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いつでも君のこと好きだったよ

月と六百円 葛原妙子『橙黄』

2015-10-21 23:43:19 | 日記

 今朝、ひとつだけ朝顔が。 とても健気です。 水色が秋の空にむかって、光っていました。  

 

 きょうは月と六百円の会の日でした。

 

 先週は1週間間違えて行ったので、きょうこそはと思っていました。 職場の総務のY課長補佐が右手を複雑骨折されて、お茶当番ができなくなり、みんなで交替してやっているのですが、たまたまきょうが私の番でした。 17時ごろからお茶碗を洗い、ごみを集め、17時31分にタイムカードを押して塔事務所へ向かいました。

 

 参加者は16名。 中央のテーブルが小さく思えるほど。 

 

 発表者は中津さんと安田さんでした。

 

 安田さんは年譜で流れを追ったあと、歌もいくつかのカテゴリーに分けてたくさん引いて丁寧に解説されました。 

 

 中津さんはポイントをいくつか拾いあげながら、この時期の葛原妙子について、またその後についての考察をされ、ふたりのバランスがとてもよかったと思います。

 

 『橙黄』は第一歌集。 幻視の人、のイメージがあるけれど、このころは写実に近く、使われている比喩は直感的で親近感を覚えました。

 

 ・奔馬ひとつ冬のかすみの奥に消ゆわれのみが纍々と子をもてりけり   

 

 この歌がいちばんの話題の歌で、塚本邦雄や岡井隆ほか、いろんなひとの読みが紹介され、興味深かったです。 この歌は1首で読むとイメージ先行の歌のように思えますが、「紋章」という連作のなかで読むとまったく印象が違っています。 すこし引きます。

 

 ・冬の墓群まぢかに照りぬトレーニングの馬のひづめの遠のけるなか

 ・奔馬ひとつ冬のかすみの奥に消ゆわれのみが纍々と子をもてりけり   

 ・酸性土壌きらひて育たぬ冬菜のむれひとたむろみゆわが厨より

 ・怒りの目けふもそびらに寝(ぬ)るものか素直にわれの瞼とざしめ

 ・女孤りものを遂げむとする慾のきりきりとかなしかなしくて身悶ゆ

 ・シリウスの青く凍てつく窓ガラス息塞(う)まるばかりに冷い空気が吸ひたし

 ・西洋の詩の模倣に似たる幻想のひと連ねゆきゆふ日の玻璃しづか

 

 そして、有名歌

 

 ・わがうたにわれの紋章のいまだあらずたそがれのごとくかなしみきたる

 

 につながるのです。

 

 この「紋章」の一連には苦悩や葛藤がみられ、『橙黄』のなかでも最重要な一連だと思いました。

 

 やはり、ひとりで読んでいるときと違って、奥行きと広がりが見えてきて、スリリングです。 次回は坪野哲久『桜』です。

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