町の住宅不足であり、次の10年間で12000戸が必要とされ住宅地の拡充、地区の再開発の必要性からスポーツ施設跡地に目が向いたという経緯があってこの点から反対派に将来に向けての住宅用地をどこに求めるのかを迫る。 環境保護、自然破壊反対というだけでは差し迫る住宅不足は解決されないというわけである。 どの町にも見られる問題でありジレンマとなるのだがそれを個別に検討し折衷案を探るのが国政でも地方政治でも同じだ。 例えばこの地区では60歳以上の住民が45%以上を占め、どのように彼らの住環境を整えるか、ということも重要な争点になる。 現在の住環境を維持、住み慣れた住宅に住むのが理想なのだが高齢によって動きが制限され車椅子入のるバリアフリー空間や階上に昇る簡易エレベーターの設置など個人の負担を軽減すべく補助金の確保を訴えるSPに対して仮令その補助金を確保してもその家が若い次の持ち主などに変わった場合投資した補助金が有効に機能しないとして医療介護つき住宅の建設を主張するVVDなどがあり、我々に将来の住み方を考えさせられる議論が続く。 

ライデン市は大学を抱えており学生数の増加により学生の部屋確保が慢性的な問題であり、自分が勤め始めた1986年には9月の新学期が始まって初めの3か月は1200人以上がテントから通学したという経緯もあったけれど今はそれほどの問題はなくとも市内では絶えず学生の住宅難が言われておりその外郭にある比較的静かな我々が住む地区にも徐々に普通の住宅が学生宿になる傾向があるという。 現にこの通りの20軒ほどでも2軒が学生宿となり普通3階建てに子供二人の4人住まい、夫婦だけの二人、若しくは一人で住む空間に学生6,7人が共同で住むという現象が起こっている。 それは大学に近い町の中心部では普通のことではあるけれど閑静な住宅地にはないことで、それにより騒音、ゴミ、放置自転車などの若者特有の問題が言われ、問題解決のために住民が家主に接触をとろうとしても間に管理人などの仲介が何人もいて埒が明かない場合が多いという経験もあり、大学側が̪市当局に住宅の確保を願っても必ずしも住民の理解を得られないというのが今までの経験から言われている。 市は住宅地ではこのような学生宿の割合を上限5%と設定していることからすると我々の通りは10%であるから既に違反ということになる。 住民の反対の理由には学生宿が多い通りの家屋の値段が下がるという事情もからんでいるようだ。 家の内外を整えて見栄えを良くし通りの環境が良ければその家だけではなくその地区の価値も上がるという不動産一般に言われることもあり学生宿というのはスラム化と同等にみられるということだ。 この部分では市の思惑とそれぞれの家に住む持ち主の思惑の差が大きく、一方では上限5%の規制にしても実質規制不可能の声もあり、住民はこの傾向を、大都市で起こっている移民の住む地区が拡大し、ある部分ではスラム化が進み治安の乱れが見られることの兆候だと考えるのもあながち大げさではないとみる。

今回の討論会は前回に比べて大きく盛り上がることがなかったがそれにはこの地区の住民には当面差し迫った大きな問題がなかったことが挙げられるかもしれないがそれにしてもその議論の中で各政党の主張とそれを代表する候補者の態度が選挙結果に出るのは確かだ。 自分の感触では前回のようにD66がこの町の第一党になるように思う。 この地区のことをよく承知しており説得力のある話し方をしたのはSPの地区議長だった。 前回、前々回での消極的で中央の主張だけを繰り返すPvdAが今回では再開発推進の論を展開したのには驚いた。 これはハーグ市の議会でこの何年もPvdAの嘗ての全学連の議長が建設部門の長として活動していたことに倣ったのかと訝った。 普通ならもっとも活気があっていいはずの緑の党の代表が驚いたことに嘗て自分の職場の前にあったカフェーのオーナーでいつも酒気をおびて赤い顔をみせている男だったことだ。 政治に関心がある様な素振りはみせなかったしこの町に住んでいるにもかかわらず具体的な策も語らず中途半端な抽象的な話に終始したのには退屈した。 中小企業の事業主をバックとするVVDの議員は前回と同じくドライで現実的な主張を通し一定の理解は集めるものの社会弱者への配慮を欠く態度にはこのまちでは圧倒多数の票をあつめることは無理であるのは今迄の選挙結果が示している通りだ。

150人から200人ほどを集めた討論会が終わり雨の中を家に戻った。 家人も自分もまだ投票日にはだれに、どの党にいれるか決めかねている。