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いつでも君のこと好きだったよ

『1833日目』

2016-08-12 23:46:08 | 日記

 きょうは朝からつきそい。

 

 眺めのいい場所で、だけど世間から隔離されたようなところで7時間を過ごしました。 歌集や同人誌やカタログなどを読んでいました。

 

 ようやくゆっくり読んだ『1833日目』。 この冊子は塔短歌会・東北のメンバーが作っている本。 「東日本大震災から五年を詠む」。 月日はどんどん流れ、東北の震災のことが遠くなっていくようですが、こうして定期的に「メンバーのいま」が短歌やエッセイに書かれると、ああやっぱりまだまだ傷は深いんだ、と思ったり、少しずつ戻りつつある日常にほっとしたり、いろんなことを考えさせられます。

 

 定期的に出す、ということは大変だけれど大切なことだと思います。

 

 ・どうしても海へと至る われといふ獣を森に奔らせながら (浅野大輝)

 ・海岸はつねにねむりのためにある漁船のあかき腹ひからせて ( 同 )

 ・復興を加速させてくその先に何があるのか幸福、なのか (井上雅史)

 ・それぞれがそれぞれに知る震災を東京の片隅にて語る ( 同 )

 

 ・山岸の休耕田の菊の花畦の電柱にはやぶさ留まる   (及川綾子)

 ・草刈り音そちらこちらに響かせて神社の辺り夏祭り来る ( 同 )

 ・採れたての若芽ゆでれば煌めきぬわたしの髪をなお黒くせよ (逢坂みずき)

 ・震災がなければ出会えなかった人 なくても出会えていたと信じる ( 同 )

 

 ・対岸の灯りぽつぽつ仄めけり波の暗さに引き込まれゆく (大沼智恵子)

 ・無料期間いつまで続く三陸道トラック連なり北へと向かふ ( 同 )

 ・どのようななにかであるかわからざるかたちをもとめ砂を掘りゆく (梶原さい子)

 ・起伏なす肌(はだへ)を汗がすべりゆくふたすぢみすぢ汗すべりゆく ( 同 )

 

 ・松林の塩害を説かれつつ昏きその松林わたしにもある (小林真代)

 ・本当に大事なものは少ないと知りたる春よ君を手放す ( 同 )

 ・あのころの犬の二匹はすでになく犬の二匹をあらたに飼へり (斎藤雅也)

 ・停電の夜に着せたる赤い服あらたな犬に着せて歩めり   ( 同 )

 

 ・両腕に地震被害の情報をメモした遺体 殉職だった (佐藤涼子)

 ・一列に並んで海へ敬礼し探し始める石の裏側   ( 同 )

 ・春の日は青空の下うらうらと雲雀上りき もう聞こえざり (沢とこよ)

 ・日が昇り沈むを一つの区切りとし眠れる夜は胸に手をのす ( 同 )

 

 ・狭霧立つ寺の杉にはうつすらと横に引かれし襲ふ波跡 (鈴木修治)

 ・んーと鳴る唸り耳にしひとが居るかと覚えしも人見当たらず ( 同 )

 ・残されしもとゐも崩るる友の家(や)は測量跡の杭のあたらし (武山千鶴)

 ・遠くでは嵩上げ工事の土煙る 倒れしままの松と電柱   ( 同 )

 

 ・空中にはなびら 安否確認の電話せきとめられ巻かれけり (田中濯)

 ・血圧と血糖とろり上がらしめ講堂の床のじか敷き毛布   ( 同 )

 ・四年ほどのちに出会えば震災をさほど語らぬ二人なりけり (田宮智美)

 ・ひび割れた白い壁紙この部屋で君にハンバーグを焼く夕べなり ( 同 )

 

 ・見ゆるもの見えざるものを抱へつつ子らは生くべしこれから先も (千葉なおみ)

 ・大津波に乗馬クラブの馬のゆくへ五年経し今もをりふしおもふ  ( 同 )

 ・行方不明者をさがす勇気がないわれが茫漠と思う海の深さ  (花山周子)

 ・うつ伏せに眠る子を抱き上げんとし腹のやわさがやもりのごとし ( 同 )

 

 ・三陸の海に連なる雪解けの音を聴きつつクレソン摘みぬ (星野綾香)

 ・夕間暮れわたしに届き不明者に渡らずにあるマイナンバーは ( 同 )

 ・<難民>は国をわたれる呼称かな、仮設住宅に覚むる人々 (松木乃り)

 ・原発の計画中と建設中、北へ北へと白鳥帰る       ( 同 )

 

 ・選べざる生ならまして 乳飲み子の乳をのむ頬の無心のちから (三浦こうこ)

 ・生き延びてこの川に今年もどる鮭ひとつの円を描きて戻る    ( 同 )

 

 

 

 

 

 

コメント (2)
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